二次創作小説(新・総合)

ABT③『とある神々の憂鬱』 ( No.56 )
日時: 2020/06/12 22:01
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: LdHPPNYW)

今回は運営本部からではなく、天界からの様子を見てみましょう。
天界から逃走中を見守るゼウスでしたが、何か思うところがあるようで…。

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~天界 オリュンポスの神殿~



ゼウス「ヘラちゃ~ん。ワシは別に女を漁りに地上へ降りたワケじゃないんじゃよ~。怒らないで~」

ヘラ「ふん!貴方の女の話は既に聞き飽きました!『運営本部』に用があるのは分かっていましたし、あの青龍共と話していたのは知っています!しかし!その後です後!結局は可愛い女の子が目的だったんでしょう!もう知りません!」

ヘルメス「流石に今回はゼウス様に責任があるかと思いますよ~」



ここは天界。神々が住まう領域です。
前回ゼウスはこの世界から遊びに来たのですが、今回は自分の領域から逃走中を見守る様子…って、隣にぷりぷり怒っている女性がいますね。
彼女の名前は『ヘラ』。ゼウスの正妻であり、結婚や出産を司る女神です。…元の神話を知っている方は分かると思いますが。ゼウスはまあ浮気を多々する男でして。それはこの世界でも変わりません。打ち上げ終了後、可愛い女の子を漁ってから天界に帰っていたんですね。これは奥さんもお怒りですわ。

…その傍で呆れている伝令の神『ヘルメス』も含めて、天界には『オリュンポス十二神』と呼ばれる12柱の神様がいます。前に説明したとは思いますが、天界のカーストの頂点に立つ神々です。簡単に言うと、アシッドよりも強い神様達です。
どうやら今回『も』抜け出そうとしていたところをヘラに見つかり、仕方なく神殿で見守る選択をしたようなのです。何なんだか。



ヘラ「…ゼウス様。そういえばあの堕落した神々共の様子はどうなのです?道化師と仲間割れしているとの連絡が来ていますけれど」

ゼウス「正に今のお主と同じじゃよ。怒り心頭じゃ。約束を破棄されたと言っておったからのう」

ヘラ「異界から来たという、目の見えない男と真っ白な堕天使のことも気になりますが…。やはり、尻尾を掴む前に我々が裁くべきですわ。後々あの者共が反旗を翻して来たらどうするおつもりなのです」

ヘルメス「ですがねヘラ様。敵の正体がハッキリしていない以上、我々よりは下ですが…力の強い神が何か指示をしていることは明確です。所かまわず神を滅ぼして、無関係の者まで滅ぼしてしまってはどうするのです。…先のヘリオスの軍の件も、責任の一端は我々にあるのですし…」

ヘラ「わたくしの魔法を避けられないのが悪いのです!…確かにヘルメスの言う事も一理ありますわね。ですがゼウス様。決断は早めになされた方がいいかと思いますわ」

ゼウス「ふーむ…。どうしたもんかのう」



神々の世界では、現在勢力が真っ二つに分かれていました。先の話でもあった通り、オリュンポス十二神が主軸として動いている派閥。そして、リサやヴァリスを2回目の時に送り込んだ『腐敗した神々』が主軸として動いている派閥。
こんだけ真っ二つに割れているとなれば、サクヤやアシッド達にも何かしら情報が行っていそうですが…。どうやらこの話、天界だけにとどまっている様子。ゼウスが地上や魔界に零したくないんでしょうね。

尻尾を掴む前にその神々を全て裁くべきだと提言するヘラ。しかし、罪のない神まで滅ぼしてしまっては意味がない、とヘルメスが返します。
…そんな彼女達のやり取りを見て、ゼウスは一人考えていました。『このままではいずれ地上にまで影響が出てしまう。その前に…決断をせねばならない』と。



ゼウス「アリアンロッドや青龍達に迷惑をかけることになるやもしれんのう。…すまんのう翡翠。平和な世界を創るという約束…守れそうにないわい」



そんなことを細々と呟いた後、彼はぷりぷりと怒りが収まっていない妻を宥めに席を立つのでした。









~天界 腐敗した神々の拠点~



一方。こちらは『腐敗した神々』と呼ばれている神達の拠点です。ちなみに、うちの世界のMZDを神様にする為に周りの人間を次々と彼から奪ったのも彼らです。
確かメフィストが『永久』も手に入れると約束を翻したとか何とかで、『約束を破った』と怒っているはずでしたよね。
どうやらそれは本当の話のようで。現在こちらに身を置いているリサとヴァリスも彼らの異変を感じ取っていました。



リサ「美しい世界にする、という言葉を信じこちらに身を寄せてはいるが…。あのジョマンダの態度といい、私は何かはき違えているのだろうか…?」



彼は、2回目に息子の1人…ジョマンダと対峙していた時を思い出していました。


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ジョマンダ「おいヴァリス!今は俺達を襲ってる場合じゃないだろ!親父も考え直してくれって!多分話を聞いた奴、親父に何か吹き込んだだけだぞ!」

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彼とは自分達の世界が混ぜられた際に行方不明のままであり、最悪死んでいるものかと思っていました。しかし、神々に『息子は生きている。薄汚い地上に』と唆されていました。その実、彼は生きていたのですが…。確かに、彼らの言う通り地上は『欲』に。醜さに。まみれていたのを実際に見ました。
しかし、今彼らが憤慨しているのを見ていると…。どれが『正しい』のか。彼に判断がつかなくなっていました。



リサ「もしジョマンダの言う事が正しかったら…。私はここにいるべきなのだろうか…?」



いつしか彼はそう考えるようになっていました。神も、人間も、魔族も、堕天使も関係ない。あの場で色々なものを見たジョマンダの言葉ならば。信じるに値するものではないかと。
…言葉も発さずただ思考の渦に潜めている彼に、ふと白い羽が舞い降りてきました。



リサ「どうしたヴァリス。向こうで何かあったのか?」

ヴァリス「(神達が何か言ってる。魔族に対して怒ってるみたい)」

リサ「…成程。様子を見に行かねばならないようだな」



現れたのはプラカードを持った白い堕天使、ヴァリスでした。彼は言葉を発することが出来ない為、武器として使用している斧を普段はプラカード状に変えて、そこに魔法で自分の思っていることを文字に書き起こしているのです。
ちなみに、魔族と神々が仲たがいしていることについては彼らは知りません。まあ、協力していたとはいえ、作戦に本格的に突っ込んでいた訳ではありませんでしたからね。あくまでも『利害の一致』での行動だったのです。
神々と魔族が仲違い。何か不穏な気配を察知したリサは、ヴァリスを連れて神々の元まで向かうことにしました。





リサ「先程から騒々しいぞ。少しは静かにできないのか?」

腐敗神A「はぁ?誰かと思えば異星からの旅人殿ではないか。貴殿らに関係ある話ではないのだよ。こちらに来ないでくれたまえ」

リサ「そうはいってもだ。先の作戦に協力しただろう。情報の共有くらいしておくのが味方と言うものではないのかね?」

腐敗神B「あのお方はそう思っていないようだが、我々は貴様を『仲間』等と思ったことは一度もないのでね。情報共有する義理など無いのだよ。どこぞの得体のしれないやつを良くあのお方も信頼しようと思ったもんだよ」

ヴァリス「(感じ悪い…)」

リサ「我々が良い目で見られていないのは既に分かっている。が、先も言った様に我らは現在貴方達に協力している身。…貴方達に聞けなければ、もっと上の存在に情報を得るまでさ」

腐敗神A「フン。減らず口を!貴様を見ているとまるであの偏屈爺を見ているようで気分が悪い。どうせ貴様などに誰も情報の共有はしないと思うがね!我々は失礼させてもらうよ!」



…何故か協力体制にあるはずの神々とリサ、仲が悪いようです。一方的に神々がリサ達を邪険に扱っているだけのようにも見えますが。
何があったのかと尋ねますが、彼らは口を開きません。神にもピンキリがいるとはMZDがかつて言っていたような気がしますが、本当なんですねぇ。



腐敗神B「…おい、どういうことだよ?!あのお方が我らを地上に落とすなどと…!」

腐敗神A「どうかしたのか?」

腐敗神B「先程上の神から伝令があったのだ。『お前達のやり方は目に余る。よって、地上に赴きメフィストと連携をすることを命じる』とな…。何故高貴な神である我々があのような不埒な存在などと…!」

リサ「(地上で、地下で、何か動きがあったんだろうか…?)」



ふと、邪険にしていた片方の神が唐突に慌てながら仲間の神々に伝令の内容を伝えました。お馬鹿なのか何だか知りませんがその声はリサに筒抜け。そして、『あのお方』と呼んでいる存在が今だメフィスト達道化師と協力関係にあることも分かりました。



リサ「(ならば、私達も別行動で動かねばなるまいな。ジョマンダの意志も…まだ真実が見えてこない)」

腐敗神A「どうするのだ?!あのお方は我々を見捨てたも同義だぞ!」

腐敗神B「部下に押し付けるのもまた反発を喰らいそうだしな…さて、どうするか」

ヴァリス「(父さん、ここから早く離れた方がいいよ)」

リサ「ああ。嫌な予感がするからな。ここはさっさと『…気が変わった。我々の知っていることを教えてやろう』……どういう風の吹き回しだ」



嫌な予感がしたリサ。ヴァリスも同じことを思っていたようで、いち早くここを離れることを提言します。その場を去ろうとすると、ふと背後から嫌らしく上ずった声が。案の定あの神々でしょう。
振り返らずに話半分で彼らに語りかけます。すると、彼らはニマニマと口角を上げながらこう言ったのでした。



腐敗神A「お前達、『道化師』のことは知っているな?」

リサ「魔界に蔓延っている『メフィスト』のことか?それともあいつらが探している『JOKER』のことか?」

腐敗神A「前者だ前者。どうしてここで後者が出て来るんだよ。…まぁ、我らが手に入れようとしている『永久』と関係するから、後者も一応関わってるのかな?
     あいつらが…道化師が翻しやがったんだよ。『JOKER』の力だけっていうから手を貸してやったのに。急に『永久』の力も我が物にするって言い出したんだ。最初からこうするつもりだったんだよ!やはり魔の者は信用できない!!」

ヴァリス「(魔界の奴らが約束守るような奴には見えないけど…)」

リサ「全くだ。お前達の言う『あのお方』が何を考えているかは分からんが、お前達に地上に降りる様命令したと言う事は協力関係はまだ途切れていない可能性の方が高い。…単にお前達が見捨てられたんだけなんじゃないか?」

腐敗神B「…誰が『俺達が地上に降りる』だよ」

リサ「……は?」

ヴァリス「(え?)」



さっき彼らが言っていたことをそっくりそのまま返すリサでしたが、神々はまるで自分達は関係ないとでも言うようにリサに近付きます。そして……。





腐敗神A「我らの代わりに地上に堕ちたまえよ。『異星人』」

リサ「―――?!」



ドンっ。強く押された感触。リサの背後には落ちるべき地面が―――ありませんでした。大方神々が一時的に天界に穴を開けたのでしょう。
そのまま彼は―――空から―――落ちた。



ヴァリス「(父さん!!!)」

腐敗神B「せいぜい俺達の為に働いてくれよ、異星人」



彼を助ける為穴から飛び降りるヴァリス。
徐々に離れていく彼らの憎たらしい顔を、地面は再び覆いながら隠すのでした―――。



空中にいる感触しか感じない。息子の声も聞こえない。
いくら自分がただの人間ではないからといえ、こんな高所から落とされればただでは済まないだろう。
せめてヴァリスだけでも逃がさなければ。でも。どうやって?彼は自分を助ける為自分から落ちた。

―――ぐるぐると思考は回転していく。そのまま―――彼の意識は思考に押しつぶされた。







~???~





『へぇ。神は自分で降りずに異星人寄越しやがったか。―――やっぱり頭イカレてんなぁ』




羽と草原で一命を取り止めた黒と白を、『道化師』は口角を上げながら回収するのでした。
なんだかまずいことになってきましたよ?!『あのお方』って誰なんでしょうか…。
多分今は考えても仕方がないので、後々分かると信じましょう!