二次創作小説(新・総合)

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.48 )
日時: 2022/05/16 15:31
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: ShMn62up)

ロクーチャーフル・ジーニアの冒険譚ー

「ギャッ……」

「ごめんねっ!」

私はバンギラスを一撃で殺しす。イーブイは私にテトテトと着いてきてまだ戦闘に慣れていない。けれど、私の相棒だから、慣れてもらわなければ困ってしまう。ここは心を鬼にして教育しなきゃならない。ごめんね……

「レッ、レイ!まって…わあっ!」

すると着いてきていた、黒髪に赤い眼の少年がつまづく。彼はフジ。元々は研究所で作られたワルビアルのキメラで、死に際を助けた。それからは放っておけなくて教育している。

「もーっ。フジは鈍臭いなぁ」

私はフジの所へ行って手を差し伸べようとする…

「ちょっと!レイは何もしなくていいのっ!ほら!フジ!立ちなっ!」

すると少し黒く濁った水色がかった白髪の子がフジを無理やり立たせる。彼女はスイ。フジと同じく死地に立ってたところを助けたん…だけど、なにかフジに突っかかる。4柱中の3柱だからできるだけ皆に優しくしてもらいたいんだけどな……

「こらっ、スイ!そんな厳しくしないのっ!」

「…むぅ……」

私が注意するとスイは頬を膨らませ拗ねる。私はフジの脇をつかみ立たせる。フジは私と同い年のようだけど、なにか弟のように感じる。これでも柱になりかけの凄い子なんだけどなぁ。
けど、私は見捨てたりしない。私はフジの頭をポンポンとする。

「……」

フジは頭に両手を当てて顔を真っ赤にする。あれ…流石にこの年でよしよしは恥ずかしかったかな?ごめんね…

「おーい。そこで水売ってないでさっさと仕事するぞー」

すると上から声が聞こえる。紺色の髪に赤いタオルを額につけている私よりも年上の男性。彼の名前はアーボ。私がここに来た時に助けて貰った上に教育してもらった先輩だ。

「大丈夫!アーボは心配しなくていいよっ!」

私が笑顔でそう言うとアーボは『そうか』と言ってどこかに行ってしまった。アーボも私の仲間だ。いや、この施設の皆は仲間なのだが、特に思い入れがある。もちろんスイとフジもだよ!

「あっ、レイ。」

すると私の横を通りかかった人物が私に声をかける。紫がかった白髪。ドクだ。ドクとダミは純粋な人間で、ポケモンに殺されそうなところを助けた。人間なのに柱になってるから私は尊敬せざる得ない。

「ドク。今日もリウの教育?いつもありがとう!」

するとドクは顔を赤らめて無視してリウが居る大樹へ向かって行った。うん。今日も皆無事だ…!

「イヤァァァァァ!助けて!」
「ピキャァァァァ!」
「ふぁにぃぁぁぁぁー!」

……今日も聞こえる。皆の断末魔。今日も聞こえる。皆の叫び声。私はその声を聞くために働いてるわけじゃない。こんなために生きてるわけじゃない。私は…私は…

「あのっ、レイ。今日はもう時間じゃない…?」

フジが知らせてくれる。本当だ。腕時計を見ると時間だ。今日も行かなきゃいけない。

「スイ。フジいじめちゃダメだよ?」

「……わかってる。」

スイはぷいっとそっぽ向くとどっかへ行ってしまった。私はフジを見る。フジはまだオドオドしている。

「フジ。1人で大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。」

フジはくしゃりと綺麗な顔をする。そうだ。この笑顔の為に私は生きてるんだ。この笑顔が私の生きる糧だ。

「アーボ!リーダー代理おねがーい!」

私は森に向かって叫ぶ。何も聞こえはしない物のきっと伝わっているだろう。私は「よしっ」と頷くと、すぐ「あの場所」へ向かった。

ーーーーーーーーーーーーー

裏世界。そこは基本地下を根城としている。私も今、地下のどこかにある、私の基地に居る。私は施設ではリーダーでもあり、ピラミッドも兼任している。その他にも、裏の世界を支配している。

「レイ様。先程麻薬の売買が…」
「こっちはまた奴隷の売買がありました。」
「施設破壊に成功しましたが、施設にいた人はどうしましょうか。」

資料には私に判断を委ねる物が多々ある。裏の世界を支配……それは表のように投票を行って大統領や総理大臣になるのではなく、力で強者を消し、部下を沢山持ってる人が上に居ることが出来る。私は力だけで強者を消して、裏の頂点にたった後に部下をこしらえた。
この例は異端である。それでも、頂点に立ったからには私は裏の皆を幸せにしたい。全てを表のようにしたい。
ただ、それだけの思いでこの資料を、仕事をこなしている。なら、何故施設で働いているかって?
そうだなぁ。あの施設はポケモン処理の最後の砦、軽々と消すことは出来ない。消したとしたら表世界がポケモンで溢れかえり、生態系が崩れてしまう。
裏世界は表世界で、出来ないこと、表上はしては行けないことをするのが裏世界だ。裏があるおかげで表がある。私はその裏を壊そうとしている。するとどうなるのか?表も一緒に壊れる。
表だけの世界を作ろうとするなんて本当に難しい……

「んー……」

私は頭を捻って頑張って部下たちに指示をしようとした。しかし、アイディアが思いつかない。

『ブルルルル』

「わあっ?!」

すると電話が鳴る。びっくりして声を出してしまった。けれど、私はそれで慌てたりしない。直ぐに電話をとる。

『ゼロさん。お仕事です。』

すると心に何か重みがドシッと降ってくる。この電話は『ピラミッド』の仕事だ。
ピラミッドも私は気に食わない。一見ピラミッドはお手軽派遣会社だ。しかし、ピラミッドを詳しく言うと、汚い仕事が回ってくる汚れ役である。私はそのピラミッドの頂点にいる。頂点にいればいるほど汚い役が回ってくる。
私はそうやって沢山の汚れ役を背負って、裏の世界を生きている。

「今回はなんですか。」

『今回はアローラ地方の表世界の大統領を殺してもらいます。』

私はすぐ脳内データベースを調べた。アローラの大統領。アローラの文化を潰しながら金儲けをしているゲス野郎だ。だからといって殺したらアローラの関係が崩れかねない。受けるか…受けないか…

『ゼロさんがダメなら他の方に』

「やっ、やります!」

私はそう言って私は電話を切った。そしていつものフードコートと武器を持って直ぐに向かった。ここからアローラは数日かかる。海も渡らなければいけないから今回はかかりそうだな。

ーーーーーーーーーーーーー

夜風が吹いている。アローラなのにいつもより風が冷たくて肌に風が突き刺す。ここは大統領が住んでいる根城。外は警備がガチガチだが、私から直ぐに入ることが出来る。
私は大統領のベッドルームに入る。大統領はすやすやと寝ている。この大統領は確かに悪いことをした。けど、絶対悪という訳じゃない。殺したらアローラが崩れてしまう。けれど、私がしなければ他の方がしなければならない。

「…?!お前っ誰だ?!」

迷っていたら気づかれてしまった。大統領はドサイドンを繰り出す。私はナイフを手に持つと…

「グガァッッ!」

ドサイドンを一刀両断にする。『ドサッ』そんなドサイドンだった岩が落ちる音を聞くと大統領に近づく。

「……」

大統領はなにも抵抗しない。さすが大統領。器が大きいし、死ぬのがおかしくない立場にいる事が分かっていたのだろう。

「最期に教えてくれ。」

そう大統領が言った。私はナイフを構える。

「…お前は…幸せか?」

私はその言葉に立ち止まってしまう。
幸せ…そんな4文字はとうの昔に捨てたよ。私が犠牲になるのなら。私だけ辛い思いをするならば。世界最強として生まれた身を世界に捧げ皆を幸せにするだけだ。

「……もう捨てた。」

私がそう言った。大統領はフッと笑うと目を閉じる。

「君はいつか身を滅ぼ……す。」

『グシャッ』

私は脳天からその大統領を殺した。返り血が私の顔にかかる。
この血は美味しい。この人はいい人だった。ただ、環境が噛み合わなかっただけで、歯車が何か少し違ったら良い大統領になっていただろう。
私も同じ。裏を無くそうと、平和にしようとしてるのに、こうやって汚れ仕事をうけおっている。

『それでいいのか』

最近私の中でその言葉が巡り巡っている。だけれど続けるしかない。数十年続けられたらきっと、何か、変わる……はず……

「げほっ、おえっ…!」

すると何か胸から込み上げてきて胃液と共に血が口から飛び出る。
何が原因だ。1週間寝てなかったからか?何も食べてなかったからか?いや、違う、ただのストレスだろう。それだけなら何とかなる。

「ブイッ…イブイッイブイッ!」

イーブイが私の足を引っ掻いている。
ああ、心配してるんだろう。私が死ぬとか思ってるのだろうか。

「…大丈夫」

私は満面の笑みでそう言った。こうやって、笑顔を顔に貼り付けてばかりで表情筋が疲れてきている。
あぁ、泣きたい。あぁ、全てを投げ出したい。
誰か、助けて。誰か、救って。
そんな自分の気持ちを抑えながら私は帰った。皆が待ってる。皆が心配してる。フジが…フジが待ってる。
早く帰らなくちゃ。

ーーーーーーーーーーーーー

「ヒィヤァァァ!」

叫びを聞きながらその人の頭を潰す。返り血がかかる。今回はパーティ参加の全滅だったため、私は体全体真っ赤っかになっている。すると後ろかプルルルルと音が鳴る。パーティに付属されていた電話。多分私宛だろう。

『ゼロさん。次の仕事だ。イッシュ地方のヒウオギシティ。赤白家の全滅を頼みます。』

「はい。」

私はもう断る気力もなく素直に言った。さあ、次の仕事だ。早く終わらせて、早くデスクワークにつかなければ、いや、あと施設の皆のケアもして…

「イブイッ……」

イーブイが私の事を心配する。なに心配してるのいつもの事…じゃ…あれ?なんか汗かいてる。目から…汗?いや、返り血かも知れない。まあどちらにしろ気にする必要無い。
皆の為に。皆の笑顔のために。フジのために。私は働かなきゃいけない。

ーーーーーーーーーーーーー

「また施設の解体をして頂きたい……」
「独裁政治をしている人物が……」

私は資料をいつものように見る。いつものように改善策を考える。いつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものようにいつものように。








なんで私はこんな事をしてるの?











「ははっ、あははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」


もうなんでもいい!もうどうにでもなれ!もう全て壊れてしまえ!もうどうでもいい!
そうだ大切な人だけ守ればいい!他人なんてどうでもいい!

そうだ皆で脱走しよう!そうだ皆で幸せになろう!
フジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジとフジと


「あははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!」

少女は涙した。
少女は狂喜した。
少女は、少女は、少女は、少女は……










フジだけは幸せになって欲しいな。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.49 )
日時: 2022/05/16 16:43
名前: 謎の女剣士 ◆7W9NT64xD6 (ID: b.1Ikr33)

どもです。女剣士です。

……。
上官の命令だけに従い、人とポケモンを少しずつ滅して行く。
昔捨ててしまったと言う感情を、今思い出しては行けないだろうか。
でもね、私的には抱え込まずに誰かに打ち明けるのも大事だと思う。
私の描く作品のほとんどの子たちもそうして、抱えながら今の自分を演じ続けているからね。
同じ位、私にも痛感します。
まだまだこれだけでは泣いたりしない、わたしは待ちます。

それでは。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.50 )
日時: 2022/05/16 18:51
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: ShMn62up)

>>49

チャーフル(2代目レイ)は、上司という人は存在しませんでした。2代目レイが頂点に立っていたからです。全ての判断は2代目レイが行い、2代目レイが裏世界、表世界の命運を握っていたとも過言ではありません。当時彼女は5歳です。この年であんな考えをできるのは私も恐れを隠せざるえません。

そうですね。抱え込まず誰かに吐き捨てるのはとてもいい事だと思います。しかし2代目レイはどうでしょうか?
吐いても何も変わらない。まず2代目レイは皆を幸せにしたい、苦しませたくないという正義感で動いていたので自分のせいで余計部下や施設の人々を悩ませたくなかったのでしょう。
それと、裏世界に入ると誰もが敵になります。味方と思ってる人も、所詮は利害の一致や、本当に信頼できる人とは限りません。その中で情報は命です。そう易々と悩みを話て弱みを握られるのも避けたかったのでしょう。
これが大人の、裏の世界です。実際、政治家等、上の階級にいけば、現実世界でもこのようなやり取りが行われます。それを私はポケモン世界に移しただけにありません。

彼女は、いや、誰もが裏世界で自由に動くことは出来ないのです。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.51 )
日時: 2022/06/16 08:49
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: q9W3Aa/j)

《シュウ》

「え…なに…これ?」

僕は2代目レイこと、僕の妹チャーフル・ジーニアの行動日記を読み終えた。その内容はとても綺麗でレイや、ダミ、ユウが言っていた綺麗で皆を包み込むチャーフルとは思えなかった。

「これで分かったか。チャーフルも。俺らと同じく人間なんだ。」

リーダーが横で呟く。
チャーフルは立派だ。皆を幸せにすべく、身を粉にして働いていた。それがこんなにも過酷で厳しいものなんて思ってなかった。
結局…チャーフルは狂っていたんだ。狂って…もう……

「うっ、えっぐ、あっぐ……」

僕は…いつの間にか涙が出ていた。施設に来てから1度も泣かなかった僕が。チャーフルがこうやって死にかけていた時に僕は悠々とメリープ達と戯れていたんだ。チャーフルが…チャーフルが…
施設に居る人の中で1番辛かったのがチャーフルだったのかもしれない。嫌、チャーフルだ。1番苦労して、1番苦しんでいたのはチャーフルだったんだ。

「……」

リーダーはずっと図書館でこのチャーフルの日記を読んでいた。そのため、何も言えなかったのだろう。
僕は嘆いた。僕は叫んだ。
しかし、それはチャーフルに届く事は無い。チャーフルは『シアワセ』を捨てた。捨ててまで救おうとした。






3代目レイ フジを






「……お前はどうするんだ。」

リーダーが本棚に持たれかけながら僕に言う。僕はこの図書館に来た時、リーダーに全てを話した。というか、話さないと読ませて貰えなかった。リーダーがここにいつも来ている理由。それはチャーフルの日記を読むためである。リーダー…もといドクも、僕の妹チャーフルが好きな1人である。ずっと、チャーフルの悲劇をここで何回も何回も見ていたのだろう。

「リーダーは、もう知ってるんじゃないの?」

僕はそう言って笑った。伊達にチャーフルの双子の片割れじゃない。実力は双子よりは低いけど、周りの探知能力は多分ユウより上だ。僕たちがユウと話していた時にレイとリーダーの話ぐらい聞こえていた。多分双子とユウは知らない。
だから、リーダーはこの行先僕が何をするかなんて分かってるはずだ。

「……お前も、ここに来て変わったな。」

「それは、リーダーもでしょ?」

「……」

リーダーは黙りこくる。僕は得意げな顔して図書館を出ていく。
もう全てが分かった。
もう全て吹っ切れた。
もう全てこの身を捧げる。

「ありがとうねっ。」

僕はいたずらっ子のような笑みを浮かべリーダーに言う。リーダーは少し驚いたような顔をすると、後ろを向いてしまった。リゼもチャーフルの日記を読み、何も言わずに僕に着いてくる。


じゃあ、行こうか。

ーーーーーーーーーーーーー
《ドク》

シュウが図書館から出ていく。最初来た時はオドオドしていて、レイにしがみつきながらも着いていくような奴だった。なのに今は1人で身を粉にする決意をするまで成長していて…その様子はまるで……まるで

「レイみたいだ。」

俺はそう呟いた。2代目レイのように可憐で起用とは言えない。しかし、レイのように優しく、笑顔で、何事にも立ち向かう。これは、双子だから…かもしれないな。いや、これは恋…か。俺が恋したチャーフルが居なくなるだけでこれだけ豹変したように、シュウは逆で、恋の相手が現れたことにより、カッコつけなくなり変わってしまう。もしかしたら、2代目レイもそうだったのかもしれないな。どちらにしろ、2代目レイとシュウの双子をあれだけ変えたのは『レイ(フジ)』という存在があってこそだろう。
相思相愛なのに、相手を救うために身を犠牲にし、残された人は気が狂う。一体。何がお互いの、片方の幸せになるのだろうな。

『シアワセなら、とっくにすてたよ。』

……2代目レイは、もう幸せなんて捨てたんだったな……シュウも、そうなのだろうか。

『ジリリリリ』

すると図書館付属の電話がなる。なんとまあ、タイミングが悪い時に電話がかかってくるものだ。俺は何も言わずにその電話をとる。

『トゥエルブスさん。お仕事です。』

「……はいっす。」

俺はそう言って薄黄色のフードコートを来た。それに黙って、ポリゴンZは着いてきた。
俺はこれからどうするかって?そんなの決まってるー

ーーーーーーーーーーーーー
《シュウ》

「戻ったよ。」

僕とリゼはいつものダミの隠し部屋に着いた。そこにはいつものように謎のフラスコを持つダミと、結果が分かっているような顔をするユウ、不安そうに見つめる双子が居た。

「……決まったかい?」

ダミが僕に聞くと、僕は頷く。そして僕は前に出る。

「……僕は。チャーフル・ジーニアが大好きだ。」

「……何言ってるの。」

僕が言うとミソウが半ギレになりながら僕に問いかける。しかし、ユウはそれを咎め、僕にまだ発言の権利を与える。
ダミもユウも酷いものだ。結果は目に見えてわかっているだろうに。

「だからこそ。チャーフルが死んでも守りたかったフジを。僕も守りたい。」

双子は僕のことを凝視する。ダミは、少し切なそうな顔をして僕を見つめる。その顔も、感情も、所詮プログラムなのにね。ユウは何も無く微笑む。微笑んでいるだけだ。
僕は知っている。その微笑みは、自分の弱い所を隠すために顔に貼り付けているだけだと。

「……シュウは、レイのこと好きなの?」

ミソウが言うと僕は微笑む。まるで、僕も弱虫のようだ。いや、弱虫なんだ。僕も、レイも、チャーフルも。

「僕はレイ狂おしいほど、大好きだ。」

「「「「っ?!」」」」

僕はどんな顔だっただろうか?なにか表情筋が勝手に動いたような気もする。そして、謎に顔が火照ったような気がする。
ミソウはなにか思ったのか、何も言わずに走っていく。

「おい!ミソウッ!」

するとタツナも走ってく。
なんか申し訳ないことしたかもしれない。けれど、この気持ちに嘘をつくわけもないし、顔を背けもしない。

「……リゼは?」

ユウがリゼのことを呼ぶ。リゼは目を閉じて「はぁ」と息を吐く。

「私も。救いたい。チャーフルを。日記読んで思い知りました。私はこの世界にとってちっぽけなものだと。そして、シュウや、レイ、ダミ、ユウのように心の柱としてきた人物なんて居ない。だからこそ羨ましいとも言えます。
というか、私の意思関係なく、計画を実行した方が『私が居た』という証明を世界に示せるでしょう。協力しますよ。私。『リゼ』が。」

かなりの長文だった。リゼなんて何考えてない、悪く言えば自己中な人だと思ってたけど……
心の支えもなしに生まれた時からここで生き抜いて見せたのは、レイよりも超人的だと言えるだろう。

「リゼは、自分がいる証明をしたかったのかな?」

「そう…かもしれませんね。」

リゼはバツの悪い顔で横を向く。
これで僕とリゼ、ダミ、お前のユウという戦力が増えた。双子は…分からないけど。

「……双子はどうするんですか?」

「大丈夫だよ。ね、ダミ。」

「そうだね。まあ数日はかかるかもしれないけどね。 」

そう言ってユウとダミは余裕の笑みだった。2人はもう結末が分かっているのか。
情報や人を読む能力においては、2人には敵わないな。チャーフルなら出来てただろう。チャーフルなら、何もかも完璧に。チャーフルなら……

「2人はもう帰るといい。」

ダミが一言そう言った。決意が固まった僕達はダミの部屋を後にした。双子は……2人が大丈夫というなら大丈夫だろう。今までもそうだったから。

「シアワセ…ですか。」

リゼがそう呟く。僕はその言葉にピクっと反応するも、もう何も感じなかった。

「『シアワセなんてもう捨てた。』」

「それ…2代目の……」

「でも、違うかもしれないね。」

僕は廊下で歩きながらふっと笑った。

「好きな人が幸せになることが。自分の最っ高の幸せなのかもね。」

「……」

僕は満面の笑みで言った。その笑みは自然と溢れ出た笑みで、顔が火照っていた気がした。

「あ、僕の部屋ここだから。じゃあねリゼ。また明日。」

「はい。また明日。」

そう言って僕は部屋の中に入った。

ーーーーーーーーーーーーー
《リゼ》

「じゃあねリゼ。また明日。」

「はい。また明日。」

そんな会話をシュウとすると、私は自分の部屋に戻ることにした。あのシュウの笑顔を恐ろしいほど綺麗で狂った笑顔。
シュウはもう。狂ってしまったのかも知れません。いえ、客観的からも第2視点からみても、シュウは狂ってるようには見えません。でもそうでしょう。『狂う』の種類が違いますもの。

「『狂愛』」

私はポツリと呟いた。私には程遠い言葉ですね。
そう思いながら、自分の部屋のドアノブを捻った。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.52 )
日時: 2022/05/20 16:35
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 6Z5x02.Q)

《ミソウ》

嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ

「シュウはレイが好き?嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」

あ…そうだ。レイを消せば良いんだ。あの忌々しい3柱を殺って私が3柱になればシュウは私を好きになってくれるかもしれない。レイを消せば。あいつさえ居なければ。
私は調理場に行き、綺麗な刃を手にする。

「待てっ!」

すると私と同じぐらいの歳で、私と似ている桃色の髪型の奴が邪魔をしてくる。

邪魔

私は一心不乱にソイツに刃を振るった。私と似たような動きをして、似たような実力である。それでも何回もふるう何回もふるう何回もふるう何回もふるう何回もふるう何回もふるう何回もふるう何回もふるう

「ミソウッ!俺だ!俺…ガハッ……」

仕留めた。1回刃が刺さると生物は動きが鈍る。その隙に何回もふるう何回もふるう何回もふるう

『グサッグサッグサッグサッグサッ……』

何回もそんな血走る音が聞こえる。あぁ、最高。私はこのために生きているんだ。サラサラと流れる美しい鮮血が私の腕を頬を体全てをつたう。その感触に私は悶えながら私に似た『ナニカ』に何度も刃を振るう。

「あはっ、あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!」

甲高い私の声が食堂全体に響き渡る。もう全部壊れてしまえ、何もかも無くなってしまえ!何もかも、何もかも!

「…ソウ……ミ……そう……」

桃色が私の片腕を弱い力で掴みながら何回も私の名前を呼ぶ。鬱陶しい。邪魔。もう、血は出そうにないし腕を切ってやろう。そうしよう。
そして私は刃を振り上げた。

「ヴォンッ!」

すると目の前に2匹のキュウコンが現れた。水色と黄色の奴。あぁ、今仕事だっけ?殺さなきゃ。
私は容赦なく刃をふるおうとするが、悪寒がする。
なにか来る。
私は反射的にバックステップをする。すると水色のキュウコンから冷気が漂い、雪やら風やらが勢いよく私の方へと向かってくる。吹雪だ。厄介なものだ。
私はそのまま動けないでいた。すると前から何かの気配がする。刺さなきゃ。そう思い反射的に刃をふるうと『グサッ』と確かにはらわたを引き裂いた音がした。
仕留めた!
そう思った。すると視界が揺らぎ、私は倒れ込み、殺ったはずの桃色にマウントを取られている。すぐさま刺そうとするが、次の瞬間気づいた。

タツナだ。

「ハァ…はぁ……ようやく頭冷えたか愚妹。」

タツナは体中傷だらけで、それでも力を緩めず私へのマウントを辞めない。キュウコン達は私の周りに座ってその様子を見守っている。
私は、今までずっと兄に刺していたのか。周りが見えなくなってて分からなかった。けどまあどうでもいい。頭が冷えて分かった。私がすべきことはレイを殺すことだ。

「どいて私はレイを殺す。」

私は目を見開いてタツナを見つめる。周りはもう暗く、窓から見える様子もキッチンも……タツナも黒ずんで見える。
私はレイを消な無ければならない。シュウに振り向いてもらうため。シュウを私のものにするため。シュウに見てもらうため。シュウにシュウにシュウに

『パァンッ』

その瞬間。頬に衝動的な痛みを感じ、あまりの力で首ごと力の方向へと持っていかれそうになる所を持ちこたえた。
え、今、何が起こった?平手打ちされた?誰に?タツナ?

「……目を覚ませ。」

タツナはその時いつもクシャクシャと笑って、私に何かあると百面相になって、いつもシュウみたいに輝いていた顔が、紙を丸めたようにあちこちに顔にシワが入っており、大きな瞳も潤み、綺麗な丸とはいえなかった。下唇を噛みながら私のことを見つめる。

「次はコレだぞ。」

タツナが身体中からサラサラとした美しい鮮血を流しながら刃を私の胸に当てる。
あぁ、これ私殺される?あれ、私何がしたかったんだっけ?シュウに振り向いて欲しくて、その笑顔が眩しくて、そのキラキラがどうしても欲しくて。光に群がる虫ポケモンのように手を伸ばして。

それを全てレイに持ってかれた。

「……現実逃避をするな。ミソウ。」

私の胸の刃にタツナは少し体重をかける。すると数ミリ私の身体に刃が入り込む。私、死ぬの?殺されるの?実の兄に?私の片割れに?

「目を覚ませミソウ!」

その瞬間、モヤモヤとした何かが吹っ切れ、私の中ではタツナのその言葉がずっとエコーしてかかってる。そして、何回も何回も同じことを考えながら何回も何回も現実逃避をしている自分が目の前に居た。

「…俺はシュウが好きだ。独り占めにしたい。あのキラキラを俺だけのものにしたい…レイが憎い……!」

タツナは私が思っていた事を復唱する。
同じことを思ってるなら、同じことを考えてるなら。レイを殺そうよ。邪魔なやつは消そうよ。今までそうしてきたじゃない。ねぇ、兄?

「けどな」

タツナが言いにくそうに口を開く。
同じことを考えてるなら……同じことを思ってるな…ら……?

「俺らは……」

やめて…やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!
それ以上口を開かないで!それ以上……それ以上!

私が腕を使いタツナの口を塞ごうとするも2匹のキュウコンに押さえつけられ動けない。動かせない。

「やめて…やめてやめてやめて!!!」

私が溢れかえった気持ちを口から出す。それ以上はやめて。聞きたくない。知りたくない。向き合いたくない!










「死にたいんだよ。」











「……ぁ……」

今まで目を背けてきた現実を、自分の写鏡とも言える双子の兄に突きつけられた。
『死にたい』もうこの苦痛から逃れたい。死んで楽になりたい。そんな気持ちに幼い私が向き合えるはずもなく、ずっとずっと背いてきた。
けど、兄は違うんだね。ずっと向き合って、向き合ったまま笑顔を保ってたんだね。
双子なのに。全く一緒のはずなのに。兄の方が私の思考の1歩先へ言っていた。

「死にたい。苦痛から逃れたい。こんな地獄から……逃れたい……」

タツナはそう言うと刃を抜く。そして、自分の胸に突き刺そうとする。
私はシュウが全てだ。心の中は全てシュウで埋まっているはず。
なのに…なんで?なんでこんなに綺麗に整理した気持ちを嵐のようにぐちゃぐちゃにされる感触を覚えるの?

「けど…死ねない。」

私はポロッとこぼした。
死にたいけど死ねない。私達の本能が働いているのか、それとも、仕事に快感を覚えているからなのか…
どちらにしろ死にたくても死ぬ度胸なんて無かったんだ。殺そうとする相手には死ぬ気でかかってるのに、自分で自分を殺そうとする時は、どちらも覚悟が出来ない。

「そうなんだよ。だからさ。」

タツナは刃を片手でポキッと折って後ろに放り投げた。そして、1粒涙を流した。1つ流れると2つ3つと幾らでも出てくる。

「死ぬなら、シュウの為の屍になろうぜ。」

タツナは両目からボロボロと大粒の涙を流しながら今までに見たことないような美しい笑顔見せた。
タツナの涙が重量の法則に従い私の頬をつたる。何粒も何粒も私の頬をつたり、いつの間にかタツナの涙より私の頬に流れる涙の量の方が多くなってきたかもしれない。

「……うん。」

その一言で、私とタツナは立ち上がる。
お互いのキュウコンを隣に控えながら見つめ合う。見れば見るほど自分のようだ。私とミソウは手と手を合わせ合う。

「「結局死ぬなら……『最期の足掻き』をやってみせましょう。」」

そう言い、お互いくしゃりとした笑顔を見せ合う。その笑顔は、外の謎の光に照らされ、お互い人生で1番綺麗な顔に見えた。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.53 )
日時: 2022/05/20 20:40
名前: 謎の女剣士 ◆7W9NT64xD6 (ID: b.1Ikr33)

こんばんは。

大好きでもあり大切な仲間でもあるシュウを振り向かせる、独り占めしたいからレイの前ではかなりの殺気があったんですね。
確かにミソウのシュウへの想いが、ひしひしとこの最新話に伝わって来ます。
これならきっと、私でも上手く扱えるかも知れません。
……とは言っても、ベリーさん程ではないですけどねw

正気に戻る前のミソウの狂気っぷりが、凄かったですね…。
本当にもう駄目なんだと思いましたが、タツナが止めてくれてよかったです。

続きを楽しみにしています。
それでは。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.54 )
日時: 2022/05/21 17:59
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: FLOPlHzm)

>>53

ミソウとタツナ、もう少しキャラを深堀したかったんですがね、これが限界でした(´;ω;`)

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.55 )
日時: 2022/06/01 19:43
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 07aYTU12)

《リゼ》

 昨日、ダミの本当の目的を打ち明けられ、各々戸惑いましたが、私は何とか平穏で居られています。確かにダミの目的を聞かされた時は驚きました。しかし、それ以上でもそれ以下でもない。『ただ驚いただけ』でした。今まで自分の身を案るだけで、自分とサーナイトを守るためだけに必死に生きてきただけで、特にこれといった目的等ありませんでした。ただ、生き残って、仕事をする。それだけ。
 けれど私も人間です。いえ、詳しく言えばヌメルゴンのキメラなのですが…そこは今は置いときましょう。人間のため勿論私にも心というものがあります。そして感情的になる同行者シュウたちを横目に分かったことがあります。
 ー私の感情はもう無いー
 と、何故気づかなかったのでしょう。シュウのように生き生きとしてキラキラとしている生き物を見ても何も思わないのですから。幼い頃から大切にしてきたラルトス…サーナイトさえ、きっと今目の前で死んでも私は何も思わないでしょう。
 そこまで私は落ちぶれていたのだと、痛感しました。もう、私が生きている理由も、価値も無いのです。それならばせめて一緒に罠にハマった同行者と共に散るのもアリかと思いましたね。最期の最期まで足掻けるか…なんてものは実際体験してみないと分かりません。しかし、努力は…してみようと思います。

「リゼ!手が止まってるよ!」

 …私はこのレイ…3代目レイのことはあまり好きになれません。3代目レイの過去を知っても尚、レイが怖いです。逆らえば何をされるか分からない。伊達に施設のNo.2なわけないです。
 私はレイに言われた通り手を動かし私がサボってるように見えない程度にポケモンを殺します。もし、私に2代目レイのような力があれば、2代目レイより上手くいっていたかも知れません。だって、『感情が無いのだから』
 よくよく考えたら前提の部分で私は2代目レイのようにはなれませんね。2代目レイのようになる前提条件。『長年人間性を保っていること』これは私だけではなく、他の施設の仕事人も無理難題と言えます。こんな環境下で人間性を保てる人なんてそうそういません。
 2代目レイの片割れ、シュウでさえその人間性を失ってしまってるのですから。

「ん?リゼどうしたの?」

 シュウが必死に肉を引きちぎりながら私に聞いてきます。少しシュウに視線を移しただけでシュウは私に見られていたことに気づきました。最近シュウの成長速度はおかしいと思い始めました。元々表世界、奴隷市場から来た普通の人間のはずです。しかし、彼はミュウツーのキメラとガブリアスのキメラの子であった。潜在能力は裏の世界一だと、ダミが言っていたのでそれが影響してるのでしょう。

「いえ、なんでもありません。」

 私はシュウに視線なんて向けずただ岩を使い潰していきました。少し手のひらがピリピリしてきました。いえ、そんなことを言ってると脱走計画を破綻させかねません。
 脱走計画といえば、昨日双子が部屋から飛び出していきました。リーダーに密告などしてないでしょうか。それが心配です。私はキメラなので自害は難しい体です。そこで死ぬよりも苦行とも言える拷問を受けると歩く屍になりかねません。しかし、双子は昨日の様子とは打って変わって息ぴったりな動きでポケモンを処理していきます。この調子だと、あのミソウの暴動は解決したようですね。そして、リーダーや3柱に密告などもしてないようですし、一安心です。
 双子の兄、タツナはこのメンバーの中…いえ、施設の中で唯一狂ってない人物と言っても過言ではないでしょう。そして小柄とは思えない思考力を持っています。ミソウも同じことが言えますがタツナと反対でとうの昔に狂っているため1部の話は通らないでしょう。戦闘力はタツナは力は弱いが素早い。ミソウは力は強いが遅い。こうなれば双子が1人になった方が余程効率が良いのではと思います。   

『ジリリリリリリリリリ』

おっと、もう仕事終わりのようです。私達は今まで戦っていたポケモン達を無視して、出口へ走ります。早く栄養補給をしたいです。

ーーーーーーーーーーー
《シュウ》

 仕事と飯が終わり、僕達はいつものように誰にもバレないようにダミの隠し部屋へと入っていった。
昨日タツナとミソウが出ていってしまったけれど大丈夫だろうか。双子がリーダーや3柱に告げ口をしていたらこの計画は一巻の終わりである。それが1番不安で、自分を抑えられるか分からない。もし、告げ口をされたのなら…

「どんな苦しみを与えてあげようか。」

 いつの間にか心の内を言葉に出してしまっていたようだ。計画が白紙になってしまうならば自分も苦しい思いをする。しかし、双子が泣き叫ぶ姿を想像するとうっとりしてしまう。これが双子でなく、レイであったら…
 いや、いやいや、ダミが大丈夫と言っていたら大丈夫だろう。
 そう思いながら扉を開ける。するとそこにはもう全メンバーが集まっていた。

「おやおや、結構遅かったじゃないかシュウ君」

ダミが微笑みながら言った。リゼもユウも表情さ問題なく計画表を見ている。問題の双子は…特に負の感情は感じられない。ミソウから少し負の感情を感じられるが昨日までではない。

「2人は大丈夫なの?」

僕は念の為に双子に聞いてみる。双子はお互いを見合い僕を見る。

「あぁ。大丈夫だ。 」

「気持ちの生理は着いた。」

 2人にどんな気持ちの葛藤があったかは知らない。というか興味無い。双子が大丈夫というのなら大丈夫だろう。それにリーダーや3柱がここにいないということは双子は告げ口をしなかったということだろう。それならば問題ない。

「今回は本気的に計画を進めていくよ」

 ダミはフフフとニヤリと笑いながら皆に向けて言った。その笑顔でさえ、作られた物なのだろう。僕もそれを模して笑顔を作った。
 絶対にこの計画は成功させる。チャーフルの為に、レイの為に、フジの為に…僕のために。
 他が何を言おうが関係ない。他がどうなろうが関係ないんだ。僕にはレイしか居ないんだ。 

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.56 )
日時: 2022/06/13 03:08
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: YAHQda9A)

今回はお知らせになりますm(_ _)m

本日17時頃にポケモン二次創作裏の陰謀第2部外伝予告MVを公開致します。
因みにこの『最期の足掻き』は裏の陰謀第1部外伝となっております。
『第2部外伝?そんなの最期の足掻き関係なくない?』
と思った方も居るでしょう…!

第2部外伝は最期の足掻きと裏の陰謀を混ぜた2つの続編のような物になっております。ですので最期の足掻きキャラ、裏の陰謀キャラが主要人物になったり、ゲストとして出てきたりするので待っててください…!

第2部外伝は最期の足掻き完結後、裏の陰謀第1部完結後に始動する予定です。キャラが圧倒的に少ないため今後リク板でオリキャラを募集すると思いますので、よろしくお願いします。

余談
因みに予告PVでは『妄想税』という曲を私がカバーした上、初めて自分でMIXしました。情報量多いね☆

ーーーーーーーーーーー
最期の足掻きについて。

少しお話が進みすぎているため、少し休載させていただきます。
本編の裏の陰謀第1部完結と同時期に完結しないと筋が通らなくなってしまうためです。ご了承ください…
その代わり裏の陰謀更新を頑張って早く休載を脱出できるようにします!
その間スピンオフで最期の足掻き成分を吸って頂けたらなと思います。

以上お知らせでした。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.57 )
日時: 2022/06/20 10:08
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 4mXaqJWJ)

僕は弱い。名前もない。ずっとレイの後ろをみていたんだ。レイは早くて、強くて僕の憧れだった。いつかレイの横に立てれば。レイを助けられたなら。

『ほら、早く!    フジッ!
      しなよ。 シュウ』

 僕は、2 代目レイのためなら。この命なんて
    3         
 捨てても良かった。

ーーーーーーーーーーー
《フジ》

 脱走は唐突に始まった。僕には知らされてなく、夜中いきなりドクに起こされた。急に脱走って言われてもすんなりと行く訳には行かなかった。脱走するにはリーダーのレイが立ちはだかる。柱全員が束でかかっても勝てっこない。
 しかし僕は弱い。ドクに反抗出来るわけがなく無理やり抱えられ仕事場に連れていかれた。

 この施設の出口は仕事場のガラスドームの天井にある。そして脱走を防ぐため夜にガラスドームは迷路のような壁が現れる。情報屋のドクからそれだけは聞いていた。
 仕事場の道中にはスイ、ダミ、アーボが待っていた。要するに柱が全員集まったのである。けど、問題はレイだ。しかし皆は脱走計画を知っていたような息のあった動きで仕事場に向かった。

 案の定、仕事場に出てきた瞬間レイが待ち構えていた。僕と同じぐらいの背格好で小さい。しかし、堂々と立っており雰囲気は大人……いや、人外のような雰囲気であった。
 ここをどう突破するっていうの……?僕は弱音を心の中で吐いていた。そんな中、レイに手をかけられて死ぬのならいいのかも。みたいな事を考えてる自分もいたのだ。

「スイ、ドク、ダミ、アーボ。そしてフジ。全員揃ったね。」

 レイは僕が思っていた発言と行動とは真反対で僕の頭を撫でた。僕は予想もしなかった出来事に混乱を隠せなかった。

「今回は協力してくれてありがとう。私なんかのために……」

 そう俯くレイの瞳には僕達が微かに映っていた。あれ、昔はくっきり僕達を見ていることがわかって、キラキラとした瞳だったのに、変わってる?当時の僕はその微かな変化を気にかけることはなく、周りの空気に流されて行った。

「まあ、可愛い弟子に頼まれたらね。命をかけるよ。」

 アーボは1柱で、昔レイが施設に来た時レイを救って育て上げた人物でレイとアーボの間には師弟関係が出来ている。今やレイの方が実力は上だが、レイを守れる立場にいるなんて何とも羨ましい限りである。

「私もっ! このメンバーの中で1番レイへの愛は強いわ! このスイ。レイの為なら身も心も心臓も捧げる。」

 水色がかった白髪にパッツンのレイより少し身長が高い3柱のスイが真剣な顔つきでレイに言った。スイは重度のレイコンプレックス……所謂レイコンで、レイに常に引っ付いており、誰かと関わると牙を向く。僕もレイが好きなため正直邪魔である。しかし力の差は覆られなかった。

「僕も、レイのためならこの体絞ってでも助けたいからね。クヒヒヒッ」

 そう不敵な笑みを浮かべるマッドサイエンティストこと、ダミ。4柱である。今はもう生きてはいないが、昔はいつも不敵な笑みを浮かべ、楽しいことなら何でもする人であった。そして、ダミもレイの事が好きであった。

「うん。僕も覚悟はできてる。ユウが心残りだけど……ユウなら、僕の跡をしっかり継いでくれると思うからさ。」

 ダミと同じ髪色のショートヘアでアーボと同じぐらいの身長の青年─2柱であるドクが言った。『自分はもう死ぬ─』と受け取れる発言に僕は疑問を抱かずには居られなかった。因みに、ドクは現在のリーダーである。

「皆……本当に……本当に……ごめん……」

 レイは声を振り絞り最後はもうかすれ声になり言った。すると僕以外がレイに抱きつく。僕は意味が分からなかった。何をしてるんだと疑問で疑問で仕方なかった。
まあ、現時点で1柱のアーボ、2柱のドク、3柱のスイ、4柱のダミ、そしてリーダーのレイ。柱全員とリーダーが揃ったのである。もう仕事人の中で敵になるものは居ない。ならば、すんなりと脱走出来るんじゃないのか?僕はそうワクワクしていた。

「─じゃあ、行こうか。」

 レイはもう何も映らない瞳を前へ向けて言ったのだ。

 最初にたどり着いたの空間はかなり広く、公園ひとつ分ぐらいの大きさであった。しかし、そこには誰もいなくて何も無かった。

「ねぇ、ここは大丈夫なの?」

 僕は怖くなりながら皆に聞いた。するとレイは僕の頭を撫でる。

「ここは本来リーダー、柱が脱走者を足止めする場所なんだけどね。足止めする人がいないから! 」

 そうレイはいつものように元気いっぱいで、キラキラした笑顔を僕に向けて言った。けどさっきからレイの瞳の濁り具合が異常で心配である。
 大きな場所から狭い通路を通っていると、床が無い場所に着いた。細い通路の中、ポケモンのキメラで視力が良い僕やレイでさえこの穴の底は見えなかった。レイぐらいなら穴を軽く飛び越えられそうだが、1柱であるアーボのレベルまで落ちるとどうしても飛び越えられない。それぐらい長い穴が空いてあった。落ちたら……死にはしないだろうけど全身複雑骨折をして誰も助けが来なくて、複雑骨折で苦しみながら数ヶ月苦しんで餓死するだろう。そう考えるだけでゾッとする。

「ねぇ、脱走なんて……辞めようよ……」

「何? ここまで来て怖気付いた?フジ。」

 怖くなった僕はそう皆に言うがいつものようにスイに刺々しい言葉を言われた。『そうじゃないけど…』そう口ごもる当時の僕。気弱で自分の意見すらまともに通せなかったのだ。

「まず第1段階。このレバーを引くと床が現れてて通れる仕組みだ。」

 ダミが壁についていたレバーを指さして言う。でも、そしたらレバーを引いてる人は通れないじゃないか。ここで1人犠牲にするというのか?

「作戦通り。頼むよ。ドク」

 アーボがドクにそう言った。ドクは少し寂しそうな顔をする。そのまま黙ってレバーの手前までくる。

「ちょっと待ってよ! ドクを犠牲にするよの?! そんなの、ダメだよ! ねぇ、ダメだって! そうでしょ! アーボ、レイ! 」

 僕は誰よりも他人のことを考えてるレイと、歳が近く良くドクと仲良くしていたアーボの情に訴えかける。僕達は一人欠けたらそれで終わりだ。ドクを失いたくなんかない。だから、辞めようよ……こんなこと……

「そういう作戦なんだ。」

 いつも不敵な笑みを浮かべているはずのダミが表情を冷たくして僕に言い放った。そんなこと言われても納得できない。そんな顔をするとレイがギリッと歯ぎしりをする。しかしレイはいつものように笑っている。でも、悲しそうで、悔しそうであった。
 鳴呼、この中で1番仲間を犠牲にすることに躊躇っているのはレイなんだ。レイが仲間を犠牲にする程、何かに追い込まれているという事になる。当時は幼く、そんな考えに至らずに『レイの意向ならそうする』と思ってしまった。

「……なあ。ごめん。やっぱり……怖い。」

 ドクは震えた手を必死でレバーにかざそうとする。そりゃ怖いだろう。自分を犠牲にして仲間を脱走させても、その後自分は職員から拷問を受ける。怖くて当然である。

「……ドクはこれ、持ってなかったよね。」

 そういうとレイが頭に巻いていた長タオルをシュルシュルッと解き、ドクの肩にかける。ドクの2柱という立場はあくまで相棒のポリゴン2と、情報屋としての知識量のお陰で成り立っているため、ランキングに乗ることは無かった。そのため、支給品をいつも貰ってる組から服などを貰っていた。だからドクも僕もランキングによく乗っている組が持ってる長タオルを持っていなかった。

「……いい……のか?」

「うん。いつも何枚かは持ち歩いてるしね。
  "お揃い! "」

 レイは満面の笑みでドクに言うと、ドクは顔を真っ赤にして、フッと笑った。そして黙って、レバーを───下げた。

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

『バチバチバチバチ』

 するとドクの叫び声と、電流が流れる音がする。えっ、どういうこと?! 何が起こってるの?! 僕は疑問だらけで、その場で立ち尽くしていた。

「何やってるのバカフジ!早く行くよ!」

 するとスイに僕の尻を蹴られ進むよう催促された。僕は嫌々ドクのおかげで作られた床を渡る。

「どういう……ことなの?」

「どうもこうもないよ。ここは誰かがレバーを引いてる時だけ床が現れる。けれど、レバーを引くと高い電流が流れる。僕達が渡切る前にドクがレバーを話したら僕達は穴の中にスっトーンだよ。」

 僕が混乱しながら聞くとダミが平然と答える。じゃあ、早く渡りきらないと……! けれど、まだドクを犠牲にしたことに心残りがある。ダミも、肉親だよね? なんでドクを犠牲にすることに賛成なんてしたんだよ……!
 心の中で不快感がありながらも僕は皆より最後に床を渡り終えた。その瞬間。『ガタッ』という音と主に床が無くなり、最初のように底が見えない程の穴が空いた。
 ドクがレバーから手を話したのだろう。ドクとダミはキメラではなく人間だ。それであそこまで耐えられたのは尊敬に値する。そして、あの電流を浴びて無事ではないだろう。多分……死んでる。
 しかしスイ、アーボ、ダミは何も言わず黙って先に進む。僕は納得がいかなった。もしドクが生きてたとしても、脱走未遂者として捕まり拷問を受けられるんだ。なんで、ドクが……いや今考えるとドクしか居なかったんだ。

 次は迷路のように入り組んだ道を進んでいく。僕は途中で方向感覚がおかしくなったが、レイは次々と正解の道を当て続けズンズン前へ進んでいく。さすがレイだ。素晴らしい勘の持ち主である。現在の僕でさえ、レイの勘には追いつかない。
 迷路が終わるとまた、一番最初の空間のような場所に着いた。最初の空間と違う部分は……

『蜉ゥ縺代※窶ヲ窶ヲ谿コ縺励※』

全身真っ白、個体によって所々皮膚の色が違い、爪、牙、羽が着いている物も居れば人型ですらない白い何かが複数体待ち構えていた。

「なに……これ、誰なの! 」

 僕は恐怖で声が掠れていた。しかし、そんな僕の前にレイが僕を守るように立つ。

「彼らは正規品。俺らのようにかつて自我を"持っていた"まあ、同類みたいな物だよ。」

 正規品─聞いたことがある。
働いてる僕達は人間にポケモンの遺伝子を無理やり組み込んだポケモンキメラの、失敗作。性能が低かったり自我が強かったり人間の遺伝子が強く出ると失敗作となり廃棄か施設で働かされるが正規品は違う。個体値が高く、自我は薄いが思考力がありポケモンの能力が色濃く出ている個体。その個体の自我を物理的に抜き取るのだ。要するに脳みその一部分を抜き取り、命令を受けるための電波を頭に付けられる。
 人間のエゴで生まれた可哀想な生物兵器である。そう。彼らも僕達のように生きているのだ。体が白く、個体によって着いている部位が違うのはベースとなるポケモンが違うのと、動いやすいように必要最低限のものまで削ったらこんなフォルムになるらしい。人間の遺伝子が入ってるはずなのに、完全に化け物である。
 強さも1柱のアーボ程である。それが複数体。これは無理なんじゃないかと一瞬思ったが僕らにはレイがいるのだ。

『蜉ゥ縺代※窶ヲ窶ヲ谿コ縺励※!!!!!!!! 』

 正規品が声とも言えない電波に近い音声を叫びながらレイに襲いかかる。しかしレイは正規品の人中て……急所を1発で当てて次々と正規品を倒していく。ダミもその戦いに参加している。僕も参加したいけどアーボが頑なに僕を行かせようとしない。
 正規品も残り数体になった。

『縺ゅj縺後→縺……』

 そんな切なそうな、嬉しそうな電子音を流し正規品は倒れていく。そして、全部の正規品を倒し終えた後。

「じゃあ、次行こうか! 」

 レイが可愛らしく『頑張るぞ!! 』と体で表した瞬間であった。ダミの後ろから嫌な予感がする。背中がゾクッとした。それを僕よりも先にレイとアーボは感じ取っていたのか2人は叫ぶ。

「「ダミッ! 危ない!! 」」

 かわす時間は十分にあったはずだ。あったはずなのに。ダミは──あえて"それ"を食らった。
 僕が"それ"を認識出来たのはダミの胸を"それ"が刺さった時出会った。シャーペン程細い針。けれど、これは見ただけで分かる。ポケモンが使う毒である。しかも猛毒。

「ダミっ?! 何を……何をしてるの?! 」

 レイは半泣きになりながら針を抜き取り、傷口に口を当てる。僕はそれを見ただけでドキッとしたが、そんな場合ではない。レイは傷口から口で毒を抜き取り、ペッと地面にその毒を吐いていた。アーボはその毒を出した死にかけの正規品を再起不能になるまでぐちゃぐちゃにしていた。

「僕はさ……納得行かなかったんだよ。 」

 ダミの胸がどんどん緑色になっていく。これは腐蝕の毒だ。毒が触れた部分からどんどん肉が腐り、死ぬ。

「これは……フジだけでも……外の世界に脱走させる計画だろう?それに……納得行かなかった。レイ。もういいよ。手遅れだ。」

 ダミは顎まで腐蝕が進んでいる。レイはそれでも諦めたくなかったようだが、ダミの言う通り、手遅れだったため、諦めてしまった。

「まってよ……僕だけでも外の世界にって……どういうこと?」

 僕は震えた声で言った。予想はある程度つく。というか分かっていた。けれど考えたくなかった。思考を放棄していた。

「レイは……フジのことが好きなんだよ。」

 ダミが心底悔しそうに僕のことを見る。僕は衝撃の事実に動揺を隠せなくレイの事を見る。しかし、レイはそれ所では内容で顔をくしゃくしゃにしてダミのことを見ていた。

「なんで……フジだけって……思ったね。嫉妬でこの身が……燃え尽きそうになったよ。だから。僕が……ここで負傷して……足でまといになって……レイだけ脱走させる予定だったんだけど。
 どうやら失敗してしまったようだ。」

「……その気持ちは分かるけどっ! 皆納得してたじゃない! レイの意向ならこの身を捧げるって! 」

 スイがダミの肩を揺さぶろうとする。しかし、肩も腐敗が進んでおり、スイが掴んだ瞬間ボロボロと崩れ落ちてしまった。

「そん……な」

「やめてくれよスイ。痛いじゃないか。」

 ダミは涙を流しながらいつものようにハハハと笑っている。笑い事ではない……

「ごめんね。レイ。足でまといになるつもりだったのに、これじゃあ足でまとい所か計画が台無しだよ。」

 そういうとダミは腐敗が進んでいない方の片腕で鋭く磨いた岩を持ち、それを──


 自分の腹に刺した


 鮮血が飛び散り節々に『ガタッガキッ』と石とダミの骨がぶつかる音がする。

「あ"あ"!う"ぁぉっ!」

 ダミは叫びながらもそれでも手をとめない。腹を切り裂き、骨をぐちゃぐちゃにして、一生懸命『何か』を探しているようであった。腸の破片が飛び散り、胃が床にゴロンと落ちて……
 もう見ていられなかった。今までポケモンの急所を着いて一撃で殺していたため、こんな生々しい光景など見たこともなかった上、人間相手だと余計見たくなかった。

「あったよ……」

 そういうとダミは上半身を起こしていた状態をゴロンと仰向けに寝そべり、コロッと石ナイフが転げ落ちる。僕はチラッとダミを見る。そこには骨も内蔵もぐちゃぐちゃのなか、"何かの部位"だけが綺麗に残っていた。

「ごめんね……レイを……生かしたかったんだ。けど……それっも……もう……無理……らしい。フジ生きろ。」

『フジ生きろ』

 今でもその言葉が頭の中で木霊している。くっついてくっついて離れてなんかくれなくて。何回死にたいと思っても、諦めたいと思っていても諦めさせてくれなくて、終わらせてくれなくて。

「これは……肝臓……だ……」

 その瞬間、腐敗が進み胸部分からダミが2つに分かれた。『肝臓だ』僕は当時意味が分からなかった。けど後々分かることになった。

「……ダミ……何で……」

 レイはもう表情なんてない。ただ無でダミのことを見ていた。ダミはハハッと笑うと垂直に目線を整えた。

「大好きだよ。レイ。」

 その言葉が─ダミの最期の言葉だった。

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.58 )
日時: 2022/06/21 21:13
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: 1CRawldg)

レイは両目から塩水を零しながら、顔をぐしゃぐしゃにして、ダミの肝臓が腐敗する前に、持っていた長タオルでダミの肝臓を抜き取った。そして長タオルを袋の代わりにして、持った。
 ダミ"だったもの"はもうただの緑色した人型になっていた。いや、もう人型すら保っていられなかった。血も内蔵も全て乾いた緑色に成り果て、灰のように散り散りになっていた。

「ダ……ミ……ダミっ! 」

 レイはそこで跪きダミの血で汚れた両手を見ながらボロボロと大粒の涙を流していた。アーボは平然とした顔をしているが、スイは恐怖に近い感情で涙を流していた。

「ダミ……ごめん……ごめんなさい……ごめん……なさい……」

 レイはただそれだけ言って嘆いていた。レイにここまで感情込めて謝ってくれるのなら、レイの為に犠牲になるのも良いのかも知れない。そんな場違いなことを当時の僕は考えていて、ダミと同じように、レイだけしか見えなくなってたんだ。

「レイ。嘆いてる暇はない。正規品の援軍が来たら流石の俺でも耐えられないよ。」

 アーボが冷たく言い放つ。レイが泣いてるのにそんなこと言わなくても良いじゃないか。と僕はアーボを睨みつけたが、それ以上にアーボの目が冷たかったため、僕はビビって目を逸らしてしまった。

「そう……だよね。」

 レイはそういうとダミの肝臓が入ったタオルを持ち、歩を進めた。そこではもうレイのカラフルでキラキラしていた瞳はどす黒く濁って、僕のことなんて見えてなかった。

 細長い迷路をレイは迷いもなく淡々と進んでいく。どんどん上へ上がってる気がする。それは間違いではなく、僕にかかっていた圧に近い何かが軽くなっていく気がした。

 そして、また広い空間へ出た。そこにはダミが死んだ空間にいた正規品の数よりも多い数の正規品が立ちはだかっていた。

「……ここが最後の難関だ」

 そういうとアーボは手をボキボキと鳴らし、正規品と戦い始めた。スイも、レイも。どうやら僕を守る隙が無いほど今回の正規品は強いようだ。僕も参戦して一体づつ仕留めていく。
 けど、強い。一撃一撃が重く、普通のポケモンとは全く違う。その正規品は何も喋らず。機械的に何回も僕の弱い部分を突いてくる。必死でかわしてかわして、ようやく一撃を入れられたと思ったら正規品はビクともしない。
 僕じゃ相手にならないのだ。
 すると他の正規品を始末し終えたスイが僕の援助に入る。いや、スイが殆ど倒しているため僕が補助になってしまっている。
 かなりの時間が経った。ダミの時の3倍の時間がかかったが、何とか全員倒せた。

「もう……大丈夫よね。行きましょう」

 スイがそう言った刹那。それは本当に見えない程、気配を感じられないほど自然で早い動きだった。

「がはっ……!」

 アーボの片腕が落とされた。誰に? 何で? 正規品は全て倒したはずだろう。じゃあ誰に?

「緊急の施設依頼が来たと思ったら。ガキが脱走してるだけかよ。」

 僕たちがこの部屋に入った通路からその声は聞こえた。気配も何も感じない。かなりの手練である。その人物は赤茶色のコートフードを被っており、灰色の目に灰色の髪をしていた。

「デット……グレイ! 」

 レイが絶望したようにその人物─デットを見る。傍らには目つきが悪い、施設では見たことも無い程の凶悪そうな、そして強いリザードンが居た。そのリザードンがアーボの片腕を落としたのだろう。誰も気配を察知できなかった上、施設でNo.2に強いアーボの腕を難なく切れた相手だ。弱いわけが無い。今の正規品と戦ったばかりで満身創痍の僕らは敵いっこない。レイもそう悟っていた。ならばどうするか。『アレ』を使うしかないだろう。僕はポケットに入っていた赤い錠剤を手に取ろうとするが……レイに止められる。
 その代わりアーボが赤い錠剤を飲み込む。
 僕達キメラのポケモンの能力を引き出す為の薬である。するとアーボは元々黒かった白目をもっと黒くし、黄色の光がガンガンに光、体も大きくなり肌が紺色になる。アーボは、ガブリアスのキメラである。
 そしてアーボはデットの目の前に地面から鋭い大きな三角柱の岩の柱─ストーンエッジを出現させ、デットとリザードンがこちらへ攻撃できないようにする。

「……ふぅ。ここは俺が足止めするよ……」

 アーボはヘナヘナっと座ると痛そうに俯く。僕も見ただけで腕が痛くなるぐらいその様子はグロかった。

「まって……そしたら、アーボ……は? 」

 レイが掠れた声をしながらアーボに言う。アーボはいつも微笑んでるポーカーフェイスを崩し、レイの頬に手を当てる。

「大きくなったな。チャーフル。」

 チャーフル─それはレイ、2代目レイの本名だったようで後々知ることになった。レイは瞳を凹ませ鼻水をたらし、ぐちゃぐちゃの顔でアーボを見た。

「い"っや"……皆で……なるべく皆で外へ行くって……! 」

 レイががなり声でそう叫ぶとアーボは額に巻いていた長タオルを解き、片腕でレイの頭に付けた。片腕がないためきちんと結べていなかったが、当時のアーボは満足そうであった。

「なんでこんな聖人に育っちゃったかなぁ」

 アーボは笑いながらレイを片腕で抱き寄せる。レイは『あ"あ"ぁ"』と声を抑えながらただ泣くことしか出来ていなかった。僕とスイはレイのような聖人でない。レイ以外はどうでもよかったため、寂しさはあったがレイ程泣かなかった。

「リザードン!ウィングブレード!」

 するとアーボのストーンエッジがデットのリザードンによって砕かれる。

「……レイ! こんな所で会えるとはなぁ! ぶっ殺してやらぁぁっ! 」

 レイ─それは2代目レイであるチャーフルに話しているようには見えなかった。アーボに話しかけていた。これも後々知ったことだが、アーボは1代目レイ─一回目の脱走を成功させた1人であった。当時はピラミッドだったため、怨みを買っていても不思議ではなかった。

「アーボッ……アーボォッ!」

「いいから! いけ! チャーフル! 」

 アーボが響くような声で言った。レイは唇を噛むと先の通路へと走っていった。僕達もレイに続き全力疾走で走った。
 その後、俺が拷問を受けた時はドクしか居なかったため、きっとアーボは死んだのだろう。

 そして、最後の砦に、僕たちはついた。そこにはまた底が見えない穴が空いていた。しかし、匂いが激しかった。アンモニアのような刺激臭である。

「この穴に入れば外に出れる……けど、穴の底には強力な酸が入ってるの。」

 レイがそう言いながらダミの肝臓を取り出し、それに口を付けた。そして、それを。穴の中に投げ捨てた。『ジュワッ』という音がここからでも聞こえ、ダミの肝臓はもう溶けて無くなったのだと分かった。

「その酸をダミの開発した薬でゼリー状にして、通れるようにするのが、私達最後の作戦。ダミも薬を服用して穴の仲に入る予定だったんだけどあのザマだからね。薬の成分が1番濃縮されてる肝臓を取ったのよ。」

 スイがそういうと穴の縁に立った。そして、ポケットから沢山の錠剤を穴に投げ入れた。

「薬? ってそれのこと? 」

「そう。だけどこれだけじゃ足りない。」

 レイもポケットから錠剤を穴の中に投げ入れていく。『ジュワジュワ』と音が聞こえるが、ゼリー状になんてなってないのが分かる。

「じゃあ、どうすれば……」

「薬は、私たち。スイと私よ。ずっと前から薬を服薬して、私達が酸に溶けるとゼリー状になる作せん"っ!」

 レイが淡々と説明していると唐突にレイが何かに刺された。僕はショックが大きすぎて俯いていたが前を見ると、正規品が黄緑色の刃でレイを背中から刺し、貫通させていた。スイは素早く反応してその正規品の頭を足でかっ飛ばす。

「アサシンの正規品……油断してた……」

 レイは腹から血を流しながら、その血を惜しむことなく穴の中に入れていく。きっと血にも薬の効果があるのだろう。そして、いつもならレイはすぐ傷が治る。しかし、今回は治らなかった。

「再生を鈍らせる効果があったのね……でも、やることは変わらないわ。」

 スイがそういうと穴の縁に立つ。レイもだ。

「フジ。私達が薬になって穴の中の酸を無効化させる。だから、私達が入った30秒後に穴へ入って。そしたら外へでれる。」

 レイは清々しい笑顔を浮かべた。なんで、自分の死に際にそんな笑顔を浮かべることができるの?僕は不思議で仕方なかった。そして、─死んで欲しくなかった─

「いや……いやだよ! レイが居ない世界なんていらない! 僕も……僕も一緒にさせてよ……! 」
 
 いつもそうだ。僕は仲間はずれだった。僕以外柱になってて、僕以外は皆ランキングにのってて、僕以外皆レイのように周りの人を救った。僕は無能で何も出来ないから、仲間はずれであったのだ。
 
「……フジはさ。特別なの」

 レイが口を開き出した。僕が……特別? そう心の中でオウム返しする程度しか僕の思考力は残ってなかった。

「いつも朗らかで、私に元気をくれて、慕ってくれて。フジは私の中の特別だったの。恋……なのかな。分からないけど。」

 恋? なにそれ、何を言ってるの? レイ
 当時はそんなことを思っていた。でも、仮にレイが僕に恋をしてくれていたのなら、両思いであった。けれど、それを喜べる精神状態じゃなかった。
 横でスイが不機嫌そうに僕のことを見る。

「私もレイの事が大好きだったのに。フジだけ特別なんて許さないから……! でも、レイがフジだけでも幸せにしたいって言うのよ。」

 スイが涙を流しながら言う。失恋と自分の死。それが一緒に押し寄せて来ていたスイは正気なんて保っていなかったと思う。

「……僕もっ、僕もレイが好き! 大好き! だから……死なないで……」

「フジ! こんなに愛されてるんだから幸せになんなさいよっ! 」

 スイはいつもの口調で僕に刺々しい言葉を投げるが涙で顔がぐちゃぐちゃである。レイはダミの肝臓が入っていたタオルを僕の額に結ぶ。

「今遺せるのはこれだけしかないや。けど、私も使ったものだから、私とダミと思って、使って。」

 僕はただレイを見上げて貰った額のタオルに手を当てる。

『─大好きだったよ。フジ─』

 その言葉を最期に。レイとスイは、穴の中へ







 
 堕 ち て っ た







 僕はその後穴の中に入れなかった。勇気が出なかった。放心状態で、ずっと現実逃避をしていた。すると職員がやってきて僕を拘束、拷問部屋へと案内された。
 そこにはドクもいて、僕らは腕を天井にしばられ宙吊りにされた。そしてデットがやってくる。
 そこからは聞くだけでも恐ろしい拷問が待ち構えていた。リザードンに火で炙られながら、職員のポケモンに内蔵をぐちゃぐちゃにされ、キメラの正規品に目玉をくり抜かれて……それでも俺は再生したためもっとキツい拷問を受けられた。ドクは戦闘能力も知能も高いため俺よりは軽い拷問で受けたが、それでも、生と死の間際をさ迷うような拷問をを受けた。その間に、アーボ、ダミ、レイ、スイの死を知らされた。
 そして、施設へ戻される。もう、脱走なんてしない。したくない。誰も失いたくない。そして、レイ達を裏切ってしまった僕が許せなかった。
 もう何に向かって生きるのかも分からない。死ねない身体故に日々ポケモンを狩るしかない。
 ポケモンを狩り食べて寝て、ポケモン狩り……それを続ける内に自分自身が嫌いになった。殺したいと思った。だから、僕は─いや、俺はフジという名を捨て、レイの名を勝手に受け継ぎ、レイのようになりたい一心でポケモンを狩り続けた。10年ぐらいだろうか。それが続き、今や1柱と周りからもてはやされ、『3代目レイ』と呼ばれるようになった。ドクもリーダーとなり、人が変わった。その影響を受け、ユウも、変わってしまった。

 僕の中 まだ響いてるんだ

 ダミの声が。『フジ生きろ。』
 アーボの声が。『ここは俺が足止めするよ。』
 スイの声が。『幸せになんなさいよっ! 』
 レイの声が。『─大好きだったよ。フジ─』






『貴方の名前はフジ!不死って意味でフジ!幸せになるんだよ!フジっ!』






 そんな、レイの明るくキラキラした声が。




       終