二次創作小説(新・総合)
- ABT③『もう1つの『可能性の世界』』 ( No.33 )
- 日時: 2021/02/06 22:43
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 6..SoyUU)
ミミニャミから送られてきた写真を解析し、少しずつ情報を得ていく運営本部。
そんな中、ヴィルヘルムから衝撃の事実を聞いたサクヤ達は……?
------------------------
~運営本部 メインサーバ~
サクヤ「ふむふむ。星の数ほどの『音無町』の時代の記憶が、ごちゃ混ぜになって1つの街を形成しているようですね」
大典太「……形としては何とか維持しているが、歪なのはそれが理由だったのか。このまま街が成り代わってしまったらこの街だけの問題じゃなくなりそうだな」
ルーファス「一応、逃走者のみんなが走るルートはしっかりと大地が残ってる。実際に建物の中に入っている逃走者もいるから、建物自体も実体を得ているみたいだね。みんながみんな幻という訳じゃなさそうだよ」
前田「それならば少し安心できますね。逃走者の皆さんに危害が及ぶ可能性は減ったも同然なのですから」
運営本部では、ミミニャミから送信されてきた写真から音無町の全貌が少しずつ見えてきました。時代背景がごちゃごちゃになっている建物が並んでいることから、サクヤはすぐ『様々な時代の音無町を無理やり繋ぎ合わせている』ことに気付きます。
逃走者の踏みしめている大地、そして一部の逃走者が立ち寄った建物。入ることが出来ている為、建物自体はしっかりと存在するみたいですね。彼女は一旦写真の送信を取りやめるようミミニャミに連絡を入れます。
サクヤ「ミミさん、ニャミさん、聞こえていますか?サクヤです」
ジャック『青龍か。まだ写真が必要なのか?』
アクラル「おい。ミミニャミは?いつもならあいつらがいの一番に返事するのに。なんかあったか?」
ヴィル『ああ、あった。それもかなり厄介そうな案件だ』
ニア「あら、どういうことですか…?」
ミミニャミ、どうやらあの後意気消沈して何も考えられなくなってしまったようで。今は公園で少し休憩を入れているようです。サクヤの通信に珍しくジャックが反応したことにより様子がおかしいことに気付いた一同。どうしたのかと問い合わせると、ヴィルヘルムがばつの悪そうな声で自分達が見たものの説明をしたのでした。
アクラル「『ミミニャミが2人いた』だぁ?!」
ヴィル『あぁ。確かにいた。服装や雰囲気は違ったが。まるであの子を守るように、自分達が盾とならんと彼を視界から塞ぐように歩いてもいたな』
ルキナ「確かに、私が過去に飛んだ時も『その時代』のルキナは別に存在していたのですが…。その類ではないのですか?」
大典太「……かつての俺達のように、『時の狭間』に閉じ込められていた『異界の存在』だったりはしないのか?」
アカギ「いや…ルキナの可能性も光世の可能性も…かなり信頼性には乏しいと思う…。実際に『異界のエクラ』の記憶を吸い取ってしまったエクラがこの世界にいるから…」
大典太「……そうか。どうせ俺なんかの意見は通らないと分かっていたさ…」
サクヤ「確かにお2人が出してくださった可能性に関しては『ない』に等しいものですが、では一体どうしてミミニャミさんがお2人コネクトワールドに点在しているのでしょう」
そう。『コネクトワールドに同一の存在はいられない』ことは、5回目のエクラの件で分かっています。つまり、コネクトワールドにミミとニャミが2人いるのはおかしいことなのですが…。ヴィルヘルムもジャックも『しっかりとこの目で見た』とはっきりと言いました。今の状況で嘘を言ってられないので、彼らの言うことに信頼性はあるでしょうね。
どうしたものかと首を傾げていると、ヴィルヘルムはそうだ、と言葉を続けます。
ヴィル『そのことなのだが…。あの場で見かけた印象で済まないのだが…。私達が見かけた、あの子と共にいたミミとニャミ。まるで雰囲気が『亡霊』のように感じた。まるで、この世から既に生を終えているかのように…』
ルキナ「亡霊?……ということは、ヴィルヘルムさんとジャックさんがお見かけしたお2人は幽霊なのですか?」
アクラル「幽霊のミミニャミが偶然この世界に迷い込んで、エムゼと鉢合った、ってか?少し無理やりすぎねーか?」
アシッド「いや。そうでもないと私は思うがね」
サクヤ「アシッドさん。何か心当たりがあるのですか」
自分の見たミミニャミがまるで『亡霊のようだった』という報告を受け首を傾げる一同。ヴィルヘルム曰く、MZDに付きまとう雰囲気からそう感じたのだとか。しかし、亡霊であってもミミニャミと同一の存在であれば。コネクトワールドにいることはできない筈です。
ふと、アシッドが何かに気付いたように口を挟みます。サクヤが話を振ると、彼は一つ持論を述べ始めました。
アシッド「彼女達が『亡霊』と見えたのならば、見えたなりの理由があるのだろう。そこを考えていけば、何故彼女達と私達が知っているミミニャミが共存出来ているのかが分かると思うのだが」
アクラル「どういうことだ?」
アシッド「我々が今戦っている相手。サクヤ、彼奴は今どうなっている?」
サクヤ「―――あっ。メフィストが『邪神』になっている可能性が高いんですよね。ならば……彼が人ならざる力を使って引き寄せられる可能性は……」
ニア「あら?社長。しかし……。それはこの世界の神には行えないことでは?この世界での『同一の存在の共存』が出来ないのは例え神だとしても同じこと…。例えメフィストが邪神と化していても、ミミ様ニャミ様がこの世界に存在指定のならば無理な事です、わ」
アシッド「それは『この世界』の常識に捉えて考えているからだよ、ニア。……メフィストを『邪神』にしたと思われる存在。この世界のものではなかったら?」
サクヤ「『異世界』の力をコネクトワールドで用いれば……。確かに、ミミニャミさんを共存させることも出来るかもしれません」
アシッド「彼奴が裏で手を引いているのは間違いない、が…。もしかしたら、ジョーカーが見たミミニャミとヒスイを引き合わせたのも彼奴の可能性もあるな」
アシッドは『この世界ではなく、異世界の力を用いれば共存させることは出来るのかもしれない』と持論を述べました。確かにこの世界の常識が通用しない世界から力を用いれば、違う世界のミミニャミを同じ世界に共存させられるかもしれません。
その話を聞き、マルスが何かを思い出したように彼の言葉に続けました。
マルス「アルフォンス王子も言っていたね。世界には『様々な異界』が存在して、可能性の数だけ『違うぼく達がいる』のだと。同じように見えても、少しずつ違う運命を辿ってるんだって」
アカギ「様々な異界…。その中にメフィストを邪神に変えた『アンラ・マンユ』がいた世界もあったということであれば…。『異界のポップン』にいたミミニャミをこの世界に手繰り寄せることも出来るかもしれないな…」
サクヤ「『可能性の世界』ですか。―――少し、調べてみる必要がありそうですね」
5回目にも出てきた『異界』の話。この世界のアルフォンス達ヴァイス・ブレイヴやエクラは似ている記憶を持っていても、『別々の異界』の住人だったということが分かっています。必ずしも同じ世界の記憶を持ってはいないのだと。
そこら辺については全く分からずじまい。もしかしたらあのミミニャミも『別の可能性を辿ったポップン世界』のミミニャミなのかもしれません。しかし、まだそれを確定させるに至る情報が足りない。
『調べる』と彼女が言った途端、彼女が立ち上がるのを阻止するかのように前田が言葉を遮りました。
前田「では、僕達でそれらしき情報を探ってみましょう。大典太さん、主君をよろしくお願いします!」
大典太「……おい。前田」
マルス「探る、となれば書庫が一番いいかな。あの場所には様々な世界の情報が載っている。なら、もしかしたら異界の情報があるものも寄贈されているかもしれないからね!」
アクラル「おーし!それじゃぱぱっと調べて戻ってくっかー!時間がありそうに見えてないからなー!あいつに先手打たれる前に作戦立てるぞオラー!」
ニア「あら…。貴方様の単細胞でどうお考えになるおつもりですの…?」
ルキナ「マルス様のお手を煩わせる必要はございません!情報を探るなら私が全部やりますから!マルス様は優雅にお紅茶でもお飲みになってください!」
マルス「あのねルキナ?今『時間がない』ってアクラルが言ったばっかりなんだよ?みんなで力を合わせないと、何も情報が得られない可能性だってある。ぼくだけが休んでいるわけにはいかないよ」
前田「私語を話している余裕がありましたらみんな、書庫へ行きますよ!情報は時間が大事ですからね。得るだけではなんの進展もありませんから!」
サクヤ「あ、あの」
前田の言葉を皮切りに、サクヤ以外の全員が『情報を集めよう』と立ち上がります。大典太もその輪に加わろうとしたところ、前田に『大典太さんは主君をお守りください』と釘をさされてしまいました。
1人と一振がぽかーんとしている間にもあれよあれよと話は進み、前田を先頭にぞろぞろとメインサーバから出て行ってしまいました。その場に取り残されたサクヤと大典太。
……そんな状況を察したのか、少し笑ったような声でヴィルヘルムが語りかけてくるのでした。
ヴィル『サクヤ。お前はまた1人で調べ物をしようとしていたな?』
サクヤ「上に立つ者が動かず、どう下をまとめ上げるというのですか。というかそもそも上も下もありません」
ヴィル『刀剣が顕現する前のお前になら、これ以上の助言は必要ないと思ったのだがな。今は違うだろうサクヤ。お前は、しっかりとお前を守る存在がいる。
―――上に立つ者の1人として、1つアドバイスをしておこう。自らが動くより、下を上手く動かせ。そうでなければ、命がいくらあっても足りぬ』
サクヤ「上手く動かしたつもりでも、結局上手くいかないこともあるものです」
ヴィル『まぁ、それも分かるが。この地に集うものは、皆お前達四神を信頼している。だからこそこの地に留まっている。そのことを忘れるな。
それでは一旦念話を切るが……。また何かあったら連絡する。大典太殿。私からもサクヤのことをよろしく頼む。それではな』
大典太「…………」
そのままぷつりと通信は切れてしまいました。その場に取り残される1人と一振。しばらく沈黙が続いたのち、サクヤが無言のまま首を傾げました。やはり納得が行っていない様子。
そんな彼女の様子を見て、静かに大典太は口を開いたのでした。
大典太「……主は、今までずっと。1人で出来ないことも1人でやろうとしている。近くで見ていたから…何となく分かるようになった。だからこそ、あいつもあんなことを言ったのだと思う。
―――まだ、主には少し難しいかな」
サクヤ「なんですかそれは…」
いつの間にかくすくすと静かに微笑んでいた大典太の声を聴いて、サクヤは不機嫌そうに口をとんがらがせたのでした。
……これも、サクヤが成長する為の一歩。なのかもしれませんね。