二次創作小説(新・総合)
- 第2回演出問題 選択肢【B】の話 ( No.79 )
- 日時: 2021/08/03 13:14
- 名前: マーキー・F・ジョーイ ◆Pehab0fcX2 (ID: 3rsK9oI3)
喪黒「私の名前は喪黒福造。人呼んで『笑ゥせぇるすまん』。ただのセールスマンでじゃございません。私が取り扱っているのは『ココロ』。人間のココロでございます…」
【 笑ゥせぇるすまん Dark-B 】
喪黒「この世は老いも若きも男も女も、心の寂しい人ばかり。そんな皆さんのココロのスキマをお埋め致します。いいえお金は一銭もいただきません。お客様が満足されたらそれが何よりの報酬でございます。さて、今日のお客様は…?」
さえ「おはよー!」
来海「あ!おはよー!」
【壁津 来海 (17歳) 学生】
喪黒「ホーッホッホッホッホ…」
『リアルブロッカー』
~学校・教室~
来海「…」
シュッ!コツッ!
1人の女子高生、壁津来海が次の授業の準備をしていると、彼女の後頭部にくしゃくしゃに丸められた紙がぶつけられた。
来海「痛っ!?…ちょっと!何するのよ!」
ケンタ「いやー!悪い悪い!」
来海「はあ…もういい加減にしてよケンタ!」
ケンタ「ヘッ!壁みたいにそこに突っ立ってんのが悪いんだよ!名は体を表すってか!ギャッハッハッハ!」
来海「―――ッ!」
タツオ「おーいケンタ!そろそろ行こーぜ!」
ケンタ「おう!今行く!」タッタッタ…
来海「…嫌な奴!」
~放課後…帰り道~
来海「はあ…」
さえ「どうしたの来海?元気ないよ?」
来海「またケンタがちょっかいかけてきて…ホンット腹立つわ!」
さえ「ケンタってば、何かにつけて絡んでくるもんね…」
来海「本当、毎日毎日鬱陶しくて嫌になっちゃうわ…」
さえ「ずっと一緒のクラスだもんね…来海とケンタって」
来海「どっか行ってくれればいいのに…」
さえ「でも、ライム(※現実で言うラ○ンのこと)ではブロックしてるんでしょ?」
来海「当然よ!ずっと私のことからかってくるんだもん!」
さえ「もしかして、来海の事好きだったりして…?」
来海「もう!さえまでからかわないでよ!」
さえ「ごめんごめん!」
来海「はあ…現実でもライムみたいにブロックできればいいのに…」
その夜、来海が自宅に帰ると、リビングで母の来世が椅子に座って来海を待ち構えていた。
来世「来海!今日、数学のテストが返ってきたんですってね?見せなさい」
来海「う…お母さん…それは…」
来世「隠さずに見せなさい!赤点だったら携帯禁止だったわよね?さっさと見せないと取り上げるわよ!」
来海「は…はい…」
来世「………43点。一応、赤点は回避してるのね…平均点はいくらだったの?さえちゃんは?ケンタくんは?」
来海「うっ………さえもケンタも関係ないでしょ!?他の子と比べて何になるって言うのよ!?」
来世「あのね。今の世の中、お友達でもライバルとして競い合っていかなきゃいけないの。私はアンタの為を思って言ってやってるの!お父さんもアンタが小っちゃい頃に病気で倒れちゃったんだから、アンタにはなんとか医療関係に就いてもらわなきゃ困るのよ!」
来海「そんなこと言われても…」
来世「口答えしないで勉強なさい!」
来海「はーい………」
~来海の部屋~
来海「はあ………毎日毎日こんなことばっかり………嫌になっちゃう………」
来海「いっそのこと、ライムみたいに付き合いたくない人との関係もブロック出来たらいいのに………」
翌朝…
来海「やばっ!遅刻だー!お母さん!どうして起こしてくれなかったの!?」
来世「何度も起こしたわよ!グースカいびきかいてる上に『あと5分~』なんてふぬけた事言ってたのはどこの誰ですか!」
来海「もう…いってきます!」
来世「来海!テストが返ってきたら必ず見せなさい!今日は英語のテストが返って来るってケンタくんのお母さんが言ってたわよ!」
母の怒気を含んだ声を聞き流しながら、朝食のパンをくわえて学校へ急ぐ来海…
来海「遅刻遅刻!またケンタにからかわれるー!」
???「おや?危ない!」
来海「えっ!?きゃっ!!!」
ドシーン!
しかし曲がり角に差し掛かった時、突如現れた【黒い何か】と出合い頭に衝突してしまった…
来海「あったたたた…あっ、その、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
喪黒「いえいえ。お嬢さんこそケガはありませんでしたか?」
来海「あっはい。大丈夫です…」
喪黒「随分急いでましたねえ…寝坊なさったんですか?」
来海「は、はい…ってああーっ!?」
喪黒「おやおや…あのバスは学校へ行くバスでしょうか?発車してしまいましたねえ…」
絶望した表情でうなだれる来海を後目に呑気にハンカチを振りながら20メートルほど離れたところで発車したバスを見送る喪黒…
来海「終わった…遅刻だ…またケンタにからかわれるし、お母さんに怒られる………」
喪黒「随分人間関係に悩んでらっしゃるようですね。上手くいってないのですか?」
来海「は、はい………」
喪黒「でしたら私に遅刻させてしまったお詫びをさせてください」
来海「えっ…?」
喪黒「私はこういう者です…」
喪黒はカバンから一枚の名刺を取り出した。
来海「『ココロのスキマ、お埋めいたします 喪黒福造』…変質者ですか?」
喪黒「いえいえ。私はただのボランティアです。悩める人の手助けをしているのです」
来海「………怪しい」
喪黒「あららら!…しかし壁津さん、貴女は今こう思ってはいませんか?『面倒な人との関係をブロックしたい』と」
来海「…えっ?どうしてわかるの…!?」
喪黒「表情を見ればわかります。日常にいる鬱陶しい人とは付き合いたくない。誰もがそう悩むものです」
来海「………」
喪黒「よければ、これを使ってみてください」
喪黒が来海に差し出したのは1台の黒いタブレットだった…
来海「何これ…タブレット?」
喪黒「これは『リアルブロッカー』です。貴女の情報を入力すると今他の人とどんな関係にあたるかを教えてくれます」
来海「………本当だ。色んな人との関係が書いてる。でも機能ってこれだけなの?」
喪黒「いえいえ。重要な機能が1つ備わっています。…ですが、まずはあのバスに乗りましょう。学校前でその機能を説明します」
来海「えっ、あっ、学校!!忘れてた!!」
リアルブロッカーを片手に学校前までやってきた来海と喪黒…
しかし校門には厳つい顔をした角刈り頭の教師が立っていた。
来海「げっ…体育教師の御手洗だ…」
喪黒「見るからに厳しそうな先生ですねえ…」
来海「本当に厳しい先生なんです…遅刻者とか校則違反した生徒を竹刀で叩くんですよ!?関わりあったら碌な事がないんです…」
喪黒「このご時世よく糾弾されませんね…では、ここでその機能を説明しましょう。このリアルブロッカーにはライムなどのSNS同様に『ブロック』という機能があります。試しにあの御手洗先生のアイコンの右上にある禁止マーク、いわゆるブロックボタンを押してみてください」
来海「えっと…これですか?」
『あなたは御手洗厳次をブロックしました』
来海がブロックボタンを押すと御手洗のアイコンに一本の斜線が引かれた。
来海「…押しましたけど…この後どうなるんですか?」
喪黒「まあ見ててください」
校門で待ち構えていた御手洗だったが、突然学校の職員が現れた。
職員「御手洗先生!お母様が危篤だそうです!」
御手洗「何だって!?………わかった!!早退させてもらう!」
御手洗は職員と共に大慌てで校内へと走り去って行った…
来海「…どういうこと?」
喪黒「彼と貴方との関係がブロックされました。彼とは二度と関わらずに済みます」
来海「うそ…そんな…夢みたい…!」
思わぬ効力を目にした来海は驚いていたが、突然ハッとして喪黒の方を見た。
来海「も、喪黒さん!こ、これ…どうしたら…!」
喪黒「問題ありませんよ。貴女の情報が入力された時点でもう既に貴女のものです。お代も要りません」
来海「で、でもこれ…」
喪黒「ホーッホッホッホ!貴女が人間関係で関わりたくない人がいた時に有効活用してください!」
来海「…!あ、ありがとうございます!」
喪黒「ああそうでした。ブロックするのは自由ですが1つだけ守っていただきたいことがあります」
来海「守っていただきたいこと…?」
喪黒「はい。先程も言った通り、ブロックした時点でその人とは二度と関わることができなくなります。決して【一度ブロックした相手のブロックを解除してはいけません】。その点だけは気を付けてくださいね?」
来海「…わかりました。あの、ありがとうございます!」
~教室前~
来海「(はあ…そういえば遅刻したんだよね…ケンタにからかわれるのも癪だし…ここでブロックしちゃおっと!)」
来海は教室に入る前に、こそこそとリアルブロッカーを取り出し、ケンタのアイコンに指を合わせ、『ブロック』を押した。
ケンタのアイコン上にも御手洗同様斜線が引かれた…
来海「(よし…!)」
ガラガラガラ!
来海「ごめんなさい!遅れました!」
峯「あら壁津さん!おはよう!遅刻はダメよ?」
来海「はい…すみません………(いつもはここでケンタが野次を………)あれ?」
峯「どうかしたの?壁津さん?」
来海「あの…剛野君は?」
峯「ああケンタ君ね。彼は今日、実家のお爺ちゃんの法要でお休みなのよ」
来海「そうだったんですね…」
峯「さ!授業を続けるわよ!壁津さんも席についてね!」
来海「は、はい!」
慌てて席につく来海だが、彼女はリアルブロッカーの効力に驚き、同時に強大な力を手に入れたことによる優越感に浸っていた…
~昼休み~
来海「~♪」
さえ「くーるみ!何だかご機嫌だね?何か嬉しいことでもあったの?」
来海「え?ううん!なんでもないの!遅刻しちゃったけど、ケンタがいなくてラッキーだなって思って!」
さえ「どおりでね…そう言っちゃって、本当はからかってくる人がいなくて寂しいんじゃないの~?」
来海「ないない!アイツがいなくて清清するわ!」
さえ「そういえばケンタと一緒になってからかってきたタツオやダイキも途中で帰ってったよね?なんでだろ?」
来海「急用ができたとか言ってたもんね。まあ、サボり魔のダイキはまたズル休みかもしれないけど(フフ…ケンタと一緒になってからかう2人もブロックしてやったわ…!)」
さえ「あはは!ダイキならやりそうだね!…でも変じゃない?だとしても優等生のタマキさんやナオコちゃんまで帰っちゃうなんて…」
来海「ねー。何でだろう…不思議だよね…(タマキさんたちもブロックしたわ…あの子たちがテストの平均点を上げるせいでこっちが苦労してるんだから…!)」
さえ「ねえ来海、そういえば、次の英語の授業でテストが返って来るんじゃなかったっけ?」
来海「…げ!忘れてた!」
~放課後~
来海「13点…」ドヨーン
さえ「来海、英語苦手だもんね…」
来海「最悪…明日から補習だって…こんなのお母さんに聞かれたらまた怒られる…」
さえ「来海のお母さん、すごく厳しいもんね…」
来海「はあ………」
~しばらくして…~
さえ「じゃあね!」
来海「バイバーイ!」
親友のさえと別れ、来海は自宅の前に来た…
来海「はあ…これじゃあ見せても見せなくても、お母さんに怒られる上に携帯取り上げられちゃう…どうしよ…いちいち勉強しろって言われるのも辛いしな………あっ!そうだ!」
来海はふふふと悪い顔をしながらリアルブロッカーを取り出すと、自分の母親である来世のアイコンに指を合わせた。
来海「………今までキツイことばっかり言われてきたけど、ごめんねお母さん!私はお母さんの人形じゃないんだもん!」
『あなたは壁津来世をブロックしました』
来海「………さ!帰ろっと!ただいまー!」
来海が家に入っても誰の声もしない…
来海「お母さん?」
家に母の姿は無い。代わりにあったのは置き手紙だった。
『急で悪いけど、友達と温泉旅行に行ってきます。ご飯は冷蔵庫にあるから、レンジで温めて食べてね 母より』
来海「ふーん…呑気に旅行ね…ムカつくけど、携帯が無事ならいっか!」
来海は安堵の表情を浮かべ、冷蔵庫からハンバーグを取り出して温めた。
そして普段では母親から制限されているテレビドラマを観て楽しんだ。
その夜…
来海「………ケンタもお母さんも、もういないってことだし、自由に過ごせるんだ…!フフッ!」
時間は一日、二日と過ぎ去っていく…
その間何日経っても来海の前にはケンタも母も現れない…
しかしそれを微塵も気にすることもなく、来海は自分の気に食わない相手は皆ブロックするようになっていった…
サオリ「見て見てー!これママから買ってもらったの!」
マキ「かわいい!すっごく綺麗だね!」
サオリ「でしょでしょ♪」フフーン!
来海「うわ…ウザいからブロックしちゃえ!」
…
カイト「~~ってことがあったんだよ」
セツト「すげえなそれ!」
来海「あの2人、いつも一緒にいるのがなんか腹立つしブロックブロック♪」
…
来海「ああ~!なんだか神様になった気分!たのしー!」
そしてそんな日が一週間続いたある日…
~学校~
さえ「く、来海!?どうしたの!?」
来海「………あ、さえ」
さえ「髪もボサボサだし、制服もなんだかしわくちゃになってない!?」
来海はやつれていた。
家事は常に母親がやっていたということもあって、やり慣れていない来海には荷が重く、心身ともに疲労困憊だった。
来海「ごめんね…ちょっとお母さんが旅行に行ってて…そういえばケンタは?」
さえ「あれ?来海知らないの?ケンタ、実家から帰って来るときに事故に遭って入院してるんだよ?昨日峯先生がそう言ってたじゃん!」
来海「えっ!?嘘!?私、全然聞いてなかった!」
あのケンタが事故に遭った…そう聞いた来海は驚きを隠せなかった。
さえ「なんかよくわかんないんだけどね、何か箱を大切そうに抱えてたって…しかも来海の名前が入ったカードとかも持ってたってトシコが言ってたから来海も知ってるって思ってたんだけど…」
来海「どうしよう…私のせいだ…!」ダッ!
さえ「それに他の子も転校とか入院とかで何だかしっちゃかめっちゃかだし…ってちょっと!?来海!?」
来海は無我夢中で走っていた。
自分がブロックしてしまったから、ケンタにケガさせてしまった。そう思い込んでしまっていた…
来海「…あれ?待って…!もしかして、お母さんも!?」
心配になった来海は何度も来世に連絡を入れようとするが繋がらない。
来海「(どうしよう…!お母さんも何か事故に…!)…!そ、そうだ!」
彼女はカバンからリアルブロッカーを取り出すと、母とケンタのアイコンを何度もタッチした。
来海「解除…!解除しなきゃ…!」
来海はあの時の忠告を忘れ、一心不乱に解除法を探してブロックを解除しようとした。
そして…
『剛野ケンタのブロックが解除されました』
『壁津来世のブロックが解除されました』
来海「これで連絡できる…!」
来海が母に電話を入れたとき、母との電話が繋がった。
しかし…
???(男の声)『もしもし?』
来海「あっ…ごめんなさい!間違えました!」
???(男の声)『いいえ、この電話は壁津来海さんのお母様の電話で合っていますよ』
来海「えっ…?あ、あなたは…?」
喪黒『どうもお久しぶりです』
来海「も、喪黒さん!?」
喪黒『貴女、約束を破りましたね?』
来海「お願いします喪黒さん!お母さんに会わせて!私が間違っていました!」
喪黒『壁津来海さん、残念ながらそれはできません』
来海「どうしてですか!?まさかお母さんは…!」
喪黒『お母様は無事ですよ。ですが貴女は自らの意志でお母様をブロックしてしまったのです』
来海「うっ…!」
喪黒『一度こぼした水は二度と元の盆には戻れません。誠に残念ですが、貴女は拒絶される側の立場に立つ必要があるようです…』
来海「…!!」
喪黒『ドーーーーーーーーーン!!!』
来海「いやあああああああ!!?」
喪黒に【ドーン】された後、彼女は何故か自分のベッドで目を覚ましていた…
来海「…あれ?私…何を…?今までのは…夢?」
来海は不思議な感覚を覚えながら、ベッドから降りようとした…しかし…
コツッ
来海「痛っ!?」
ベッドから降りようとしたとき、彼女は何かにぶつかった。
それは透明な壁だった…
来海「なに…これ…!?」
来海は恐怖感を覚え他の位置から降りようとしたが、ベッドの周り4方向は既に壁に囲われて、来海はベッドから身動きが取れなくなってしまっていた。
来海「ねえ!誰かいない!?お母さん!!お父さん!!さえ!!ケンタ!!!お願い!助けて!ここから出してー!!!」
何度も叫ぶが彼女の声は誰にも届かない。
些細なことで壁を作ってしまった彼女の悲痛な叫び声は、ただただ囲われた壁の中に虚しくこだまするだけであった…
そして学校では、彼女がまるでいなかったかのように日常が進んでいた…
隣の席で心配するさえを除いては………
喪黒「人間関係というものは時に面倒で億劫になる時があります。勿論孤独を愛するのも良いですが、多少の付き合いが無ければ上手くいかない時もあります。ですが、【自分が】【壁の中で】【何もしないこと】が案外何も不満を生まない一番の方法なのかもしれませんねぇ…」
喪黒「ホーッホッホッホッホ…」
【終】
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