二次創作小説(新・総合)

#CR08-6_1 これが、夢ならば ( No.3 )
日時: 2021/03/16 22:18
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)

作戦決行の早朝。大切な人を救う為、音無町へと再び赴くミミ達。
そんな彼女達を画面越しに見守りながらも、サクヤは嫌な予感が払拭できないのでした。

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~音無町 村雲小学校前~



ミミ「―――ここが、『村雲小学校』って場所の前なんだよね?」

ニャミ「それにしては……むむむ。外観は全然違うけど、なーんかラピストリア学園に雰囲気が似てるんだよねここ」

ミミ「MZDが昔通っていた学校だから、ラピストリア学園を造るときに参考に……って、それはないか。MZDは学校に行ってないはずだもんね」

ジャック「あいつが嘘ついてなきゃな。トラックの事故で死ぬまで、勉学は全部施設でやってたって」

莉愛「本来の歴史なら、彼がこの学校に普通に通って……成長を遂げていた筈なのよね」

ヴィル「―――そう、だな。神々に目を付けられたばかりに、あの子の人生は狂った。……思ってはいけないと理性で抑えてはいるが、やはり苦しんだ分……幸せになってほしいという願いがある」

ニャミ「でも、ヴィルさん!MZDがこのままメフィストに幻を見せ続けられているのは違うと思う。MZDにもさ、MZDなりの『幸せ』ってものを……きっと見つけたいんだと思う。夢の中じゃなくてさ。現実で」



 夜は明け、早朝。サクヤ達の見送りを受けたミミ達は、再び音無町へとやってきていました。無人のつぎはぎだらけの街。今度こそ、MZDを救う為に。なお、ごくそつくん達は別ルートを通って待機中です。
 村雲小学校の前まで移動してきた一同は、どこか寂しげな校舎を見て各々感想を口にします。ラピストリア学園に似ているのは―――。もしかしたら、少年が抱いた『夢』の1つだったからなのかもしれませんね。
 莉愛が物陰から校舎をこっそりと見やります。どうやら既に向こうが到着していないかを確認している様子。



莉愛「まだ誰もいないみたいね……。きっとごくそつさん達は別の場所で待機している筈だし、私達が一番乗りね」

ニャミ「うん。集合時間にはまだ早いからね。えーと、今の時間は……」

ジャック「朝の6時15分だ。チラシに書かれてやがったのは6時30分。……あと15分で来るはずだ」

ミミ「校庭と言えば、部活にいそしんでいる学生の皆さんが朝から声がけをしているイメージがあるから、これだけ静かだと不気味なんだよね……」

ヴィル「街は彼奴等と我々以外いないのだから当然だろう。―――さて、怖がっていないで校庭で待つぞ。動かなければ、助けられるものも助けられないからな」

ニャミ「正念場、ってやつだね」



 あまりの静けさに不気味さを覚えるミミ。そんな彼女を優しく諭しながら、一同は校庭の中へ。無人なのだから当然なのですが、聞こえてくるのは大地を踏みしめる砂利の音だけ。早くトリコロシティの賑やかな音を取り戻さねば。改めてそう思ったのでした。
 校舎の前あたりまで移動し、向こうの出方を伺うことにしました。―――恐らく、自分達以外に人間がいるならば……何かしらアクションを起こすだろうと思ったからです。

 そのまま少し待っていると、向こうから5つの人影が。予測通り、MZD達が校舎にやってきました。ここまでは作戦通り。



ミミ「こっちに誰か近付いてくる!」

ニャミ「慌てないで。落ち着いて待とう」



 そのまま動かずに待っていると、人影は少しずつ大きくなっていきます。遠目からぼんやりとしか確認できなかった影が、はっきりと見えてきます。
 校舎への道を辿った彼らは、自分達と同じ存在がいることに気付き足が止まります。うさぎと猫の少女は少年を守るように立ち塞がり、こちらを睨んでいます。少年と母親はぽかんとした顔で、不思議そうにこちらを見ていました。そして―――。



『……この街には私達以外いないはず、だったのだがね。『コレ』も君達が用意したものなのかい?』

莉愛「そんなのどうだっていい。こんなに大きな街なのに、人気が全くないのはおかしいわ。何を考えているの?」

『それはこっちの台詞だよ。わたし達の邪魔をして、何を企んでいるの?!』

ミミ「MZDを攫ったのはそっちでしょ?!お陰で今物凄く大変なことになってるんだから!早くMZDをこっちに渡しなさーい!」

ジャック「おい、ミミ……!」

『あたし達の目的の為にMZDが必要なの!そもそもMZDだって帰りたくないって思ってるよ!幸せなままでいたいはずだよ!!』

ニャミ「幻を見せられるどこが『幸せ』なの?!一時的に幸せな幻想を掴んだって、いつかは解けちゃうんだよ?!それが分からないの?!」

『あ、あなた……』

『今すぐこの子を連れて家まで戻ってくれ。この子をあいつらは狙っているんだ!!』

ジャック「やっぱり逃がすと思ってた……。思い通りにことが運ぶと思ったら大間違いだ」



 あれよあれよという間にミミニャミ同士の言い争いが始まってしまいました。早くMZDを助けたい気持ちが逸ってしまった結果なのでしょうが、ヴィルヘルムはあまりいい顔をしていませんでした。
 混乱している中、少年と母親に男性が早く学校から逃げるように伝えたのか、門から出ようとしている姿がありました。しかし―――。



『くそっ……!!』

『で、出られない……?!』

ヴィル「―――焦りは最高のスパイス、という訳だ」

ジャック「優雅に例えてる場合かクソ上司。隙は今しかないんだぞ」

ヴィル「あぁ。折角繋いでくれたチャンスを無駄にするものか」



 門には何か障壁のようなものがあり、外に出ることが出来ません。そう、実は―――。









ごくそつ『ミミちゃ~ん、ニャミちゃ~ん!きょひょひょ!上手くあいつら引っかかってくれたみたいだねぇ~!』

ニャミ「え?」

ミミ「ニャミちゃん!あれ見て!」

大包平『敷地内に囲み込むように罠を張ってくれ、とそちらの上司殿から頼まれてな。あいつらが逃げ出せないよう敷地を跨いだ時に、逃げるのを阻止する為にとな』

莉愛「それじゃあ―――!」



 ミミニャミの元にごくそつくんから通信が。恐らく自分達を見て逃がすと判断したヴィルヘルムから、秘密裏に罠を張るように頼まれていたのでした。彼らは現在見えない障壁に囲まれ、外に出ることが出来ません。その隙にMZDを引き剥がしてしまおうという魂胆なのでしょう。
 頭でやっと理解できたその時でした。ヴィルヘルムの声が耳に届きます。





『ミミ、ニャミ!!今だ!!!』





 今しかチャンスはない。彼女達は考えるより先に、MZDの元へ走り出しました。



『させるかッ―――!!』



 男は少年に向かって走る彼女達を止める為、腕を掴もうとします。しかし―――。










ジャック「『させるか』はこっちの台詞だ!!」



 腕に衝撃が走ります。ジャックの蹴りが命中したのです。後ろの打撃音も気にせず、ミミとニャミは少年の元へ向かってひたすら走り続けます。
 もう少し。もう少しで助けられる。だから待ってて。その思いを胸に―――。








 一方。腕を蹴られた男は、負傷した場所をさすりながらジャックを睨んでいました。すぐにヴィルヘルムも合流し、男と対峙します。
 ミミとニャミを傷付けようとしたことから、既に正体は割れていました。



ジャック「テメェの正体は既に分かってんだ。さっさと正体を現しやがれ、『メフィスト』!!!」

『…………』

ヴィル「あの邪神に何をされたのかは知らぬが―――。こんな大それたことをして。貴様。何を企んでいる?」

『―――『企んでる』? ……ふ、ふ、フフフフフ………』

莉愛「な、何なの……?!」



 ジャックに名前を言われ、押し黙る男。続けて放たれたヴィルヘルムの言葉に反応し、くすくすと不気味に笑い始めます。その様子に莉愛の額にも冷や汗が流れます。








『ふ、ふ、フフフ……ふは…… はは、ははは………



 は、ははは、アハハハ………!!!


 っ アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』








 笑い声と共に、闇に包まれる男。薄くなった黒い霧から現れたのは―――。





莉愛「な、なに、これ……?!」

ジャック「―――っ!」

ヴィル「なんて……禍々しい姿なのだ……」










『よォ。人間風情が……『神』になった俺を貶めよう』って……?!』




 既に『道化師』ではない。人ならざる『力』を纏った、『邪神』がそこにいたのだから―――。

#CR08-6_2 これが、夢ならば ( No.4 )
日時: 2021/03/17 23:03
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: bUOIFFcu)

 一方。メフィストの邪魔を振り切り、遂に少年―――『MZD』の元まで辿り着いたミミとニャミ。目の前の少年は、何が起こったのかさっぱり理解できない表情をしていました。思わず母親にしがみつきますが、母親は人形のように表情を無くしています。メフィストが本性を見せたから。動かせなくなったのでしょう。



ミミ「MZD!その人は幻なの!お願い、思い出して!」

『……誰?ぼくの知ってるミミとニャミじゃない』

ニャミ「あのあたし達は……えっと、その、うーん……。と、とにかく!今MZDはあたし達のことを忘れてる状態なんだよ!悪い計画に利用されそうになってるの!だからあたし達が助けに来たんだよ!」



 2人で必死に言葉をひねり出し、どうにか自分達のことを思い出してもらおうと話をします。しかし―――。少年にとっては、彼女達は『唐突に現れた、自分の知っている人物のそっくりさん』。そう簡単に話が聞いてもらえる状況ではありません。
 それを分かっているのか、怒ったような表情で再び亡霊のミミニャミが立ち塞がります。



『もうちょっとで計画が終わるんだから。邪魔しないで!』

ミミ「邪魔しないでって……!自分達が何をしようとしているか分かってるの?!この世界のMZDを自分達の世界に連れて行っちゃったらどうなっちゃうのか!」

『知ってるよ。この世界のポップンキャラは全員消えちゃうんでしょ?でも、そんなのあたし達には関係ない。それよりも、あたし達の世界の方が大事なんだから』

ニャミ「『あたし達の世界の方が大事』って……。それはこっちも同じだよ!!異世界の為にあたし達が消える義理なんてない!!ポップンを蘇らせたいなら、別の方法―――。異世界を巻き込まない方法だって考えられたはずでしょ?!」

『そんな甘い考えを持ったままなんだね、この世界のわたし達は―――。そんなだから『ポップンミュージックの時代は終わった。25回目で終わりにしよう』って言われたんだよ?!わたし達の気持ちが分からない癖にそんなこと言わないでよ!!』

ミミ「他の人に迷惑をかけることが『甘くない考え方』なの?!そんなのは違うよ!違う!!間違ってる!!!」



 お互い、自分の世界の目的の為に話をしますが……。中身は平行線を辿り、解決へと進みません。―――もう話し合いでは解決出来ないと決断したのか、ミミとニャミはMZDに向かって手を伸ばします。同じ顔の少女達に邪魔をされても、少年を―――。長い長い間、付き合ってきた『友達』を取り戻す為に。





ミミ「MZDーーー!!!」


ニャミ「お願い、返事をして!!!あたし達のこと思い出してよ!!!」





 もう少し。もう少しで手を繋げるのに。ほんのちょっとの距離が、彼女達にとってはあまりにも遠いものに見えました。
 そして―――。そう思っていたのは『彼女達』だけではありませんでした。



『―――あぁ。もう駄目だ。駄目だよ。きっと思い出してしまう』

『あたし達とは繋がれなかったんだね。なら―――『消えてもらうしかない』』



「―――えっ?」



 唐突に目の前で抑え込まれていた気配が消えた。このまま真っすぐ進めば、少年の手を繋げる。でも。繋いだら『全部が終わる』。背後に迫る危機感と、そんな気配を彼女達は感じたのでした。
 背後を振り向いてはいけない。でも、振り向かなければならない。恐る恐る2人の少女は振り向きます。そこには―――。









 彼女達をすっぽり覆う程の、巨大な『闇』が存在していたのだから―――。


















ジャック「な、何なんだよあれ?!」

メフィスト「チッ……。もう少し我慢できる奴らだと思ってたんだがなァ」

ヴィル「やはり彼女達を唆していたのは貴様だったのか。貴様にとってはあの子は邪魔な存在。そして―――あの子達にとっては『必要な存在』。利害が一致したから、協力するふりをしていたのだな」

莉愛「酷い……!」

メフィスト「酷い?それはこっちの台詞だぜ。テメーらのせいでとんだ目に遭ったが……。ま、そのお陰で今俺様は『神』になれてるんだからいいんだけどさァ。





      お前ら、そんなにのんびりしてていいのかよ?『JOKER』さんよォ。あの闇の正体が何なのか、テメーには分かってんだろ?」

莉愛「え……?」

ヴィル「―――っ」

ジャック「上司!なんだよあれ?!早くしないとミミとニャミが!!!」

ヴィル「…………。―――っ!!」



 一方。ミミニャミが向かった方向に広がる大きな闇。彼女達に近付いているものだとすぐに気付き、メフィストに正体は何なのかを問い詰めます。
 すると。彼は、勝ち誇ったようにヴィルヘルムに向かって『お前ならこの闇の正体が分かってるんだろう』と吐き捨てました。早く助けないと、と迫るジャック。
 しかし―――。上司はその言葉を無視し、その場から消えてしまいました。何が起こったのか理解できないジャック、そして莉愛。

 広がる『闇』。その恐ろしさを知っているような。そんな気がしながらも、近づけませんでした。助ける気持ちより、『恐怖』が勝ってしまったのだから―――。

















『『永久』に消えちゃえ。そうすればMZDはあたし達の世界に一緒に来てくれる』

『話し合えれば分かってくれると思ってたけど……。そうじゃなかった。結局異世界は異世界。自分のことしか考えない』



ミミ「それはお互い様でしょ?!こんなことして、自分の世界のMZDが悲しい思いをするとか思わないの?!」

『思う訳ないよ。もう―――いないもん』

ニャミ「(いない……。やっぱり、本部で見せてもらった日記のあたし達って……)」



 ミミとニャミに迫る大きな闇。どこからか自分達と同じ声が、『邪魔だから消えてくれ』と囁いてきます。それでも諦めるわけにはいかない。自分達の世界を、MZDを、自分達のポップンを守る為に。
 ですが。目の前に迫る巨大な『闇』。自分達を呑み込もうとするそれに、為す術がありませんでした。



『でも、もう関係ないよね。あなた達はもう消えるんだから』

『これが、自分の世界の神様を守ろうとして動いたキミ達の末路だよ。こんな終わり方なら、『知らないまま消えた』方がよっぽど幸せだったんじゃない?』

ニャミ「そんなことない!!あたし達はMZDを絶対に助けるし、この世界も消したりなんかしない!!この世界の『ポップンミュージック』は、絶対に守る!!!」

ミミ「あなた達がいくら自分達のポップンを蘇らせようと思ってても……わたし達もそれと同じくらいこの世界のポップンを守りたい気持ちは強いんだ。だから……!!」



 諦めない。でも。この巨大な闇をどうすればいいのか。何も持たない自分達に為す術など―――ない。



『最後まで諦めないところは、尊敬するよ。異世界のわたし。でも―――あなた達は何もできない』

『いつも守ってもらってばかり。だから―――自分達に危機が訪れても、何一つ守れない』





 いくら避ける能力に長けてたって、自分達を包み込む闇には抗えない。このまま消えるのか―――。
 せめて、せめて真っ暗闇の中で消えたくない。少女達は思わず目を、瞑る。





 ―――何か、自分達の頭に暖かいものが置かれた気がした。


 でも、目を開けてはいけない。そんな気がした。


 目を開けても開けなくても一緒だ。自分達は先程見たあの闇に呑まれるのだから。





















『          』





 ――――――えっ?





 ……駄目だと思っていた。でも、何もない。
 恐る恐る、目を開ける。



「あれ……?」



 さっきまであった『闇』が、ない。助かった?誰かが、助けてくれた?
 でも、すぐに目を開けたことを後悔することになるのだった。



ニャミ「ミミ、ちゃん」

ミミ「…………」



 目線の下は―――地面。そこに、『あってはならないもの』があった。
 それを、思わず拾う。それは、彼が大切にしていたものだった。



ミミ「…………」

『…………』



 中心がひび割れたペンダントを、拾う。自分達を守ってくれたのだとすぐに気付いた。
 また、守られたのだ。でも、今回は違う。『消えた』。そう頭の中で理解した瞬間―――。







































『う……う、うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!』



 ずっと、ずっと。我慢していた声が。口から漏れ出た。















 自分と同じ姿をした少女の悲しみを、少女達は理解が出来ませんでした。それ程、自分達を形作った『記憶』も消えていました。
 ただ、『このままではMZDが全てを思い出してしまう』。その考えで頭が支配されていました。



ジャック「…………」

莉愛「ミミ!ニャミ!!」



 その行動に、動けずにいた2人も動き出します。今はメフィストのことを気にしている場合ではない。一番頼りにせざるを得ない人物が消滅したのだ。であれば。自分が動かなければ、確実に彼女達がやられる―――。
 助けようと駆け出した瞬間。向こうから障壁を突き破る音と共に、1台の車が校庭に侵入してきました。



ごくそつ「クソ上司の部下!それに莉愛ちゃん!急いでミミちゃんとニャミちゃんを回収して車に乗せて!!」

ルキナ「ここから逃げましょう!相手が『永久』の力を使ったと本部の方から連絡がありました!このまま再び使われてしまっては、確実にまた誰かが犠牲になります!!」

ジャック「『永久』―――。…………。―――何やってやがんだあのクソ上司!!!」

大包平「悔やむのは逃げてからにしろ!今の錯乱もいつまで持つか分からん。早く!!!」

莉愛「わ、分かった!」



 ごくそつくんが本部から連絡を受け、ミミとニャミを連れて逃げるように頼まれたのです。何が起こったのか敵側も理解できていなかったらしく、動きが止まっている今しか逃げるチャンスはない。この隙を逃せば、確実に次の犠牲者が出る。
 莉愛はジャックの手を無理やり引き、座り込んでいるミミとニャミの傍まで駆け寄りました。



莉愛「ミミ、ニャミ。とにかく今は逃げるわよ」

ニャミ「う、うん。でも、ミミちゃんが……」

莉愛「感傷に浸っている場合じゃないの!相手は今何が起こったのか理解できていないみたいなのよ。だから、逃げるなら今しかないの。このまま座り込んでいたら、今度は確実にあなたがやられるわ」

ジャック「……車はすぐそこだ。走る気力が無くても走れ」

ニャミ「あたしは大丈夫。ミミちゃんの手を引っ張ってでも連れて行くから」



 とにかく、車に乗ってこの場を離れなくては。ニャミは放心状態のミミの手をしっかり繋ぎ、停めてある車を確認。そこに向かって真っすぐ走っていきました。
 既にごくそつくんがエンジンをかけていた為、待っていた大包平の助力でその場にいた全員が乗り込みます。



ごくそつ「全員乗ったね?それじゃあ~~~~、とりあえず一旦撤収~~~~~!!!!きょひょひょひょひょひょ~~~~!!!」



 奇怪な笑い声と共に車は反対側の障壁を突き破り、猛スピードで校舎から離れていったのでした……。

















 ―――『邪魔者』が校舎から逃げてから数刻後。錯乱が収まり、男は辺りを見回します。



メフィスト「…………。―――まさか『JOKER』が自分から倒れてくれるとはなァ。やっぱりあいつは心変わりしてやがった。自分の目的の為なら、いくらでも命を費やせる―――。そんな奴になってた。
      ―――あぁ。これで手間が省けたなァ。あの餓鬼を始末する手立て……。この『世界』に縛られている以上、あいつらをぶっ潰すことはできねぇ。だから、世界を壊してあいつらを潰そうと考えていたが……。こりゃあいいや。
      ―――この場で潰そう。この『世界』も。『神』も。あの邪神ごと全部。









 跡形もなく ぶっ壊そう』







 邪神は妻『だったもの』を自らに取り込み、その場から姿を消したのだった。その場に残されたのは、『永久』を創り出した少女達と……一部始終を見ていた、少年だけ。
 少年は、泣いていました。理由は分からない。けれど、この状況は―――。引き起こしてはならなかった。心のどこかで、そう思えてならなかった。とても『悲しい』気持ちで少年の心は満たされていました。

 そんな彼を見つめながら、取り残された少女達も口を開きます。



『このままじゃ思い出しちゃうね。あのひとも……。もうわたし達なんてどうでもよさそう』

『うん。思い出しちゃったら……MZDは、きっとあのあたし達の元に帰る。絶対にそうする。それだけは、絶対に阻止しなくちゃ。阻止、しなくちゃ……あたし達の世界が……』

『でも、どうすれば―――』



 どうすれば、自分達の世界を蘇らせられる?どうすれば、MZDをこちらの存在にできる?どうすれば、どうすれば、どうすれば。
 考えて、考えて、考えた後に―――。彼女達は、1つの答えを導き出しました。





『そうだ。『永久』をMZDの中に埋めちゃおうよ。そうすれば、永遠にあのわたし達のことを思い出さなくなる』

『あたし達を『ミミニャミ』だって思ってくれる……!ずっとずっと、一緒にいられる―――!』





 無防備な少年にゆらゆらと近付く影。そして―――。彼を守るように、まるで幽霊のように。その姿は……消えた。










~運営本部 メインサーバ~



アクラル「何をしてくるか分からねぇ。本部も守りを固めろ!万が一襲われでもしたら被害が甚大になるぞ!」

マルス「手分けして本部の警備にあたるよ。今後の見通しは……」

アクラル「…………。妹があんなことになってりゃ、今は無理だろ……。とにかく、本部の管理はしばらく俺が代理でやる。みんな、とにかくしばらく持ちこたえてくれ」

クルーク「分かった。……ちゃんとみんなでハッピーエンド、迎えられるよね?」

マルス「そうなるかどうかは、ぼく達にかかっているんじゃないかな?……なら、出来ることをやらないと、ね」



 運営本部でも、画面越しに小学校での一部始終を見ていました。現在は無人の校庭が映るばかり。まるで、一連の出来事が『最初から何もなかった』かのように―――。
 メフィストが本格的に動き出してしまった今、いつ本部が襲われるかも分かりません。拠点を守る為、素早くメインサーバから警備に立つ一同。
 そんな中―――。椅子に座って、机に向かって項垂れている神が1人。



サクヤ「…………」

大典太「……主。気をしっかり持ってくれ。あんたのせいじゃない」

サクヤ「違う…。私が、私が許可をしたから……。あの時、無理にでも止めていれば……!」



 青龍は震えていました。自分の判断ミスが、味方の犠牲を生んだのだと。そう、頭の中が支配されていました。いくら大典太が『違う』と支えても、彼女が言葉を拒否しているのでは意味がありません。



サクヤ「また…繰り返した。私は……私には……やはり、壊すことしか……!」

大典太「…………」

アシッド「……ふぅ。何か、隠していることがありそうだね?その顔つきだと」

アクラル「―――あー。うん、どこまで隠し通せるかって思ってたけど……。もう、限界っぽそうだな」

アシッド「ニアもアカギも警備の方に回した。幸い、君とマエダ以外に人は捌けている。……サクヤの気分が落ち着いたら、事情を聞かせてくれないか」

大典太「……本人の過去を、抉ることになってもか」

アシッド「それでも隠し続けるならば、私は力づくでも聞き出すがね?―――私の見解では……。サクヤ、そしてアクラル。君達は、『あの日記の出来事に関わっている』そう読んでいるのだが」

アクラル「―――悪いけど、俺は『記憶』に関しては何も話せることはねぇぞ」

前田「主君が落ち着いてからになりそうですが……。僕達には、何ができるのでしょうか」

アシッド「それを鑑みての事情聴取さ。なぁに。『過去を受け入れ、前を向く』。―――それもまた運命だとは思わないか?」




 メインサーバから人が捌けた後、アシッドが遂にサクヤの過去について踏み切りました。……もう、多言無用の約束を果たすことは出来ない。大典太は彼女のことを思い、胸を痛めました。
 ―――サクヤの過去。彼女がどういう選択を取るのか。大きな分岐点となってきそうですね。