二次創作小説(新・総合)
- ABT⑤『スーパースターは彗星の如く』 ( No.68 )
- 日時: 2020/09/01 22:00
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: xrNhe4A.)
カノンのお陰で障壁を割ることが出来、また一歩進むことが出来た運営本部。
ノルンはそんな彼の姿を見て、『とある出来事』を話す決意をします。
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~メインサーバ~
サクヤ「…ふぅ。何とか障壁を解除できた、という感じですね。まさか魔力の高さが仇になってしまうとは。カロンさんが現場に向かってくださって良かったですよ」
アシッド「解除出来る者がいなければ話が進まないからな。最悪私が時を止めてその間に障壁を破壊することも出来たが…。逃走者にまで被害が及んでしまえば意味がないからな」
メインサーバでプレロマの様子を見ていたサクヤ達。北地区の障壁が解除され、エリアの全貌が明らかにされました。奥まったところにエクラと、それを監視するかのように立っているべリアがいます。
これも、本部に集まってくれた面子がいなければ成し遂げられなかったこと。仲間のありがたみを改めて感じていた彼女の元に、とてとてとノルンがやってきました。
ノルン「あの…すいません。聞いてもらいたいお話があるんですけど…」
サクヤ「はい、いかがなされましたか?ここでは話せない内容でしょうか」
ノルン「沢山の人がいる場所ではあまり言いたくないんですけど…。サクヤさんとアシッドさんなら口も固そうだし、大丈夫かなぁって」
アシッド「私の口が固い、ね。内容にもよるが善処はしよう」
サクヤ「善処しなくても喋らない方がいいこともあります。…分かりました。幸い全員本部の見回りに出ていますので、今ならここでお話を受けますよ。どうしたのですか?」
ノルン「ありがとうございます!実は…」
ノルンはちらちらとメインサーバのテーブルの方向を向いて、他に誰かがいないかを確認しているようです。それほど今から話す事柄はなるだけ他言無用にしてほしい様子。
アシッドが試すような言動をしますがサクヤが一蹴。それに安心したノルンは、小さな声でサクヤに『クッパ城で起きた出来事』を話し始めました。
ノルン「あの…ミッション③でカロンくんが障壁を破壊したのは覚えていますよね?」
サクヤ「はい。実際見守っておりましたからね。それがどうかしたのですか?」
ノルン「実は…ボク、クッパ城にいた時に『同じ能力を持っていた』ノコノコと同期だったんです」
アシッド「同期?しかも、カロンではなくノコノコ?」
ノルン「はい。まだボク達の世界がここに混ぜられる前の話です。ボクの同期でクッパ軍団に入ったノコノコがいたんです。…彼もカロンくんと同じように『四大元素』の力を引き出して使うことが出来る不思議な能力を持っていました」
アシッド「話し方的に後天的についたものではなさそうだが…。その同期のノコノコは今何をしているんだ?一緒に混ぜられたのならばクッパ城で仕事をしているのか?」
アシッドが自分の推論を繰り広げ、素直に疑問に思ったことを投げつけてみます。すると…彼は目を潜め、悲しそうな声でこう呟きました。
ノルン「彼は…『放火事件で死んだ』んです」
サクヤ「死んだ…?!」
アクラル『おい。物騒な話してんじゃねーぞ。ボソボソ話してて気持ち悪いからつい声かけちまったじゃねーか』
アシッド「君はもう少し『空気を読むこと』を学んだ方がいいぞ、アクラル。それにしても…放火事件で死んだ、とな」
アクラル『うるせー!気になったもんは気になったんだから仕方がねーじゃねーか!…お前、クッパ城で何があったんだよ?』
ノルン「…………」
サクヤ「言いたくなければそのまま口を噤んでいても構いません。しかし…話すことで気持ちが楽になるのであれば…我々に話してみる選択肢もあると私は思います」
アクラルの言葉で更に悲しい表情を深めてしまったノルン。サクヤはそんな彼の頭を優しく撫でて、自分の考えを伝えました。幸いバレてしまったのはアクラルだけのようなので、ノルンは意を決して『クッパ城での放火事件』について話すことにしました。
ノルン「ボクは、元々クッパ城では落ちこぼれの部類で…。皆さんもお分かりの通り、戦闘が苦手で敵に甲羅を当てることもままなりません。それに怖がりですし…。仲間からも煙たがられることが多くて。でも、同期のノコノコだけはボクを信じて『一緒に頑張ろう』って言ってくれたんです。
そのお陰もあって、クッパ様とクッパJr様の使用する機械の『専属エンジニア』になることが出来たんです。機械を直したり、モノづくりしたりはボク昔から得意だったので…」
アクラル『へー。お前そんな特技があったのか!手先が器用なんだな!』
ノルン「クッパ様はボクの腕を見込んで『息子にプレゼントするおもちゃのメンテナンスをしてほしい』と依頼をしてくださいました。ただ、そのおもちゃが大きくて重いので、移動が出来ない代物みたいで…。クッパ軍団はそのほとんどの隊員が素直にクッパ様を慕っていたんですが…。軍隊である以上、彼に反発心を抱くものも少なからずいたそうです。
…自分のせいで部下に怪我をしてもらっては困る。クッパ様はそうお考えだったんでしょう。ボクの護衛に同期のノコノコをつけてもらって、ボクにおもちゃのメンテナンスを依頼してきました」
アシッド「組織にいる以上、上の者の信念に従えない者もいるのは分かる。我が会社もそうだったからね」
サクヤ「もしかしたら本部でもそんな思いを抱いている輩がいるやもしれませんね…」
アシッド「―――まぁ、双方相手が神だと知っているから手出しはしてこないと思うが。ノルン、話を続けてくれないか」
ノルン「はい。ボク達がおもちゃのある部屋に入ってメンテナンスを始めて少し経った頃、ボク達以外に部屋に入ってくる人がいました。誰かは…今でもはっきりと覚えていません。でも、黒い布で顔を隠していたから…クッパ様に邪な考えを抱いていたのはボクでも分かります。
同期が扉を開けた瞬間―――部屋に、松明が1本投げ込まれました」
アクラル『油断も隙もありゃしねえってか。本当ならクッパの野郎を始末したかったんだろうなぁ…』
ノルン「幸い部屋は防火壁でした。クッパ城全体が燃えないと分かったのは安心できたのですが…最初に燃えたものが扉の近くに落ちてしまったせいで、ボク達2匹は部屋に取り残されてしまったんです。どうにかして部屋を出なければどっちも助からない、と脱出する方法を模索していたんですが…。ボクにはその手立てが思い付きませんでした。
その途中。同期が唯一燃えていない小さな箱を見つけました。中は空っぽで、ノコノコ1匹なら中に入って助かるかもしれない大きさでした。そして…同期は言ったんです。『お前が箱に入れ』って。
そんなの嫌でした。入る選択をするってことは…同期を見殺しにするも同然の選択ですから。どうにかして2人で出ようと頑張って説得したんですけど…。その間にも炎は部屋全体を包んでいって。ボク達2人は助からないところまで来ていました」
サクヤ「…………」
ノルン「ボクが炎の中で覚えているのはそこまでです。目を覚ましたら…部屋は真っ黒けで、沢山焦げた物が落ちていて。入れと言われた箱からクッパ様に助け出されている状態でした。……ボクは、悟りました。同期に助けられたんだって」
アシッド「…………」
ノルン「クッパ様にあの後何があったのかを聞いてもはぐらかして答えてくれませんでした。余程ボクに教えたくないみたいで…。
その数日後。クッパ軍団に新しく配属されるって紹介されたのが…あの、現場にいるカロンくんだったんです」
サクヤ「(成程…。まだもやっとしていますが、話は繋がりそうだ)」
ノルンがぽつり、ぽつりと話し始めたのは自らが経験した悲しい記憶。彼はそれを通じて、自分を信じてくれた同期を亡くしていました。出来事から、彼は助からなかったのだろうと察していました。
思い出したくもない辛い記憶。途中からノルンの目からは大粒の涙が流れていました。辛かったろうに。よく話してくれました、とサクヤは彼を抱き留めながら優しくなで続けていました。
アクラル『オメーにも辛いことがあったんだな…』
ノルン「すみません…皆さんに辛い思いをしてほしくて話したんじゃないんです…」
サクヤ「分かっています。…申し訳ありませんが、もう1つだけ。お答えしてはいただけませんか?」
ノルン「なんでしょうか?」
そのもやもやとした推論をハッキリとさせる為、サクヤは意を決してノルンに質問を投げました。
サクヤ「―――同期のお友達のお名前は、何というのですか?」
ノルン「……『カノン』。とっても勇敢で、頼りになるノコノコでした」
サクヤ「(カロンの種族については何も分かりませんが…。彼の言う『同期』とカノンさんは…『同一人物』で間違いなさそうですね)
ありがとうございます。もう大丈夫ですよ」
―――ノルンの同期のノコノコの名前が『カノン』。その名前にサクヤは聞き覚えがありました。OPゲーム前にカロンが名乗った本名。同じ名前。偶然にしても出来過ぎている…。やはり、カノンはノルンに後ろめたい感情があるのだと彼女は結論付けました。
そのまま彼から手を離したと同時に、どたどたとメインサーバに入ってくる人影が見えました。
西谷「話し込んでる途中ですまねえ!サクヤさん、あんたにお客っす!」
サクヤ「緊急でしょうか?入れてください」
やってきたのは西谷。緊急の用事らしく、すぐに客人を部屋に通す様頼みました。入れるように促すと、西谷に押されるようにその『客人』はメインサーバへと足を踏み入れました。
ルイージ「1回目以来だね!お邪魔します!ルイージです」
ヨッシー「ヨッシー!ヨッシー!(こんにちは!ボクヨッシー!)」
アシッド「確か…ルイージにヨッシーだったか。君の兄上はどうしたんだい?」
ルイージ「兄さんはごくそつくん達と『カオス世界一周ツアー』とか言って出掛けてるよ…。っと、そんな雑談をしに来たんじゃないんだ。兄さんから本部のみんなに渡してほしいものがある、って」
やってきたのはルイージとヨッシー。ルイージは1回目以来、ヨッシーはここに来るのは初めてですね。
また愉快で迷惑なことをやらかしている双子の兄はほっといて、その兄から頼まれたものを届けにやって来たようです。
サクヤ「渡してほしいものがある、ですか?」
ルイージ「うん。これなんだけど…。実はボクも中身は分からなくて」
ノルン「白い箱?封もマリオがやったの?」
ヨッシー「ヨッシーヨッシー!(美味しそうな匂いじゃないから食べ物じゃないよ!)」
アシッド「彼のことだから爆発物を仕込んでいる可能性はなかろうな?」
ルイージ「あ、あり得る…けど。ボクにこの箱を渡してきた時の兄さん、珍しく真面目な顔してたんだよね。だから爆弾とかイタズラの類じゃないと思うよ」
サクヤ「開けて貰えますか?」
ルイージが取り出したのは中くらいの大きさの白い箱。用意は全てマリオが行ったようで、ルイージもヨッシーも中身を知りません。好奇心旺盛な配管工のことです、ビリビリグッズなどを仕掛けていても何もおかしくはありません…が、この箱を渡してきた表情などからそれは無いとルイージが断言。
彼に箱を開けることを指示します。それでも恐怖が勝ったのか恐る恐る箱を開けるルイージ。その中には……。
サクヤ「手袋?マリオさんのしているものと同じでしょうか」
ルイージ「メッセージカードも入ってるみたい。読むね。
『なんだか大変なことになっているみたいだね!ボクの手袋が役に立つだろうから貸してあげる!予備が3つしかなかったけど勘弁してね! マリオ』
……マリオ兄さんの手袋?」
ヨッシー「ヨッシー?(意図が読めないよ~!)」
アシッド「……ふむ。あの配管工も粋なことをしてくれるじゃないか」
サクヤ「はい。今後の動向を確定的なものに出来そうです」
西谷「え?どういうことだよ?」
中に入っていたのは白いマリオの手袋。手袋に何の意味があるのだろうと首を傾げる一同でしたが、サクヤとアシッドは『成程』とマリオの行動に称賛の意を表していました。
サクヤ「兄貴。お願いしてもよろしいでしょうか」
アクラル『頼まれた。どした?ミッション関連?』
サクヤ「最後のミッションに役立ちそうなアイテムをマリオさんが貸し出してくれました。他のアイテムも含めて兄貴に転送しますので、エリアに配置してほしいのです」
アシッド「…流石は『スーパースター』と呼ばれる男。魔を退けるこの手袋なら、道化の尻尾もつかめるかもしれん」
アクラル『はーん。成程な。わーった。一応他の面子にも伝えた方がいいか?』
サクヤ「出来ればお願いいたします。結局は逃走者に拾っていただくものですので」
ノルン「マリオの手袋ってそんな効果があったんだね…?」
ルイージ「ボクも初耳だなぁ…」
ヨッシー「ヨッシー」
サクヤは素早く3つの手袋と逃走中に役立つ『他のアイテム』を個別の袋に入れ、アクラルに転送。彼は彼女の意図をしっかりと読み取り、エリアに配置することを約束してくれました。
いやはや、天の声もびっくりですよ。伊達に冒険してないですねあの配管工。
サクヤ「…さて。思わぬ助け舟もありましたが…。ラストスパートまでもう少しというところです。ニアの動向も気になりますが、とりあえずは待機でお願いします」
ルイージ「ボクも今日は打ち上げまで参加する予定だから、手伝えることがあったら言ってね!流石に今からあのエリアに行くのは無理だとおもうから、出来る範囲で、だけど」
ヨッシー「ヨッシー!ヨッシー!(打ち上げの料理楽しみだな~!)」
ノルン「全部独占しちゃダメだからね?」
サクヤ「―――そうだ。ルイージさん、少しお話が…」
一旦話を切り上げ解散することにした一同。ルイージとヨッシーも今回は最後まで手伝ってくれるみたいですね!これは心強い。
…そんな中、サクヤがルイージに先程の話を耳打ち。ルイージはうんうんと話をかみ砕いて理解した後…サクヤにそっと返しました。
ルイージ「サクヤさん。ボクも詳しいわけじゃないから間違ってるかもしれないけど…。
『カロン』って種族は…『この世に未練を残したノコノコ』って説もあるんだって。大丈夫、こう見えてボク口は固い方だからね!安心して」
サクヤ「この世に未練を残したノコノコ、ですか…」
何やらややこしい方向に舵を切りそうですがねぇ、ノルンとカノンの件について。お互いがすれ違っている現状です。
早いところ真実に向き合える日が来るといいですね。