二次創作小説(新・総合)

ABT⑥『支配から手を伸ばせ!』 ( No.68 )
日時: 2020/12/29 22:48
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 5VHpYoUr)

サクヤ、大典太と別れおそ松を探す松野家の三つ子。
やっとの思いで彼を見つけますが、やはり会話は難しいのでしょうか…?

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~城下町・外れ~



チョロ松「十四松!おそ松兄さんの匂いまだ嗅げる?!」

十四松「だいじょーぶ!匂いは途切れてませんで!あっちに続いてる!」

カラ松「あの先は…。随分寂れているなぁ。こんなに賑やかな島なのに、こんなところがあるとはな」



 おそ松を追いかけていた松野家の三つ子。十四松の優秀な嗅覚を頼りに、彼を探します。くんくんと彼が鼻を鳴らし指を指したのは、『観光名所』とは言えない寂れた風景。カラ松はその寂しげな街並みに、心が少しだけ痛むのを覚えました。
 しかし、この先におそ松がいることは明白。どんな危険があろうとも、彼を助ける為にはこの先へと進まねばなりません。



チョロ松「…どうしたんだよカラ松。もしかして怖くて震えてる?」

カラ松「だ、誰がっ!大典太さんに貰ったお守りもあるし大丈夫さぁ~!」

十四松「手が震えてまんでカラ松にーさん!」

カラ松「これは武者震いさぁ~!……正味、オレが狙われるのは別にどうとも思わんが、お前達が怪我をする可能性があるんじゃないかって思ったらなあ…。怖くないと言ったら嘘になる」

チョロ松「全く…。まぁ、僕も怖くないわけじゃないしさ。今のおそ松兄さんに何されるかわかったもんじゃないし。でも…あいつを助けることが出来るのも、僕達だけだと思うんだよね。あいつの『寂しさ』ってのが分かった今なら…。ちゃんと話せる気がするから」

カラ松「そう…だな。話するにも何も、まずはおそ松を見つけないとな」

十四松「その粋でっせにーさん!だいじょーぶだよ。おそ松にーさんは絶対に助けられる!」

カラ松「十四松がそれを言うとなんだか本当のように聞こえてくるな!よーし、先に進むぞー!」

チョロ松「ちょっと?!ハァ…。まぁ、悲しい気持ちを抱えて進むよりはずっとマシだけどさぁ」



 改めて気持ちを新たにした3人は、目の前に広がる殺風景な街並みを賑やかに進んでいくのでした。









 ……しばらく進んでいると、ふと、空気が変わるのを感じます。寂れた寂しいものから、どこか『殺気』を感じるようなものに。
 そのぞわりとした感触に思わず立ち止まります。そして、十四松が何かに気付いたように言いました。



十四松「にーさん!この先におそ松にーさんいるよ!匂いが強くなってる!」

カラ松「でかした十四松!道は1本しかないし、ここを真っすぐ行けばおそ松に会えるということだな!」

チョロ松「でもさ…。なんかこの先今までと空気が違うよ。気を引き締めていかないと痛い目に遭うのは明白だ」

カラ松「何があってもオレが守ってやるさ!だから不安がるなチョロ松!」

チョロ松「それも込みで『気を引き締めていこう』って言ってんだろうが!!!」

カラ松「えぇ…」

十四松「……あ、遠目に角と羽が見える!多分あそこが行き止まりだよ!おそ松にーさん発見伝!!」

チョロ松「あっ、勝手に走るな十四松!!」



 後ろのやり取りを軽くスルーした十四松は、ふと目の前を指さしてそう言ったのでした。彼に言われ目を凝らして先を見てみると…確かに、目の前に羽と角が生えた男性の姿が見えました。もしかしなくてもおそ松で間違いありませんね。
 目標を見つけたと颯爽と駆けていこうとする十四松を追いかけるように追う2人。しばらく走ると―――。目線の先に、自分達が探し求めていた『男』が突っ立っているのが見えたのでした。

 あんなに自分達に追われたのに逃げようとしないのにチョロ松は少しだけ不穏な雰囲気を覚えましたが、そうは言ってられません。相手は空を飛べるのに飛ばない、ということは…。『ここに立ち止まる意思がある』ということになりますね。
 話すチャンスが出来たと一抹の望みを胸に抱え、3人はおそ松の元まで駆けていったのでした。









『―――遅かったじゃん。お兄ちゃん待ちくたびれて寝ようかと思っちゃった』

チョロ松「今まで僕達に尻向けて逃げ回ってた癖に、よくそんなこと言えるよね!行き止まりだから逃げる術失って諦めた、とか?」

カラ松「おそ松…」

十四松「おそ松にーさん!どうしてぼく達から逃げるの?!」



 3人の必死の叫びにも、おそ松は反応もせずだるそうにあくびをするだけ。自分を見放した『裏切者』とでも思っているのでしょうか。彼らを見る目はとても冷たいものでした。
 ―――どちらともなく黙り込んでしまい、しばらくの沈黙が続きます。それにも飽きたのか、おそ松は悪い顔で彼らにこう口を開いたのです。



おそ松「ま、『目的地』はここじゃないし~?お前達が必死になって俺を追いかけてるから『立ち止まってみても』いいかな~、と思っただけだよ」

カラ松「まだ逃げるつもりだったのか…」

おそ松「『逃げる』?違う違う、俺は逃げてなんかいないさ。俺は『移動』してるだけだよ」

十四松「『いどう』?どういうことなの?おそ松にーさん」

おそ松「そんなぁ。目的をお前らに言う訳ないじゃーん。俺を『裏切りやがった』お前達には」

チョロ松「お前…!」

カラ松「待ってくれチョロ松。暴力に訴えるのは良くないとさっき話したばかりだろう!」



 挑発するように3人を嘲笑うおそ松に、チョロ松が殴りかかろうと手を振り上げます。カラ松はそんな彼の腕を止めながら、何とか彼を宥めます。…それも自分にとっては退屈だったのか、氷のような冷たい目で見下ろすだけなのでした。
 カラ松はその真っすぐな目をおそ松に向けながらも、自分の言いたいことを叫びます。



カラ松「おそ松!!勘違いしているようだから正してやる。オレは…いや、オレ達はお前を裏切ったわけじゃない。お前を『捨てたわけじゃない』!!それだけでも認識を改めてくれ」

十四松「にーさん!!ぼく達、にーさんを助けに来たんだよ!にーさん、ひとりぼっちで寂しかったんでしょ?そうじゃないって教えに来たの!!」

おそ松「ハァ~?俺を助けに来たって~?な、何言ってんのお前ら。バッカじゃないの?いや馬鹿じゃん。俺は身も心も入れ替わったの。分かる?この『人じゃない』感覚。あのまま松野家にいたんじゃ分からなかったよ。この『自由』。それをもお前らは…お前らは奪い去ろうっていうのかよ!!」

カラ松「違うぞおそ松!!!くそっ…」

チョロ松「人じゃなくなってるんだから当然なんだけど、考え方もちょっとずつおそ松兄さんじゃなくなってるような気がする…けど。カラ松」

カラ松「あぁ。おそ松…声が震えていたな。それにポーカーフェイスで隠してはいるが…あれは苦しんでいる顔だ」

十四松「おそ松にーさん、悪魔から元に戻りたいって思ってるのかな?」

チョロ松「それは分からない。でも…完全に人の心を捨て去ったわけじゃないのは分かって、良かったよ」



 3人の声を一蹴しつつも、おそ松の声色は震えていました。そして…何よりも、『苦しんでいるのが感じられた』。プレロマの時とは違い、おそ松が抗っているかもしれないと気付いた彼ら。もしかしたら…本当に人間に戻せるかもしれませんね。
 そう確信した3人は、そのままおそ松と会話を続けることにしたのでした。



カラ松「他人に力を貰って『何が自由』だ。自由は自分で掴み取るものだろう!」

おそ松「お前らだって、あいつらになんか特別なチカラでも貰ったんだろ?ずるいよな~。お兄ちゃんに黙ってそんな力まで貰っちまうなんて。だったら俺だって何したっていいだろ!!」

チョロ松「だからって人をやめることまでしなくていいだろ!!お前、人じゃなくなるってことは…僕達のことも忘れちゃうってことなんだぞ?!」

おそ松「俺を裏切ったお前らなんて……うっ……ぐ……!!」

十四松「に、にーさん?」



 チョロ松の言葉で、急に頭を抱え苦しみだすおそ松。そして…『お前は必要ないから沈んでろ』と、まるで彼自身と話しているかのように呟き始めたのでした。やはり…。今のおそ松の中にある『心』が、彼の悪意に抗っているのでしょうか。
 何も言えず、ただその様子を見守ることしかできない3人。肩で息を整え、何とか体制を戻したおそ松は不機嫌そうに3人を見つめます。



おそ松「はぁ…はぁ…。お前達とここで話しててもなんも面白くねーや。……そうだ!面白いもん見せてやるよ。見たかったら俺をまた追いかけてみれば~?」

チョロ松「は?!何言ってんのお前?!」

十四松「ま、待っておそ松にーさん!!」

おそ松「『待つ』と言って待つ馬鹿がどこにいるんだよバーカ!!!……へっ。そこに着いたら逃げも隠れもしないでお前達の話聞いてやるよ。じゃあな~!!」

カラ松「おそ松!!!待て!!!」



 ポン、と何かを閃いたように手を叩いたおそ松。そのまま彼は空中へと浮かび、『面白いもんを見せてやるから追いかけてこい』と半ば挑発のような言葉を発します。そこまで追いかけて来れば、逃げも隠れもしない、と。
 3人の静止の声も聞かず、彼はそのまま飛び去って外れのまた向こうまで飛び去ってしまったのでした。



チョロ松「あぁ~!!また奥までとんでっちゃった!!このクソ野郎ーーー!!!」

カラ松「『逃げも隠れもしない』って言ってたよな。なら…今度こそそこでおそ松を助けられるかもしれない。希望は潰えていないんだ。…大丈夫、何とかなるさ!」

十四松「あいあいさー!またにーさんの匂い辿って案内しマッスル!!」

チョロ松「よーし十四松、頼んだぞ。……待っていやがれおそ松。その減らず口閉じるくらい殴ってやるからな!!!」

カラ松「殴るのはやめようなチョロ松」



 飛び去って行ったおそ松を追いかける為、三つ子はまた十四松の先導で彼を追いかけに移動を始めたのでした。



 ―――その頃、メインサーバでは…。





~運営本部 メインサーバ~



アクラル「おそ松の奴、苦しんでたよな」

アカギ「あぁ…。完全に支配されたわけじゃなさそうだ」

konakun.「まだ元に戻せる可能性はありそうってことだよね。後は…3人に任せるしかないかー」

Ga.「ま、元に戻ってからが問題のような気がするけど…」




 彼らの様子をモニターで見ていた4人。おそ松が抗っているような仕草をしていたのもばっちり確認済みです。
 三つ子は無事におそ松を救うことが出来るのでしょうか…。そして、松野家は仲直りすることが出来るのでしょうか…。