二次創作小説(新・総合)
- ABT⑤『現は夢、夢は現』 ( No.81 )
- 日時: 2020/06/20 22:03
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: LdHPPNYW)
神々に地上に落とされたリサ、そして彼を追って自分から落ちたヴァリス。
彼らを拾った正体が明かされます。そして、『彼女』の身にも何かが…?
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~魔界 道化師の拠点~
モノクマ「んもう!古代兵器の調整は慎重にやらないと駄目だって言ってるでしょー?!それなのにこんなにボロボロにして!オマエくらいの支配能力があればあの槍を避けることだって簡単だったんじゃないの!ボクは激おこぷんぷん丸なんだよ!」
メフィスト「あーあー、お小言は聞き飽きましたァ。でも良いダロ別にさぁ。完全にぶっ壊れたワケじゃねーんだし」
タナトス「……メフィスト様。地上に落ちた2人の収容が完了しました」
メフィスト「オーケーオーケー。サンキュー。…っても、まさかあの絶望と破壊を司る神が命じたヤツに巻き込まれるたぁナァ。クク、神もそこまでってことかよ」
こちらは魔界。人間達が暮らす地上の地下深くに存在する、人ならざる者が住まう世界です。
ちなみに『天界』と『魔界』は異世界を隔てていることなく存在している世界。その為、地上が『コネクトワールド』となり一体化しても、天と地下が特段何か変化するわけではありません。
そんな地下の奥深く。『道化師』と呼ばれる魔族達は、何やら話をしているようでした。…ん?何故かモノクマが一緒にいるようですね。もう少し話を伺ってみましょうか。
モノクマ「それにしても古代が遺した遺産を勢いよく初期化しちゃうなんてさ、オマエも大胆なこと考えるよね~。ま、ボクは古代の神秘に触れられて凄く嬉しいからいいけどね!別に。真宮寺クン辺りが調べたがるだろうね~」
メフィスト「俺様はそんなしがらみになんか囚われねぇっつーの。『力を手に入れられさえすれば』手段はなんだっていい。地上が、天が、どうなったって俺には関係ねェ。…だが、まだ抵抗してやがる。もう少し調整が必要か」
タナトス「抵抗している?…まさか、アンドロイド風情に『心』が宿ったとでも?」
モノクマ「さぁてねぇ?物事は『予定調和』に行かないから面白いんじゃないか。それじゃボクはそこのスクラップになった古代兵器の調整に入るから、また後でね~。こいつを使う時になったら呼んでよ」
どうやら天界から落とされたリサとヴァリスは彼らに捕まってしまった様子。そして、モノクマがツンツンと突いたのは腹に大きくヒビが入ったジルクファイドでした。あぁ、光魔法への耐性は高いですが流石にあの攻撃はダメージが大きかったか…。
彼は『古代の遺産になんてことを!』と最初は憤慨していましたが、メフィストが態度を変えない為呆れたのか感心したんだか分からないような表情を浮かべながら、ジルクファイドの調整をしにその場から彼と共に去ったのでした。
それと同時に、双子の道化師…ベリトとべリアがその場に現れました。
ベリト「メフィストさま。…今回の作戦はどうなさるおつもりで?また逃走中のエリアで彼らの妨害をしますか?」
メフィスト「先に古代兵器を本部に襲撃させたが、見事に中には入れなかったぜ。恐らく厳重警戒を敷いているだろうし、攻め込むとしたらそっちだろうな。…それによぉ、先の逃走中でとんだ邪魔立て喰らって割と今イライラしてんだよなぁ?」
べリア「…………」
ベリト「…スミマセン。おれが油断したばかり二」
メフィスト「まぁ過ぎたことだから良い。あの熊公の調整が終わり次第、べリア。あの天使共と古代兵器を連れて『レインボー・ドリームの天空の塔を破壊しろ』。あの塔には天気を司る宝石があるからなぁ?あれを破壊するなりなんなりすれば場は大混乱すんじゃねェか?」
ベリト「…確かにソウデスが、そんな大事なモノを収めている場所なら…見張り等警戒もしているのデハないかと思うのデスガ」
メフィスト「知るかよ。俺ら道化師が秩序を守るためのルールを順守すると思うか?寧ろ壊すダロ。…それに、天気が混乱すれば本部はその対応に追われるだろうなぁ。その隙に本部にも入りやすくなんじゃねェか?」
目の前の上司と同僚の話に、彼女は…べリアは最近ついていけなくなっていました。
2回目に渋谷を襲った際にカラ松に言われた言葉。そして、3回目でMZDとソティスを捕まえた時に自分が無意識に彼らを逃がそうとしていたこと…。彼女の中で、彼ら2人が―――いや、『道化師』という存在が怖く見えていました。
…自分のやっていることは本当に正しいのだろうか。自分は間違っているのではないだろうか。べリアは最近そんな考えが頭を支配していました。
べリア「(でも…アタシは魔族で、道化師で、メフィストさまに助けられてここに…)」
そんな思いも『本当』なのか。本当は違う存在なのではないか。つい顔の前に広げた白い両手は震えていました。彼らが本能的に『怖い』と。頭で理解しなくとも、身体がそう訴えていました。
ベリト「…どうしたのデスべリア。手を顔の前なんかに出して」
メフィスト「つーかよ、最近のオメーなんか様子がおかしくねぇか?話しかけてもボーっとしてることが増えてよ。…クク、アイツらに感化されでもしたかァ?」
べリア「ち、違うワ!メフィストさまの忠実な僕であるこのアタシが、アイツらなんかに感化されるわけないデショ!期待外れな事言わないでヨネ!」
メフィスト「それならべっつにいいけどよぉ。…せいぜい俺様の為に働くこったな」
べリア「…わかり、マシタ」
メフィストはべリアに天空の塔を襲撃することを命じ、ベリトと共にその場から消え去りました。…震えていたことも見透かされ、咄嗟に誤魔化しましたが…恐らく勘付かれているでしょう。誰を信用すればいいのか。このまま天空の塔を破壊してしまっていいのだろうか。
―――しかし、彼女は魔族。それだけは揺るぎない事実。自分の目的は地上の人間と天界の神を滅ぼすこと。…そう、だったのではないのか?
思考の波に塗りつぶされそうになりながらも彼女は立ち上がり、出撃の準備をする為その場を去ろうとしました。
その時、でした。
『―――ねぇ。あんた……本当に自分が魔族だって思ってるの?』
べリア「―――?!」
不意に頭の中に響く声。目の前を見回してみても誰もいません。
後ろを振り向こうとすると、突如響いた声が制止の声をかけます。声は、『そのまま聞いて』と彼女に続けてこういいました。
『もしあんたが『記憶を書き換えられている』としたら、どうするの?あんた、本当に『べリア』なの?』
べリア「アタシは魔族。アタシは『べリア』。それは事実ヨ!それ以上に何があるっていうノ?!」
『―――本当に?事実から、あいつらに感じる『恐怖』から逃げてるだけじゃないの?』
べリア「違う!!!黙ってて!!!アンタにアタシの何が―――」
煩い。煩い。煩い。まるで本心を見透かしてくるように冷静に詰め寄る声に思わず叫ぶべリア。
何度も何度も自分に言い聞かせるように『自分はべリアだ』と繰り返す彼女。…しかし、突如聞こえてきた声は止まりません。冷静を欠いた彼女に、同じトーンでこう言い放ったのです。
『分かるわよ。だって、あたしはあんたなんだから』
べリア「―――アタシは、アンタ…?」
思わず振り向く彼女。しかし、そこには誰もいませんでした。
しかし…最後に声が言い放った言葉。それだけが、彼女の心に突き刺さっていたのでした。
~運営本部 控室~
クルーク「神様!聞きたい事があるんですが、今お時間大丈夫ですか?」
MZD「そんな丁寧にしなくてもいいよ?なーに?闇魔法のことじゃなければ何でも答えてあげるぜ!」
クルーク「あっ、今日は魔法についてのお話じゃないんです。実は…書庫で、気になる本を見つけて」
所変わって運営本部。ジルクファイド襲撃の件をサクヤに話した結果、逃走エリアを中心に警戒を強めるという結果になりました。まあ2回目から1回は必ず襲撃されてますからね。というか襲撃する気満々ですしね。
そんな結論に終わりひと段落していた少年の元に、クルークが1冊の本を持って話しかけてきました。
MZD「気になる本?…確かに3回目の逃走中が終わってから蔵書が増えたような気はするんだけど…。そんなに気になったの?」
クルーク「うん。前に神様が人間だった頃の話をしてくれたことがあったじゃないか。その時の街の名前がこの本に載ってて…。本の中身は、様々な世界で起こった『奇怪な事件』を取り扱っているみたいなんだけど」
MZD「成程?もしかしたら『JOKER』の話も載ってるかもしれないのか」
クルーク「それも…なんだけど、ボクが気になったのはもう1つの方さ。…これを見てくれないかな?」
そう言ってクルークが取り出した本の表紙には、確かに奇怪な事件を取り扱った記録簿であることが書かれていました。
そのまま彼は本を開き、とある1ページをMZDに見せてきました。
MZD「どれどれ。…『JOKER模倣殺人事件』?」
クルーク「『JOKER』が子供達の願いを叶える代わりに行方不明になる、って怪奇現象的な事件もここに載ってたんだけどさ。この事件はその後に『JOKER』の手口を崇拝するようになった人間の男の人が、彼を模倣して起こした連続殺人事件なんだって。…沢山の子供達が彼によって様々な手口で殺害されたみたいだよ」
MZD「うっわ、えっげつないな。今のアイツがこれ知ったら絶対しかめっ面するって。『犯人の男は逮捕されたが反省する気は無く、『JOKER』を信仰しない世界が悪いと罵ったまま死刑判決を受けた。』か。これは犠牲者の子供たちが可哀想すぎて見てられないな…」
クルーク「神様、見てほしいのはそっちじゃなくて…。犠牲になった子供達のリスト。その中に…あいつに、『べリア』に顔が瓜二つな女の子の写真があったんだ」
MZD「どれ?」
クルーク「これ。…髪の色も肌の色も違うけど、顔つきとか瓜二つだよ!」
クルークはとある写真を指差します。そこには、黒髪の長い髪を2つのおさげにまとめた、清楚な高校生らしい女性が映っていました。彼女もこの事件の被害者の1人のようです。
…その写真と彼の説明を受けたMZDは、確かに『似ている』と結論付けます。そして…彼にこう自分の推論を告げてみました。
MZD「…もしかしたら、ルシェやニフルと同じようにべリアも『純なる魔族の手にかかって魔族に堕とされた』のかな?死んだ後に魂が抜け落ちた後なら、『記憶を書き換える』ことなんて容易いことだからな」
クルーク「もしそれが本当だったとしたら…。本当の彼女は今どこにいるのかな?」
MZD「身体の意識中に眠ってるかもしれないし、もしかしたら…『性格まで改ざんされている』可能性もあるかもな」
クルーク「性格の改ざん?!ま、まぁボクも似たようなものだし何とも言えないけど…。その元の性格を『思い出す』ことなんて、あるのかな?」
MZD「普通はあり得ないんだけど、時たま強い魔力の共鳴とか、何かしらのきっかけで打ち破れる場合があるんだ。ヴィルがゼウスの『記憶を曇らせる魔法』を打ち破ったみたいにな。…可能性は、あるかもしれないな」
クルーク「じゃあ、もしべリアの性格を元に戻せたら…助けられないかな!だって!ソティスも言ってたよ!『わしらに話しかけてきた時のべリアはどこか様子がおかしかった』って!」
MZD「逸るな逸るな。確かにオレ達が捕まってた時のアイツの言動…何かおかしかった。まるで『自分の正体』を気にしているみたいだったしな…。もし今回も襲撃してくるんだったら、とっ捕まえた時に話でも聞いてみようぜ」
クルーク「そうだね…」
クルークの見せてくれた写真の名前を指差しながら、彼はこう思ったのでした。
MZD「(『岸辺 莉愛』ねぇ)」
べリアの背後からした声の正体―――。それが、クルークの見つけた本にあった『岸辺 莉愛』という少女なのでしょうか。
道化師側にもどうやら一筋縄ではいかない事情があるみたいで…。これからどうなるんでしょうね?