二次創作小説(新・総合)

打ち上げ ① ( No.112 )
日時: 2021/01/18 22:01
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 6..SoyUU)

アクラル「それじゃあ、以上をもって次回逃走中に関してのお知らせを全部終了するぜー!長々と付き合ってくれてありがとな!ご自由に打ち上げを楽しんで帰って行ってくれよな!」



 各MVPの発表も無事終了し、今回も打ち上げパーティが開始しました。
 サクヤ達はまだ戻ってきていないようですが、まだ用事が全部終わっていないのでしょう。彼女達の様子は後で見るとして、今は打ち上げパーティの様子をお送りいたしましょう。
 Ga.はやっとクレアと鉢合えたことに感動し、食事に手を付けずわんわんと号泣していました。



Ga.「クレアたそ~~~~~♡♡♡」

konakun.「泣きながらハートマーク飛ばすなんて色んな意味で凄いよじーくん」

クレア「今回は一緒にお仕事できなくて本当にごめんなさいっ!でも、次の逃走中でまた逃走者として走ってくれるんですよね!私応援してますから!」

Ga.「優しいなぁクレアたそ~♡ 作者陣唯一の逃走成功者として逃げ切らないわけにはいかないでしょ!」

かえ(k)「かえの占いマシーン4号によると…。じーくんが次逃走成功できる確率は……。うーん…かえには理解不能」

Ga.「理解不能!!」

ミレイユ(Ga)「じーくんさんが次逃げ切れるかどうかは、次までのお楽しみってことなんですかね?でも…確率になんか負けるじーくんさんじゃありませんし、次回も逃走成功してくれることを祈ってます!」

メタマリ(Ga)「メッタルマリオモ応援シテマース!」

Ga.「何か次の作者陣音ゲー知ってる人ばっかりだし、前よりはやりやすい気がするんだよな。よーし、次も頑張るぞ!」

クレア「あ、話に流されてしまう前にお土産を渡しておきますね!はい!」



 Ga.が次回逃走中へ改めて意気込んだ後、クレアは思い出したように彼に紙袋を渡しました。そういえば彼女、Ga.にお土産として懐中時計を買ってましたもんね。驚きつつ紙袋を受け取り、中にあった箱を開いてみると…。Ga.の目の色が変わりました。



Ga.「な、ななな、なんだこれ~~~!!!クレアたそ、これ高かったんじゃないの?!」

クレア「流れの行商人らしき女の人から買いましたのでそれほどお金は使ってません!それに、こういうのはお金ではなく気持ちです!先程も言いましたが、今回一緒にお仕事が出来なかったお詫びみたいなものですので…」

Ga.「デザインも超綺麗だし、ごつくないし、手ごろなサイズだしクレアたそセンスある~♡ さっすがクレアたそ~♡ 俺大切にする!!」

クレア「喜んでいただけて良かったです!これ、紅葉の彫り物が凄いお洒落で素敵だと思いませんか?」

Ga.「うんうん超綺麗。時計全体のデザインの邪魔になってないし。いや邪魔になってたとしてもクレアたそからのプレゼントなら何でも嬉しいぞ~♡ ありがとうクレアたそ~♡ クレアたそ~♡」

konakun.「次の逃走中じーくんの頭上に『クレアたそカウンター』つけてみたら面白いかな?」

かえ(k)「カウンター…。それなら、かえ開発できるかも…」

メタマリ(Ga)「メッタルマリオモオ手伝イスルヨ!面白ソウダモン!」

Ga.「クセが凄い!!」



 『クレアたそカウンター』が次回ゲームの彼の頭上についてしまうかは置いといて、喜んでもらえて良かったですねクレア。
 どうやら別の作者もコネクトワールドの住人と交流を繋いでいるらしく。様子を見てみましょう。





柊「へぇ~。今は石丸くんが三日月の主なのか。刀のままだけど」

石丸「そうなのだ。……って、もしかして三日月くんの声が聞こえるのかい?!」

柊「作者の中では多分私だけだとは思うんだが…。私も自分の世界で審神者をやっているからかもしれないな」

三日月『なるほどな。異界の俺は『審神者』という奴に従っているのだな。道理で俺のことをすぐに分かったという訳だ』

柊「むしろそれが普通だと思うんだけど…。何がどうなって石丸くんの元に三日月がいるのかは分からないけど…。この世界には『審神者』という役職は無いって考えていいんだな?ルキナさんがなんか言ってたのが引っかかるけど…」

石丸「僕自身は聞いたことがない単語だな。もしかしたら『異世界』とやらにはその役職に就いている者がいるかもしれないな!」



 別のテーブルで、柊は刀を持った石丸くんが珍しいのか話しかけていました。そこで三日月がこの世界にも顕現していることに気付いたのです。『審神者』が存在しないのに刀剣男士がいることに驚きつつも、それもこの世界の特徴なのだとすぐに理解を示しました。
 三日月もいるのなら、と彼女は『他の刀剣男士は顕現していないのか』ということを彼に問います。すると…彼は少し考えた後、こう答えたのでした。



石丸「三日月くんの他に誰がこの世界にいるか…。大典太さんと前田くん、それとここにはいないが鬼丸さんや大包平さんも顕現していたはずだな!」

柊「レア5ォ」

石丸「???」

柊「……ごめんごめんこっちの話。三日月の他にもそんなに顕現していたとは…。それも偏りが凄い。そんなに顕現しているのなら…虎徹も…虎徹の彼も顕現していたりは……」

三日月『作者殿。恐らくお主の考えている奴はこの世界に顕現してはいないと思うぞ。いるとしても……考えられるとすれば。空の上か』

柊「……おそらきれい?」

石丸「?????」

柊「ごめんごめんこれもこっちの話だ。そうか…石丸くんが話してくれた刀剣男士以外は顕現してないってことでいいんだな。それなら、折角だしこの世界の大典太達にも挨拶してから帰りたいんだけど…。どこにいるか分かるか?」

三日月『俺も会わせてやりたいのは山々なんだがなぁ。大典太は今あやつの主と共にまだ仕事中なのだ。この打ち上げ会場にはいないぞ』

石丸「前田くんもまだアオイの島から帰ってきていないのだ。『後処理』とのことだが…。帰りが遅いと心配になってくるな」

柊「そっか…。ここにはいないのか…。まぁ、でも大典太も相当強い刀だし。前田くんもしっかりしてるし。極めれば強いし。大丈夫だとは思う。そう心配するもんじゃないと思うな」



 折角だから三日月以外の刀にも挨拶してから帰りたいと申し出ましたが、あいにく大典太も前田もこの場にはまだ戻ってきていません。大包平は元々今回は顔を出してませんからね。
 このまま自分の世界に変えることになりそうだと彼女は少ししょんぼりしましたが、気を取り直し打ち上げを精一杯楽しんで帰ろうと気持ちを切り替えたのでした。



三日月『……大典太の奴。今回のことで少しでも龍神殿と歩み寄れればいいのだが…。いや、問題は大典太の方ではなさそうか』

石丸「急にどうしたのだね?サクヤさんも大典太さんもいいコンビではないか!」

三日月『そうだな。だが…。なんだか嫌な予感がしてな』

石丸「『じじいの勘』か?」

三日月『外れればいいのだがな。今は…じじいの勘と言っておこうか』



 どうやら三日月、サクヤと大典太にちょっと不安な感情を抱いている様子。なんだかんだ言って察しのいいこのじじい。勘が外れればいいと自分でも言っていますが…。彼女達の身に悪いことが降りかからないことを祈ります。



 さて、そろそろサクヤ達の様子を見てみましょうか。
















~アオイの島 城下町・下町 甘味屋~





チョロ松「―――ってことは、僕達以外はみんなこの島で起きたこと忘れてるってことですか?!」

サクヤ「そうなりますね。事態の混乱を抑える為にも、このことは内密にお願いしたいのですが…」

カラ松「言わない言わない!……おそ松のことも忘れてしまっているのか?」

大典太「……いや。あんた達がアオイの島に無断で来たことは覚えていると主の兄弟が言っていた。記憶が封じられているのは、あくまでも『邪神』が直接絡んでいる事象だけらしいな…」

前田「そんなに都合よく記憶を弄れるものなのですね…。不思議なものです」

十四松「ふしぎなものでんがな!パフェうんまー!」

チョロ松「呑気にパフェ食ってるお前もお前だよ十四松」



 甘味屋で合流したサクヤ達。三つ子に『記憶を曇らせる魔法』について説明を受け、ここで待機してほしいと言われていました。人外染みた説明を受け一瞬だけ頭が混乱するも、とりあえず店から出なければなんの問題もないということで。
 前田と一緒に特大のパフェを頬張る十四松を見守りながら、おそ松の今後のことについて話し合うのでした。



サクヤ「まずは。おそ松くんを無事に人間に戻せたようで良かったです」

チョロ松「本当大変だったよー…。何度くじけて心が折れそうになったか。…でも、兄さんも兄さんなりにとり憑いてる奴に抗ってたみたいだし。僕達だけじゃ絶対に助けることは無理でした」

大典太「……そうか。……役に立たんと思っていたが、役に立ってよかった」

カラ松「いやいや!大典太さんのお守りが無ければあの悪魔を完全に祓えませんでしたし!本当にありがとうございました!」

大典太「……礼を言われることをした覚えはない。結局はあんた達の選択が、兄弟を救ったんだ」

サクヤ「好意は素直に受け取っておくものですよ、大典太さん」

前田「今回の影のMVPですからね!」

大典太「…………」



 あらら。まぁ今回は大典太も大手柄だったんですから。感謝の言葉は素直に受けとめておきましょう。現在、おそ松はお店の人に承諾を貰い、長椅子の席で眠らせています。どうやら精神的なダメージが相当強かったらしく、しばらくは目を覚まさないようで…。大きないびきをかいて今でも寝ています。



サクヤ「おそ松くんの今後のことなのですが…。一旦私に彼を預けてはいただけませんでしょうか」

カラ松「それは構わないが…。まだおそ松のことについて何かあるのか?」

サクヤ「健康視察と、精神や記憶に障害がないかを本部で検査してから様子を見たいと思っています。一時的にとはいえ、おそ松くんは人の身から一度堕ちています。その影響がないか、調べておきたいのです」

チョロ松「成程…。確かに完全とは言えないし、ここはサクヤさんに任せた方がいいかもね」

サクヤ「はい。ということで、大典太さん達はこれを」

大典太「………?」



 おそ松に人外になったことの影響がないか調べる為、彼を連れてサクヤは本部に戻ると言い出しました。彼女の説明を受け、確かにそうだと3人もうんうんと頷きます。仮におそ松が目覚めて、悪魔になった影響が出ていたせいで3人が怪我をするようなことがあれば意味がありませんからね。
 『戻る』という言葉に反応し、動こうとした大典太を遮るようにサクヤは懐から5枚のチケットを取り出しました。



サクヤ「この近くの『紅葉の湯』の温泉の券です。こちらのお店でお食事をしましたら店主の方からいただきまして」

十四松「えーっ?!おんせんー?!」

サクヤ「丁度5枚ありますので、5人で行ってきてください。その間に検査は済ませておきますので」

カラ松「えっ?!いや、それはありがたいが、オレ達だけで楽しんできていいのか…?!」

前田「そうですよ主君。大事な仕事を主君にだけ任せ僕達だけで楽しむなんて出来ません」

サクヤ「しかし…。この券、当日限りなのですよねぇ。本部に戻ると打ち上げの片付けやらなにやら手が回って当日中に行けなくなる可能性があります。であれば。行けるうちに行っておいた方がいいと思うのです」

チョロ松「それは確かに分かるけど!サクヤさん1人に仕事を押し付けるのもどうかと思うんですけど…。いや僕達に出来ること探してもない気もするから話に乗った方が良い気はするんだけど」

サクヤ「それに。大典太さんも前田くんも、3人と仲良くするチャンスだと思うのですよ」

大典太「……あんたなぁ」

カラ松「―――なるほどな!ならばこのナイス松ガイカラ松が優雅にソードボーイズを温泉へと導いてやろうではないか!」

前田「えーっと…?」

チョロ松「理解しなくていいよ。ただのイタイ言動なだけだから」



 あらら。おそ松のことは自分に任せて5人で温泉に入ってこいとの通達。まぁ、確かに刀剣男士二振はともかく、三つ子は一緒に帰ってもおそ松の検査が戻るまで何もやることが無いですからね。ならばチケットを無駄にしない為にも温泉に行けと。成程。
 それに、サクヤは三つ子と二振を交流させようと思っていたようで。刀と人間とはいえ、同性同士話せることもあるでしょうし。自分がいないことで出来る話もあると思ったのでしょう。

 浮かない顔をして渋っている大典太をなんとか説得し、カラ松が代表してチケットを受け取りました。それと引き換えに寝ているおそ松をサクヤに託し、一同は会計後店の前に集合します。



チョロ松「その『記憶を曇らせる魔法』って…もう発動してしまったの?」

大典太「……城から感じる嫌な空気が完全に消えている。―――宝玉は破壊されたんだろう。『魔法』とやらの発動条件は『大和城の宝玉が破壊されること』だ。ならば、もう既に島の連中の記憶は曇っているはずだ…」

カラ松「つまり、オレ達が今出てもこの魔法の影響を受けることは…」

サクヤ「大丈夫です。発動時にこの店にいたのですから。影響は受けないはずです」

十四松「わーい!それなら安心して温泉に行けるね!」

大典太「……主。本当にあんただけでいいのか。俺は別に温泉に入らなくても…」

カラ松「それはオレが許さないぞ大典太さん!オレは大典太さんと積もる話があるんだ!」

チョロ松「折角の機会だし、僕も聞きたいことあったんだよね。だから一人だけ逃げるなんてことは許さないからね」

十四松「卍固め?!卍固めする?!」

前田「十四松殿はそんな凄い技が使えるのですか?!」

チョロ松「……多分大典太さんの方が身長も力も強いから今はやめた方がいいと思うよ十四松」

十四松「あい!」

サクヤ「逃がしてもらえそうにありませんね、大典太さん」

大典太「…………」

前田「折角の主君の計らいなのですし、無下にするのは主命に反すると思いますよ」

大典太「……わかったよ…」

十四松「わーいわーい!」




 大典太はサクヤについて一緒に戻ると言いかけますが、三つ子の怒涛の説得と前田が三つ子側についてしまったことで折れざるを得ませんでした。しっかりと逃げ道も塞がれてしまいましたね。やれやれ。
 その後も談笑を続けながら『紅葉の湯』まで3人と二振を送り届けたサクヤ。中に入っていく彼らを見送りながら、彼女はおそ松を担ぎ直し本部へと戻っていったのでした。

打ち上げ ② ( No.113 )
日時: 2021/01/18 22:08
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 6..SoyUU)

 サクヤと別れ、早速この島自慢の温泉ののれんをくぐる3人と二振。
 大典太は自分が政府の人間に何をされたのかが身体に染みついている為、頭では分かっていても彼らに近付くことが出来ませんでした。





~城下町・下町 『紅葉の湯』~



チョロ松「十四松。赤塚の風呂じゃないんだから泳いだりすんなよな」

十四松「あい!分かってまっする!」

チョロ松「カラ松も風呂場で歌なんて歌うんじゃないよ?」

カラ松「うっ…。露天風呂もあると聞いているし大声で歌ったっていいじゃないか!」

チョロ松「だから!!ここは赤塚じゃないの!!!僕達だけの貸し切りじゃないんだから静かに入れ!!!」

前田「あ…あの…。番台の方が困ってらっしゃるのですが…」

大典太「……今でも十分騒いでいることに変わりはない」

チョロ松「スミマセン」



 主にチョロ松の喧しい声に、温泉を利用していた客も受付の番台も困ったようにこちらを見ています。赤塚の風呂屋じゃないんですから。静かにしましょう。
 前田がそれとなく彼に伝えると、自分の状況を知ったチョロ松はまごまごと謝り静かに番台の元へ向かいました。そのまま無言でチケットを5枚渡すと、『賑やかなご家族ですね!』とフォローしてくれました。優しいですね。チョロ松、なんだか傷をえぐられたようにダメージ負ってるみたいなんですが。大丈夫ですか?



チョロ松「変にフォローされるとこんなにも精神的にダメージ喰らうんだね…」

前田「まぁまぁ。道具もいただけましたし、脱衣所へと向かいましょう!」



 落ち込むチョロ松を前田がさりげなくフォロー。流石は短刀、縁の下の援護に関しては完璧ですね。カラ松達もそれに続くように『男』と書かれたのれんを潜り、脱衣所へと向かうのでした。








 脱衣所は簡易的に棚が区切られており、透明な扉のいくつかに籠が入っています。どうやら温泉に入っている客もぽつぽつといるようですね。
 早速服を脱いで温泉に入る準備をしていましたが……。十四松、大典太をガン見。その圧力に気付き後ずさる大典太。何が気になるのでしょうか。



十四松「じーっ」

大典太「……俺の身体を見ても何も出てこないぞ。あるのは陰気な雰囲気だけだ」

十四松「いやー。おおでんたさん鍛えてるなーって。腹筋凄いよねー!にーさーん!すっげーよ!おおでんたさんの腹筋すっげーよ!!」

大典太「……主を守る為に鍛錬は欠かせないからな…。あの後、主に許可を取って稽古場で手合せもするようになった。走り込みや基礎訓練も毎日欠かさずにしている」

カラ松「ぱ、パーフェクトシックスパック……!!ま、眩しすぎるーっ!!」

チョロ松「なんか大典太さんの身体つき見ると僕ら本当貧相で平凡だよね。少し鍛えないと…」

前田「しかし、前線に立って戦うような暮らしをしてこなかったのですし…。最低限太らない身体を作る為の運動だけでいいのでは?」

カラ松「そういわれると何も返せない…が。折角渋谷でみんなを守る力を得たんだ。それを無駄にするようなことはしたくない」

大典太「……だが、無理な鍛錬は身体を痛めかねない。今の自分の体力にあった鍛錬…。あんた達の言葉で言えば『運動』か。それをすべきだ」

チョロ松「なんだか大典太さんってたまにお医者さんみたいな物言いするよね。やっぱり『病気のお姫様を救った』って逸話がそういう考えを引き起こしてるのかな?」

大典太「……俺なんかより知識がある連中なんてごまんといるだろう」

前田「大典太さん、褒められてるんですから素直に喜びましょう!」

大典太「……どうせ空気を読んでいい言葉を選んで言ってるだけだろ…」

チョロ松「オイコラ僕は心からの本音を言ってるだけなんだけど?!」

カラ松「チョロ松の本音…。口が悪くなるところか?」

チョロ松「ケツ毛燃やすぞ」

カラ松「なんで?!」

十四松「にーさん!にーさん!ぼくもうおふろ入りたい!行こう行こう!」



 大典太の身体つきについてで話題をここまで膨らませる三つ子。ぽつぽつながらも大典太もちゃんと言葉を返しているので、話が出来ない訳じゃないんですよね彼。ただ陰気なだけで。
 チョロ松とカラ松が小競り合いを起こしそうになったところを十四松がすかさず『風呂に入りたい』との一言でぴしゃりと止め、身体が冷えるのも良くないと早速温泉に浸かりに行くのでした。
 ……余談ですが、大典太の立派な腹筋。イラストレーター様から『霊筋』って呼ばれてるらしいですよ。








 ガラス戸を開けると、そこに待っていたのは清潔感溢れる洗い場でした。洗い場内の温泉を挟んで向こうにガラス戸がもう1つあり、その向こうが露天風呂になっているわけですね。
 ガラス戸の向こうの紅葉の美麗さに一同は言葉を失います。ここですらこうなのに、直に見たらどうなってしまうんでしょうかね。突っ立っている訳にもいかないと各々洗い場に道具を置き、汚れた身体を洗い始めました。シャワーから出てくるお湯の気持ちよさに、今まで溜まった疲れがどっと消えていくのが分かります。



チョロ松「あー…。シャワーだけでも疲れが取れていく…」

カラ松「自分で言うのもなんだが、オレ達今回本当に頑張ったもんな」

チョロ松「そうそう。自分で言っていいんだよ今回は。それくらい動いたんだから」

十四松「無断で来ちゃったけどね!あはは!」

カラ松「じゅうしまぁ~つ?」

チョロ松「事実だろ。サクヤさんが事情を飲んでくれたことも、おそ松兄さんを救えたことも…。全部彼女達が気付いて、助太刀に来てくれなかったら絶対に無理なことだった。むしろ怒られて職を失うことも覚悟の上だったんだぞ僕」

カラ松「そうだな…。今こうして、風呂に入れてることも…。事実として受け止めていかないとな」





前田「……仲直り、できそうですね。三つ子殿」

大典太「……俺にはよく分からんが、あそこまで繋がりを大事にしているんだから大丈夫だろう」

前田「僕も気持ち、凄く分かりますよ。粟田口の兄弟と接している時を思い出しましたもん」

大典太「……前田。あんた、なんか思い出したのか?」

前田「うーん。思い出したかどうかは分からないんですが…。和室がある城のような建物の中で、仲良くかるた遊びをしたりした思い出は最近ぼんやりと浮かんで来るんです。その中に…僕と同じ服を来た、同じくらいの背丈の少年達がいるんです。だから、兄弟なんだろうとは思うんですけど」

大典太「……そうか」

前田「鬼丸さんのこともそうですが…。大典太さんも、早く仲間と沢山お話しできるようになるといいですよね!それに、もしかしたら大包平さんのように大典太さんと同派の刀も心優しい誰かに拾われてるかもしれませんし」

大典太「……心優しいかは知らないがな」

前田「もう!大典太さんはすぐ後ろ向きに考えるんですから!」



 各々積もりに積もった話を零します。前田も靄がかかっていた記憶が少しずつ蘇っているようですね。……と、いうことは。大典太は政府の刀ですが、もしかしたら前田は『どこかの異世界の本丸の刀だった』可能性も否めませんよね。彼に何があって、天界に仕舞われていたかは分かりませんが…。



 身体を清めたところで、合流し彼らは早速露天風呂に入りに行きました。折角だからそっちに浸かって帰りたいですからね。十四松が『たのもー!』と言いながら勢いよくガラス戸を開けると、そこには目いっぱいの紅葉と、それに広がる透明なお湯が彼らを待っていたのでした。タイミングよく、誰も入っていない状態のようですね。
 感動のあまり飛び込もうとする十四松を兄2人が宥め、静かに入浴することを促します。3人が入ったのを確認した後前田に先を譲り、大典太は静かに足先を湯に浸らせたのち、彼らとは離れた場所に体育座り。これだけ体育座りが似合う190cmも見たことがありませんが。ちょこんと座った彼に『早速離れようとしないで?!』とのツッコミが。
 いつの間にか隣に迫られていた十四松に背中をぐいぐいと押され、大典太は渋々近くまで移動するのでした…。



大典太「……俺が近くにいたらあんた達に悪い影響が出かねない。向こうで湯を楽しんでるよ…」

チョロ松「それ散々僕達と一緒に甘味屋で話をした後に言う台詞かな?てか、近くにいてもなんら体調に問題はないしその言葉も無駄だよ。ね、カラ松!」

カラ松「そうさ!オレ達はぴんぴんしてる!だから不安に思うことはないぞ大典太さん!」

前田「それに、十四松殿に背中を押されている時点で影響がないことはもうご自分でも分かってますよね大典太さん」

大典太「…………」

十四松「おおでんたさんは人になれてないのかな?」

カラ松「まぁ…。大典太さんは人慣れしてないというか、オレ達を含めて他人を怖がっている節があるのはオレも分かるからな…。オレも過去に他の人に恐怖を抱いたことがあるから、気持ちは分からんでもない」

大典太「……あんたが?」

チョロ松「この世界に混ぜられるまでに色々あったんだよ。おかげでカラ松は普通の体力じゃなくなっちゃったし、僕は一時的に情緒不安定になって沢山迷惑かけちゃったからね…」

大典太「(青いカーディガンの奴の霊力が、風呂に入る時に一気に下がったのはそのせいだったのか…)」

十四松「でも今はにーさん達すっげーげんき!」

前田「三つ子殿も、過去に色々苦労をしてきたのですね…」

チョロ松「そういえばさ、僕気になってたことがあったんだけど…。折角だから聞いてもいい?大典太さん」

大典太「……あまり答えに期待はするなよ」

チョロ松「大したことじゃないから大丈夫だよ」



 どうやらチョロ松、大典太に何か聞きたいことがあったようで。折角の機会だからと聞いてみることにしました。どんな質問が飛んできてもいいように、あらかじめ『良い答えは期待するな』と釘を指す彼。チョロ松はそれに『大したことじゃない』と返し、質問を彼にぶつけるのでした。



チョロ松「大典太さんってサクヤさんと契約して近侍になってるんだよね?……それにしては感情を出し渋っているような気がするんだけど…。僕の気のせいかな?」

大典太「……俺は前田みたいに感情を表に出すような性格じゃないのは自覚しているからな。積極的に出そうとも思っていないが」

チョロ松「そ、そっか。性格的な問題なら仕方がないね。けど…。なんだかね。近侍なのに、たまによそよそしい感じがあるなぁってアオイの島で話してた時に思ってて、さ。大典太さん。サクヤさんに何か思うことでもあるのかな?」

大典太「…………」

カラ松「あ、それはオレも気になっていた。確かに2人の間には絆があるが、サクヤさんも大典太さんもどこかよそよそしいというか…。他人行儀というか。深く入り込まないようにしているようにオレも感じるんだ」

前田「…………。大典太さん。多分、このまま黙って押し切ることは無理だと思いますよ」

大典太「……あぁ」



 観察眼が鋭いというか、単に気になる性格なのか。大典太とサクヤがどこかよそよそしいとチョロ松は指摘。それにはカラ松も気付いていたようで、何故かを彼の質問に重ねる形で問いかけてきます。大典太は黙ってその場を乗り切ろうとしましたが、恐らくこのままでは何も進展しない。そう思った前田が助け舟を出しました。大典太は意を決し、彼女との関係をぽつぽつと話し始めたのでした。



大典太「……このことは他言無用にしてほしいんだが。出来るか」

チョロ松「うん。口は堅い自信があるから。……こいつらはどうか知らないけど」

カラ松「お、オレだって約束は守るぞ!」

十四松「だまれっていうならだまるっすよぼく!」

チョロ松「そういう意味じゃねえ」

大典太「……話を戻していいか。―――それで、あんた達が抱いていた『よそよそしさ』だが…。確かに俺と主は主命を果たす契約をしている。だが…。それは『仮』のものだ。前田と違い、本来の契約を俺は果たしていない」

チョロ松「えっ。ええええええっ?!」

カラ松「サクヤさんは良くも悪くも他人に平等だから、なのか?」

大典太「……詳しくは俺も知らない。だが…主は『俺とは本来の契約は果たせない』と言った。本当は前田とも契約をしないつもりだったが、前田の熱に折れて契約したと。言っていた」

前田「そうだったんですか。あの時に渋ったのは、本音だったのですね…」

大典太「……あぁ。だから、俺は主の気持ちを優先して本来の契約は果たさない。仮の契約でも、俺に主を守ることは出来るからな」

十四松「でも…。おおでんたさんはどう思ってるの?サクヤさんと、ほんとうのけいやくをしたいんじゃないの?」

大典太「……俺の気持ち1つで意見が変わるわけがないだろう。主にも、主なりの理由があるんだからな…」

チョロ松「待って。ってことは…大典太さんはサクヤさんと『本来の契約』をしたいって思ってるんじゃない?」

大典太「…………」



 チョロ松がその言葉を言った瞬間、大典太の胸が再び『ちくり』と痛みました。以前から感じているこれは何なのだろうか。彼らに告げたら、答えを教えてもらえるのだろうか。確かに……。言われてみれば、サクヤは自分を閉所から連れ出して、大切にしてくれた恩人です。彼女のことは命に変えても守る。そう心に刻んだのはそう遠い話ではありません。
 ……彼は意を決して、三つ子に胸の痛みについて聞いてみることにしました。



大典太「……以前からなんだが…。主が『契約』に関する話をすると、いつもここが痛むんだ。俺にはその正体が分からない…。だから、どうすればいいのか答えが見えない」

カラ松「胸が痛い…。やっぱり大典太さんはサクヤさんと『本来の契約』を果たしたいんじゃないのか?」

チョロ松「大典太さん、凄い我慢してると思うんだよ。本当はサクヤさんの刀としてもっと活躍したいのに、彼女自身の気持ちを優先して自分の気持ちを抑え込んでしまってる…。その胸の痛みは、そこから来てるんだと僕は思うよ」

前田「大典太さん…。主君の過去に何があって、そのように契約を嫌がるのかは分かりませんが…。大典太さんも今は一人の『心を持つ者』です。刀ではありますが…。主君に、一度その気持ちを伝えてみるのもいいのではないでしょうか?」

大典太「……だが」

十四松「我慢しちゃだめだよ!おおでんたさんもサクヤさんもくるしいままなんて、ぼく悲しいよ!」

大典太「…………」



 自分でもわかっていなかった感情。これは自分の『我儘』なのではないか。自分は主の刀なのだから、自分の意見は抑えるべきではないのか。その痛みは、『サクヤの刀になりたい』という気持ちと、『サクヤの気持ちを考えたらそれは出来ない』という気持ちがせめぎ合って出来たものだと彼は解釈をしました。
 三つ子に言われたこと…。一度、自分の気持ちを主にぶつけるべきなのか否か。きっと、主の刀になることができれば…。前田のように、言いたいことを素直に言えるのではないか。


 しかし、今の彼にはそうする勇気がありませんでした。



カラ松「おそ松に届いたからこそ大典太さんに伝えるが…。本気で話し合ってみて、お互いの気持ちがわかることもある。気持ちがすれ違っているなら猶更だ。……大典太さんの気持ちを、一度サクヤさんに話してみるのも悪くない手だとオレは思うぞ」




 カラ松が優しく放ったその言葉。サクヤに自分の気持ちを伝えるべきなのか。否か。きっと伝えても契約は拒否されるとは思うが…。言葉にしなければ伝わらないことも、自分では気付いていました。
 答えの見えない問題。そんな彼の頭を素通りするように、そよそよと紅葉の葉は空へと舞ったのでした。