二次創作小説(新・総合)

ABT⑦『神と邪神は紙一重』 ( No.71 )
日時: 2020/12/31 22:10
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 5VHpYoUr)

大和城へ向かうサクヤと大典太。
そこで彼女達は1人の女性と出会うのですが…。

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~大和城付近~



サクヤ「人の流れが強くなっていますね…。大典太さん、離れないでください」

大典太「……承知した。やはり殺気が強まっているな…」



 行方不明の3人を追って、大和城の近くまでやって来たサクヤと大典太。彼女達の周りでは黄色い布を持ったい人々がゆらゆらと城に向かって歩いていました。
 明らかに異常なそれをかき分けて城へ進む1人と一振。大典太も城に近付くにつれ、殺気が強まっているのを感じていました。中で何か起こっているのは明確なようです。

 ……しばらく進んでいると、ふとサクヤが立ち止まりました。どうしたものかと大典太が問い合わせると、彼女は眉間にしわを寄せこんなことを口にしたのです。



サクヤ「……気配を感じます。我々が『会っている』気配…」

大典太「会っている、気配…?」

サクヤ「―――あのガイド服姿の女性から気配を感じます。…もしかしなくても『彼奴』かもしれません。話を聞きましょう」

大典太「……承知した」



 サクヤが指さした先には、グレン達を案内していたガイドの女性…。ルーニーが城を見つめて立っていました。そういえば彼女と会った際、シェリルが『初めて会った気がしない』と言っていましたよね。サクヤはその正体にも勘づいているようで、近侍を引き連れて話を聞く為、彼女の元まで歩いて向かったのでした。



サクヤ「……あの。すみません」

ルーニー「あら?どうなされました?」

サクヤ「…………。やはり貴方だったのですね。ガイド役に扮し、5人に付きまとうとは…。貴方も悪趣味ですねぇ。『ニア』」

大典太「『玄武』……」

ルーニー「……あら?やはりこの程度の変装では…。見破られてしまいましたか」



 サクヤが彼女の『名前』を告げると、背中を向けていた彼女の肌が『青白く』透き通ります。そこには……。『ガイドのルーニー』ではない、妖艶な邪神の女の姿がありました。
 大典太も彼女から『人間ではない』気配は感じていた様子。あまり驚いた表情を見せていません。彼女はサクヤの方を向き直り、口に手を添えて微笑みます。



ニア「ふふ…?遂に辿り着かれましたわね、サクヤ。見てくださいまし、この生気の失った人間達を。随分と乱雑で醜いやり方だとは思わなくて?」

大典太「……あんたの差し金じゃなかったのか?」

ニア「あらあら。私がこんな醜い方法で人間を混沌に、絶望に陥れると思いまして…?私ならばこんな人間を分かりやすく洗脳するのではなく…。もっと、もっと自然に心を奪いつくします、わ」

サクヤ「貴方の趣味嗜好の話はしておりません。…一つだけ問いたい。この一連の出来事は、ニアが仕組んだものではないのですね?」

ニア「違います、わ。むしろ私は、この『愚かなる儀式』を阻止しに来ただけなのですわ?」

大典太「……『愚かなる儀式』?」

ニア「ふふ…。気になりますか?折角鉢合ったんです。特別に教えて差し上げましょう…」



 どうやら一連の騒動を引き起こしたのはニアではない別の人物の策略のようで。生気を失っている人物が揃いも揃って『黄色い布』を持っていることから、一番怪しいのはあやつ辺りになりそうですが…。サクヤは彼女の仕業ではないと分かり一安心。そして、ニアが『この騒動を止めに来た』と口にしたので、それについて深く突っ込むことにしたのでした。
 問いかけると、ニアは心底くだらなさそうにこう答えたのでした。



ニア「この『大和城』の向こうで起ころうとしていること―――。本来ならば『儀式』という言葉ですら表したくはないのですが…。そういう事柄を引き起こそうとしている『愚か者』がいらっしゃいますの。
   全く…。人間風情が。しかも『邪神の狂信者』を騙り人間の命を弄ぶ愚か者に、私は真なる闇を見せたいだけですの」

サクヤ「『邪神』を降ろす…?!確かに外なる神を呼び起こす呪文は聞いたことがありますが…。現代にもそんな書物が残っていたのですか?」

大典太「……主。この世界は『混ざり始めて』歴史が浅いんだろう?ならば…主の手の届いていないところで、呪術的な価値のある書物や書留が残っていることもあるだろう。当然…悪意ある者が手に取れば、こういう自体に使用するのも納得できる。
    ……俺達『付喪神』も、神とは名がついているが、実のところ妖か神か分からんところがあるからな」

サクヤ「ふむ、確かにそういわれれば納得できる話です。しかし…何故ニアが直接出向くのです?貴方ほどの繋がりを持つ者であれば、他の邪神に頼めた筈です」

ニア「……うふ?呼び起こそうとしている『邪神もどき』が、私にとって心底不快なものだっただけですわ。ですから…私のこの行動は、少し『私怨』が入っているかもしれませんわ、ね?」

大典太「自分で言っておいて確実性に欠ける発言だな…」

ニア「それに……『邪神もどきって言っても、力『だけ』はモノホンと同じくらい強いヤツだからねソイツ~』 ……あら。もう追いついてしまいましたの?」



 ニアの言葉に重ねるように、この場にはいないはっきりとした青年の声が聞こえてきます。思わず振り向いてみると…。サクヤと大典太に向かって小さく手を振る、『見惚れてしまう程に美しい』白い髪の、褐色肌の青年が立っていました。着ている『黄色いパーカー』が目を引きますね。
 そうそう、グレンとクレアが大和城に向かう途中で鉢合った青年です。青年はサクヤと大典太を交互に見て『…なーるほど?これはレア中のレア神に会えたってことで良いのかな?』と呟き、彼女と大典太に語りかけたのでした。



『そんなに真顔で見なくても何もしないって。オレはただの通りすがりです~』

サクヤ「通りすがりにしては随分と人間『ではない』気配を感じるのですが…。それも、ニアと同じような気配です」

大典太「……そうだ。あんた、神ではない。……玄武と同じ、『邪神』の類か?」

ニア「……ふふ?隠し通そうとしても無駄だと思いますわよ?」

『あっれれ~?そうなの?じゃあ大人しく白状するわ~。オレもアンタ達の隣にいる『ニャル』と』同じ邪神の類。ニャルの知り合いっつーか…オトモダチ?』

ニア「あら?私、貴方とお友達になった記憶なんてございませんわ?私は貴方のような『得体のしれないもの』が好きではありませんの…」

大典太「(どっちもどっちじゃないのか…)」

サクヤ「褐色の彼はニアのお知り合いということで承知しました。―――これからどうなさるのですか?」

ニア「うふふ?見つかってしまったことですし…。私はこれからこの城の中を少し荒らしてまいりますわ。……あら、貴方も来るおつもりですの?」

『あたりまえじゃ~ん。だって呼び出そうとしてるの『オレもどき』なんだからさ~。止めないとまずいじゃん?この島の名物めっちゃ美味いからそれも壊したくないし~」

大典太「『オレもどき』…?」



 褐色の青年は『敵ではない』と伝え、ニアと同族であることを暴露。そして、自分も大和城に向かうつもりであることを伝えました。ニア、どうやらかなりお冠のようで。派手に暴れる気満々のようです。
 目的地は同じということで、一緒に行くことを伝えるサクヤ。しかし…それはニアによって止められました。



ニア「……あら?流石の青龍でも、邪神2体を直に見て精神が正常のまま帰れると思わない方がいいと思います、わ?ここは私達に任せてお帰りなさいな」

サクヤ「そうは出来ないのです。貴方も知っているでしょう?この中に行方不明になった3名がいるかもしれないのです」

大典太「……それに、生気が奪われている以上危篤状態になっている連中もいるかもしれん。―――どうせ俺の霊力では役に立たんとは思うが…。一応看たい」

ニア「まぁ。愚かにも巻き込まれた人間を憂い、手を貸すのですわね…。なんと美しい心なの…。こんな状況でなければ、貴方と天下五剣様のその純粋なお心をズタズタに引き裂くまでに弄繰り回しましたのに…」

サクヤ「私は別にいいですが、大典太さんの心を弄るのはやめていただいてもいいでしょうか。……そんなに一緒に行くのが嫌ならば、別行動ですね…」

『まぁね。人手が足りないってのはオレも理解してるし、おそらく元凶は奥の奥にいそうだし。そこにさえ近づかなければ大和城で人助けすればいいよ。
 その行方不明になった『3人』の他にも、きっと閉じ込められて生気吸われてるヤツいっぱいいるだろうからね~』

大典太「……つまり、その『暴れる一か所』に近づかなければ…救助は可能ということか」

サクヤ「わかりました。我々は後から向かいます。それまでに『暴れる部屋』にいる巻き込まれた方々を避難させていただけませんでしょうか?」

ニア「……うふ?それならばお安い御用です。我々の怒りに、可哀想な人間を巻き込んで殺してしまっても悲しいだけ、ですもの…」

『そんじゃ~またね~。次会えるかどうかわかんないけどね~』



 どうやらニアと青年はサクヤ達とは別行動をするようで。彼女との会話も早々に、その場から消えてしまったのでした。
 その様子を見守った1人と一振は、一息置いた後改めて大和城へと進もうとしました。さぁ、一歩を踏み出すぞというところで…。大典太が疑問をサクヤにぶつけます。



大典太「……主。1ついいだろうか」

サクヤ「何でしょう?……褐色の彼のことについては、推測でのお答えとなりますが」

大典太「それでいい。……あいつ。『自分もどき』の尻ぬぐいをする、と言っていたが…。あいつは、何者なんだ?」

サクヤ「そうですねぇ。ニアが『用事がある』と言っていた人物本人で間違いなさそうです。そして…彼の正体なんですが。彼も黄色いパーカーが目立っておりましたし、人外じみた美貌を持っていたことから…。恐らく。その正体は……。



『ハスター』



    ……なのではないか、と推測しています」

大典太「『ハスター』…。『黄衣の王』と呼ばれる邪神か…」




 ハスターだと思われるあの褐色の青年。そしてニアが『暴れたい』とは。やはり鬱憤が溜まっていたのでしょうか。
 色々事件の全貌が分かりそうな場に突入しそうですが、いったいどうなってしまうんでしょうか。とりあえず巻き込まれた人々も含めて助ける為、サクヤと大典太は大和城へ再び足を進め始めたのでした。