二次創作小説(新・総合)

#CR10-9 ( No.87 )
日時: 2021/07/21 22:11
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: Dbh764Xm)

~オリュンポス大神殿前~



 サクヤ達が大神殿へと戻ってくると、入り口の前にたむろしている沢山の人影が見えました。その中に混じっていたミミがこちらに気付き、元気よく手を振ってきました。



「あっ、サクヤさーん!こっちこっち!」
「サクヤさん達戻ってきたの?!」
「うん。あっちから来てるよ!おーい!」



 隣にいたであろうニャミもサクヤ達の姿に気付き、一緒になって手を振ります。その行動に軽く相槌を打ちながら、サクヤは彼女達の周りを見回しました。
 大神殿で視界を奪われる前にいた全員がそこにいる。皆無事に戻って来たのだ。その事実だけで、彼女は胸がいっぱいになっていました。自然と合流する足も早まります。
 彼らに近付くにつれ賑やかになっていく声色。サクヤ達は素早くミミ達の元へ足を運び、お互いに無事を確かめ合いました。



「皆様無事のようですね。本当に良かった…!」
「うん、本当だよ!わたし達がここで目覚めた時にはみんな一緒に倒れててさー。殆ど同じタイミングでここに来たのかな?」
「それにしては随分とタイミングが良すぎる気もするけど…。ま、気にしたら負けだよね!」
「終わり良ければ総て良し、ということわざも実際にございます。それに…なんだか皆様、少し心の成長が見えるような?」
「確かにねぇ。憑き物が取れたみたいな表情をしてる人もいたよ!」
「ふふ…。きっと、色々とあったのです、わ」



 サクヤがミミ達と現状報告を済ませている間、蔵で合流した刀剣男士達は顕現した三日月の元にいました。ただ一振、長い間刀のままでいたのでね。戻って来た時にその姿を見つけ、一番驚いたのは彼らでしょう。
 三日月も大典太達を発見し、鬼丸が無事元に戻ったことを喜んだのでした。



「じじい…!」
「随分と待たせてしまったが、無事に顕現が出来た。それもこれも皆未来ある若人のお陰だな。はっはっは」
「私も三日月殿とこうしてお話が出来て嬉しく思います。この戦いが終わったら、皆で甘味でも食べに参りましょう」
「おお。それは良き提案だな。以前『あおいの島』というところの甘味屋で美味い『ぱふぇ』とやらを食ったそうだな大典太?俺はそれを食べてみたいぞ」
「あんた…のんびりそんな話をしている場合じゃないんだぞ。まだ…戦いは終わっていない」
「あぁ。甘味が食いたいのならさっさと目的を果たすんだな」
「俺の言葉にそんな返しが出来ているとは、無事に鬼丸の邪気も祓えたということだな。はっはっは、良きかな良きかな」
「三日月宗近が顕現した。つまり、見つかっていない天下五剣は童子切だけになるのか。―――いいだろう、童子切と再会する前に貴様ら全員に俺が優れていると認めさせてやる!!!」
「手合わせが楽しみだなぁ。はっはっは」
「その余裕面を剥がしてやる。覚悟しておけ!!」



 なんだか本題からずれている気がするのですが。大典太がやんわりと指摘し、話題は彼が気にしていた『門』の状態へと移りました。
 そういえば…あの蔵には童子切はいたのですかね?鬼丸のようにアンラが別に持っていたということもあり得そうですが…。とりあえず、今はその話は置いておきましょう。



「……俺の手入が終わった後、『門』が崩れ去ったのを見た。あんた達がここに戻っているということは―――『核』を全て破壊できたということでいいんだよな?」
「すまんが、俺はここで目覚めるまで幻の空間に囚われていてな。その『門』の破壊を実際に目で見ていないのだ。しかし…『核』は俺が破壊したから、そうであるとは言えるな」
「そうだね!あたし達が閉じ込められた空間の『核』も壊しちゃったもん。旧支配者さんが!」
「ってことは…。もう邪神の軍勢はこれ以上この世界に入ってこないんだ!」
「そう安心できる問題でもないんじゃないの?寧ろ本番はここからってヤツ。これからアンラぶっ叩かなきゃならないんだから」
「おう。とりあえず門が壊れたことジジイに伝えねーとな」



 核が全て破壊された為、門を生成するエネルギーが全て消滅し崩れ去った。その為、アンラの世界に蔓延る軍勢はこれ以上コネクトワールドへの侵攻はしてこない筈。
 一度は喜びますが、MZDが現実に引き戻します。『ここからが本番だ』と。門が破壊されるまでにコネクトワールドに入ってしまった軍勢の後始末もありますし、そもそもアンラを叩かなければ戦争は終わりません。
 ゼウスに現状を報告する為大神殿へ入ろうとした一同ですが―――。出入口に立った瞬間、神殿から飛び出してくる1人の影がありました。
 その正体はヘラでした。なんだか焦燥しているみたいですが…何かあったんでしょうか。



「ヘラ様。丁度良かった、これからゼウス様のところにお伺いしようと『そんな悠長なことを言っていられる場合ではありませんの!!お願いします、ゼウス様を助けてくださいまし!!』 ……え?」
「何、どーしたの。ゼウスがなんかあったの?」
「ゼウス様が…ゼウス様が……!!」



 ヘラはサクヤの顔を見た瞬間、泣きそうな表情で訴えてきました。








『ゼウス様が―――お一人でアンラ・マンユの元まで―――!!』








「なっ……?!」
「『門』の破壊を確認して…それで…ゼウス様が―――!」


 なんと。会おうとしていたゼウス本人がアンラの元まで行ってしまったというのです。ヘラの言葉を要約するとこう。『門』の破壊は、ゼウスの元でも確認が取れていました。だから、今がチャンスとばかりに誰にも言わずその場から姿を消してしまったのです。
 彼女が放った言葉に黙り込んでしまう一同。サクヤは一瞬頭が真っ白になりますが、すぐに我に返りゼウスの言動におかしいところがないかを思い出してみることにしました。



「……あんたの他にも部下はいた筈だ。止めなかったのか?」
「止める前に転移魔法を使われてしまわれたのです!アテナはすぐに彼を追いかけましたが、追いついているかはわたくしには分かりませんわ」
「しばらくはゼウス様と共に皆様の探索を行っていたのですが……。そういえば。光世さんの刀にヒビが入ったと気付いた時、やけに光世さんの元へ急ぐよう催促していたような。
 ……光世さんが折れてしまうことをゼウス様も分かっていた、と考えるのが一般的ですが…。もし、もし、です。その言葉に―――『私を大神殿から追い出す』意味も含まれていたとしたら…?」
「主が止めるのを阻止する為、大典太の様子を見に行くよう言ったのか」
「……あぁ。そうだ。こんな状態で単騎行動すると知ったら主は…止めるだろうからな…」



 ゼウスの言葉の真意が分かってしまい、サクヤは打ちひしがれます。しかし、彼女が大典太の様子を見に行かねば『手入場』に向かうことすら無かった筈。なんだか浮かばれませんね。
 サクヤの仮説にヘラは更に顔を青くして震え始めます。ゼウスがアンラに負けることはないと信じてはいましたが…やはり、世界を片手で転がすことが出来るレベルの神を相手どる、となると彼女も不安なのです。
 ヘラは涙ながらにサクヤに懇願しました。『ゼウス様を止めてください』と。



「お願いします。ゼウス様を…ゼウス様をおとめください。このままでは…わたくし、嫌な予感がするのです。ゼウス様が消えてしまうのではないかという醜い考えばかりが脳裏に―――!」
「ヘラ様。一旦落ち着いてください。貴方が信じねば…ゼウス様は誰が信じるというのですか」
「そうですわね…。すみません、わたくしとしたことが取り乱してしまいましたわ」
「オリュンポス十二神でも焦ることってあるんだな」
「そこの貴方!いくら我々と同胞だとしてもその言葉、あまりにも失礼ではありませんこと?!後でゼウス様の裁きを受けていただきます!」
「兄貴、いらんことを言わんでください。羽を毟りますよ。……ヘラ様。ゼウス様の向かった方向は分かりますか?」
「一瞬で消えてしまわれたので、力を辿りながらにはなりますが…。案内致しますわ」
「女神殿の辿った先にアンラがいると考えて良いようだなぁ。……俺達にとっても、最終決戦という訳か」



 そう言うと、ヘラは自分の神の力を開放しゼウスの居場所を察知し始めました。
 その間にサクヤ達は改めて現状を確認することにしました。恐らく―――すぐに、アンラとの戦いが待ち受けていると。



「皆様。恐らく…これが最後の戦いとなるやもしれません。今まで以上に厳しい戦いとなりそうですが…。危険も今まで以上に降ってくるでしょう。本部に戻られるなら、今のタイミングが最後です」
「それってもしかしてわたし達に言ってる?も~っ、サクヤさんも心配性なんだから!わたし達なら心配いらないよ。ねっ、ニャミちゃん!」
「うんうん。あたし達避けることには自信があるからね!いざとなったらMZDに守ってもらうし!」
「守るつもりではいるけれども。サクヤの言ったこと、マジのマジだから。心に刻んどけ」
「クルーク、オメーもいいのか?本部に戻るのなら今が最後のチャンスだぜ」
「ううん、戻らない。……ここまで来たんだ、最後までついて行く。ボクの今までの成果を披露するつもりで戦うさ!」
「その自信があれば大丈夫でしょうね。勿論、我々も最後までお付き合い致します。―――蔵の中に残してきてしまった刀剣達の回収も…急がねばなりませんので」
「あぁ…。あの崩れた蔵の中にソハヤさん達が…」
「……兄弟達だけじゃない。恐らく、童子切を除いた殆どの刀剣が眠っている。あいつらの為にも―――さっさと終わらせよう。
 ……主。皆、心は決まっている。最後まで…あんたと共に戦うよ」




 恐らく本部に避難が出来るタイミングは今しかない。今以上に厳しい戦いが待っているのが目に見えている以上、サクヤは巻き込みたくないがゆえにそんな発言をしていました。しかし…皆の心は決まっていました。最後まで共に戦う、と。
 そんな彼らに彼女は丁寧に礼をしました。そして―――改めて、必ず戦いを終わらせる。この世界を守り、平和な明日を取り戻す。そう決心をしたのでした。