二次創作小説(新・総合)

ABT⑤『ココロネとタマシイ』 ( No.52 )
日時: 2020/10/16 22:27
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 5obRN13V)

サクヤと大典太が外出した後、GMの代理を務めることになったアクラル。
今回はその間の、『ココロネ』に纏わるお話…。

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~運営本部 メインサーバ~



アクラル「よし。次のミッションの準備はこんなもんでいいだろ。そろそろ2つ目のミッションの結果が出そうだ」

前田「成功するか失敗するか、ここで見守るだけでもドキドキします」

アクラル「だろ~?実際に参加してなくても緊張感は同じくらい伝わってくるぜ」



 サクヤ達が出掛けた後、代理でGMを務めることになったアクラル。彼女のGMとしての動きを一番近くで見ていたからか、意外にも手際はいい。前田も彼の動きをしっかりと見て、言葉通り早く仕事を覚えようと躍起になっています。
 しかし、サクヤの双子の兄だからでしょうか。中々前田に仕事を振りません。似た者同士という訳でしょうか。しばらく黙っていた前田が、ふとこんなことを口にします。



前田「アクラル殿。僕に出来そうな仕事があれば割り振ってください」

アクラル「仕事熱心なのはいいがよ、休めるのは今の内なんだぜ?後半になればなるほどここから離れられなくなるからな」

前田「そうなのですか?しかし…僕達短刀は主君の命をお守りするのが役目。休みなど本来はあってはならないものなのです」

アクラル「お前なぁ…」



 短刀ってみんなこんな性格なんでしょうかね。至極真面目な言葉を口にした前田を見て、アクラルは呆れた顔で頬をぽりぽりかきましたとさ。
 …そんなやりとりを続けていた時でした。







『なぁに!やってんのサーーーーー!!!』







アクラル「?」

前田「誰かの叫び声でしたね。こちらまで響いていたので随分と大きいもののようです」

アクラル「叫び声っつーか、怒鳴り声?…今の時間でトラブルは起こしてほしくねーんだがなー。悪い前田、様子を見て来てくれねーか?」

前田「承知しました。前田藤四郎、使命を果たします!」



 アクラルに依頼された前田は心なしか明るい顔になっているようで。そのまま彼はアクラルに『行ってきます』と告げ、その場を離れたのでした。
 ―――その様子を見ていた朱雀。呆れ顔を崩さずこう呟いたんだとか。



アクラル「刀ってみんなこうなのか?」












~運営本部 資料室付近~



前田「音の反響の仕方から…。この近くでしょうか」



 本部にある資料室近くにやって来た前田。怒鳴り声の持ち主はこの付近にいると推測し、身を潜めながら先へと進みます。流石短刀。隠密行動はお手の物みたいですね。
 しばらくそのまま進んでいると…。資料室であろう部屋に明かりがついています。前田の推測はビンゴだったようです。立ち止まって様子を見ていると、資料室から紫色の球体が飛び出してきました。彼に促されるように出てくる2人と1匹の人影も。
 敵ではないと確信した前田は、警戒を解いて彼らに近付くことにしました。



前田「すみません。怒鳴り声がしたとアクラル殿から様子を見に行くよう指令を受けまして。どうかしたのですか?」

マルク「あっ。確か前田…だったよな?多分その怒鳴り声ボクなのサ…。ごめんなのサ」

リピカ(Y)「こっそり調べるつもりだったのに…。通信機も誰かに壊されたのさ」

YUMA「以前からの繋がりがあったから良いと思っていたんだがな…。こんなに怒鳴られるとは思わなかったんだよ。すまない」

マルク「以前からの繋がり?知らないのサ!もしかして別の異次元と勘違いしてなーい?ここには見て良い資料と見ちゃ駄目な資料が混ぜこぜになってるから本部の人間以外は勝手に入っちゃ駄目なのサ!」

前田「それに『通信機を壊された』って…。何をしようとしていたんですか?」

パステル(Y)「ぼにゅにゅ…」

YUMA「別に技術やノウハウを盗もうとは思っていないさ!ただ、この世界には興味深い事項が多い。それを1つでも知って帰りたかっただけだよ。『ココロネ』とかな」

マルク「それならそうとハッキリ言ってほしかったのサ…。ココロネのことについてなら、『この世界にいる時限定で』なら教えてあげるのサ。
    お前達が自分達の世界に帰る時はこの世界関連の記憶は綺麗サッパリ消し去ってから帰ってもらうけどな」

前田「知識を持っていると何か不都合でもあるのでしょうか?」

マルク「ココロネは所謂『魂』だからな。悪用でもされたらたまったもんじゃないのサ」

リピカ(Y)「悪用って…」

マルク「PCとPLは違うのサ!」



 資料室で調べ物をしていたのはYUMA達2人と1匹でした。マルクがご立腹なことから、何か手を出してはいけない資料に手を出そうとしていたのでしょうか。
 勝手に持ち帰ってもらっても困る技術も結構ありますからねこの世界。程々にしてくださいねー。怒る気も失せたのか、マルクはその場でため息をつきながら『ココロネ』について話し始めたのでした。



マルク「この世界では当たり前になっている『ココロネ』。これは『魂』と同異議なのサ。これが色づいているから、生命は喜怒哀楽を感じることが出来る、と調査の結果が出ているな」

前田「物である僕達にもそのようなものがあるのですか?」

マルク「あぁ。物であっても、植物であっても、動けなくても。『生きてさえ』いれば、ココロネは誰にでも生まれる。心臓とは違うのサ。『心』が無いヤツは、この『ココロネ』ってのは存在しないのサ」

リピカ(Y)「人体って不思議なのさ…」

前田「誰にでも存在する…けれども、存在しない人もいるというわけですよね?」

マルク「勿論サ。かつてはボクも『ない』って言われてたくらいだからな。おそ松みたいに『ココロネ』を奪われるってことは、魂を奪われるも同義なのサ。そうなると…ただの空っぽな人形になっちゃう。人を操る能力があるヤツらなら、簡単に洗脳は出来るだろうな」

YUMA「5回目の時に牢獄から見えたあのおそ松もそうなのか…」

『…じゃあ、兄さんに『ココロネ』を取り戻させれば…。おそ松兄さんは『元通りになるかもしれない』ってこと?』

前田「???」



 マルクが説明をしている途中。その場にはいない人物の声が聞こえてきました。前田が後ろを向いてみると、そこにいたのは緑色のカーディガンを来た男。チョロ松でした。
 彼は『盗み聞きするつもりじゃなかったんだ』とだけ詫びを入れ、会話に参加してきたのです。



チョロ松「ごめんね。話が聞こえてきちゃって…。メフィストの野郎はおそ松兄さんの拗ねた感情を利用して、『ココロネ』を奪っちゃったってことだよね。だから…あんな悪魔みたいな姿に」

マルク「十中八九そうだろうなー。ヴィルが言ってたんだけど、魔族ってのは『負の感情』を媒体にして心を消し去り、人を操るんだって。神様もきっと同じことが出来るんだろうな」

前田「鬼丸さんがあんな風に僕達に刀を向けたのも…。それが原因なんですよね。粟田口の刀派の僕としては、心が痛みます」

チョロ松「おそ松兄さんがメフィストを連れて消えちゃった後さ。カラ松と『おそ松兄さんを助ける為に』どうにか出来ないかって考えたんだよ。だから…。兄さんを助ける為の手掛かりなら何だっていい。知りたかったんだ…」

マルク「まーまー、そう落ち込むな。『ココロネ』が魂だってんなら、もう一度心を取り戻させれば元に戻るってのは確かに理に適っているな。だけど…おそ松の場合はそれ『だけ』じゃダメな気がするのサ、ボク」

リピカ(Y)「どういうことなのさ?」



 どうやらチョロ松、あの後カラ松も交えて『おそ松を助ける為に何か情報を得たい』と話し合っていたようで。あんな状態になった兄でも、大切な兄弟で家族です。助けたい気持ちの方が強いのでしょう。
 チョロ松の考えに、確かに理に適っていると頷くマルク。しかし、それだけではおそ松は助けられないだろうとも口添えしました。どういうことでしょう?



マルク「これはボクの推測なんだけど…。あいつの心を取り戻して人間に戻しても、お前ら仲違いしてんだろ?仲直りしなきゃすぐに逆戻りサ!」

チョロ松「あっ…。でも、元はあいつが勝手に拗ねただけで…」

前田「その『拗ねた原因』を見極めて、チョロ松殿達ご兄弟が理解して差し上げることが大事、とマルク殿は言いたいのですか?」

マルク「そ。あいつが魔族になっちゃった直接的な原因って、『お前らに拗ねた思い』をメフィストに利用されたからだろ?だったらちゃんとお互い話するのサ!今のままだと無理矢理元に戻しても状況が悪くなるだけだと僕は思うよ」

チョロ松「…………」

パステルくん(Y)「ぼにゅ…」

チョロ松「……そう、だよね。マルクの言ってることは分かる。自覚もしてる。でも…僕自身が納得できなくて。あいつは我儘で大人になっても小学生みたいで、兄弟だからって振り回して。でも…理由も無く人に悪意を向ける奴じゃない。
     ―――逃げてるのは、僕の方なのかもしれないね」

前田「チョロ松殿…」

チョロ松「あはは。湿っぽくするつもりはなかったんだけどね…。ごめんね。でも、兄さんを元に戻せる手掛かりはちゃんとつかめたし…僕自身も、逃げてないでちゃんと現実と向き合わないといけないし。もう一度カラ松と話し合ってみるよ」

マルク「お前がどうするかはお前が決めることだけど。困ったらボク達に相談するのサ?一人で悩んでても見えてこない答えは、他人に話すことで解決の糸口が見つかるかもしれないからな。今みたいに」

チョロ松「…うん。ありがとう。もしもう一度兄さんに会えるなら…。今度こそちゃんと話し合いたいな」



 チョロ松はそんなことを言った後、腕時計を見て『しまった』という顔をしました。どうやら別の人物に頼まれごとをされていたのを思い出したようで。申し訳なさそうに一同に断りを入れ、いそいそと彼は向こうへ去っていきました。



YUMA「…深入れしない方がいいこともある、ってか」

リピカ(Y)「んー?詳しく調査したかったんじゃないのさ?」

YUMA「ん。その気持ちはある。けど…『知ってはいけない領域まで足を踏み入れたら』まずいからな。流石に」

パステルくん(Y)「にゅー」



前田「ご兄弟を助けたいという気持ちは僕も分かります。僕も…粟田口の兄弟が心配です」

マルク「えっと…確か、お前以外の兄弟が行方不明なんだよな。もしかしたら鬼丸みたいに操られてたり…してないといいな!」

前田「ご心配をおかけして申し訳ございません。助ける為にも…僕も、もやのかかった記憶を早く取り戻さなければ」

マルク「お前も切羽詰まる前にちゃんとサクヤや大典太、頼れよ?お前の主と、仲間なんだからな!」

前田「…そうですね。勿論マルク殿も仲間ですから、頼りにさせていただきますね」

マルク「武器のことは分からんが、魔法のことなら頼りにしてほしいのサ!」




 悪魔になってしまったおそ松も。行方不明の粟田口を含めた刀剣も。収束すべき場所は1つなのかもしれませんね。
 そんなことを思いながら、前田はマルク達と別れアクラルの元へ帰っていくのでした。