二次創作小説(新・総合)

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.14 )
日時: 2021/10/24 15:36
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: APISeyc9)

サンー双子ー

「ハッハッハッ…」

走る。走る。走る。
ここはガラスのドームに囲まれた森。レイと初めてであった場所であり、「仕事場」と呼ばれている。

すると地に足が着いている感覚がふとなくなる。下を見ると僕の片足は真っ黒な影に飲まれている。僕は慌てて影に飲まれていない片方の足で地面を蹴り、側転をして影から出る。そこからバク転に繋いでその影から距離をとる。

「ゲンゲロゲェッ!」

影の方を見るとゲンガーが影から出てくる。そのゲンガーの目は血走っており、必死さがピリピリと伝わってくる。

「メリープ!」

僕はゲンガーの背後に向かって叫ぶ。

「メヘヘヘヘッ!」

すると木の上から気配を消していたメリープが降り、ゲンガーの背後へまわる。

「メリープ!アイアンテールッ!」

「メエェッ!」

不意打ちを打たれたゲンガーはかわせずに直撃する。

「ゲンゲッ!」

ゲンガーはコロコロと向こうへ転がる。

「メリープ!ナイス!」

「メー!」

僕はメリープとハイタッチする。

「ゲン…ゲン…」

その瞬間。辺りがピカっと光る。僕は眩しくてつい目を瞑ってしまう。すると、身体中に何かが刺さるような痛みが襲ってくる。 マジカルシャインだ…!

「痛ったいっ!」

「メェッ!」

僕もメリープも思わず声を上げる。うっすらと目を開けると目の前にゲンガーが迫ってきた。

まずいっ!

するとゲンガーの手に濃い紫のオーラが纏われる。シャドーパンチだ。そして僕の腹に直撃する。

「かはっ…」

そんなかわいた声を出した後、僕は勢いよく吹っ飛び、木に体がぶつかる。
くふっ… とまたもやかわいた声が溢れ出る。

体中が痛い…けれど、立ち上がらなきゃ死ぬ…!

僕はかすれかけている視界を頼りに立ち上がり、メリープとゲンガーが交戦している所へと行こうとする。
けれど、直ぐに体が倒れてしまう。僕はポッケに入れていた昨日のご飯であるオボンの身を食べる。
まずい。生臭くて腐敗している味がする。それでも食べる。飲み込む。すると体が軽く感じる。
最近分かったことだが、オボンの実やオレンの実等ポケモンを回復してくれる木の実は人間にも効果があるようだ。
僕はそのままメリープとゲンガーの元へ向かう。

僕は走り、そのスピードに任せ側転を続けスピードを更に上げる。そのスピードと体重を乗せれる体制になり、ゲンガーへと蹴りを入れる。

ゲンガーが少しこちらを見たかと思うと…
 スッ と、僕の足がゲンガーの体を貫通した。いや、貫通じゃない。これは透けてるんだ。
そうか、ゲンガーはゴーストタイプだからこうやって単純な攻撃は透けてしまうんだ…

僕はそれに気づくが、受け身の体制を取れずに地面へと転がってしまう。

「うっ…」

「メェッ!」

するとメリープが心配してか僕の方へ来てくれる。
メリープもかなり体力が減っているようだ。
元々メリープはアイアンテールとエレキボールしかゲンガーに攻撃出来る手段が無い。

僕はもう動けない。だからメリープへ指示をすることしか出来ない。
元々、人間がポケモンバトルに参加すること自体が無謀なのだ。
そう嘆きつつ、僕達はゲンガーと睨み合う。

先に動きだしたのはゲンガーだ。ゲンガーはシャドーパンチを繰り出した。

「メリープ!かわして!」

「メヘッ!」

メリープはジャンプしてシャドーパンチをかわす。しかし、そのシャドーパンチの勢いは止まらず、僕の方へ向かってくる。

そうだ…僕が指示側に回っても攻撃される側には変わりない。

ゲンガーのシャドーパンチが迫ってくる。それがスローモーションに見え、相対的に僕の鼓動が早鐘を打つ。

やられる…!

「はい不合格〜」

すると上からゲッコウガが水手裏剣を持ってゲンガーの脳天に直撃させる。ゲンガーが吹っ飛び、それに追い打ちとして何回も水手裏剣でゲンガーを殴る。すると、ゲンガーの体から紫色の煙がでて、シュウッという音とともにゲンガーは消えた。
ゲンガーは…こうやって死ぬんだ…
さっきまで生死を分けた戦いをしていた相手が呆気なく亡くなることへのショックと安心感が襲う。

「うん。身体能力は上がってるけどまだまだだね。指示を出す側に回る時はもっと体力が残ってる時にするべきだったね」

レイはいつもの微笑みを絶やさずに僕に言う。
僕は少しむっとしながらも、その通りだと肩を落とす。仕方がないじゃないか。自分の生死をかけてがむしゃらに戦うんだもの。レイのように余裕な態度は出来ない。

「ゲッコウガはメリープおねがいね」

そういうとレイは僕をお姫様抱っこする。
うん。毎日こうやって僕達の特訓してくれてるのはいいんだけど、毎回これは恥ずかしいかな…

ーーーーーーーーー
大きくて白い岩が重なり合ってる場所。
ここには何故かポケモンも、人も来ない。
岩と岩の間。人が余裕で通れるほどの間にレイは入る。その中は葉の絨毯が引いてあり、そこには木鉢や石、枝など、原始的な道具が地面に置いてある。

その奥にある藁の山に寝かせられる。
身体中が痛く、ジンジンする。僕は少し唸る。

「それにしても、成長具合は早い方じゃない?」

レイが木の実や薬草をすり鉢ですりながら話す。
僕が直接メリープとポケモンと戦うようになった理由。それは僕がこの施設に来た頃に遡る。

ーーーーーーーーー
「シュウ。特訓をしないか?」

仕事終わりの食堂にて、最近質問することが無くなってきて困っていた頃。レイが不意に口を開く。

「と、特訓って…」

「シュウは俺に助けられるばかりだろう?少し負い目を感じてるんじゃないか?」

図星だった。しかし、何も出来ないのは事実のため、何も言えなかった。

「うん。出来るなら…お願いしたい。」

僕は強い決意でレイにお願いした。

ーーーーーーーーーーーー
ということがあり、毎日ポケモンの相手をしているのだがポケモン1匹が限界だ。ここの人達はレイのような助け無しで毎日ポケモンと戦っているのか… そう思うと施設の人達の人間離れした能力がしみじみと分かる。

「ほら、飲んで」

レイがすり鉢を差し出してくる。その中には緑色の液体が入っており、僕は少し躊躇いながらそれを飲む。すると体が軽くなってく。

「じゃあ、俺は仕事してくるからそこで大人しくしてるんだよ。」

と。レイは去っていった。仕事が終わる時間になるとレイが戻ってきて帰るのだ。

それが、僕の新しい日常になっていた。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.15 )
日時: 2021/11/22 21:00
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: VB7Q11rn)

ここに来て何ヶ月だろう。カレンダーがないからどれぐらいの月日がたったか分からない。

「そろそろランキング期間だねぇ」

食事中。レイが不意に言う。
ランキング…?

「ランキングっていうのはね。たまに行われる個人の成績まとめの日かな。その時に上位10名の名前がでて、それぞれ報酬が貰えるんだ。」

僕の顔に出ていたのだろうか。レイが答えてくれる。
上位10名は報酬が貰える…てことは、もしかしたら脱走に役立つアイテムとか貰えたりするかも...!

「その、上位10名に入るにはどうしたらいいの?」

「んー…今のシュウには無理だね。」

と、レイに涼しい微笑みでそう言われた。

「へ?」

「ここの奴隷数は1万を超える。その中から新入りが上位10名になるのは普通に考えて無理だ。」

「うっ...」

その通り過ぎて何も言えない。ということは何の物資も無しに脱走することになるから、かなり厳しくなる...

「なんとか、なんとか上位10名になる方法はない?」

レイは僕がそういうと思っていたのだろうか...いや、確信していたようにニヤリと笑う。

「方法は無くはない。」

「何!」

僕は食い気味にその話に食いつく。

「俺のハードモードな特訓についていくことかな。」


レイのハードモードな特訓...
今でもかなりスパルタな訓練をされている。命を失いかけるほどは。それ以上のハードモードな特訓をしなければならないとなると、それこそ命が危うい。それで死んで脱走出来なかったら本末転倒だ。

...でも、方法があるならやってみたい、挑戦してみたい。尚且つ、楽しそうだ。

こんなハイリスクハイリターンな事、前の僕なら避けていただろう。しかし、地獄なような...いや、地獄を見てきた僕は、ローリスクハイターンで上手くいくことは無いことを知った。『脱走』という大きすぎる獲物はハイリスクハイリターンでないと奪い取れない。それに、これに対してワクワクしている自分がいる。

「やるよ。その特訓」

ただ僕は好奇心でその言葉を口にした。待ってましたと言うように、レイは微笑む。

「そうでなくっちゃ」

でもその微笑みはいつもとは違う、不敵な笑みだった。

ーーーーーーーーーーーー

次の日。また仕事が始まり、ガラスのドームへと放り込まれる。

「シュウ問題だ。毎日俺らが捌くために放り込まれるポケモンの数は?」

え、急にそんなこと聞かれても...

「1万体ぐらい... ?」

僕は内心焦りながらも答える。ここの奴隷の数が1万人なら、捌くポケモンの数も同じぐらいじゃないのだろうか。

「正解は100万体だ。」

「100...万...」

僕の想像していた100倍のポケモンが、このドームの中をうろついていることを知る。
てことは、少なくとも101万の人間とポケモン。いや、人間が連れているパートナーのポケモン含むと、とんでもない数がこのドームにいることになる。そうなると、このドームも、寝泊まりしている屋敷も、全部合わせて1つの大きな街ぐらいの大きさってことになる。
そんな大きな施設なのに、何故「表」では認知されていないんだろう...
いや、僕が知らないだけで本当は認知されているものなのか?

空を見上げるといつもと同じ曇りで、太陽の光は少ししか入ってきていない。

謎が謎を呼ぶこの施設だが、今はそれよりランキングだ。

「てことはだ。1人100のポケモンを狩る事が想定されているんだ。」

レイが話を続ける。
1人...100体...
一日で僕は一体を捌くのが限界だ。

「そんなこと...出来やしないよ...」

「出来るんだよそれが」

信じられない。てことはだ。ここの施設にいる奴隷は皆バケモノってことじゃないか...

「まあ、大半のやつは1人5、6体ぐらいだ。チームを組んで行っている奴らも一日に多くて50体。そんな絶望する必要は無いよ。」

大ありだよ。それでも平均1人、5、6体は捌いてるなんて、僕がランキングに入るなんて絶望的じゃないか。
あれ、でもここで疑問が湧いてくる。

「それじゃぁ、結構なポケモンがあまらない?」

1人5、6体。チームで50を捌いてるとしても1人100体のノルマには程遠い。
そしたらポケモンで溢れかえるんじゃ無いのだろうか。

「んー。ポケモンの中にも食物連鎖の関係で強いポケモンに食われるポケモンもいる訳だから、100万体放り込まれても、100万体を倒す必要は無いんだよ。」

なるほど。だから強いポケモンばかりが相手になるのか。

「それでも、1人のノルマには程遠いのは事実だ。そのポケモン達は。俺らの様な強い奴が捌いてる。」

「え、レイは一日何体捌いてるの...?」

「俺は大体一日900体前後かな。多い時はもっと捌いてる。」

僕は絶句した。1人ノルマの約9倍目の前にいるレイは軽々こなしているのだ。

「まあ、俺一応3柱だし、リーダー除いたら1番強いからね。」

リーダーも...そんなに強いのか。3柱も...
僕がランキング入りをする。そんな未来を厚く重い大きな壁が塞いできた。

「大丈夫大丈夫。今から特訓したら、ランキング10にはギリギリ入れる。」

そうだ。ひたむきになったらダメだ!ランキング入りをして、脱走するアイテムを手に入れるんだ!
絶望してたら脱走の前にここで野垂れ死にしてしまう!

「いい顔になったね。じゃあこれからの特訓について話すよ。と言っても内容はシンプルだ。」

どんな辛い特訓でもドンと来い!

「俺と一緒にポケモンを一日500体狩ってもらう。」

「へ?」

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.16 )
日時: 2021/11/29 20:32
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: nEqByxTs)

「グアァァァ!」

瀕死状態のバンギラスが重力に身を任せレイにのしかかりをする。しかし、レイはそれを軽々と受け止め...るどころか食堂で食べる時に使うナイフを使ってバンギラスの胸に大穴を開ける。

「ギャァァァ!グギャァァァ!」

バンギラスが痛がり、必死に叫び続ける。
ごめんね。痛いよね。けど殺さなきゃ行けないんだ。
僕は走り、メリープを踏み台にしてバンギラスの頭にのる。

「メリープ!でんじは!」

「メヘヘヘヘっ!」

これは僕たちが考えた戦法。凶暴なポケモン相手にとどめを刺す時どうしても僕が前に出なかゃで、危険だからでんじはで相手の体の自由を奪うのだ。そして、レイお手製の石ナイフを使ってバンギラスの頭に......刺した...

「グギャ」

僕はあまりバンギラスが苦しまないように一瞬で頭を潰した。するとバンギラスの脳、食道、舌がリアルにグロくグチャグチャになって僕の前に現れる。
僕は正気を一生懸命保ちながら着地...するつもりがショック過ぎて受け身が取れないまま空中に放り出される。

「ほっと」

するとレイが大ジャンプを決めて僕を空中でキャッチ&お姫様抱っこを決めつける。

「まだまだだね。」

レイはいつもの微笑みを絶やさずに言う。
うっ...その通りだ。こんなことで倒れそうになったらこの先厳しい。別の殺し方もあるけど、レイは『苦しませずに急所に当てて殺す。』がモットーらしい。僕も生きなきゃいけないからそれに賛成...なんだけど、そうなると頭を潰したり、胸を貫いたり、首を1発で吹き飛ばしたりと難易度が跳ね上がる。

そんなことを考えているとメリープが光り始める。

「メエ...メエエエエッ!」

も、モココに進化した...!
僕は今までにない胸の高鳴りと、目頭が熱くなる感覚を覚える。
いや、感動に浸ってる間はない。なんせノルマは500匹だ。ごめんメリープ...じゃなかったモココ。お祝いは後だ。

「さぁ306匹目。どんどん行くよ」

レイが休憩も無しに僕を立たせて走り出す。
慌てて僕もその後を追いかける。しかし、大小合わせて306匹のポケモンを連続で殺しているため走りすぎで心臓がバクバクいっている。
肝心のレイは木をつたいながら走り、走りながら大小のポケモンを一撃で流れるように殺していく。
たしかにこんな流れるようにポケモンを殺せたら900体も殺せる筈だ。

「うん。こいつがいいね。シュウ次はこいつ」

そして、僕が何とかレイに追いつける理由。それは、レイが僕に捌けるレベルのポケモンを選別して、サポートしてくれるからだ。とどめは僕が刺したら僕が倒したポケモンにカウントされるらしい。

と、レイが選んでくれたポケモンに集中しよう。次はジュナイパーだ。

「「そいつは私の獲物よっ!」」

すると頭上から声がする。その瞬間。スタッと4つの影が降りて、ジュナイパーに切りかかる。
て、敵?!

「どうやら厄介な奴が来てしまったみたいだね。」

レイが呟く。
そこには青髪の子とピンクの髪の子で、サイドテールのそっくりな5歳ほどの子供がいた。
残りのふたつの影は、原種キュウコンとアローラキュウコンがいる。

「キュウコン!」

青髪の子の声が木霊する。するとアローラキュウコンが空へと向き、綺麗な鳴き声を披露する。すると...
白いあられが降ってきた。

「特性雪降らし...」

僕は呟く。アローラキュウコンの特性雪降らしに寄ってあられが降ったのだ。と、同時に小さなオーロラ達が空を舞う。多分オーロラベール。物理攻撃と特殊攻撃の威力を半減にさせる技だ。

「よっしゃ!キューちゃん!火炎放射!」

桃髪の子が叫ぶ。原種キュウコンはキューちゃんというニックネームを貰っているようだ。

ジュナイパーに火炎放射が直撃する。効果は抜群だ。一瞬でジュナイパーは瀕死になる。あとはトドメを刺すだけだ。
しかし、この2人は凄い...大物のジュナイパーを2人とはいえ傷1つも付けづに瀕死に追い込むなんて...

「キューちゃん鬼火」

え?もう瀕死なのに状態異常技を繰り出すの?

「ホウッ!ホジャァー!!!」

するとジュナイパーが苦しみ出す。このままじゃジュナイパー死んじゃうよ!あっ...そうか。鬼火でじわじわと弱らせて殺すんだ。

「ふふっ」

桃髪の子が笑う。この状況を楽しんでる見たいだ。サイコパス...
でも、

「よっと」

「ギャッ」

レイが拳でジュナイパーの頭を潰す。
殺した。血が半径1mぐらいの長さで飛び散って目玉や臓器が飛び散っている。

「ちょ、何するんだよ!」

桃髪の子が叫ぶ。

「ポケモンは苦しまずに急所に当てて殺す。それが俺の仕事のモットーなんでね。」

レイが微笑みを絶やさずに言う。

「...いくよ妹」

桃髪の子が呟く。

「うん。兄」

どうやら桃髪の子が男。青髪の子が女だったようだ。髪色に印象が左右されていることもあり、以外だった。

そして、2人と2匹は去ってしまった。

「だ、誰...?」

「ここでは有名な双子だよ。」

無意識に呟いた僕にレイが答えてくれる。

「毎回ランキング上位に入っている有名な双子だよ。」

「名前は?」

「名前は無いよ。というか、この施設の奴隷の殆どは名前なんてない。」

「レイは?」

「俺はトクベツだから。」

そう言うとレイは人差し指を口に当て不敵で、そして深海のように深い狂気的笑みを浮かべた。それに不覚にも僕は美しく感じ、魅入られてしまったのだ。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.17 )
日時: 2021/12/03 14:14
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 4xvA3DEa)


そこは大きく、美しい黒色のガラスが辺りにちりばめられている城。
そこで僕は踏む。リズム良く、知らないはずのステップを踏む。やったことの無い『ダンス』とやらを一生懸命やっている。
腰に手が添えられ僕は後ろに剃る。

そこには服だけがいた。

そこには骸骨がいた。

そこには…あの子がいた。

ステップを踏む。相手がリードしながら。
すると、慣れない動きに僕は足を崩してしまう。
倒れた僕に手を差し伸べてくれなかったその子は。いつもの満面の笑みではなく、ただ何も無い何を見ているかも分からない生気のない黒いビー玉のような目をしていた。

ーーーーーーーーーーーーー

俺はそこで起き上がる。太陽の光が入るはずもない薄暗い外に目を向ける。

「んんっ…」

横にはシュウが唸り声を上げている。


‎「脱走…か…」


‎俺は只只空もどきを見上げることしか出来なかった。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.18 )
日時: 2021/12/20 23:47
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: K3f42Yhd)

うっすらと周りの景色が見える。奴隷達の施設の寮だ。いつもはうるさいサイレンで朝7時頃に起こそれるのに、今回は珍しく早く起きたな。いや、起きたと言うよりは起こされた……?何かの危機に。危機ってなんだ?てこ、僕は何を思ってるんだ。疲れてるのかな。
はたぁとため息をつくと目の前にキュウコン2匹がいた。原種キュウコンが突然かえんほうしゃを打ってくる。勢いよく僕にむかってくるそれは周りを炎出炙りながら僕に突撃してくる。これはやけどでは済まないよ!
僕は全身に冷たい塊がつま先から頭の先まで重力を無視して伝ってく。

「ゲッコウガ」

その瞬間。僕に当たるはずだった炎とは思えないひんやりとした液体が僕に飛び散ってくる。そして目の前に水の柱が現れた。レイのゲッコウガのみずのちかいだ。

「そのまま捕まえろ。」

レイのひんやりとした声にゲッコウガは頷き、キュウコン2匹を押さえつける。

「やぁやぁ何の用だい?双子。」

するとどこからともなく上からさっきの双子の頭を足掴みにしたレイが降ってきた。

「なにって、当たり前じゃない!この肉壁奴隷達の処理に決まってるわ!」

ピンクの髪の子がレイの中でじたばたと、暴れながら言う。

「へぇ、"俺"に喧嘩売りに来たと」

レイは僕に売りに来た喧嘩から、レイに売りに来た喧嘩と訂正し、微笑みを絶やさない。
しかし、レイはまさに怒といったような雰囲気を纏っており、僕らにずっしりと数トンの重りを乗せる。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.19 )
日時: 2021/12/25 22:19
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: q9W3Aa/j)

「ちょっと双子の処理に時間がかかりそうだから。逃げてシュウ」

レイが暴れる双子の頭を押さえつけながら言う。レイでも処理に時間がかかるって...双子は僕よりよ遥かに強いのだろう。
てか処理って殺すって意味だよね!こんな幼い子を殺させる訳には行かない...けれど僕にはレイを止める力がない。そうだ。リーダーの所へ行って助けてもらおう!
僕はレイに向かって頷き、部屋を出ていった。

ーーーーーーーーー
〜レイ〜

俺の合図にシュウは躊躇いながらも部屋を後にして言った。あれは俺には敵わないからリーダーを連れて俺を抑えるつもりだな。まあこの双子はシュウがリーダーを呼ぶまで遊んでやるか。殺してシュウの好感度が下がるのも嫌だし。
そう思ってると双子の1人。桃髪の奴が俺の手を掴んできた。

「処理する...?上等だ。俺らがお前を処理してやろうじゃねぇか!」

桃髪が叫ぶ。うるさいなぁ。頭が無駄にキンキンするじゃないか。まあいい。力の差を見せつけるには丁度いいしな。

俺はニヤける顔を必死で抑え、舌なめずりをした。

ーーーーーーーーーーーー
〜シュウ〜

部屋から出ていったのはいいものの、全くリーダーが見つからない。部屋数も馬鹿にならないほど多く、僕は頑張ってリーダーの気配を探りながら廊下を走っていた。それにしても廊下が長い。もう3分は走ってるし、同じところを回っているようには見えない。部屋の中の気配が全然違う。
というか、僕いつの間に気配とか分かるようになったんだ?!この過酷な環境下で感覚が敏感になってるのか。僕は慣れない感覚に苛まれながらもリーダーを探した。すると、廊下の端っこに来たようだ。レンガの壁が僕の前にあった。ちょっとつかれてしまったため、僕はそのレンガの壁によたれかけた...瞬間。

『ガクンっ』

と、レンガの1部を押したような感覚を覚える。え?え?どういうこと?壁壊れちゃった?!僕そんなに鍛えられたの?!

と混乱に包まれる中、壁が消えてなくなり僕は壁の奥へと転がることになった。

ーーーーーーーーーーーーーー

「いてて...」

僕は頭をさすった。ここは、どこだ?地下のようにひんやりと辺りが冷たい。僕が来た場所には上へ続く階段があった。
僕階段から転げ落ちても大した事ない体になったのか...
普段は気にならなかっだが、レイの特訓のせいで僕も化け物に近づいていることが分かった。それでもレイにもあの双子にも、大きなポケモンだって1日1回が限界だ。この施設の人、ポケモン達の化け物性を疑う。
それよりここは、どこだ?
そう思い僕は壁を伝ってコンクリートの廊下を歩いていく。すると奥にはボロボロな木のドアがあった。何かの保管部屋かなにかかな?
そう思い扉を開くと...そこには普通の部屋があった。ベットがあって、タンスがあって、何かを記しかけた日記が置かれている机、そしてベットの奥には窓があった。そこはガラスドームに包まれる仕事場の全体をがんぼうできた。ということはここは標高が高い方...なのかな?さっき階段から転げ落ちたけど。ということは、僕たちの住む寮はかなり高く、広いことになる。

「ん、珍しいお客さんだね」

すると、別の部屋から人が出てくる。
勝手に入ったことに怒られるのだろうか。
僕は反射でその人を警戒する姿勢になる。

「あ、警戒しなくても大丈夫だよ。怒ったりしないし、襲ったりもしない。僕の名前はダミことプラタナス。よろしくね。」

予想外の返事の先には中性的な見た目で性別の判断がつかない、僕より少し小さい男の子が出てきた。小学四年生ぐらいの子かな?
あ、名乗られたら名乗り返さなくちゃ。

「ぼ、僕はシュウ。ホウチャク シュウだ。よ、よろしく」

僕が名乗り返すと相手は満面の笑みで迎えてくれた。ダミ...だっけ?は、白髪に紫紺の瞳、顔立ち、骨格、雰囲気共にリーダーとかなり似ていた。しかし赤黒いタオルでポニーテールにしているし、尚且つ中性的な見た目をしているし、女じゃないだろうか。ということはリーダーの妹?

ダミ、プラタナスと名乗った人物は微笑みを絶やさず僕を見つめていた。その目に塩水が浮かんでいるとも知らずに。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.20 )
日時: 2021/12/26 12:20
名前: 暁の冬 (ID: b2YT8yya)

【本名】リゼ

【仮名】特にない。

【年齢】14

【性別】女

【性格】冷静沈着で、基本的に落ち着いているが、調子がよくないとパニック状態になってしまう。

【容姿】紫色の髪に琥珀色の瞳。服はご想像におまかせします。

【相棒のポケモン】サーナイト

【サンプルボイス】

『サーナイト、みらいよちです。』

『どうしよう、どうしよう。無理だ...』

『とりあえず、ポケモンを殺しましょうか。』


【過去】特にない。

【備考(あれば)】基本的に敬語。パニック状態の時は敬語が外れる。

【このキャラは死んでも大丈夫ですか?(死なない場合もあります。)】大丈夫です。

オリキャラ応募です。これでお願いします。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.21 )
日時: 2021/12/26 21:33
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: kI5ixjYR)

>>20
暁の冬さん応募してくださりありがとうございます!リゼは早速使わせていただきますm(_ _)m
勝手な設定が入ったりするかもなので先に謝罪申し上げます。そしてご了承くだされば嬉しいです。

今後とも最期の足掻き共に裏の陰謀もよろしくお願いします!

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.22 )
日時: 2021/12/27 08:20
名前: 暁の冬 (ID: b2YT8yya)

>>21
はい、大丈夫です。使ってくれるだけで嬉しいので。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.23 )
日時: 2022/01/01 05:27
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: BGpucW56)

「それより、シュウは何故ここにこれたんだい?隠し扉を作ってたはずなんだけど…」

ダミ...でいいのかな?は僕を不気味なガラスのような瞳で見つめる。それはまるで最初から全部分かっているような...
僕はその不気味さに屈しながらも事の経緯を説明した。その過程でダミは考える素振りはしていたものの基本微笑みを絶やさなかった。僕のことなんて最初から全てわかってますと言ってるような瞳。崩れない口角。何もかもが不気味だった。

「なるほど...てことは、そのリーダーを早く見つけないと行けないんだね」

リーダーっていうか、雰囲気と容姿からリーダーの妹だと思うんだけど...

「ダミはリーダーの妹じゃないの?」

僕は思った疑問をそのままぶつけてみた。ダミは一瞬ポカンとした表情を浮かばた後ケラケラと笑い出す。僕は何がおかしいのか分からずにただその場で慌てふためくしかなかった。

「あはははっ!いやぁ、そういう所レイに似てるよね。やっぱり。」

レイに似てる?え、どこが?!僕は抗議の目を向けつつ実は嬉しがってる自分が居ることも気づいていた。が押さえつけた。

「ごめんごめん。困らせちゃったね。僕はリーダーの妹じゃないよ。血縁者でもない。」

あれ、もしかして思い違いだった?!なら僕凄く恥ずかしくないか?!
そう思うと僕の顔は下から徐々に熱を帯び始めた。

「あ、リーダーだっけ?リーダーは図書室にいるはずだよ。」

ダミは僕に助言をしてくれる。恥ずかしくなって凄く罰が悪かったからその助言はありがたいな。
そうと決まれば図書室に行かなきゃ!確か食堂の隣だったはず。

「あ、シュウ。暇になったらまたおいでよ。僕もずっとひとりで暇だからさ。あ、もちろん他の人には内緒でね?」

ダミはイタズラ好きな笑みを浮かべてそう言った。何故他の人には内緒にするのか。そんな疑問はその時浮かばなかった。ただリーダーを呼ぶことで頭がいっぱいだったからだ。

「うん!またねダミ!」

僕はそう言って扉をくぐった。

「...またね...レイ...」

ダミのそのくすんだ声は僕には届かなかった。

ーーーーーーーーーーーーー
《レイ》

「キュウコン。ふぶき」

青髪の奴が呟くと部屋の中が雪で包まれる。俺とゲッコウガはそれをモロに受けてしまう。

「よしやったか!」

桃髪の奴が叫ぶ。それはフラグってやつじゃないのかい?そう思いながら俺は笑いながら双子の前に現れる。

「そんな攻撃俺には効かないんだよなぁ」

そう言って俺は双子の首を掴む。それと同時にゲッコウガはキュウコン2匹の首に水手裏剣を当てている。チェックメイトだ。今頃双子とキュウコン達は死ぬ恐怖で怖気ずいているだろう。それをじっくり楽しむのも見ものなんだが...おっと、昔の"あいつら"の悪趣味が写ってしまった。自重せねば。

「じゃあ。楽に死ねることを喜びなよ」

俺はそう言って双子の首を折ろうと...した。

「無駄に戦力を削るのは辞めてくれないか?」

その声の主はクリーム色のフード付きコートを着ており、見慣れた白銀の髪に紫紺の瞳をした青年。リーダーだ。
シュウ。連れてくるのが遅いよ。危うくこの双子を殺しかけたじゃないか。

「ま、間に合った...」

後ろからシュウがゼイゼイと息を荒らげながら追いかけてきた。お、リーダーにギリギリ追いつけるようになったとは。成長したねシュウ。

「レイ。聞いてるのか!」

おっと、シュウのことで頭がいっぱいでリーダーの声が聞こえてなかったようだ。

「ごめんごめん。聞いてなかった」

俺はケラケラと笑いながらリーダーに言う。リーダーは額に青筋を浮かべた。あ、これはヤバいな。

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《シュウ》

なんとか僕は図書室にいたリーダーを呼びレイと双子の喧嘩に見事終止符を打つことに成功した。着いた時にはレイとゲッコウガは双子とキュウコン達にトドメを指すところだったから危なかったけど...

「いいか!仕事人同士の争い事は禁止だ!特にレイ!お前は大きな力がありすぎるが故に他の力を持った仕事人を直ぐに消すことが出来る。しかしだ!そんなことしたらただでさえ人数、勢力不足の施設が潰れるだろうが!潰れたらお前らはゆく宛もなくさまよい死ぬだけ何だからな!いいか!もう一度言う!仕事人同士の争い事は禁止だ!」

リーダーの長くあひがたーい説教がレイと双子に注がれる。というか僕達のことって仕事人って言うんだ。覚えておこ。

「はいはい。すまなかったよリーダー。」

何度言っても態度を改めないレイに諦めたのかリーダーはため息を着くとコートを翻し帰って行った。

「まあ、これで分かっただろう?俺と君たちには大きな差があるんだ」

リーダーがいなくなった後、レイはまた喧嘩の火種を産む。余計なこと言わなくていいのに...

「くっそぉっ!なんで...なんでなんだよぉ!死ぬ気で練習したのにっ!死ぬ気で...死ぬ気で強くなったのに!」

桃髪の子が悲痛に近い叫びを上げる。"死ぬ気で"その一言は幼い子にしては酷く重く過酷な環境が垣間見えた。この施設で育ったからこそ、命をかけて来たからこそ言葉一言一言に重みがあった。僕は15歳だ。けれどこんな重い言葉は発せられない。

「そうだなぁ。」

レイは微笑みを絶やさず考える。しかし、チラチラと僕の方を見てくる。あれ、もしかしてこれからどうすればいいか分からないとかじゃないよね?僕にどうにかしろって言ってるのかな?
ど、どうしよう。取り敢えず部屋に戻すとか?
するとレイは尚ニッコリと笑った。あ、これ僕への期待が崩れた時の顔だ。

「とりあえず双子の名前は?無いのか?」

「無い」

レイが乱暴に問いかけると青髪の子は声色を変えずにポツリという。

「じゃあ名前考えようか。シュウ頼める?」

えぇ、ここで僕に押し付けてくるのかぁ。名前...名前...花が打倒だよなぁ。花...花...双子の髪色の青と桃を混ぜたら紫色の花が思い浮かぶ。紫の花と言えば...アイリス、アネモネ、スミレ...タツナミソウ。タツナとミソウ。安直だけど良いかな。タツナミソウの花言葉は分からないけど。

「桃髪の子はタツナ。青髪の子はミソウ。でどうかな?」

「うん。いんじゃないかな?」

レイはこんな安直な名前に肯定をしてくれる。

「...私はタツナ...タツナ...」

桃髪の子はタツナという名前を何回も復唱する。あれ、気に入らなかったかな?それとも勝手に名付けしたのが悪かったなぁ。

「ありがとう。私はタツナ。この子はミソウ。ありがとう」

名付けされるのがそんな嬉しいことだったのかな。青髪の子はただ黙って僕らの方を見つめる。そ、そんな見つめないでよ...

「さてさて、名付けは終わったところで、君達の生い立ちを聞こうか」

話を進めるのが早いなレイは。いや、こういう時どうすればいいか分からないのか?

「なんでお前に教えなきゃならないんだよ。」

タツナはレイに反抗的な態度を示す。レイはニッコリと微笑むがそこから怒りのオーラが少し...いや、すっごく見える。

「えと、僕達もっと仲良くなりたいな...って思って...僕たちの生い立ちも話すから、君たちの生い立ちも教えてくれない?」

僕はなるべく、穏便に話しかける。多分レイは双子と仲良くなりたくて困ってたんじゃないかな?そう思ってレイの方へ向くとレイは微笑みは絶やしていなかった。うん。全然わかんないや。

「...いいよ。お姉ちゃん優しいから。」

青髪の子...ミソウが呟く。え、ちょ、突っ込みが追いつかないって!

「ぼ、僕は男だ!」

顔を真っ赤にさせて僕は抗議する。ミソウはフフっと笑う。それを見てタツナは目を見開く。

「妹...いや、ミソウ...」

なんで驚いてるんだろ?

「ミソウが言うなら教える。生い立ち。」

タツナがそう言ってポツポツと話し始めた。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き【オリキャラ募集】 ( No.24 )
日時: 2022/01/12 14:50
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: DMJX5uWW)

《タツナ》
母親と父親。そんなものは知らなかった。生まれた時からいなかったから。否、気づいた時から僕は培養槽にいた。ひとつのポットにミソウと一緒に。身体中にチューブを付けられずっと、ずっといた。苦しくもなければ楽しくもない。只只無が続くだけだった。
ある日、2歳になった頃かな。ポットから出されて施設に放り込まれた。私たちは"普通の人間とは違う"から施設に放り込まれても何とかやっていけたけど... 生と死の狭間に毎日いると狂ってしまう。ミソウがいい例だ。ポットにいる間は外の世界について楽しく話してて、明るくてアグレッシブな子だったのに毎日の生死の分け合いで狂ってしまった。狂った当初はポケモンを八つ当たりのようにポケモンを狩りまくっていた。でもそれが続いていくとどんどん表情が無くなっていき、今のように無表情。何も興味を示さない子になってしまった。だからこそ、ミソウがシュウに興味を示した時は驚いた。だからこそシュウになら尽くそうと思った。この身を骨を、魂全てを。

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《シュウ》
僕の生い立ちが話終わったあと、タツナとミソウの生い立ちが話し終わった。それは5歳とは思えないほどに壮絶で残酷な生い立ちだった。まず親がいない、培養槽で生まれた。これだけでも過酷な人生が決定されてるようなものだ。更にこんな過酷な環境の施設に放り出されて、妹が狂うなんて。僕よりも倍壮絶な生い立ちだった。

「私達は話した。最後はレイ。」

タツナがレイに話を振る。レイはうーんと唸る。

「言わなきゃダメ?」

レイは無駄に整った顔をかくんと傾げる。カッコイイ...と思わず声が出そうになった。しかしタツナとミソウはギラッと目を釣り上げる。

「言えよ。」

「言って。」

タツナ、ミソウ2人の声が重なった。やっぱり双子だなぁと僕は呑気に思っていた。

「はぁ…話すから。その目辞めてくれないか。シュウに嫌われるだろ。」

レイが双子にきつく当たる。いや、いつも仕事で守ってもらってる身からするとそんなことで嫌ったりしないよ。レイなりの冗談かな?

「俺は_」

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《レイ》

俺も双子と同じ。培養槽で生まれた。双子とは違って1人でな。全身透明チューブで繋がれ、白衣を来た大人たちにジロジロと見られる気持ち悪い生活だった。
ある日突然外に出されてこの施設に来た。初日の仕事は死にものぐるいでこなしていった。と言っても一日に5体程しか倒せなかったが。
その日の夜飯の時。俺よりも強い奴らに襲われた。そんな中助けてくれたのが俺の初恋の人だ。本当に強くて、俺の数倍強かったであろう奴らがゴミのように蹴散らされてしまったのだ。多分。今の俺の数倍強い。そこから鍛えられて今に至る。

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《シュウ》
レイも培養槽育ちだったんだ。奴隷市場から来る人はそんなに居ないのかな?それより、初日で5体のポケモンを殺したって本当?!僕初日どころか、結構な期間レイに助けられて一体も殺せなかったよ!バケモノとの差って最初からあるんだな…と思い知ってしまう。

「はい、俺の話は終わり!まあこうして打ち解け合えたし。俺達はもう仲間ってことでいいよね。」

え、仲間?!レイ、仲間にするの強引だな。やっぱり人と仲良くするのって苦手なのかな。

「誰が仲間だよ!シュウはともかく、レイと仲間なんて思われたくもねぇ!」

タツナと、ミソウは僕に懐いてくれてるようだ。バケモノ級の子達と言っても見た目は孤児だ。懐いてくれるのは嬉しい。レイは残念だけど……

「じゃあシュウの世話は君達がしてくれるのかな?」

え、ええええ?!レイ!僕を捨てる気?!いや、元々レイの物ではないけど。
でも、レイに捨てられると思うと悲しいような怖いような…

「あぁ!シュウは俺達で世話する!」

「シュウ。私達と。一緒。」

タツナとミソウが言う。するとレイは微笑みを絶やしていないが…なんか口元がピクピクしてる。
お、怒ってる?

「ならいいけど。コイツ。一日に助けもないと500体殺せるかどうかだよ?しかも弱いやつ。俺の助けがなかったら一日2匹倒せるかどうか。それを世話しきれるの?」

レイの猛攻撃が続く。隣のゲッコウガもウンウンと頷く。ぼ、僕そんなお荷物だった?いや、お荷物の自覚があったけどこんなダイレクトに言われると結構傷つく…

「うっそれは…」

「……出来ない。」

タツナとミソウにとっても僕はかなりのお荷物のようだ。
うっ、不甲斐なくてごめんなさい…
僕のメンタルはどんどん凹まされていく。

「で、提案だ。俺達と一緒に行動したらシュウを世話しながら一緒にいられる。さらに毎回ランキング1位の俺がサポートする。よって双子のランキングも上がる。どうだい?悪い話じゃないだろう?」

確かに。双子にとってはこれ以上ないメリットが詰まった案だ。しかし、タツナはかなり頭が切れるようで、こんな甘い案にも即乗らずに考え込んでいる。

「兄さん……タツナ兄さん。私。乗りたい。案」

ミソウがボソ、ボソッと呟く。タツナはミソウの声にすぐさま反応する。

「乗る。その案乗るよ!」

思考を放棄しレイの案に乗る。こう見るともしかしてタツナってシスコン?なんか親近感が湧くな。

「よし決まりだね。早速リーダーに頼んで同じ部屋にしてもらおうか。」

そう言ってレイは部屋を出ていった。なんだかんだ言ってレイが1番喜んでるじゃないか。するとタツナはまた何かを考えてる。

「どうしたの?タツナ」

他に考えることは無いだろうと思って聞く。

「いや、ずっと1人で行動して、ランキング常に1位だったレイがなんで仲間を作ることに執着するのか分からなくて」

確かに。なんでだろう?というか、こんな小さい歳で考えようとするなんて凄いな。僕より頭いいのかも。

「うーん。単純に寂しかったとか?」

僕は思ったことをそのまま口にしてみた。タツナは眉を歪める。

「そうだといいんだけど…」

それってどういうことなんだろ?
まあいいか。

こうして僕らにタツナとミソウという双子が仲間に加わった。

〜完〜