二次創作小説(新・総合)
- ABT⑥『音無町の真実』-1 ( No.95 )
- 日時: 2020/09/15 22:11
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: Jolbfk2/)
命を懸けて女神を守った『道化師』だった少女。
彼女が辿った悲惨な運命。それをも目の前の『道化師』は嘲笑うのでした。
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~学都プレロマ 北地区~
メフィスト「ハァ…ハァ…ハァ…」
エクラ「―――っ……!」
地面に横たわった『道化師』だったもの。その胸を貫き、命を鎖したのは他でもない上司であるメフィストでした。肩で呼吸をしていることから、彼としても想定外の出来事だったのでしょう。
アルフォンス「仲間を…殺した?!」
シャロン「酷い…!!」
メフィスト「……あァ?『仲間』ァ?こいつは唯の『道具』。幾ら俺様に忠誠を慕ってたって結局はそうなんだよ。…ま、あの事件のこと思い出しちまったんだから『道具』以下だなァ?」
MZD「結局は部下のこと道具としか見てなかったんだね。虫唾が走る。双反するオレでも分かるよ。お前が『下衆野郎』ってことが」
ヴィル「…昔の私よりも性質が悪く気分が悪い。魔族の片隅にも置けぬ奴だ」
イヤミ「シェ?この魔族も同じことやってたザンスか?!」
キュベリア「んーーー。今でこそ善人顔してるけどコイツラスボスだからなぁ」
ゆめひめ「笑顔で言う事じゃ無くない?www」
クルーク「―――!!間に合わなかった…!」
ノア「仕方ねえよ。今の今まで道化師に邪魔されてたんだから。コハク、治療間に合うか?」
コハク「あンだけ血が出てる状態で言う台詞かァ?……やってみるけどよ、あンまり期待すンな。それに…あの道化師が邪魔で近付けねェ」
キョウカ「…………」
後ろから残っていた13班とクルークが現れました。クルークは血まみれのべリアを見て顔を青くします。すぐさま彼の視界をふさぐキョウカと、何とか助けられないかと頼むノア、眉間にしわを寄せるコハク。
彼女の容態を確認しようともメフィストが邪魔で近づけません。当の彼は敵が増えたにも関わらず、余裕を崩しません。
そのまま睨み合いが続く中―――。ふと、メフィストは話に展開を持たせようと『音無町』の話をし始めたのです。
メフィスト「……ククク。このまま睨み合ってたってツマンネェからなぁ。良いこと教えてやるよ。そこの餓鬼が住んでいた『音無町』での出来事だよ」
MZD「―――っ」
イヤミ「音無町?何ザンスかそれ?」
キュベリア「昔、色々と魔族が事件起こしまくったって悪評が浮き立った街だよ。今ではその土地は『トリコロシティ』に建て替えられてるけどな。…まさかポップンの神の出身地だったとはなぁ」
ゆめひめ「あれ?MZDの出身地って『アマゾン流域青木町』だったんじゃ…」
ヴィル「そんなもの適当に答えているに決まっているだろう…。あの街には私も多大なる迷惑をかけた身だからな。人のことは言えんが…。何をしでかした、貴様」
メフィスト「あぁ。当の『JOKER』様がいたんだったな。ククク、俺様としたことが忘れていたぜぇ!そこの血だまりの餓鬼。その街出身の『ただの人間』だったんだよ。憐れになぁ?あの街に、『あの時代』に生きていたことで『崇拝者』に殺されちまったなんてなぁ!」
シャロン「崇拝者…?」
メフィスト「あぁそうだ。こいつが殺される数年前。音無町では『JOKER』と呼ばれるピエロによって子供が行方不明になる事件が立て続けに起こっていた。その手口があまりにも人知を超えていたものだったからなァ。一部のオカルトマニアには非常に受けたんだろ。最後の被害者―――『松田翡翠』という少年を殺し損ねたことでその事件はぱったりと音を立てなくなっちまった。
それが気に入らなかったんだろうなぁ。『JOKER』が街から消えて数年後。崇拝者が模倣して事件を起こし始めたんだ。かつての『JOKER』を真似るように。子供だけを狙った殺人事件が多発したんだよ」
クルーク「あっ。あの本で読んだ…。やっぱりべリアはその時の…」
キョウカ「連続殺人事件、か…。人間による被害ではないが、私の兄上もドラゴンによる殺害事件で殺されている。辛い気持ちは分かる」
メフィスト「あぁ?そこの餓鬼、良く知ってんじゃねェか。―――そうだよ。そこに倒れてるべリアも。お前達が対峙した『ベリト』も。『タナトス』も。みーんな。その時代の『被害者』。それを俺様が記憶を改ざんして魔族にした、って訳だ!!」
ヴィル「なっ……!」
アルフォンス「事件の被害者を利用して手駒を増やしていたのか…?!」
なんと、ここで衝撃の事実。デデデを操ったメフィストの部下も、魔界でメフィストの補佐をしていた部下も。べリアと同じく『音無町での殺人事件』の被害者だったのです…!おそ松と同じように唆され、メフィストによって魔族にされてしまったのでしょう。酷い…酷過ぎる…。
怒りに震える者、悲しみに打ちひしがれる者…。様々な反応を見せる本部のメンバーに、メフィストは不思議そうに首をかしげていました。まるで『悪い事をしていない』とでも思うかのように。
エクラ「どうして…どうして罪のない人達を利用する真似なんかしたの…!貴方の邪魔が入らなければ、被害者の魂も天に昇れたはずよ?!」
メフィスト「そんなの決まってんだろ。俺は『JOKER』になりてぇんだ。お前達が生まれる前。ずっとずっと、昔から、な。
大地を割り、海を裂き、星を砕く―――。そんな強大な力があれば。何もかも思い通りだ。そうだろう『JOKER』!!その力があったからこそ支配が出来てたんだろ?!」
MZD「違う!!ヴィルはその力を利用してはいたけど!!苦しんでもいた!!!強すぎる魔力の毒牙に侵されていた!!御伽話にはちゃんとそこも伝わっていたはずだぜ。……なのになんで!!!自分に都合のいいことばっかり信じて。他人を巻き込むんだよ!!」
ヴィル「貴様の身勝手な目的の為に、多数の魂を利己的に利用していたと言う事か…。そんな者が『永久』を手に入れたらどうなるか。想像に容易い。貴様には絶対に渡さん」
メフィスト「はぁ~あ。かの『JOKER』サマも良心を手に入れた途端こうだよ。フッ、実際に会えたと思ったらとんだ興醒めだったぜ。だけど…俺様はそれよりも『強大な』力を得られるよう協力を得た」
ノア「それがエクラを邪神にしようとした正体、なんだな。お前もろとも俺の拳に沈みやがれ!!!」
コハク「『男女平等パンチ』しっかりと食らわせた方がいいンじゃねェの?―――けど、人の心を弄ぶのだけはぜってェに許さねェ。地獄の業火よりアッツイ一撃お見舞いしても足りねェよなァ?!」
メフィスト「……ククク。寝言は寝て言ってろ」
圧倒的な数で攻め立てられるものの、余裕の表情を崩さないメフィスト。『JOKER』の力をあきらめてはいないものの『今の自分』では奪い取れないとも悟っている様子。しかし…そんな状況でなにを余裕に思っているのでしょうか。
硬直状態が続く中、メフィストはふとコツコツと靴音を響かせながら道化師の亡骸の前へ。そして―――彼女に奪い取るように命じていた『それ』を、手に取ったのです!
キュベリア「な―――!お前、やめろ、それは―――!!」
イヤミ「棘?!棘ザンスーーー!!!」
メフィスト「『棘』ェ?違うなァ。これは『闇の杭』。善良な神を邪神に創りかえる為の装置らしいが…。失敗したからなァ。だが、こんなに闇が溢れてる。―――『魔族』に使ったらどうなるんだろうなァ?」
アルフォンス「(『闇の杭』?そんな話はしていなかったはずだ。そもそもそうだったらキュベリア殿が正しく説明をしているはずだ。―――彼は『アイテムをはき違えている』?)」
最後のミッションで抜き取った『グラーキの棘』。何故かメフィストは『闇の杭』だと言い張っています。その言葉の節々に違和感を覚えるアルフォンス。果たしてどっちの言葉が正しいのか…。
そうです。おそ松に会いに行くと言っていた五つ子はどうなったのでしょうか?様子を見てみましょうか。
~中央広場~
十四松「おそ松にーさんはっけーん!」
チョロ松「よしでかした十四松!そのまま突進!!遠慮はいらないよ!!」
トド松「チョロ松兄さん。十四松兄さんはポ○モンじゃないんだってば」
カラ松「だがあの馬鹿兄貴を止める為には武力も必要だろう。遠慮せず突進してこい十四松!」
一松「(水陸こえぇ)」
一方。おそ松を追っていた五つ子ですが、どうやらおそ松に追い付いたようで。何故かチョロ松が十四松にまた突進を指示していました。ポケ○ンじゃないんだから。
カラ松も目を覚まさせるためには殴るのが一番だと考えているようで。なんだこの水陸こえぇな。
実際に十四松が突進をしようとしたその瞬間。おそ松が振り返りました。
おそ松「…………」
十四松「ドゥーーーン!!! あれ、反応ないね?」
トド松「反応ないというか片手で止められてるんですけど?!離れて十四松兄さん!!」
一松「マジで言葉届いてないっぽいじゃん…」
カラ松「おそ松!ふざけたことやってないで正気に戻れ!!お前の居場所はそこじゃない!!母さんを悲しませるな!!」
おそ松は弟達の言葉にも耳を傾けず、突進してきた十四松にも何のリアクションもせず。ただ片手で動きを止めてしまいました。
よろけた十四松をなんとか支えるチョロ松。おそ松が弟達を見る瞳は氷のように冷たく、感情の1つも感じられません。
チョロ松「おいおそ松兄さん!!うんとかすんとか言ったらどうなんだよ!!あんなわけのわからない奴に唆されて!!もうあの時の僕達には戻れないんだよ!!本当はおそ松兄さんも分かってるんでしょ?!」
十四松「兄さん。兄さんが笑わないなんて変だよ。気持ち悪いよ。…正気に戻ってよ」
おそ松「…………」
カラ松「おそ松。何が嫌だったんだ。オレがあの場所から帰ってこないのがきっかけで仕事を始めたことか?チョロ松と十四松を奪ったとでも思ってるのか?!違う。あいつらは自分で『あの場所で仕事をする』って決めたんだ。一松だってトド松だってそうだ。誰かの言いなりじゃない。自分で決めたんだよ!!!
こんなクズニートのオレ達でも、信じて受け入れてくれるところがあった。だからこそオレ達は前に進めてる。それをお前にも分かってほしいんだ!!!」
一松「お願い兄さん、話を聞いて。おれ達兄さんが嫌で仕事始めたんじゃないんだよ。未来への一歩を踏み出すきっかけなんだ。実際、仕事を始めて色々世界が変わったんだよ。意外に外の世界ってさ。広くて、光ってて。明るかったよ。兄さん…」
おそ松「…………。―――じゃあ、お前らは『自分の意志』で松野家を離れようと思ったんだ?」
チョロ松「しゃ、喋った?!いやそれはいいんだ。だから!!離れようとしたわけじゃないんだって!!!拗ねるのもいい加減にしやがれ!!!」
おそ松「綺麗事ばっかり言ってんじゃねえ。事実俺がこんな姿になったのもお前らのせいじゃねーか。…でもいいんだ。お前らも、俺も。『もうすぐ終わるんだから』」
トド松「な、何言ってんのおそ松兄さん…?」
弟達のどんな言葉も彼に届くことはありません。ただ、おそ松は『もうすぐ終わる』とだけ言い残し、空中へ羽ばたきます。十四松が捕まえようとジャンプするも届かず。
そのまま、彼は空中に浮かびながら弟達を見下ろします。カラ松は思いました。『あの目はマジだ』と。
おそ松「北地区へ行ってみろよ。イヤミも今頃ふるえてんじゃねーの?」
一松「今イヤミは関係ないでしょ?……ん?」
チョロ松「どうしたのさ一松。何か思い当たることでも?」
一松「待って。わざわざおそ松兄さんがそんなことを口にするってことは―――。『ミッションが成功しても失敗しても、邪神を創り出す手立ては出来てる』ってことじゃないかな?」
おそ松「…………」
カラ松「あっ!逃げるなおそ松!!飛ぶなんて卑怯だぞーーー!!!」
チョロ松「そこに突っ込んでる場合かバカラ松!!!……はぁー。おそ松兄さんも北地区に向かってったみたいだし、一松の言ってることが本当なら止めないと!」
トド松「でもボク達何も出来ないよ?!3人は武器があるからいいけどさ!ボク達丸腰!守ってよね!」
十四松「一松にーさんとトド松はぼくが守ります!!任せて!!」
おそ松は弟達を一度見下した後、北地区に向かって飛んでしまいました。一松が口にした『恐ろしい言葉』…。実現させない為にも急がなければなりません。自分達に何が出来るかは分かりませんが。おそ松も関わる予定なら止めなくてはなりません。
五つ子はおそ松が飛んで行った後を猛スピードで猛追して行ったのでした。
~学都プレロマ 北地区~
メフィスト「これ…。『魔族に使ったらどうなるのかなァ』?」
MZD「お前……!!べリアを殺した上まだ弄ぼうっていうの…?!」
メフィスト「……フン。ちげぇよ。あのガラクタはもう使い物にならねェ。出血多量で既に魂も消えちまってんだろ?
―――使い方は『こう』だ」
アルフォンス「―――!!!やめろ!!!自分の身がどうなってもいいのか!!!」
棘を拾ったメフィスト。何をするかと思ったら…。自分の心臓に当てた?!貴方ねぇ、そのまま貫いたら身体がどうなるか分かってるんですか?!それは『闇の杭』なんかじゃないんですよ?!
アルフォンスが気付きメフィストに止めろと叫ぶも彼は聞く耳を持たず。笑みを浮かべたまま、棘を心臓に突きさす姿勢に入ります!
『さぁ。新たな支配の『時代』の始まりだ―――』
狂気に満ちた顔を覗かせ、彼は、自らの心臓を、棘で――――――。
『愚かですわ。実に愚かですわぁ……!!!』
『力を貸してください『大典太光世』。
――――――『Time to Air』』
一瞬。時間が止まる感覚。プレロマにいた全ての生命がそれを感じていました。運営本部の面子も。逃走者も。アスク兄妹も。そして―――メフィストも。
それが再び動き出した時―――。
『…………うふ?流石は『霊刀』。邪神をも粉々にしてしまう力がありますのね…』
『病をも怪異をも退けてしまうと逸話がありますからね、この刀には。『怪異』…。勿論『邪神』も含まれていたようで』
MZD「ニア…。サクヤ……!!」
メフィストの手に握られていた『棘』は粉々に砕けていました。
そして―――、そこには、薄ら笑いを浮かべるニアと刀を静かに仕舞うサクヤがそこにいたのです。
- ABT⑥『音無町の真実』-2 ( No.96 )
- 日時: 2020/09/16 22:06
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: b9FZOMBf)
邪神を知るのはまた『邪神』…。ニアはそう思っていたのでしょうか。彼女は微笑みを絶やさないままメフィストの元へ近付き、まるで猫を撫でるかのように顎に指を添えます。そして、突き放すようにこう言い放ったのです。
ニア「貴方様…なんて愚かなことをしていらっしゃるのかしら」
メフィスト「『愚か』…?ふざけたこと抜かしてんじゃねェぞ!!テメーの邪魔のせいで計画が全部台無しになっちまったじゃねェか!!!」
ニア「うふふふ…?貴方様が『杭』と仰っていたその突起物…。杭ではありませんの。散々逃走者の皆様が『棘』だと仰っておりましたのに…。もう少し理解のある生物だと思っておりましたのに。非常に残念です、わ?」
MZD「グラーキ…。どっかで聞いたような……。あっ」
ヴィル「どうした、MZD」
MZD「―――ほら、『グラーキの棘』!それに刺さったヤツはどうなるか!オレ達ニアに説明受けてたはずだよ!魔界に『道化師』の調査をしに行った時!」
ヴィル「―――!あの時…!」
ニアがメフィストを言い負かす間、彼女の言葉に何か引っかかっていたMZDは遂にそれを思い出します。それにつられヴィルヘルムも心当たりを口にしました。
―――そう。彼が持っていたのは『グラーキの棘』。それに刺されてしまったものは『グラーキの眷属』になってしまうことをニアから説明を受けていました。…1回目の途中の時。それに、テントを含む3人は実際に『グラーキの棘に刺さった人物の末路がどうなるか』を目の当たりにしていました。
ヴィル「もしかして…『緑の崩壊』か?」
メフィスト「は?何言ってんだテメェら…?」
サクヤ「悪しき神が魔族と普通に手を組むこと等絶対にあり得ません。となると、『魔族』もしくは『神』を利用する形で手駒として動かすと思っていましたが…。推測は当たっていたようですね」
MZD「メフィストに棘を使わせることで、道化師を率いている長もろとも眷属にするなり『緑の崩壊』で使い捨てるなり使い方は色々あるからなー。見事に神々の手のひらで転がされていたってワケ」
メフィスト「な……!」
ニア「ええ。まさか神々が邪神を利用してくるとは思いませんでした、わ?流石に……我が同胞の力を使ってくるとなれば黙っていられませんでしたの。ですから……逃走中を利用し、サクヤに秘密裏に動いてもらっていたのでしたわ。
…サクヤには『霊刀』があります。もしかしたらその力で『邪神の力を打ち消せる』と推測して、とのことですが。上手く行って良かったです、わ?」
サクヤ「あの…。随分と刀を信頼しているようですが。もし斬れなかった場合どうしたつもりなんです?」
ニア「あら?その場合ですか…。うふふ、この愚かな道化師に直接『精神崩壊』をお見せしていたりしたかも…しれませんわね?」
ノア「考えてなかったのかよ!!」
アクラル「俺らまで巻き込むなよ…?」
自分の持っていたものが『邪神』のものだと初めて知ったメフィスト。ニアの口から告げられる真実に顔を青ざめるばかり。あーあ、余裕ぶっていたのが随分と様変わりですね。
双反する種族である神と魔族がお互いの利だけを考えて手を組むなんて考えられませんものね…。邪神を使って道化師達を手駒にしようと神々は考えていたことが明らかになりましたね。
サクヤ「さて、メフィスト。邪神が魔族を利用しようとしていたということはこれで充分お分かりですね?恐らくエクラさんの邪神化計画も手の内だったようですし…。そろそろここいらでお縄についていただけませんかね?」
ヴィル「魔族の上流貴族にも既に『過去の出来事含め』貴様のしでかした悪事は連絡済みだ。ゲーム終了後に使いの者を寄越す様だ。……フ、貴様の望む『強い奴ら』がわんさかいるからなぁ?更なる力を目に出来るチャンスではないか」
メフィスト「クソッ……なんでだよっ、なんで……!!」
シャロン「人間だった子供達を自分の手駒にしただけではなく、双反する力まで横暴に使おうとした罰が当たったんです!ちゃんと反省してください!」
キョウカ「いや、こやつの頭に『反省』の言葉はあるのか…?」
ニア「それに…。今壊しました棘。キュベリア様ならお判りでしょう?『別の邪神の力も注がれていました』の。それを自らにもし刺してしまった場合…。精神崩壊どころではありません、わ…。意識も身体すらも邪神の眷属となり、自らの同胞を双反する者達に売り渡すところだったのですわよ?」
キュベリア「そこまで手を回してたってことだよな…。あー、本当に寸のところで助けられて良かったぜ」
ゆめひめ「エクラが邪神化してもメフィストが邪神になっても危ない代物だったんだね…」
イヤミ「こうして聞いていると肝が冷えるザンス…」
壊してしまった為深くは追及しませんでしたが、ニアは『グラーキの棘には別の邪神の力が注がれていた』とだけメフィストに言いました。…つまり、もしニアとサクヤが間に合わずメフィストが自身に棘を指してしまっていた場合……別の意味で世界が大変なことになっていたのは違いありません。
話し終わったのか、ニアはふぅ、と一息ついて彼から離れます。メフィストは立ち上がることも出来ず、顔を青ざめて語った事実をひたすら否定していたのでした。
クルーク「今まで色々大変な目に遭ってきたけど…。長が戦意喪失したし、これで一旦は一件落着なのかな?」
MZD「そうだといいけどねー。このままおそ松の支配も解いてほしいところだけど…そうはいかねーみたいだな。とりあえずおそ松もこっちで保護して、ゲーム後に支配を解いてもらおう。メフィストを引き渡すのはそれからでいいよな?」
ヴィル「あぁ。寧ろ今から地上に向かうのに少し時間を要するらしいからな。私の目が黒いうちは逃がしはしないさ」
コハク「帝竜復活といい、生命の支配といい…。こいつは何が何でも『上に立ちたがる』奴だったンだな。…まるであのクソ女を思い出させるみてェで気味が悪い」
キョウカ「彼女はコンプレックスが原因なのだから、こいつとは事情が違うのではないか?……やったことは許されることではないが」
それにまだ逃走中のゲーム終わってませんからね。メフィストを戦意喪失にしたところで、終わりまで導かないことには事態は解決しません。そう思い、ヴィルヘルムがへたり込んでいるメフィストの腕を掴もうとした、その時でした。
『成程な。まさかニャルラトホテプがそちらの世界についていたとは…。これは誤算だった』
ニア「……なぜ私の正体を知っておいでなのですか?」
サクヤ「この声は…」
メフィスト「お、おまえ…まさか…!!」
メフィストの丁度真後ろから響く声。それと同時に現れる『次元の裂け目』。こんな世の理を覆すようなこと、よっぽど強い神様でなければ出来るはずがありません。近付くと身の危険に晒されると瞬時で判断し、ヴィルヘルムは一旦メフィストから離れました。
その瞬間、次元の狭間が大きくなり…そこから『人ではない手』が現れました。何事ですか?!
アカギ「…………!まずい!メフィストを回収するつもりだぞ…!」
アクラル「裂け目の手を引っ張ればいいだけの話だ!アカギ、行くぜ!!」
アカギ「お前に指図されるいわれはないが……やるしかない。ここは共同接戦だ…!!」
メフィストを連れていかれる訳にはいかない。そして、神の世界から実際に迎えが来ているのなら引きずり出すチャンス!そう考えたアクラルとアカギが2人で『迫りくる手』に攻撃を加えようと近付きます!
アクラル『食らいやがれ!!朱雀の炎!!『CONTRACT』!!』
アカギ『氷の打撃、その身に受けよ…!!』
確かに手ごたえは『あった』筈でした。しかし―――。
おそ松「…………」
アルフォンス「えっ…?」
イヤミ「と、トド松ザンス?!」
ゆめひめ「どこからどうみてもおそ松じゃんwwwww 様子がおかしいみたいだけど…」
2人の繰り出した攻撃は―――『おそ松』に片手で消し飛ばされていました。行き場を失った炎と氷が空中に浮かんで消えます。
目の前に現れた、明らかに人外染みた雰囲気を醸し出すおそ松に尻込みするイヤミ。そりゃあいつもやいのやいのと騒いでいる男と同じ風には思えませんものね…。
彼が現れたのとほぼ同時。5つの足音が聞こえてきました。
トド松「ぜぇ…ぜぇ…兄さん達…早いって…なんで一松兄さんもボクより速く走ってんの…?」
十四松「おそ松にーさーん!!何やってんの?!あいつ敵だよーーー!!!とっちめなきゃいけないんだよーーー!!!」
カラ松「アクラルさんとアカギさんの攻撃をかき消したってことは、あいつ完全に支配されてるんだよな…。だけど、一応みんな無事ってことは…『世界の崩壊は阻止できた』ってことでいいんだよな?」
チョロ松「そうでなきゃ今頃僕達死んでるんだけど?!―――おそ松兄さん、本気で僕達と快を分かつつもりなのかな…」
一松「分かんない。けど、今のおそ松兄さんに何か刺激したらおれ達が怪我するかも。…手出ししない方が得策だね」
おそ松を追ってやってきていた五つ子でした。しかし、おそ松が神の攻撃をかき消したところを直に見てしまい―――自分達に出来ることは何もない、と悟ったのでした。
彼らはすぐにサクヤ達の元へと合流します。
アクラル「もう一発…!!」
アカギ「駄目だ…!何度やってもあいつにかき消されたら意味がない…!先にこっちが消耗したら意味がない!」
アクラル「だがよぉ、どうにかしてあの手を引きずり出さねーと『兄貴、どいて!!』―――?!」
アカギ「サクヤ、お前まさか―――!」
もう一発『手』に魔法を放とうとするアクラル。しかし、おそ松に止められる可能性が高い以上無暗な魔力の放出は止めた方がいいとアカギが止めます。
焦るアクラルの背後から瞬時に裂け目へと飛んでいく影。―――『次元の裂け目』を斬ろうとしているサクヤでした。魔法がかき消されてしまうなら物理で、という考えなのでしょうが―――。
止めようと動くおそ松もすり抜け、彼女は『裂け目』に刃を放とうとしたのですが……。
『邪魔は、させん』
サクヤ「――――――!!」
ガキン、と重なる刃の音。思わず目の前の人物を見てみると―――。彼女は眼を見開きました。
白い髪に赤い瞳。そして、『人ではない』ことを象徴するかのような片側に生えた角…。彼女はその姿に覚えがありました。彼女が『コネクトワールド』の守護を任されるずっと、ずっと昔に…。その間にもおそ松とメフィストは次元の裂け目へと姿を晦まします。
しばらくのつばぜり合いの後、一撃を喰らわせられないと分かったのか双方後退。彼女は刀を鞘ごと取り出し、居合の構えを取ります。
シャロン「敵さんがまた増えた?!」
十四松「にーさん、道化師つれて消えちゃった…」
MZD「それは仕方がない!今は目の前のあの角生やした剣士を何とかするしかないだろ!」
しかし、彼から放つ『圧』で動くことが出来ません。神聖だがどこか邪な力を感じるもの…。彼もまた神々の協力者なのでしょうか。サクヤは刀で圧を防ぎながら、その剣士に近付き語り掛けます。
サクヤ「『鬼丸国綱』…。まさか貴方が再び人の姿を得ていたなんて」
鬼丸「龍神…。…そうか。大典太は、数珠丸は、そこにいるのか。恐らく、三日月も」
サクヤ「ご老人とのお約束ですから」
鬼丸「あの老人は死んだのか」
サクヤ「はい。神の手によって…殺されました。しかし何故です?その殺した神に、何故貴方は従っているのですか」
鬼丸「おれには見える。お前の後ろにいるものは全て―――『鬼』だ。鬼は、斬る」
サクヤは目の前の剣士―――『鬼丸国綱』と知り合い?鬼丸国綱って人間ではなく刀の名前ですよね?あれ?しかし、少しの会話をしただけでサクヤに攻撃する姿勢は見せていないようですね。
…何が目的なんでしょう、彼は。攻撃をしていない今ならとアクラルが魔法を放とうとしますが、サクヤに止められてしまいました。
アクラル「なんでだよ!今ならあいつだけでもこっちに留ませられるチャンスなのに!!」
サクヤ「相手は攻撃する姿勢を見せていません。それに―――彼が攻撃を始めたら、逃走者にも被害が確実に出ます。それだけは避けたいのです。…兄貴、今は抑えてください」
アクラル「ぐっ…!」
鬼丸「…おれも今はお前達を斬るつもりはない。―――だが、覚えておけ。この世界は確実に『滅び』に近付いているということを」
鬼丸はそのまま刀を鞘に仕舞い、サクヤにそれだけ伝えた後次元の裂け目から姿を消してしまったのでした。
彼が見えなくなったと同時に、次元の裂け目は空に溶けてなくなってしまったのでした。
サクヤ「…ただ事ではなさそうですが…。他の刀ももしかしたら…?」
アクラル「おい、何言ってんだよ?サクヤ、あいつと知り合いなのか?」
サクヤ「はい。実はそうなのですが…。今は詳しく話すことが出来なくて…。申し訳ございません」
MZD「それはそれとして、だ。一応『エクラ奪還』の目的は達成したんだし、オレ達も戻ろうよ。まだゲームも終了してないんだしさ!」
ヴィル「あぁ。メフィストが戦意喪失した上、神々に連れていかれたのだから…。恐らく今ここにいる魔族も慌てて魔界へと帰還しているだろうからな。―――彼らのその後については追及しないでおこう」
キュベリア「怒涛の展開に忘れていたが残り5分残ってんだったわ」
ゆめひめ「あたしも…。もう逃走成功した気でいた…」
イヤミ「こんなとんでもないことを体験した後に5分走らなきゃならんザンスか?!震えで足が動かないザンス…」
チョロ松「じゃあイヤミだけ強制失格ってことで『嫌ザンス!!!最後まで走るザンス!!!』はいはい」
とにかく!エクラ救出には成功しましたし、世界の破滅を阻止することも出来ました!ならばやることは1つ。最後まで逃走中を終わらせることですよね!
サクヤは気持ちを切り替え、3人に語りかけます。
サクヤ「残り5分。精神的にも体力的にも限界を超えているとは思いますが…。最後まで走り切ってください。応援しています」
ゆめひめ「言葉通りだけど、最後まで頑張るよ!作者勢最後の光だもん!」
キュベリア「ちょうどいいところでゲームから降りることも考えてたんだが…。こうなっちまったことには逃走成功しなきゃ意味ねぇよな。性にはあわねーが頑張るわ」
イヤミ「ミーが逃走成功したところ、六つ子ちゃん達しっかりと目に焼き付けるザンスよ!!!抜け駆けも禁止ザンス!」
トド松「じゃあイヤミが最初に捕まるに100ペリカかけるね」
イヤミ「言った傍から捕まる予想出すなザンス!!!」
イヤミのツッコミに暖かな空気が纏う逃走エリア。―――さぁ。ラストスパートです。誰が逃走成功するのか。最後までお見逃しなく!