二次創作小説(新・総合)

Re: ≪ポケモン二次創作≫ 最期の足掻き ( No.63 )
日時: 2022/07/19 15:53
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: pUqzJmkp)

番外編 腐れ縁のユウとレイ、リウとフジ

「……リョク来ないな」

仕事場、仕事中。柱とリーダーの集会にレイとユウは来ていた。
 仕事人は仕事中は建物に入れないため集会は大樹の元と決まっている。
 2人は特に話そうともせずに明後日の方向を向いて何か考え事をしていた。
 レイはシュウの事を。ユウは脱走のことを考えており、お互い話そうともしなかった。

「ねぇねぇ。レイはシュウの事好きなの?」

「あぁ。そうだが」

「本気かい?」

「悪いか」

 そこで会話は止まる。レイは正直ユウと1対1で対面するのは好きではない。相手は情報やの為口が回る。そのため自分の情報を取られないように気をはらなければならない。
 しかし、今回の話は情報を抜き取られても問題ないと踏んだレイは涼しい顔で言った。
 ユウは考えた。腐れ縁相手だからこそ覚える違和感。"本当にレイはシュウの事が好きなのか"
 傍から見たらシュウとレイは両想いに見えるが、レイからシュウへの対応が違和感あった。

「じゃあ質問を変えよう」

「余計なことは答えないぞ」

 ユウが人差し指を宙でクルクル回しながら言った。レイは普段よりも警戒した声色で言った。

「2代目が生きていたら君はシュウと2代目。どっちを取る?」

 ユウの質問にレイはピクッと動いた。そして虚ろな目で下を向き始め、ユウは少し意地悪をしてしまったと後悔する。
 ユウはレイをからかうのが好きだが、レイの過去を抉るような一線は超えるのを躊躇った。赤の他人なら抉るのは躊躇わないがレイとリーダーだけは躊躇ってしまう。
 レイはユウに質問された瞬間頭が真っ白になった。何と答えれば良いか、何を言えば正解なのか。
 しかし黙っているだけだと、弱い質問をユウに知られてしまう。

「2代目はもう。居ない」

 レイは答えた。2代目が、初恋の人が居ないのは分かりきってるし、そんな世界あるわけが無い。
 その事実を再確認するとレイはいつになく心が抉られる感覚を覚えた。

「仮にだよ。仮に」

「……お前はリーダーとダミならどちらを取る」

 レイは答えられず質問を投げ返した。ユウは眉をピクっとさせ明らかに不機嫌な顔をした。
 レイもユウに対しては一線を越えないつもりだが今回ばかりはやり返したかった。
 
「私はリーダーもダミも取らない。ドクを取る」

「ダミはドクと全く性格が違うから分かるが、リーダーとドクは同一人物だろ」

「全く違うよ」

 ドクは、リーダーの昔の名前で、ダミは今は亡きリーダーの弟である。
 2代目とシュウも兄弟なため、ドクとダミの話をレイは振ったが、ユウは即答だった。

「ドクとダミはあの通り性格が真反対。ドクとリーダーは確かに同一人物だが、違う。分かるかい?」

「分からん」

 ユウがそう言うとレイはすぐ言った。
 レイにとってはリーダーもドクも変わらなかった。確かに対応は変わったが、根は変わらず、逆に2代目の背中を追いかけ合っている同士と思っている。

「……フジとレイは違うだろう? それと同じだ」

「なるほど」

 ユウが少し考えていうとレイは直ぐに納得した。
 フジとは、レイの昔の名前だ。レイは昔、今とは真反対の弱虫な性格であった。それを知るものは昔からの知り合いのリーダーとユウだけである。

「で、話は戻るが、シュウと2代目どっちを取る?」

「……」

 ユウの言葉にレイは再び黙ってしまった。
 レイにとって、2代目は今は亡き初恋相手だ。シュウは2代目の双子であり、世界で唯一2代目の面影を持っている人物である。
 レイにとってはどちらも手放せなかった。

「迷うかい?」

「……当たり前だ」

 レイはムスッとしながら手に顎を付けた。時間をかければかけるほど、ユウの目は鋭くなっていく。その目は嘲笑ってもなく、バカにしてるようでも無く。ただ、答えを先延ばしにしているレイを厳しく見ていた。
 レイは普段とは違うユウの目に焦りを感じながら頭を回していた。

「……選べない」

「所詮はその程度かい」

 レイがボソッと呟くとユウは余計その顔を冷たくさせた。レイは冷や汗をかいてユウのことを見る。

「何が言いたい」

「所詮、レイはシュウを2代目の代用品とでしか見てないんだよ」

 ズドン

 レイは片足を地面に踏みつけ勢いよく立った。その力で地面が少し揺れる。
 その力はリーダー以上の代物でユウなど到底敵わない力であった。それでもユウは怯まず鋭い眼光をレイにとばす。

「なんだい? 言いたいことがあるなら言ってみなよ」

 レイは何かを言おうとするが言葉が詰まる。喉から出かかっている言葉はレイ自信認めたくないものであった。

「君は2代目が好きなんだ。シュウに惑わされるな」

 ユウが真剣な顔でいうとレイはもう何も考えずユウを殴ろうとした。ユウはレイを怒らせすぎた。しかしユウ自身は後悔して居ない。
 いずれはぶつかる物だから。踏ん切りがないとダミ達の犠牲が無駄になるから。
 ユウは甘んじてその拳を受け止めようとしたが……

「リーダーはもう来ないそうだ」

 すると横から別の男性の声が聞こえた。その男性はレイの拳を片手で受け止める。

「やーやー遅いよリョク君。私殺されかけてたんだから~」

 ユウはそこでいつものように飄々でヘラヘラした顔になる。 レイはここで頭が冷えてユウを殴るのを辞める。が、八つ当たりでリョクにタックルをした。
 リョクはふらつきながらもしっかりと立つ。

「また喧嘩してたのか。リーダーが不在なんだから辞めてくれよ」

 リョクが呆れながらユウとレイに言った。2人とも不機嫌そうにするが黙って席に座る。

「リウが余計な質問を……」

「フジ君が優柔不断だから」

『あ"ぁ"?!』

 レイとユウのいつもの煽り合いが始まるとお互いキレてしまい、殴り合いが始まった。
 その様子を見てリョクは安心した。傍から見たら危険な殴り合いだが、さっきのお互い本気のやり取りでなく、いつもの冗談のようなやり取りだったため、いつものようになったためホッと息をついた。

「早く始めるぞ」

『こいつぶん殴ってから!』

 レイとユウの声が見事にハモる。仲が良いのか悪いのか。それよりもこれはこれで大丈夫じゃないだろう。
 そんな事を思いながら、リョクはいつものレイとユウの喧嘩を見守り始めた。

 ◇◇◇

《レイ》

「レイ! どこ行ってたの?! 心配したんだよ!」

 仕事終わり、食堂へ行くとシュウを先頭にリゼ、双子が俺の元へ走ってくる。その様子は2代目達と重なる所がありつつ、レイとして築き上げた関係と思うと胸が暖かくなる。

「レイが3柱の寄合に行くと聞いてずっと待ってたのに来ないから。心配してたんですよ。シュウが」

 リゼが『シュウが』の部分を強調して言う。シュウは否定せずただニコニコしていた。

「そうだぞ。心配してたんだぞ。シュウが」

「シュウがだぞ。シュウが」

 双子も『シュウが』の部分を強調している。リゼと双子の様子を見ていると本当に俺の事を心配してなかったのは分かる。しかし、それが施設の関係で、シュウと2代目が特殊なだけだ。
 それにしても、双子は素直になった気がする。俺がシュウにちょっかいを出すと双子はかなり攻撃的になっていたのに、最近俺がシュウに関わっても何も言わない。
 逆に応援しているような生暖かい視線を感じる。それが少々気持ち悪い。

「ほらっ、レイ! 早く行くよ!」

 シュウは上目遣いで俺の片手を両手で握る。
 その様子は2代目そっくりで、そして、俺が昔から夢見ていた光景であった。『2代目を俺が守る。』
 ずっとこの日々が続いたら良いのに。俺はそう思いながらシュウに引っ張られた。
 ふとユウの質問がよぎる。
『2代目が生きていたら君はシュウと2代目。どっちを取る?』
 もう2代目は、2代目レイはこの世に居ない。それに俺はもうフジではなく3代目レイである。
 今更そんなこと考えても腹も膨れなければ娯楽にもならない。
 それから考えることを辞めようとしたが、どうしても胸騒ぎがする。
 バカバカしい。俺は、3代目レイはシュウに連れられ食事を取り始めた。

         終