二次創作小説(新・総合)

#CR09-1 運命の歯車は動き出す ( No.31 )
日時: 2021/04/10 22:00
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: PNMWYXxS)

~運営本部 メインサーバ~



 こちらはコネクトワールド、朝の日差しが眩しいですね。夜の雨が嘘のようにカラッと晴れた青空が広がっています。本日もこの爽やかな空のように平和に一日が始まれば…良かったのですが。
 メインサーバには既に人が集まっています。一部には欠伸をしている者もおり、緊急事態だということを物語っていました。当然四神もこの場に立っていますが…サクヤは前田の傍で、椅子に座っています。その表情は固く、口を開く様子はありません。
 そんな様子を数珠丸は見つつ、改めて一同に自己紹介をするのでした。



数珠丸「朝早くから申し訳ございません。少々緊急事態になってしまいまして…。改めて自己紹介をさせてください。天下五剣の一振、『数珠丸恒次』と申します」

石丸「数珠丸…。サクヤさんの帯刀していたもう一振の刀、だったのだな?」

三日月『そうだぞ主。よく覚えていたな。……まさか、数珠丸の権限も『条件は』揃っていたのだなあ。はっはっは、なんだか仲間外れにされたみたいで俺は少し寂しいぞ』

アクラル「そんな冗談言ってられる場合か!オメーの話だと、光世の呪いを肩代わりしていたから権限が今まで出来なかった。でも、光世自体に何かがあったから、ここに顕現したってことなんだよな?」

大包平「流石は数珠丸殿。そのような器用なことも出来たのか」

数珠丸「お褒めに与り光栄…ですが、今は悠長なことを言っている時間はありません。元はといえば、私は顕現してはならない刀。しかし、それが破られたということは…大典太殿の霊力が悪用される可能性があります。私はそれを伝える為、三日月殿に相談を行っていたのです」

三日月『それで、俺が主を通して話の分かりそうな奴らに声をかけたという訳だ。少なくとも『俺の声が聞こえる』奴で無ければこの話は出来ないからなぁ』

数珠丸「少なくとも、この場で顕現してしまい顔が知られていない私が声をかけても、不審者と勘違いされるだけでしょう。三日月殿がこちらにいて良かった」

アカギ「…話は分かった…。でも、光世はどこにいるんだ…?」

ニア「それが分かれば苦労はしませんわ。私としては…目の前の天下五剣様の仰られることも…真実なのか、いささか疑問に思います、わね…?」

ごくそつ「でも、でんくんが朝から顔を出してないってのは事実だよね?……あいつ、勝手に一振で外に出ていくような奴だっけ?」

大包平「そんな訳があるか。あいつが主の命も無しに一振で外をうろつくものか」

石丸「そうだよなあ…。そんな軽い男には僕も見えなかったぞ。寧ろ硬派というか…」

三日月『大典太が硬派な男だということは俺も同意だな。…だが、今は前田の証言もある。大典太と昨日の夜、話をしたのだったな?』

前田「はい。昨日、夜中に本部の外に出ようとしている大典太さんを見ました。―――自分の本体を、持っていました。説得はしたんですけど…」



 前田がしゅんとした表情で昨夜のことを話しました。彼は短刀なので夜目に長けています。そして、嘘をつくような性格ではありませんでした。彼の言っていることは本当なのだろう、その場にいる誰もがそう思っていました。
 彼の言葉によると、大典太は自分の本体を持って外に出た。その行動が意味するものは―――。『本部に二度と帰らない覚悟をした』。そうとも言えるでしょう。



三日月『まずいなぁ。大典太が自分から出ていったとなると、どこにいるのか見当がつかんなぁ。鬼丸も童子切も今どこにいるか分からぬというのに』

石丸「せめて鬼丸さんの居場所さえ分かればいいのだがな…。事情を話したら協力してもらえると思うのだが」

アクラル「そう…なら、いいんだけどよ。あいつ今アンラの邪気に侵されてんだろ?最悪既に邪気があいつに回り切ってる可能性だってあんだぜ」

大包平「おい、朱雀!天下五剣を舐めるなよ。鬼丸国綱はそんな柔な刀ではないッ!!!」

三日月『お前は俺達を買っているのか貶しているのか1つにしないのか?』

大包平「黙れじじい!この俺が張り合う相手なのだぞ。それ相応に強くなくてはこちらも困るというだけだ!」



 三日月が鬼丸、童子切の名前を出します。そうですね。彼らも今アンラに強奪され邪気を注がれているんでしたね。鬼丸は…顕現して逃げているんですが、それを知る者は少ない。童子切に至ってはどこにいるか分かりませんものね。……実装されてないから顕現できない、のは言っちゃ駄目ですからね。
 せめて鬼丸がどこにいるのかさえ分かれば、彼に協力を取り付けられるかもしれない。そう石丸くんが呟いた時でした。











『ここの主を出せ。今すぐにだ。大典太について聞きたいことがある』











 ―――目的の人物の怒号が聞こえてきたのは。



三日月『おや、噂をすれば』

前田「随分と怒っていらっしゃる様子でしたが…。とりあえず一度エントランスに行ってみましょう。何か大典太さんに関しての情報を得られるかもしれません」

石丸「善は急げだな!はっはっは!」

ごくそつ「もしかしたら出会い頭に斬りかかられるかもしれないねぇ~!」

大包平「安心しろ主。その時は俺が全て受け止めてやる」

三日月『頼もしいなぁ大包平は。ついでに俺に流れてきた一閃も受け止めてくれ~』

大包平「自分でやれじじい!!」

三日月『はっはっは。俺は顕現が完璧に出来ていないのでなぁ。主を守りたくても守れないのだよ』

大包平「…………ッッ!!!」

石丸「(大包平さんが今にも叫び出しそうだ…!)」



 鬼丸らしき怒鳴り声がエントランスから響いてきました。この建物、結構防音には優れている筈なんですが…。それをも貫通するということは相当おかんむりですね鬼丸。大典太の名前を出していたので、何か知っている可能性は高そうですが…。とりあえず、彼に話を聞いた方が良さそうです。
 三日月と大包平の言い合いを宥め、一同はエントランスへと向かいます。サクヤはどうするのかとアカギが問いかけましたが、今は前田と数珠丸がついて一緒についていくようですね。
 まさかの再会。出来れば、大典太もここにいる状態で会いたかったものですが。














~運営本部 エントランス~



鬼丸「ここの主はどこだと言っている」

エフラム「とりあえず落ち着いてくれ。そうでないと会わせられない」

アイク「あんたが総長を斬って死なせたりでもしたら大変だからな…世界が」

鬼丸「そんなことは分かっている。その時は死なない程度に斬るだけだ」

エフラム「だからその考えをまずはやめろと言っているだろう」



 エントランスでは、当の鬼丸とエフラム、アイクがもみ合っていました。どうやら受付も無視しずんずんと歩いてきた鬼丸を見つけ、太刀に手をかけていたので彼を引き留めていたのだそう。
 3人がわちゃわちゃとしている影が見え、何かトラブルが起きているのではないかと足を早めます。エフラムとアイクも背後からの気配に援軍が来たとやっと肩の荷を降ろしたのでした。



アクラル「おいおい。何があったんだよ。乱闘騒ぎなら稽古場でやりやがれ」

アイク「違う。こいつが刀に手をかけていたから止めていただけだ」

三日月『どうした鬼丸。そんな殺気立ってもここに大典太はいないぞ?』

鬼丸「知っている。だから大典太について何かがあったのだと察して聞きに来た。返答次第では斬る。……ここの主のせいで、大典太は出ていったんだろ。この場所を」

前田「…………」



 鬼丸、どうやら受付の人達が何やら大典太についてひそひそ話しているのを聞いてしまったようで。大典太が出て行ってしまったことは、前田が黙っていてもどこからか、風の噂で少しだけ広がってしまっていました。タイミング悪くその話を耳にしてしまった鬼丸は、大典太の主…サクヤが何かしでかしたのだと思い、彼女に尋問をしようとしていたのです。で、太刀に手を。物騒すぎるわ。
 前田がサクヤを隠すように前に立ちますが、残念ながら彼の背ではサクヤの上半身が丸見え。鬼丸には全然隠せていませんでした。気配で彼女がいることを察知し、前田の目の前まで歩いてきます。前田をどかそうと出したその手を、横から掴む者がいました。



数珠丸「おやめください。彼女を斬っても何も得ることは出来ませんよ」

鬼丸「邪魔をするな。俺はこいつに聞かなければならないことがある」

前田「貴方の気持ちはわかります。ですが…どうか、刀を仕舞ってはいただけませんでしょうか。主君を傷つけるというのならば、いくら鬼丸さんでも僕は貴方の刃を受けなければなりません」

数珠丸「確かに、彼女とのすれ違いが原因で大典太殿がここを出ていったのは事実。ですが、その後については誰も知らないのです。彼女が鬼丸殿、貴方に斬られたことをもし大典太殿が後で知ったとならば…。大典太殿は、きっと悲しむはずです。『自分がいれば止めることが出来たのに』と。
    鬼丸殿。どうか、刃を引いてはいただけませんでしょうか」



 数珠丸と前田はあくまでもサクヤを守る為、鬼丸の前に立っていました。決して彼に敵対しようと思っての行動ではありませんでした。サクヤを今斬っても大典太は悲しむだけだ。だからやめてくれと。当の大典太の名前を出されてしまっては、彼も引かざるを得ません。
 小さく舌打ちをしながら、鬼丸は太刀に置いていた手を降ろしたのでした。



ごくそつ「乱闘沙汰にはならなさそうだねぇ~?きょひょひょ!」

大包平「安心しろ主。俺が全て止めてやる」

ニア「……ですが。妙ですわ、ね?もう1つ、ここの者ではない気配がいたしますわ…」



 ふと、ニアがそんなことを言いながらきょろきょろと辺りを見回し始めました。この女、中身が某にゃる様なので多分分かっててやってます。随分とわざとらしいその仕草に、流石のアクラルもあきれ顔でこう返しました。



アクラル「回りくどいことしないでストレートに言えよ。鬼丸の他に誰か来てるってよ」

ニア「あら。そうでした、のね…?単細胞なのは貴方様だけだと思っていました、わ…?」

アクラル「燃やされてーようだな?」

前田「運営本部も一緒に燃えるのでおやめください!それでニア殿。『ここの者ではない気配』とは…?」

ニア「もう、傍にいますわよ?貴方様がたの近くに…ほら…」



 そう言いながら、彼女は優しい笑みを絶やさずにある一点を指さします。思わず目で追ってみると、その先には―――。


























マホロア「ヤァ!ケハイを消して近くにずっといたヨォ!もしかしたら気付いてくれないんじゃないかって心配したヨォ!」

石丸「―――な、何故ここにいる?!」

三日月『主。知り合いなのか?』

石丸「知り合いも何も、3回目の逃走中を開催した時に神様とソティスくんを魔界に連れ去った張本人だぞ!その後、メフィストに連れ去られてから音無沙汰なしだったが…無事だったのだな」

マホロア「ピンピンしてるヨォ!本当はカービィに会いに行きたカッタんだけど、オマエラにイイ情報を教えてやろうと思ってネ~。寄り道がてらこっちに来ちゃったヨォ!」

アカギ「どの口が言うんだよ…。『虚構の魔術師』で名前が通ってる癖に…」

ごくそつ「ぼくが言うのもなんだけど、そうとう嘘つきだよね~」

大包平「虚構…!」



 目線の先にいたのはマホロアでした。見つけてもらえるのを待っていたかのように、こちらもわざとらしく大袈裟な反応を返します。どうやら本当に気配を消して鬼丸とエフラム達がもみ合っている場面からいたようで。なら止めなさいよ貴方。
 メフィストに連れ去られた後消息不明だった為、一部の面子は驚きのあまり言葉が出せません。そんな中、冷静にエフラムがこう斬り返してきました。



エフラム「『良い情報がある』と言ったな。もしかして、今話題に出している事柄に関してか?」

マホロア「ン~。ソウダネェ。メフィストの一味はアイツが消えちゃった後自然消滅しちゃったカラ、ボクその隙にローア奪還して逃げて来たんだよネェ~。そのトキに見た情報。オマエラにとっては『イイ』情報ナンジャナイかなぁッテサ!」

鬼丸「回りくどく言わずその『情報』とやらを渡せ。大典太がどこにいるのかが分かればそれでいい」

マホロア「ボクのコト、ナカマに入れてくれるなら教えてアゲルヨォ!」

アクラル「カービィはこの場にはいねーし、来てもマリオと一緒にいたずらされるだけだと思うけど?」

マホロア「カービィにはココの用事終わったアトにユックリ会いに行くヨォ!ダカラ心配しないデネ!」

エフラム「…つまり、こいつの話を纏めると…。今、メフィストの一味は纏まって動いていない…俺達の敵もバラバラなんだな」

アイク「あぁ。混乱している最中に叩ければ楽なんだが…。そううまく話が運ぶ訳もないか」

マホロア「ソウデモナイヨォ?マァマァ、とにかく話を聞いてイキナッテ」

アクラル「さり気に許可も取らず勝手に居座ろうとするんじゃねえ」

ごくそつ「でもさ。話聞いてあげるくらいはいいんじゃないの~?このもったいぶりかた、多分でんくんの居場所知ってるよコイツ」

大包平「な……!ならばこの場で言え!さっさと言えこのイカサマたまご!!!」

マホロア「ドコでソンナシツレイな言葉覚えてきたんダイ?!ボクはタマゴじゃないヨォ!!」

アクラル「(卵なんだよなぁ…)」



 マホロアが大袈裟に勿体ぶっていることから、ごくそつは『大典太の居場所を知っているのではないか』と自分の考えをアクラルに話しました。真偽はともかく、今は大典太の情報を1つでも多く欲しい場面。彼が教えてくれるというのならば、それに頼るしかありません。
 アクラルは意を決し、マホロアにメインサーバについて来るよう言ったのでした。



マホロア「ヤッタァ!持つべきモノはトモダチ、ッテネ!」

アクラル「オメーそれカービィの前で言ってみろ。ブンナゲフレンズされて宇宙の果てまで飛ばされんぞ」

アカギ「…それじゃあ…情報聞き出したら宇宙の果てにぶっ飛ばすということで…」

ニア「あら。私は『非日常』へご案内差し上げてもよろしいのですが…」

前田「どちらも碌な最後が見えないので言葉にするのはおやめください!主君、こういう時こそツッコミですよツッコミ!」

サクヤ「…………」

数珠丸「―――大典太殿が消息不明になった事実に、随分と責任を感じていらっしゃるようですね」

鬼丸「責任もなにも、こいつが引き起こしたことに変わりはないだろ。―――今は手伝ってやる。このまま帰ったらおれの夢見が悪い」

前田「鬼丸さん…」




 四神のどう考えても碌なことにならないマホロアの対処法は置いといて、彼の話を聞く為にメインサーバへと戻る一同。鬼丸も今回は『このまま帰ったら夢見が悪い』と、大典太を救出するまで協力してくれることになりました。これは心強い。
 しかし、これだけ騒ぎがあったのにサクヤは終始だんまりでした。大典太が行方不明になったことに相当負い目を感じている様子…。無事に大典太の居場所を特定できるといいのですが。
 前田と数珠丸はいつにもまして人形のような表情のサクヤを心配しつつ、彼らの後に続きメインサーバへと戻っていくのでした。