二次創作小説(新・総合)

ABT②『赤色が抜けた景色』 ( No.33 )
日時: 2020/08/11 22:08
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: dSN9v.nR)

サクヤの指示で学都プレロマへ突入した運営本部と協力者の面々。
そんな中、兄を追う五つ子は何を思うのか…。

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~学都プレロマ~



一松「どこもかしこも廃墟だらけなんだけど…。ヒヒッ、おれ達最終的にこんなところで野垂れ死ぬ運命なのかもしれないかもね」

チョロ松「オイコラ一松!!不穏な事言うな!!…全く。一松もトド松も危険だから本部で待機しててって言ったよね僕?!なんでついてくるの?!」

トド松「当たり前じゃん!おそ松兄さんがここにいるってんなら猶更だよ!僕達は腐っても『松野家』なんだからさ!」

十四松「一松にーさんもトド松も戦えないけど、ぼくが守ります!ふんぬーー!!」

カラ松「だが、用心しないとな。道化師の監視が多すぎて中々思うように動けないな!」



 学都プレロマに突入した運営本部の面々は、各々数人でチームを組んで各個進軍を始めていました。今回2つ目的があるので、まとまって動いて道化師に強烈な一撃を喰らわされてしまっては意味がありません。そこで、少人数で多数のチームを作り、最終地点であるメフィストがいるであろう場所で1つにまとまろうと作戦を立てたのです。
 そのうちの1チームである松野家の五つ子は、おそ松を探しながらも道化師に愚弄されていました。



チョロ松「どこもかしこも道化師だらけだよ…。エクラさんってそんなに凄い神様なの?」

カラ松「そこに関しては俺も知らない。神様にカーストがあることは最初に聞いたがそれっきりだもんな…。あの中だとアシッドさんが一番強い神様なのは分かるんだが」

一松「え、あの人神様だったの?」

十四松「そーだよー!なんかね、地上のいろんなものに興味を持って会社はじめたんだって!すっげーよねー!」

トド松「いやそれ『凄い』の一言で済ませて大丈夫な事案なの?!興味本位で会社立ち上げるなんて普通あり得ないでしょ?!…いや、うちのオーナーも似たようなもんだから驚かないけどさ」

カラ松「人間だったらそうかもしれないが彼らは『神』なんだろう?ならあり得る話じゃないか!」

チョロ松「なに当然の如く喋ってんだよお前。あ、そっか。厨二病がまた戻って来てるんだな!」

カラ松「なんですぐお前はそうやってオレがかっこいいと思っているところを全否定するんだチョロ松~~~~」(号泣)

一松「(カッコいいとは思ってるんだ)」



 チョロ松とトド松のツッコミを受けながらも五つ子は目的を果たす為前に進みます。入った当初は道化師の監視が邪魔をしていたものの、少しずつ歩みを進めていくと…。逃走者が尽力してくれているのか、ちょっとずつではありますが道化師の数が減っているように感じました。
 ―――ある程度歩みを進めると、ふと十四松がとある空中の一点を指差します。



十四松「にーさん!見てあれ!おそ松にーさん!!」

カラ松「本当だ。メフィストもいるな…。何をやっているんだ?」

チョロ松「僕達がプレロマに入ったことは既に知っているはずだし、僕達の様子見て嘲笑ってでもいるんじゃないの?アイツそういう性格みたいだし」

トド松「うっわ、性格悪いな~!優しくて可愛い僕とは大違いだよね!」

チョロ松「どの口が言うんだよ。お前も『一部は』メフィストと同類だよ!」

トド松「えーっ?!僕そこまで残忍じゃないもん!チョロ松兄さんひっどーい!!」

一松「ここで喧嘩は控えた方がいいじゃないの…?あの2人、セットで行動してるみたいだね」

カラ松「そりゃおそ松はメフィストに悪魔にされたからなぁ。『心まで凍り付いてる』なら、あいつに付き従ってても何もおかしくはないだろう。
    …エクラさんはいないんだな」

トド松「そんな~。『邪神』だっけ?そんなヤバい奴にする為に動かすわけないって~。どこかに監禁でもしてるんでしょ」

カラ松「と、なると…。逃げ出さないように監視がいるはずだよな。…『彼女』は。べリアが監視を担当しているんだろうか」

一松「ん?…カラ松、道化師にでも何か心当たりあんの?」



 五つ子が見つけたのは、空中に浮かぶメフィストとそれに付き従うおそ松の背中でした。運営本部が動いている情報は既に届いているはず。ならば、彼らは何をしているのでしょうか。性格上彼らが進軍しているのを見て嘲笑っているのではないか、とチョロ松が推論を立てます。
 チョロ松とトド松の小競り合いで賑やかな五つ子が進む中、ふとカラ松がぽつりとべリアについて零します。その言葉に違和感を覚えた一松がそのことについて問うと、カラ松は少し考えた後こう返しました。



カラ松「2回目にあの帝竜を倒した後の様子が引っかかってな。ずっと気にかかっていたんだ」

トド松「何それ、もしかしてカラ松兄さん道化師に恋したの~?イッタイなぁ!!」

カラ松「そうじゃない!…彼女、もしかしたらあの後ずっと悩んでいるんじゃないかと思ってな。3回目に神様とソティスを捕まえた時も、4回目の時に塔を崩した時も。全員が無事に助かった、なんてラッキー程度で済むと思うか?道化師側で誰かが何かをけしかけたとしか思えないんだ」

十四松「カラ松にーさんはそれが『べリア』って道化師なんじゃないかとおもってるの?」

一松「お前騙そうとしてるだけかもよ。ヒヒッ、実際騙されやすいじゃん」

カラ松「ぐっ…そこまで言われると反論は出来ない…。だが、もし悩んでいるなら助けてあげたいんだ!もし騙されているとしてもだ!見捨てるなんて…今のオレにはできないよ」



 カラ松が口にしたのはべリアのことでした。2回目に彼女と関わって以降、心のどこかで彼女のことを気にしていました。『恋』とかそういう意味ではありません。何かに悩んでいるような、何かに苦しんでいるような。そんな気さえ思い起こさせるようでした。
 いつにもまして真面目にそんなことを語るカラ松に一つ大きなため息をついた彼は、じーっと彼を見つめてこう切り返しました。



チョロ松「あのさ。前も言ったと思うけど、『お前のその優しさはいずれ自分の身を滅ぼす』こと自覚してよ?そのせいであんな事変なんて起こっちゃったんだよ?もしお前がべリアを助けたとして、それが演技だったらどうするの?不意を突かれてお前まで悪魔にされたら俺、今度こそ多分耐えられないよ…」

カラ松「…………」

十四松「でも、にーさんのいうこと凄く分かるっす。ぼくもあの人を助けられるなら…何かに悩んで苦しんでいるのなら、その苦しみから助けてあげたい。チョロ松にーさんもそうは言うけど、そう思ってるんでしょ?」

チョロ松「…………。カラ松は嘘つけない人間なのは僕が一番よく知ってるからね。もし彼女を助けることが出来るなら…僕も助けたい」

トド松「3人共お人好しなんだからー!でも、道化師とはいえ女の子の悲しい顔なんて見たくないしね!僕も出来るところまでなら手伝うよ!あ、流石に戦闘とかはやだよ?僕戦えないし~」

一松「みんなが行くなら…おれも…」

カラ松「みんな…ありがとう。よーし。まずはおそ松の目を覚まさせて、べリアの苦しみも解き放つぞ!!」



 各々理由は言いつつも、カラ松の意見に賛同してくれました。この男、カッコつけずに自分の気持ちを素直に言うようになってから兄弟からのあたりが嘘のように消えました。これも、あの時松野家が異世界のゲートを壊さなければ起こり得なかった現実なのかもしれませんね。
 弟達の気持ちを受け取ったカラ松は、改めて『おそ松を助ける。そして、べリアも助けたい』と気持ちを新たに前へ進むのでした。





 ―――ずんずんと歩みを進め、彼らは中央広場までやってきました……が。目線の先に広がる『暗闇』に表情を失います。



チョロ松「なんだよアレ。前が見えないじゃん…!」

十四松「ぼく達に見せたくないものでもあるのかな?うちわみたいに仰いだら吹き飛んだりする?」

一松「吹き飛んだりするようなものじゃないと思う…。十四松、多分触っちゃ駄目なヤツ」

十四松「え?でもでもー、やわらかそうっすよ?」

トド松「なら手を触れる前に、適当に何か物を投げ入れればいいんじゃない?誰かハンカチとか持ってる?」

チョロ松「頑なにお前のは差し出さないんだな」

トド松「当たり前じゃん!僕が使ってるのは僕のお気に入りなの!誰が差し出すもんですか!」

カラ松「…尻ポケットにティッシュがあった。これを入れてみよう」

一松「何もないといいけどね…」



 目の前の暗闇を祓ってみようかと提案する十四松でしたが、一松に止められます。普段から闇っぽく振る舞っているので、何となく目の前の暗闇が何なのかを察しました。
 それでも触ろうとする十四松に、トド松は『物を投げ入れてみればいい』と提案。カラ松が尻ポケットからティッシュを取り出し、それを投げ入れてみようと提案します。
 彼が弟達に少し離れていてほしいと頼み、四つ子が動いたのを確認した後。彼はティッシュを暗闇の中に投げ入れてみました。すると……。






ジュッ……。





 カラ松が投げ入れたティッシュは、暗闇に触れた場所から焼け焦げて、灰になって消えてしまいました。もしこれが人間の手や足、身体であったならば…。想像するだに恐ろしいですね。
 十四松も事の重大さをやっと理解したのか、伸ばしていた手を引っ込めました。



トド松「や、焼けた?!」

一松「手入れたらヤバい奴じゃん…」

十四松「ひょえー…。真っ先に手を突っ込んでたらヤケドじゃすまなかったっすね!これは触らない方がいいね!」

チョロ松「十四松が理解してくれてよかった…。でも、人体に影響がありそうな暗闇で場所を覆うなんて…。僕達に邪魔されたくないことを向こうでしているのは確実っぽいね」

カラ松「あぁ。一応サクヤさんにも連絡を入れておこう。不用意に触る奴は本部にはいないと思うが…」

十四松「ヴァリスさんとかさわりそうじゃない?」

チョロ松「リサさんが止めてくれるから大丈夫だと思うよ?」




 人体に影響がある暗闇といい、道化師の目的が見えてきません。本気なのだけは伝わってきますが。もしエクラが邪神化してしまった影響が世界に及ぶならば…。絶対に止めなくてはならない事象です。
 道化師、そして彼らの背後にいる『神』の尻尾を掴めればいいのですが。そう簡単にはいかないと思った方が良さそうですね。