二次創作小説(新・総合)

ABT③『溝を乗り越える勇気を持って』 ( No.36 )
日時: 2020/12/12 22:15
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: okMbZHAS)

本部に無断でアオイの島にやってきてしまっていた保留組の3人。理由は勿論家族がらみなんですが…。
本音を隠して喧嘩もせずに、上っ面の友情や家族愛のまま過ごすって…。彼らにはどう写っているんでしょうね?

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~アオイの島 中央部~



チョロ松「……だぁーーーっ!!!アイツ逃げ足速すぎんだけど?!どこ行きやがったんだよあのクソ長男…!」

カラ松「こっちを確認してから逃げるように消えたし、オレ達のことは認識してるとは思うんだけどな…」

十四松「にーさん、ぼく達を見てこうげきしようとしてこなかったからまだ大丈夫だよ!さがそうよ!」



 アオイの島で絶叫しているチョロ松をカラ松は宥めていました。アクラル達が本部で確認した通り、3人は現在アオイの島でおそ松と追いかけっこをしていました。しかし、悪魔と人間…。人ならざる力を持つ存在に、たった3人のちっぽけな存在が適うはずもなく。おそ松には逃げられ、見失ってしまっていました。
 『おそ松は自分達を見て攻撃してこなかった。だからまた探せばいい』と十四松もチョロ松を落ち着かせようとしますが、チョロ松は『それもそうだけど!』と2人に向かって指を指しました。



チョロ松「って、ちょっと!今更だけど言わせてもらうよ。なんでカラ松達まで無断でこの場所まで来てんの?!絶対怒られるから僕だけで兄さんのところまで行くって言ったよね?!」

カラ松「何を言うんだ。おそ松の問題はオレ達松野家の問題だぞ?お前1人で抱えられる問題じゃないだろ」

十四松「自分達を置いていったらあきまへんがな!それに…チョロ松にーさん、無いと信じてるけどおそ松にーさんに変なこと言われて、また気分悪くして倒れたらどうするの?」

チョロ松「そ、それは…。でもっ、カーディガンだってちゃんと着てきたし!神様の加護がついているんだったら、僕の気分の悪さだって守ってくれるはずだよ。今の今までカーディガン着てる時に気分悪くなったことないし…」

カラ松「それはそうだが…。確かに、このカーディガンを着ている間はオレも他の人と同じように動いたり出来るな」

十四松「だからって1人でおそ松にーさん追いかけるのは駄目でっせチョロ松にーさん!」



 どうやら事の発端はチョロ松だそうで。『おそ松がここにいる』という情報を得て、当初は1人でおそ松に会いに行こうとしていたんですね。まぁ…いくらカーディガンの加護があるとはいえ無茶というものです。3人でも結構無茶な気はしますが。
 ちなみにカーディガン云々のお話は1回目のABTで語られているので、そちらを参照してくださいね。チョロ松の精神的なものやカラ松の身体的な後遺症もこのカーディガンの加護で相殺され、現在は普通に動けているという訳ですね。
 おそ松を見失ってしまった3人は、とりあえず観光客の邪魔にならないよう道の端によけて話を続けたのでした。



チョロ松「それにしても…。こんなところに来てまでなんだけど、ニアさんの言っていることは本当なのかな。『おそ松兄さんがこの島でなんかやらかすかもしれないから、止めるならその時では?』って言葉…」

カラ松「おそ松がここに来ていたのを見たから『おそ松がここに来る』ということは本当だったんだろう。だけど…『この島でなんかやらかす』って。どういうことだ?」

十四松「悪魔になったおそ松にーさんが、プレロマの時みたいに悪いこと企んでるとか?」

チョロ松「考えたくない…。おそ松兄さんの悪さは僕達でもなんとかなるレベルでいてほしい…」

カラ松「今は人間じゃなくて悪魔なんだから、そんな希望を持ったって無駄だぞチョロ松」

チョロ松「わかってるよっ!言ってみただけ。だけどニアさん含み笑いしてたっぽいし、それが嘘で僕達騙そうとしてるんじゃないかって心配でさ…」

十四松「何言ってんのさチョロ松にーさん!ニアさんが悪いことするはずないよ!」

カラ松「そうだぞチョロ松。ニアさんが悪さをするなら今までだってたっぷり時間があったじゃないか。それに、美女に悪い奴はいないんだぜ~?」

チョロ松「お前そんなこと言って何人悪女に引っかかってぼったくられたんだよ。はぁ…。カラ松はすぐに人を信じて騙されるんだから…」

カラ松「信じて穴に落ちるのと信じないで穴に落ちるのだったら、前者の方がいいだろう!」

チョロ松「そうじゃねえ!!!」



 どうやら『おそ松がいる』という情報源はニアらしく。サクヤが懸念した件といい、彼女は何を考えているんでしょうか。勢いでアオイの島にやって来たものの、チョロ松は彼女の言葉を未だに信じられずにいました。
 しかし、今まで仲間として助けてくれたんだから『ニアが悪さをするはずない』と反論するカラ松と十四松。まぁ、彼らは松野家の中で特に人を信じて騙されるタイプの人間ですからね…。お前の信用は身を滅ぼす、と正論で突っ込みましたが、カラ松には見当違いの受け答えをされた上、久々にかっこつけられました。



カラ松「それに、ニアさん…オレ達におそ松のことを話してくれた時、『かなり確信を持って』オレ達に言ってくれたように見えたんだ。だから……オレは、余計にニアさんが悪いことを考えているようには思えないんだ」

チョロ松「ハァ…。あの人常に笑顔で何考えてるか結構わかんないところあるの分かってる?」

十四松「あははー!ぼくといっしょだね!」

チョロ松「合わせるな十四松。ニアさん…。わざわざ僕達におそ松兄さんのことを喋ってくれたってことは、『僕達とおそ松兄さんを鉢合わせたい』はずなんだよね。説得であいつを元に戻せるとは思わないから、最悪殴り合いの喧嘩をしてでも元に戻さなきゃダメだけど…」

カラ松「……チョロ松。おそ松を殴るだけじゃ駄目だと思う。怒りに任せて自分の気持ち『だけ』を伝えたら、プレロマの時と同じになってしまう。堂々巡りだ」

チョロ松「それは…わかってるんだけど。なんでおそ松兄さんが拗ねてんのか僕には理解が出来ないんだよ…」

十四松「うーん…」



 ニアがわざわざ自分達に告げたということは、ニアは『おそ松と保留組を合わせたい』と思っているのではないかとチョロ松は推察。それに関してはカラ松も十四松も同じ考えを持っていましたが、会った後彼女がどうしてほしいのかまでを推測することは出来ませんでした。
 結局はおそ松を元に戻さなければここへ来た意味がありません。ニアの策略に乗ってしまうのは気持ちが悪いと思っていましたが、最悪殴ってでも元に戻さないといけないとチョロ松は告げました。
 しかし…。カラ松は『それでは駄目だ』と。こちらの一方的な都合で元に戻しても堂々巡りだ、と。そう返しました。6回目の時にマルクも同じことを言っていましたね。



十四松「おそ松にーさん…。ぼく達がみんないなくなっちゃって、つらかったのかな?」

チョロ松「辛いもんか。会ったら会ったで『僕達をニートに戻そうと』してくるしさ。自分の周りに兄弟がいないのが寂し……あっ」

カラ松「気付いたか」

チョロ松「……うん。おそ松兄さん、もしかして寂しかったのかな?カラ松を置いて松野家に逃げ帰ったあの日。サクヤさんにカラ松が受け入れられて、就職先まで提供してくれたあの日。……僕達が松野家を去った、あの日。
     おそ松兄さんはあの日から『松野家の日常が崩れた』って言ってたよね」

カラ松「あぁ。その後チョロ松と十四松も一緒に就職することになっただろ?その関係上で『松野家には帰れない』ことも告げられて…。オレ達はあの家に帰るとまたニートに逆戻りしそうだったし、しばらく本部でお世話になった方がいいと思ったからそうしたわけだが…。
    きっと、おそ松にはそれが寂しかったんだろうな。オレ達が戻ってこないと知って、『自分を置いて離れていった』って思ったんだろうな」

十四松「―――その後、ハスノさんに一松にーさんとトド松がスカウトされて…。トド松はカフェで仕事が出来るってきっと嬉しそうに面接受けに行ったし、一松にーさんも心のどこかで『このままじゃいけない』って思ってたんじゃないかな?
    おそ松にーさんは、それを『自分から離れて行っちゃう』っておもっちゃったんだろうなあ…。そうじゃないのになあ」

カラ松「あぁ。あいつは盛大な思い違いをしている。そして決めつけている。それをオレ達が和らげてあげないと、仮に無理やり元に戻したとしても…。すぐに悪魔に逆戻りだぞ?だから…オレは、ニアさんの策略に乗っかる形でもおそ松に気持ちを伝えた方がいいと思う」

チョロ松「兄弟なのに…。上っ面の感情で過ごすなんて僕はごめんだし。あいつに勘違いされて性質が悪いことなんて分かりきってることだし。―――ちゃんと、分かってもらわなきゃ。仲直りしなきゃ、だよね」

十四松「うん!おそ松にーさんとずっと喧嘩したままはぼくいや!だから、ぼくもおそ松にーさんと仲直りしたいです!!」

カラ松「……なら、早いところおそ松を探しに行かないとな。そしてちゃんと話をして…。おそ松に元に戻ってもらうんだ」



 やっとおそ松の『拗ねていた原因』に気付いた保留組。自分を見捨てたと思い込んだ寂しさから、兄弟に戻ってきてほしい、ニートに戻ってほしいとずっと思っていましたものね。そうではないとちゃんと言葉にして伝えなければ、お互いの感情はすれ違いのままになってしまいますよね。
 おそ松に『伝える言葉』をしっかりと胸に刻んだ3人は、再びおそ松を探そうと顔を上げました。すると―――。ふと、十四松の目に『とあるもの』が映ります。



十四松「…………」

チョロ松「十四松?道をぼーっと見てどうしたの?」

十四松「……見えるっす」

カラ松「何が?」

十四松「あっちに角と羽としっぽと青いスーツが飛んでいくのが見えたよ!」



 誰もいないはずの道を指さした十四松。その場所をカラ松とチョロ松も凝視。……確かに目を凝らすと、小さく角と羽と尻尾を生やした青スーツの男が見えます。男はこちらに気付いたのか、足を前に出して走り始めていました。



『…………』



 少しの沈黙の後。


















『―――おそ松じゃねぇかああああああ!!!!!』














~アオイの島 下町 商店街~





サクヤ「―――!」

大典太「……声、か。探してる連中のもので間違いなさそうだな」



 保留組を追っていた2人。チョロ松が不意に叫んだ声はしっかりこちらまで届いていました。声の方向から、大体の彼らの位置を割り出すサクヤ。特に危険そうな場所にいないとはいえ、この声が原因で敵に見つかる可能性も無きにしも非ずです。



大典太「……主。声の方向に追えばきっと会えると思う。追ってる奴に襲われてなければいいんだがな」

サクヤ「言葉の分析から、追っている側の台詞としか思えないので大丈夫だと思います。……これを逃せば完全に見失うかもしれません。行きましょう」

大典太「……承知した」




 チョロ松の声を頼りに、1人と1振も3人を追う!彼らは無事に合流することは出来るのでしょうか…。
 そして、松野家の三つ子はおそ松にちゃんと気持ちを伝えることが出来るのでしょうか…。