二次創作小説(新・総合)
- 打ち上げ ⑤ ( No.147 )
- 日時: 2020/11/20 22:04
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: LLmHEHg2)
―――翌日。運営本部ではいつも通り、もう一つの仕事である『世界の調査』に各々赴いていました。
そんな中、メインサーバに現れる1つの『影』。その場にいたグレンとクレアに用があるようですね。一体どんな用事なんでしょうか。
クレア「温泉旅行?」
ニア「はい。先程『セオリ』と名乗る可愛らしいお嬢様が本部の方に訪問成されてきまして。貴方様がたにこれを渡してほしいと預かったのです」
グレン「紙…?」
2人で話をしていたところに近付いてきたのは『玄武』ニアでした。知ってる人は知っているかもしれませんが、彼女その正体は『這い寄る混沌』なんですよね。そうそう、悪戯という名の非日常が大好きな混沌の邪神です。
そんな彼女が2人に『セオリから』と5枚のチケットを渡してきました。あらら、何の心づもりでしょうか。
2人がよくよくその紙を見てみると、そこには『アオイの島 一泊二日温泉旅行』と書かれています。紙の形状からチケットでしょうか。
不思議そうにチケットを見つめている2人に、サクヤと大典太、彼らを手伝っていたチタが合流します。
サクヤ「およ。皆さんで集まって何事ですか?」
クレア「サクヤさん!実はですね、ニアさんからこのようなチケットをいただきまして…」
サクヤ「どれどれ…。『アオイの島 一泊二日温泉旅行』?」
大典太「……温泉、か。俺が刀として封じられていた時代からあったかもしれん…」
ニア「ふふ?先程セオリ様からいただいたのですよ。『運営本部の皆さんでどうですか』と。ここは土地柄慣れている方に行っていただいた方がよろしいと思って、声をかけたまでですわ」
サクヤ「アオイの島……。確か次回の逃走中のアポイントメントを取った場所ですね。そんな場所にセオリさんから旅行のお誘い、ですか」
チタ「アオイの島って、温泉チョー気持ちいいトコでしょ?!ねぇねぇチャングレ、オレいきたーい!いこいこ!いこいこいこ!バイブスあげてこ!!」
グレン「最後のは関係ないと思うのだが…。しかし、仕事を放って行ってしまっても良いものか…」
『アオイの島』と言葉を聞いた瞬間、チタの目が輝き出しグレンに『行こう!行こう!』とおねだりを始めました。確かにこの島、以前から温泉の名所とも言われる程に有名な場所。そんなところを逃走エリアにしてしまう本部も本部ですが、確かに一度は行ってみたい場所であります。
……しかし、グレンは首を傾げたまま。どうやら自分達だけ楽しむ旅行に行ってしまっていいものか、と考えていたようです。
そのことを伝えると、サクヤは少し考えた後こう彼に言ったのでした。
サクヤ「現地調査、監視という意味合いも含めてですが…。今回起きたことも踏まえ、現地に何人か行っていただく選択肢は充分ありかと思いまして。今回の場合は学園長の罠にまんまと嵌ってしまった感じもありますが…。
それでも、折角のお誘いなのですから。無下にする必要はないのでは?」
グレン「し、しかし…」
大典太「……それに、島の主が直々に『来てほしい』と言っているのならば…。行ってやるのが礼儀というものではないか?」
グレン「うーむ…」
サクヤと大典太の助言を受けてもまだ首をかしげているグレン。そんな彼に、クレアも自分の意見を告げたのでした。
クレア「あのっ。グレンさん、最近働きづめで休まれていないのでは?」
グレン「君から見て、私はそういう風に見えているのか?クレア殿」
クレア「そうですよ!自分で出来ないことまで1人でやろうとして、いっつもチタさんに止められてるの見てるんですからね私。それも踏まえて、グレンさんには休養が必要だと思います!ねっ、チタさん!」
チタ「そーだそーだ!チャングレ、この際ちょっと休み貰ってリフレッシュした方がいいよ!そうした方がもしかしたらパッと思い出せるものもあるかもしれないし!」
サクヤ「クレアさんとチタさんもこう言っている訳ですし、行ってみてはどうですか?グレンさん。何か新しい発見があるかもしれませんよ」
グレン「そう、なのか…?―――確かに、私の記憶を取り戻すきっかけになるのならば……それに越したことは無い。
……分かった。行ってみるとしよう。『温泉旅行』」
クレア/チタ『イエーーーイ!!!』
グレンが頷いてそんな言葉を漏らすと、クレアとチタは傍でハイタッチ。彼と一緒に行けることを嬉しく思っているようです。
そのままチタはルーファスとシェリルに声をかけにメインサーバを去りました。その間にクレアは彼に語りかけます。
クレア「グレンさんのことですから、『私のことは気にしなくていいからみんなで行ってきたらどうだ』と言うと思いましたもん!一緒に行けて私、嬉しいです!
それにルーントレインにも温泉車両を増やそうと思っていまして…。その調査もしたかったんですよね~。ほら、列車って揺れるのでお湯が跳ねてしまえば意味がありませんし」
グレン「成程。確かに…それはそうだな」
クレア「夜空を見ながら温泉に入る!なんてロマンチックなんでしょうか~♪ グレンさんも温泉に入って気分転換しましょう!」
グレン「そうだな。気分転換も、いいかもしれないな…。それではサクヤ殿、大典太殿。一旦失礼する」
サクヤ「はい。当日は楽しんでらっしゃいませ」
意気揚々のクレア、早速ニアからチケットを受け取りグレンを連れてチタを追いかけにメインサーバを去ったのでした。
その姿を優しく微笑みながら見守るニア……でしたが、その笑顔がどうも『違和感がある』としか、サクヤには思えませんでした。
それに気付いているんだか気付いていないんだか、張り付いた微笑みのままサクヤに向き直ります。
ニア「あら、サクヤ。どうかされまして?」
サクヤ「……ニア。その張り付いた顔…。彼らやセオリさんを使って何か企んではいませんよね?」
大典太「主?どうしたんだ…?」
ニア「あら、心外ですわ…?貴方様なら私が『どういうもの』を好むのか分かっていらっしゃると思っていましたのに。それに、あのチケットはセオリ様本人が持ってこられたのです。私がそれを利用するとでも思いまして…?」
サクヤ「その笑顔の裏で何を考えているのか、私には考えもつきませんが…。―――ニア。くれぐれも『人道にあるまじきこと』を彼らに押し付けるのはやめていただけませんか」
ニア「……ふふ?では貴方様もあの地へ行ってみてはどうですか…?私が何を考えているか、あの地で『何が』起ころうとしているのか。少しは分かると思います、わ?」
大典太「……あんた、あの島で何か起きるのか知っているのか?」
ニア「えぇ。天下五剣様も付喪神なのでしょう…?ならば、あの地へ行って御覧なさい?
―――私が『何を求めているのか』ハッキリと分かります、わ。……ですが、くれぐれも私の邪魔はしないでくださいまし、ね?
もしかしたら……可愛らしい『貴方様がたの絆ごと、手折ってしまいそう』になりますので……」
サクヤ「…………」
どうやらサクヤ、ニアが何か企んでいるかもしれないと不穏に思っていたようです。それを指摘されたニアは、その微笑みを崩さないままに『アオイの島で何かが起こるかもしれないから行ってみたらどうだ』と発破をかけてきたのです。
警戒を緩まないサクヤと、目の前の女が何を言っているか理解が出来ない大典太。彼を守るように手を伸ばしたサクヤに、ニアは『勘違いなさらないで』とその手を優しく自分の手に重ねたのでした。
ニア「あら、勘違いをさせてしまいましたわね?ふふ、申し訳ございませんわ…。私、貴方様がたのその儚い絆……とても好みに思っていますのよ。
ですから、こうして助言をしているまでです。私と貴方は同じ『四神』同士。どうか敵意を向けないでくださいまし、ね……?」
サクヤ「どの口が言うのですか。私はどうなっても構いませんが、大典太さんを傷付けるおつもりなら…。いくら四神だとしても私は貴方を斬ります」
大典太「主…」
ニア「いいえ?私はお2人を傷付けるつもりなんて毛頭ございません、わ?それに彼を傷付けたら、貴方以外にも斬りつけられそうですもの。痛いのは嫌いなのです…。
……さて。お喋りはそろそろここまでにしませんと、ね?私、待たせている方がございますの…。それでは、これにて失礼いたしますわ…」
そう言って、ニアは自分の指でサクヤの手の甲をすり、となぞってからメインサーバを去っていきました。『待たせている人がいる』とのことですが…。今は追わないでおきましょう。
それにしても、邪神だからなのか不気味ですよねニア。先程の言葉が効いたのか、目線を下げている大典太に彼女は優しく声をかけたのでした。
サクヤ「大典太さん。彼女は元々そういう方なのです。どうか怖がらないでください…」
大典太「あ、あぁ…。『四神』とは、確かあんたの仲間で『この世界の柱』だった筈だ。……そんな奴が別の柱を壊そうと行動するのかと、思ってな…」
サクヤ「ですが、本部に合流してから相当色々溜まっているでしょうし…。何か仕出かすかもしれないという可能性は考えていたのです。
―――大典太さん、無理を承知でお願いがあるのですが…。聞いていただけますか?」
大典太「……何だ?」
そう言った彼女の表情は真面目そのもの。緩い話ではないことを大典太は察知。そのまま静かに頷くと、彼女は丁寧に頼みたいことの説明を始めました。
サクヤ「次回、私はあの島に赴くつもりです。その関係で兄貴に全てのGMを次回代わってもらおうと思っているのですが…。大典太さん。前田くんと共に、アオイの島まで向かってほしいのです」
大典太「……それは構わないが。先程の玄武に言われたことが引っかかっているのか?」
サクヤ「それもあります。ただ…。妙なのです。ニアが何も考えずグレンさん達にチケットを渡したのか。彼女が彼らを『非日常』に落とそうとしているのなら、もっと分かりにくく策を練るはずです。彼女は『ニャルラトホテプ』なのですから。
しかし、彼女は直接『セオリから貰った』と話しています。―――彼女の考えていることは未だはっきりとは読めませんが…。彼女のこととは別に、嫌な予感がするんです」
大典太「嫌な予感、か…。俺はその島に行ったことが無いから分からんが…。前田も連れて行くという事は、最悪相当厄介なことになる可能性がある、と考えても良いんだろうな」
サクヤ「はい。そのつもりでいてください。次回の逃走中のアポイントメントを取ってしまった以上、大会を別の場所で開催するわけには参りません。ニアの動向を探りつつ、彼女の裏にある『何か』……。見つけたいと思っています」
サクヤは不穏に思っていました。『邪神』―――。はっきり言ってしまいますと、ニアの正体は『玄武』であり『ニャルラトホテプ』です。
そんな彼女がわざとらしくサクヤ達に『アオイの島に行ってみればいい』と言うでしょうか?彼女が事の元凶ならば、もっと影に潜んで動くはず…と、サクヤは考えていたのでした。その結果、ニアは既に『アオイの島』に忍び寄る『影』について何か手掛かりを掴んでいるのではないか、と。彼女はそれを利用しようとしているのではないか、と。グレン達を『温泉旅行』へ誘ったのは、その計画の一端なのではないか、と。
それを確かめる為にも、彼女の近侍である大典太、そして彼女の刀である前田に協力を申し出ていたのでした。
サクヤの真剣な表情に、大典太は素直に小さく頷きます。近侍である以上、彼女の命に従わないという選択肢はありません。
大典太「……こんな置物で良ければ好きに使ってくれ。今はあんたの近侍なんだからな…」
サクヤ「今は置物ではありませんし、私がご老人から託されてからは置物として扱っていませんのでご安心ください。しっかり武器として、近侍として。私の背中を守ってください。大典太さん。
それと……。くれぐれもこのことは内密に。大っぴらにして、もし我々の勘違いであった場合面倒なことになりますので」
大典太「…………」
サクヤ「大典太さん?」
大典太「……あ、あぁ。分かっているさ。前田以外には伝えない。あんたも兄以外には喋るつもりはないんだろう?」
サクヤ「はい。そのつもりです。兄貴には『現地調査』としてみんなに伝えてくれとお願いするつもりです。口は上手いので、兄貴は。きっと上手く誤魔化してくれるはずです」
サクヤの言葉が胸に突き刺さっていました。確かに彼女に拾われてから、置物扱いをされた記憶が無い。自分の刀身が数珠丸や三日月と比べ短いのもあるのでしょうが、確かに彼女は大典太を『武器』として、顕現してからは『近侍』として扱っていました。
……彼の心にじんわりと暖かいものが。その正体は分かりませんでしたが。彼は『それ』に心地よさを感じていたんだとか。
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一難去ってまた一難?!今度は運営本部側から面倒なことが発足しそうな予感。あれ?ニアが動き出すってことは『クトゥルフ』っぽくなっちゃうんですか?なるんですか?もしかして他の神格も出てきちゃうんですかー?!
不穏に思ったサクヤは大典太、前田と実際にエリアに顔を出すことを決意。アクラルのGMの裁量を見定めるいいきっかけにもなりますしね。はてさて、どうなることやら。
……そういえば、5回目の時にメフィストと消えたおそ松。彼、一体どこにいるんでしょうか。早いところカラ松達と仲直りしてほしいところではありますが…。
それでは皆様、次回の逃走中でお会いいたしましょう!Adieu!
逃走中#CR06 ~Welcome to Lapistoria~ THE END.
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―――Adieu、する前に。今回もありますよExtra編!
ジンベエが言っていた『花火大会』。そこに行くまでにサクヤ達は『とある世界』との邂逅と、『とある男』との再会を果たします。
それでは、彼女達が廻ったお話を一緒に見ていきましょう…。