二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケモン不思議のダンジョン 虹の探検隊 ( No.12 )
- 日時: 2020/11/26 20:01
- 名前: カーネリアン ◆OkvzCxnsU. (ID: 66mBmKu6)
世界は、一面の赤に染まっていた。
周囲は焦げ臭いが満たしていた。
ごうごうと激しい音を立て、天を焦がすような黒い煙が空へと立ち上る。そこにあったのは、何かの残骸としか言いようのないものだった。
折れた柱、土台だったらしき黒焦げのそれ。ここが家だと説明されても信じられないだろう。
そんな家だった場所を、一匹のポケモンが見つめていた。
体格は小柄でうさぎのように長い耳、首はふさふさした毛で覆われている。種族名をイーブイと言う。
本来であれば茶色の体色をしているイーブイだが、彼女は美しい白銀の体色をしていた。通常個体と色が違う、いわゆる色違いである。
家が完全に崩れ落ち、無くなるのを見届けるとイーブイは重い身体を引きずって歩く。
あの家から逃げ出す際に色々と怪我をしたせいか、視界はかすみふらふらとする。熱と痛みで今すぐ倒れたい気分である。
そんな中でもイーブイは鉛のように重い身体を引っ張り、家の近くにある洞窟の入口へとやってきた。
ぽっかりと空いた暗闇は、何とも魅力的だった。何もない真っ暗な闇。そこに行けば何故か、楽になれるような気がした。
(……いいわ。そっちに行けばいいんでしょう)
イーブイはふっと笑うと、一歩。また一歩と重い身体を動かしていく。
暗闇から歓迎するように、風が吹いてきた。
(不思議のダンジョンに取り込まれるって、どんな気持ちなのかしら? 何も考えずにすむの?)
不思議のダンジョンに飛び込めば、全てが終わる。楽になれる。
そんな欲望のままに進んでいたイーブイだが、背後から突然待ったの声がかかった。
「っ、何をしているんだ!」
聞き慣れない声に驚くと、イーブイの身体はいつの間にか洞窟から遠ざかっていた。背後から何者かが彼女の身体を掴み、無理やり洞窟から遠ざけたのである。
イーブイが背後を振り向くと、そこには精悍な顔立ちのポケモンがいた。全身は青く、頭には黒い房らしきものがあった。獣が二足歩行をしているような印象を受ける。種族名で言うのなら。
(……リオル?)
『知識』としてルカリオを知るイーブイは、ぼんやりと目の前の存在を見上げる。一方、当のルカリオは目を吊り上げて怒っていた。
「そんな身体で、不思議のダンジョンに入ればダンジョンのポケモン達の餌食になるぞ。何を考えているんだ」
(どうだって……)
一言文句を言おうとしたイーブイだったが、さすがに限界が来たらしく意識が混濁し始める。
リオルの慌てる声が彼方へと遠ざかる中、イーブイは意識を完全に手放した。