二次創作小説(新・総合)
- ABT④『その紅き目は虚空を仰ぐ』 ( No.68 )
- 日時: 2020/06/15 22:06
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: LdHPPNYW)
麗らかな陽気が降り注ぐ庭園での一コマ…だったんですが。
無情にも『それ』は平穏を潰しにかかるのです。
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~運営本部 庭園~
(×>ヮ<)<バシャバシャ!バシャバシャ!
MZD「あーあー遊ぶな遊ぶな。ごめんなこんなことまで頼んでー。これから夏の花が咲く季節だから、オレ等2人じゃ水やりが間に合わなくてさ。助かったぜ」
konakun.「運営本部の手伝いをしに来たんだから、これくらいお安い御用だよ。……チュウニズマーじゃないのはちょっと寂しいけど」
MZD「ん?何か言った?」
konakun.「なんでもない。…そういやはなこは?」
MZD「ヴィルと一緒に花用の肥料を取りに行ってるはずだけど…。遅いなー」
konakun.「はなこ、相当運が悪いからどこかで穴に嵌ってたりしてないといいけど」
(×>ヮ<)<イケニアタマカラツッコンデタリシナイトイイネ!
MZD「なんだそりゃ…」
運営本部の広い庭園では、現在MZDに頼まれてkonakun.達が植物に水やりをしていました。
2回目の際にシャンデラがふと立ち寄ったあの庭園です。どっかのガーデニング好きが『花を育てたい』と言った結果、ちゃんと世話をすることを条件にサクヤが庭を貸し出していたのです。
今は季節の変わり目。夏に咲く花に適した環境にする為に、時間が開いた今肥料ン管理をしてしまおうと考えていたそうです。
ヴィルヘルムとはなこがいませんが、どうやら倉庫に肥料を取りに行っているようですね。
そのまま花に水やりを続けていた一同でしたが…。ふと背後からしっとりした覚えのある気配が。振り向いてみると…。
MZD「おっかえり……その脇に抱えてる少女はどうして全身ずぶ濡れなのかな?」
ヴィル「倉庫で彼女にバケツに水やり用の水を汲む様頼んだのだが。目を離した隙に何故か水の入ったバケツに頭から突っ込んでいてな。そこにタイミング悪く罪木殿がぶつかって来て、倒れた先の蛇口を身体で捻ってしまい…ホースから水が勢いよく2人を直撃してな。双方全身ずぶ濡れになったところを助けて戻ってきたのだ」
(×>ヮ<)<イケジャナクテバケツダッタネ!
MZD「なんだその不運の連鎖は…。ヴィルもびしょ濡れじゃねーかよ。ほら、乾かすからマント貸して!はなこも椅子に座って服乾かして!」
はなこ「ご、ごめんなさい…」
konakun.「(水難に遭いやすいって忠告しておくの忘れてた…)」
2人が肥料を取って戻ってきた…のはいいのですが、はなこは全身ずぶ濡れでヴィルヘルムも彼女を救出する為に水を被ってしまい大部分が濡れてしまっていました。
幸い今日は天気が良かったので、MZDは慌てて彼のマントをひっぺがし物干し竿に。女の子であるはなこの服は流石に取れなかったので、日の当たる椅子に座るように指示しました。その後、彼は神パワーで2人分のタオルを瞬間移動させて手渡したのでした。
MZD「はい、タオル。風邪ひかれると困るから拭いて」
ヴィル「すまん」
はなこ「ありがとう…。水を汲んでる間によちよち歩いてるオレンジ色の動物が見えたから、つい目で追っていたらバランスを崩してバケツに頭から落っこちちゃって…」
konakun.「ワドルディかな?」
(×>ヮ<)<ヨソミシテタンナラシカタナイネ!
水も滴るいい男といい女…という訳ではないですが、すまなさそうにタオルで水滴を取る2人にMZDは仕方ないなぁと思いつつため息を1つついたのでした。
―――そんな平和な時間を過ごしていた、その時でした。
ヒュン!
MZD「―――?!」
ヴィル「konakun.殿、はなこ殿。下がってくれ」
konakun.「えっ…?」
(×>ヮ<)<ナニー?!ナニー?!
MZD「(槍の空を切る音…?!まさか…)」
唐突に一同の目の前を斬り裂いた、空。寸のところでヴィルヘルムがkonakun.とはなこを後ろに下げた為、誰も怪我はしていませんが…。
MZDが何事かと振り向いたと同時に、空を切った『正体』は空から舞い降りたのです。
ジルク『…………』
ヴィル「ジルクファイド…!」
MZD「待って。何か様子がおかしい」
現れたのはジルクファイドでした。しかし、前回満身創痍で本部に現れた時とは様子が違います。彼らを感情の無い目で見つめるその色は赤く、表情はありません。―――まるで2回目の時に対峙したような…。本当に『人形』になってしまったような。そんな底知れぬ恐怖を、彼は感じたのでした。
MZDは素早くサングラスを光の槍に変化させ、構えます。
MZD「…ヴィル、konakun.とはなこの護衛頼んでいい?」
ヴィル「またお前はそうやって自分の身を…!」
Σ(×>ヮ<)<ボクハー?!
MZD「お前もだよ!…表情からしか読み取れないけど、多分誰彼構わず容赦なく襲ってくるように見える。出来るだけ防ぐつもりではいるけど…。万一の時は頼むぜ」
ヴィル「断る。彼らに障壁を作ってから加勢する」
MZD「全く!オレもだけどお前も大概だよねヴィル!…わーった。ジルクの攻撃はオレが引き付けるからその間に安全な場所まで2人を非難させて。障壁はそれから、ね」
ヴィル「承知した。…くれぐれも無理するなよ」
MZD「どっちの台詞だか!2人のこと、よろしくな」
2人は目線で合図を送り合った後、それぞれの役目を果たす為持ち場を離れました。少年は自分に攻撃を引き付ける為槍を目の前の青い人形に。幽玄紳士は2人と1つの顔文字を安全な場所に避難させる為3人の元へ向かい、瞬間移動でその場を離れました。
~庭園 入口~
ヴィル「ここまでくれば安全だろう。あとは―――」
(×>ヮ<)<ナニスルノ?
ヴィル「しばらく庭園に障壁を貼る。こちら側には入ってこれなくなるが、ジルクファイドがお前達をターゲットにしない限りは障壁は破られることはない。その間に本部の建物に避難するなりなんなり行動してくれ」
はなこ「それは分かったけど、あなたはどうするの?盾くらいになら私だってなれるよ!」
ヴィル「その気持ちだけ受け取っておこう。…そうだな。盾になるというのならば、隣にいる作者殿の盾になると良い。―――今の彼奴は私達でも止められるかの瀬戸際にある。…身に危険が及ばぬよう、すぐに庭園から逃げるんだな」
konakun.「分かった。…君、悪役だけどいい人なんだね」
ヴィル「幽玄紳士の気まぐれだ。さぁ、話している暇があったらここから去るんだな」
konakun.とはなこ、(×>ヮ<)が庭園から去ったのを確認した後、彼は自らの魔力で障壁を練っていきます。前回ベリトが作ったあれです。曰く、魔法を使えるならば大抵の者は貼れるんだとか。
庭園一帯を覆う透明な膜を、彼は何度か触って確認します。しっかりと手が通り抜けないのを確かめた後、彼は光が散っている場所をちらりと見据え、その場から瞬間移動で消えたのでした。
~庭園 中庭~
ジルク『殲滅。対象は全て殲滅』
MZD「―――っらぁ!!!」
槍と槍がぶつかる鈍い音が庭園に響きます。彼らが解放する『圧』で、そよそよと咲き乱れていた花やつぼみが吹き飛ばされそうなほど揺れていました。
…前回ヴィルヘルムの話でもあった通り、現在MZDはサングラスに神の力の8割を封じています。彼もあの道化師と同じく、神の力が飛躍的に上昇し続けています。本来の力を出してしまえば―――光が世界を呑み込み、消えてしまうでしょう。
今回も少しだけ神の力を解放すればいい話なのですが、そうしてしまうとせっかく育てた花が全部飛び散ってしまう…。そんな思いがよぎっていた為、力を解放できずにいました。
MZD「(言葉も全く通じてないみたいだし…。本部に来たことがばれて初期化されたとか…?)」
ジルク『殲滅対象 運営本部』
MZD「前に本部襲ってきた時とは全然違う…。気を抜けば一瞬で劣勢になる。そろそろ来てくれる頃だとは思うけど…」
冷静に。冷静に。相手は容赦を知らないアンドロイドです。気を抜けば一瞬で形勢は劣勢へと傾いてしまいます。
しかし、一撃が重い為思うように槍を受け流すことが出来ません。光魔法で錯乱しようにも、詠唱する隙に押し返されてしまっては意味がありません。
―――どうしたものか。つばぜり合いを続けながらMZDは考えます。その時でした。
『V(ヴィヴァルディ)』
彼の真横から吹雪が。急に現れた冷気に人形は怯みました。その隙に彼は人形と距離を取り、背後を見ます。
そこには、『加勢する』と言ってのけたエプロン姿の幽玄紳士がいました。
ヴィル「アンドロイドは水と冷気に弱いはずだ。…しばらく動けなくなってくれていればいいが、そう甘い結論は出さぬ方が賢明だな」
MZD「サンキュ!…さっきの見立て通りだよ。前に本部襲ってきた時よりも一撃が重くなってる。マジで槍を防ぐので精一杯だった」
ヴィル「力を少々解放すればいいだろうに」
MZD「それじゃお前が手塩にかけて育てた花散らしちゃうじゃん!」
ヴィル「今はそんなことを考えている暇か!お前の力で少々花が散るか、彼奴に庭園を全て滅ぼされるか、どちらが被害が少ないか考えればすぐに分かるだろう!」
MZD「どっちも嫌なんだもん!…でも確かにそんなこと言ってる暇じゃないか。庭園を通して本部まで入れちゃ駄目だもんな」
ジルク『殲滅。殲滅』
MZD「来るよ!」
ヴィル「空中で引き付ける。お前は背後から槍か魔法で動きを止めてくれ」
MZD「りょーかい。無理しないでね?」
ヴィル「誰に物を言っている。…だが、肝に銘じておこう」
こんな時でも軽口を叩きあうとは。流石は現役の神と『JOKER』と呼ばれた男ですね。
少年の心配を軽く流したヴィルヘルムは空中に浮かび上がり、魔力で紫色の大鎌を創り出します。
考えることを知らないアンドロイドは、憶測通りに飛びあがった幽玄紳士を追いかけ、その胸を貫こうと槍を構え突進してきます。
ヴィル「我に立ち向かう気概は褒めてやろう、機械人形よ。―――だが、甘い!!」
ジルク『―――?!』
槍が彼の胸に届くかの瀬戸際でした。ヴィルヘルムの大鎌が宙に浮かび彼の槍を捉えます。
そのまま大鎌は茨のように形を変え、目の前の人形を拘束してしまいました。
ジルク『…………!!』
ヴィル「今だ翡翠!!!」
親友によって生まれた一瞬の隙を、少年は逃しませんでした。
槍先に光を込めて、宙にうかべます。そして―――
MZD『『Seventh Heaven』!!』
白い槍は、人形の、背中を――――――
『まだくたばるにははえェだろ?もうちょっと楽しもうぜ?』
確かに、機械人形の背中を貫いてはいました。ですが―――彼に苦痛の表情はありませんでした。
それどころか、あくどい笑顔を浮かべています。あ、これって前に見ましたよ?!また彼が乗っ取っているんですね?!
ヴィル「メフィスト。やはり貴様だったのか!」
メフィスト『良いダロ別に。今のこいつは俺様の『道具』。古代人類が創った優れたアンドロイドなんだからどんな使い方してもヨォ』
MZD「ジルクを盾に使うたぁひっでーことしやがるよなぁ。…初期化、したんだよな?こいつに『自我』が戻ったから」
メフィスト『流石は神カースト頂点に近い位置におわすお方だァ。そんなコト分かっちまうなんて!…初期化ついでに2人共潰そうと思ったんだが、やっぱ思う様には動かねぇよなぁ~。―――チッ、面倒くせぇ』
MZD「思う様には、動かない…」
ヴィル「(微かだが魂が青く色づいている…。ジルクファイドの『意志』が抵抗をしているのか…?)」
メフィスト『興覚めしちまったし今のところは退散してやるよ。―――ククッ、お楽しみはこれからだからなぁ!!テメーらに魔界より、地獄より深い『絶望』を見せてやるよ。『永久』になぁ!!』
…どうやらメフィストはジルクファイドのことを上手く操れていないようですね。ココロネが薄く蒼くなっているということは…。もしかしたら、彼の心がメフィストに負けじと抵抗を続けているのかもしれません。運営本部で過ごしたあの時間を、忘れられていないのかもしれません。
このまま戦っていても埒が明かないと判断したのか、MZDとヴィルヘルムに『絶望』を見せると言い残し、彼は一瞬でその場から消えてしまったのでした。
MZD「『絶望』なら人間だった時に嫌という程味わったよ!…なぁヴィル、メフィストが『思う様に動かない』って言ってたけど…。ジルク、残った心で抵抗してるのかな。初期化されてるのに…」
ヴィル「普段ならば考えられないが…。人工的な存在だったジャックに自我が生まれたこともある。もしかしたら…もしかするかもしれない」
MZD「もし抵抗してるなら、さ。…サニパの時みたいにオレ達みんなで助けてあげられるかもしれないよな」
ヴィル「…思いの力は時に呪いを打ち破ることがあるからな。―――とにかく、だ。彼奴が現れたことは報告せねばなるまい。…ほぼ確実に逃走中のゲームを邪魔してくるだろうからな」
MZD「うん。何してくるか分からないけど…ジルクは、助けなきゃ」
ジルクファイドがいなくなって静まり返った庭園で、2人はそんなことを言い合ったのだとか。
―――その後。帰り道にて。
MZD「…そういや!無意識にオレの本名喋っただろお前ー!あいつ以外誰もいなかったからいいけどさ!久々だからビックリしたじゃん!」
ヴィル「あ、いや、それは、その…すまない」
MZD「別にいいけどね!本名知られたって別に困る訳じゃないし。―――ま、だけど次言ったらハテナが仮面壊しても直してやーんね」
ヴィル「なっ…!それは死活問題だ、やめてくれ!」
MZD「…ふふっ!どーしよっかなー?さっきのカウントしてもいいんだけどなー?」
ヴィル「貴様!笑うな!撤回しろ!世界が壊れるぞ?!」
MZD「……冗談だよ!お前の仮面の重要さはオレもよーく知ってます!」
ヴィル「肝が冷えるからその冗談はやめてくれ…!」
珍しくMZDが冗談をかましています。兄弟だなぁ。
…それはともかく、ジルクファイドを救う手立てがあるのならば助けたいですよね。何か…何かないんでしょうか。次回以降、分かるといいんですが…。