二次創作小説(新・総合)
- ABT③『拳は剣よりも強し』-1 ( No.31 )
- 日時: 2020/10/07 22:06
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jWLR8WQp)
某乱舞ゲーで太刀の打撃ワンツーを決めている男がいました。
そんな彼の元に舞い込む『お手伝い』とは…?
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~運営本部 メインサーバ~
大典太「……主。荷物はこれで全部か?」
サクヤ「はい、それで終わりです。いや、助かりました。いくら神とはいえ、この姿では重い荷物が中々持ちにくくて…。龍に戻れば楽なのですが、本部を壊してしまってもいけませんものね」
大典太「俺は『今は』あんたの近侍なんだ。あんたに出来ないことは…俺がやる」
サクヤ「それは頼もしい。相変わらず力持ちですね。ありがとうございます」
大典太「…………」
前田「大典太さん、もしかして照れてます?」
大典太「…………」(ふいっ)
前田の騒動も落ち着き、各々仕事に入った運営本部。大典太は重い荷物を運んでくるようサクヤに頼まれていました。まぁ、彼190cmありますし。意外にスラっとした長身なのですが、彼は戦う男です。陰気な雰囲気とは裏腹に、かなり力持ちのようで。
サクヤに褒められた大典太はふいっとそっぽを向いてしまいました。…黒い髪からちらりと覗いた頬がほんのり赤いような気がするんですが。照れてます?
―――それを誤魔化すかのようにそういえば、と彼は会話を切り出します。
大典太「……あんたの手伝いに来た『さくしゃ』とやらの1人が言っていたぞ。『岸辺莉愛』はどこだと。確か…俺が顕現する前に助けたらしい幼子の名前だったな」
サクヤ「莉愛さんですか?アシッドさんの計らいで普通の高校に通わせてもらえることになったそうです。現在はネクストコーポレーションに身を置いているので、ここにはいませんよ」
前田「そうだったのですか。まぁ、流石に一般人に戻った人を戦いがあるかもしれないこの場に巻き込むわけには参りませんからね…」
サクヤ「はい。それに…彼女には普通の『人間らしい』生活を送ってもらいたいですからね。我々に付き合う必要もありません」
前田「お優しいのですね、主君は」
サクヤ「まさか。私が優しかったら地球上の皆優しいことになりますが」
大典太「あんたは自分を卑下しすぎじゃないのか。……俺が言えたことではないが」
莉愛は現在ネクストコーポレーションで保護されているみたいですね。社長であるアシッドが動いたんですから確実でしょう。人間らしい人生を送らせる、ですか。随分と短い人生でしたからね、一度目の彼女の人生は…。せめて、幸せに長生きできることを天の声も祈ります。
そんな話を続けていると、ふとひょっこりと姿を現す一頭身が。彼はそのまま大典太の元へと近づいてきます。それに気付いた大典太はそろりと後ずさり。何のコントですか。
バンワド「すみません、大典太さんでしたよね!ボク、貴方があんな重い荷物軽々とここまで運んでいるのを見ちゃいました!」
大典太「ち、近付くな。あんたみたいな小さいのが俺に近付いたらきっと怪我をする…」
バンワド「しませんよ!ボク、これでも国の王様の側近やってますからね!それよりも、です。サクヤさん、大典太さんって力持ちなんですか?」
サクヤ「力持ち…ですね。もしかしたらバンワドくんと同じか、それ以上に怪力かもしれません」
大典太「あ、主。それは言い過ぎだ…。俺なんて、力があってもそれで他の生命を殺すような刀なんだからな…」
前田「ですが、今さっき主君が出来ないことやってのけましたよね。大典太さん」
大典太「うっ…!」
バンワド「力持ちな上に優しいなんて…!あぁ、大王さまみたいですー!と、違うんです!サクヤさん、今から稽古部屋を借りてもいいでしょうか?」
サクヤ「稽古部屋?今の時間だとアイクさんが素振りしてると思うんですが…。どうしたんです?」
やってきたその一頭身の正体はバンワド。本部随一の怪力の持ち主です。彼、『利き手じゃない方』でメガトンパンチの大会に出る程ですからね。故郷の星にヒビ入れますからね。
近付かないよう口に出す大典太でしたが、バンワドと前田に論破され既にタジタジ。観念したのか後ずさりをするのをやめました。どうやらバンワド、大典太に用事があって、それで『稽古部屋』なるものを使いたいようですが…。
さてと。『稽古部屋』について説明をしておきましょう。
運営本部は皆様ご存知の通り、いつ誰が襲ってくるか分かりません。その為、戦えるメンバーはいついかなる時も戦闘態勢になれるよう動いているんですが。その特訓場所が実はあるんですねー。形状的にはスマブラforの『闘技場』ステージが一番近いでしょうか。
バンワド「『かちわりメガトンパンチ』で勝負したいんです!そこの大典太さんと!」
大典太「?!」
前田「『めがとんぱんち』?何ですかそれは?」
サクヤ「えーっと…。確か、バンワドくんの故郷で一時期流行っていた大会ですよね。一撃のパンチでどれだけ地下のブロックをかち割れるかを競う競技だったはずです」
前田「『瓦割り』のようなものですかね?」
サクヤ「そのようなイメージで大丈夫なはずです。普通は地下のブロック『だけ』をかち割って終わるのですが、たまーに星ごと割っちゃう選手がいたという噂が…」
バンワド「ちなみに、ポップスターを割れたのはボクとカービィだけなんですよ!えっへん!」
大典太「それは自慢することなのか…?」
サクヤ「まぁ、彼星を割ってしまったせいでスマブラへの招集が未だにかかってないんですよねぇ」
バンワド「それは言わないお約束です~~~!!!」
バンワド、大典太と『かちわりメガトンパンチ』で勝負がしたいようで。原作を知っている方は分かると思いますが、あれコマンド全部成功させるとポップスターを真っ二つにするんですよね。余談ですが、コネクトワールドのバンワドの怪力設定はここから来ています。
まぁ、それは置いといて。彼が自慢げに怪力だということを自慢したので、ようやく警戒を解いた大典太。あまり乗り気ではないようですが、サクヤは『良い機会です』とバンワドの案に乗ることにしました。
サクヤ「では、稽古部屋でメガトンパンチの準備をしましょう。大典太さんの力強さを見れるいいチャンスですし」
前田「僕は単純にその『かちわりメガトンパンチ』とやらに興味があります!大典太さんの順番が終わったら僕もやっていいですか?」
大典太「俺はやるとは一言も…。それに、ゲームの監視はどうするんだ」
サクヤ「どこにいてもゲーム中の様子は私が確認しているので大丈夫ですよ。お気になさらずに」
バンワド「じゃあ決まりですね!早速稽古部屋に行きましょう!」
あらら。前田も乗り気ですね。これは腹をくくるしかなさそうですよ大典太。サクヤもゲームの監視には問題が無いと背中を後押し(?)し、バンワドに連れられて稽古部屋に足を運ぶ為移動を始めるのでした。
~運営本部 エントランス~
サクヤ「…ん?何やら騒がしいですね。お客様が来るとは聞いていないのですが…」
大典太「誰かを探し求めているような声が聞こえているな…」
バンワド「ウチに捜索依頼は来ていないと思うんですが…」
エントランスまでやって来た4人。何やら向こうから騒がしい声が聞こえてきます。『誰かを探しているような声』と言っている人もいます。アポなしで突撃してくる人物なんて過去にも散々いましたが、流石に今回はいないと可能性を潰しにかかるサクヤ。いや、そういう時ほどいるもんですよ。
とりあえず声の正体を探ろうとその方向に歩いていった、その瞬間でした。
『なっ―――。天下五剣!!何故お前がここにいることを俺に知らせない!!』
大典太「……?!」
サクヤ「大丈夫です。多分敵襲じゃないですから。刀を鞘に納めてください」
声の主が大典太に気付いたようで、びしっと彼に指を指したままそう叫びました。思わず戦闘態勢を取る大典太。何とかその場はサクヤが宥めて事なきを得ましたが、一体誰なんでしょうか。大典太は長い間蔵に政府に、と他の刀と交流する暇すら無かったはずです。
近付くにつれ、その指差している人物の正体が明らかになりました。勝気そうな印象の赤髪に銀色の瞳をした、まるで熱血委員長のような青年でした。霊力からその正体を察した大典太。眉間にしわが寄っています。
『なんだ。貴様だけなのか『大典太光世』。他の連中はいないのか。数珠丸殿の気配はしているが』
大典太「……顕現しているのが俺だけで悪かったな。どうせ俺なんて足利時代は何も逸話が無いただの刀だよ…」
『そういう話をしているのではない!!三日月宗近はどうした。鬼丸国綱は。童子切はどこだ』
『きょひょ~?探し人は見つかったのかい『大包平』く~ん?』
サクヤ「え?大包平?」
大典太「あぁ。霊力が『大包平』のそれだ。間違いない、こいつは刀だ…」
前田「では、僕達のお仲間ということなのですね!」
バンワド「あ、あのー。ハキハキとした声とは他に、聞き覚えのある声も聞こえて来てるんですけど…」
赤髪の青年は『大包平』というようです。ん?大包平?『日本一』との誉れが高い日本刀で、童子切安綱と並んで『日本刀の東西両横綱』と称される程の名刀です。そんな彼が人間として現れた、ということは―――。彼もまた『顕現した刀』の一種という事になりますね。
ゼウスの影響を受けたのでしょうか?そうではないような気がするのですが…。そんな話を進めているうちに、彼ではない違う声がエントランスに木霊します。その正体に気付いたバンワドが呆れつつサクヤに見る様促します。その正体は…。
ごくそつ「呼ばれてなくても勝手に来たよ!ごくそつくんだよ~!」
サクヤ「って貴方、なんで刀を持っているんですか?!」
バンワド「ゲーム前に話したこと、本当だったんでしょうか?」
ごくそつ「なんだよ~。お前らに愉快でカオスで面白いイタズラしてやろうと思ったのに!それにぼくはこの刀と『正式に契約』を結んでさらに強くなったのさ!きょひょひょ、それを早くあのボス共に見せてやりたくてね~!それであいつらいまどこ?」
前田「け、契約ですか?!」
大典太「大包平、あんた隣のこいつと契約を結んだのか…?!」
大包平「あぁ。そうだが。何か問題でもあるのか?」
サクヤ「いや、あることにはある、といいますか。ないことにはない、といいますか」
大包平「歯切れが悪いな。はっきり言え!」
ごくそつくんが大包平と『正式に契約した』ことで、彼が大包平の本体を持っていたという事ですね。それを聞いた4人は驚きを隠せません。大包平も納得しているようで、驚いていることに不思議そうに首を傾げています。
と、その時でした。サクヤの耳元に聞き覚えのある通信が。
MZD『あー。そこの赤髪のお兄さんに忠告しといた方がいいよ。『10秒以内にその場から離れろ』って』
サクヤ「―――あっ、はい。大包平さん。少しこちらでお話をしましょうか」
大包平「? 構わんが。ここにいては問題があるのか?」
サクヤ「と、とにかく!こっちに来て話をしましょう!大典太さん、後ろから彼を押してください!」
大典太「わ、わかった」
大包平「な、何をする貴様!訳を話せと言っている!」
大典太「……黙って歩け」
MZDが連絡してきた、ということは―――。
大典太の力も借り、大包平を素早くその場から避難させた瞬間でした。
『骨の髄まで灰にしてやる。光栄に思うのだな』
ごくそつ「きょ、ひょーーーーーっ!!!」
物凄い爆発音と共にごくそつくんが吹っ飛んだ。十中八九あいつの仕業だ。もし大包平がその場にいたらしっかり爆発に巻き込まれてましたねー。
ふっ飛ばした男は素早く彼の右手から刀を奪い取り、サクヤ達の元へと瞬間移動してきました。
ヴィル「これがかの『大包平』とやらの本体なのだな。ほら、受け取れ」
サクヤ「いや。ヴィルさん。貴方ごくそつさんに鬱憤を晴らしたかっただけですよね?それに…彼の口ぶりからして大包平さんは既にごくそつさんの刀です。受け取る訳には参りません」
ヴィル「……は?彼奴は契約を果たしたのか?!」
ごくそつ「だ~か~ら~。さっきからそういってんじゃ~ん!!そいつはぼくの刀なの!!言い方変えれば『近侍』だよ!」
大包平「俺は『大包平』。池田輝政が見出した、刀剣の美の結晶。最も美しい剣の一つ。隣の主…ごくそつ殿の近侍として主命を受けている」
バンワド「あの爆発を食らってほぼ無傷って凄いですねごくそつくん…」
呆気に取られているヴィルヘルムから刀を奪い返すごくそつくん。まぁそうですよね。既に契約を果たした刀は受け取る訳にはいきませんからね。
一応サクヤが『何故契約に至ったか』を聞くと、2人は意外にも真面目に答えてくれました。
ごくそつ「マリオ達と世界一周旅行してる時にね?ごろつきが湧いて困ってる村をごろつき懲らしめて助けたんだよ!そしたら、お礼にこの刀を貰ってさ。カービィもマリオもいらなさそうな顔してたし、ルキナちゃんは『刀はごくそつさんの方がお詳しいのでは?』と譲ってくれたんだよね~!
そして、助けた村で1日厄介になった次の日…。ぼくの寝てたベッドの近くにこいつがいたんだよ」
大典太「顕現したタイミングはほぼ俺と一緒なのか…」
大包平「彼と話をした上、主の思想に共感した。それで、主の『近侍』として主命を果たすことになったのだ」
ごくそつ「それにね?大包平くんがぼくと『正式に契約』する前は、マリオとかカービィとかのイタズラで勝手に刀に戻ってたんだよね~。でも、契約した後はそれが利かなくなって。きょひょひょ、おもしろいよね~!」
前田「ごくそつさんと『正式に契約を果たした』から、他の霊力の影響を受けなくなったという事でしょうか?」
サクヤ「(となると…。大包平さんが顕現したきっかけはゼウス様の影響で間違いない。しかし…。ごくそつさんが正式に契約をしたタイミングでそれは解けている、と考えて間違いないでしょうか)」
バンワド「それじゃあ、大典太さんと前田くんもどんなことをされても刀に勝手に戻されることはないってことですよね!」
前田「はい。そうなりますね!主君の刀だと改めて自覚が出来て嬉しいです!」
大典太「…………」
ヴィル「? どうしたんだ大典太殿。バンダナ殿の言っていることは間違っていない様に思えるのだが」
大典太「……そう、だな」
成程ですね。顕現するトリガーはゼウスが関わっていても、一度『正式に契約』を果たすと主導権が完全に契約した主に移る、と。マリオとカービィのイタズラで大包平が刀に戻らなくなったのがそれを証明していますね。
前田は大丈夫ですが…。そうか。大典太がサクヤと『仮の契約』を交わしているのを知っているのはサクヤ本人と、当時懐にいた前田くらいのものでしたよね。そりゃみんな『サクヤと大典太が正式に契約を交わした』と思い込んでいても仕方がありません。
きまりの悪そうな顔をしている大典太に、不思議そうにヴィルヘルムは首を傾げるのでした。
バンワド「……あっ!そうだ。早く稽古部屋に行ってメガトンパンチの準備をしないと!」
大包平「『めがとんぱんち』?なんだそれは?」
大典太「……あの小さいのの故郷で流行っていた力比べらしい。主と前田に押されて俺も参加することになってな」
大包平「! 力比べ…。大典太光世。それで俺と勝負しろ!俺の方が優れているというところを彼らに見せる良い機会だ!!」
バンワド「大包平さんも腕力に自信があるんですか?」
大包平「ふっ。俺は池田輝政に見出されたんだぞ。天下五剣がなんだ。童子切に挑む前に、こいつに勝って俺も優秀な刀だという事を知らしめてやる」
大典太「俺は前座扱いか。ふふっ。どうせ蔵に仕舞われていたから実力が無いとでも思われてるんだろうな…。分かってるよ…」
サクヤ「大典太さん。大典太さん。戻ってきてください」
バンワド「それでは、ボクと勝負する前に大典太さんと大包平さんで勝負ですね!ボク張り切って準備しちゃいますよー!」
あれれ?『力比べ』と聞いた瞬間、大包平の目の色が変わりましたよ?何か彼、天下五剣に対抗心を燃やしているみたいで。バンワドも面白そうだと乗っちゃってますし。
ごくそつくんも『暇してたからいいよ~』、とあっさり承諾。その勢いのまま、サクヤ達は稽古部屋へと足を進めたのでした…。