二次創作小説(新・総合)

アイドルロンパ Chapter3 ( No.277 )
日時: 2021/05/30 15:35
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

ダンガンロンパパロディのチャプター3です。引き続き原作同様に鬱展開や死ネタが多く、キャラクター同士の殺し合いを見たくない人は即座にブラウザバック&回れ右!そしてポジションのためか相変わらずメイプル社長の性格が最悪です。前回にも掲載すべき一文でしたが、作中に本家、または創作論破作品のオマージュ表現を一部含みます、予めご了承ください。
そして前回のパートで不快な思いをされたという読者さんがいらっしゃったのは本当に申し訳ございませんでした…。前回パートはある方の創作論破のオマージュ的描写が多かった上に、創作論破は多くの作品があるゆえに意図せずともネタ被りをしてしまうことがあるので表現や描写には気を付けていかなければいけない部分が大きいですね…。改めて謝罪申し上げます、申し訳ございませんでした。



「前回のあらすじ」
 殺人が起きたことで事務所の一部が解放されて探索可能になったが、それと同時にメイプルは「もしこれを他人に知られれば絶対に殺害を犯さずにはいられなくなる」という「動機」を提示する。「動機」の殆どはシアンや真斗や凛などの内容のようにたわいもない物事が記されていた。しかしその中にはサユリのような本当にコロシアイ生活のトラブルや挙げ句の果てにはそれを巡っての殺人に発展する爆弾もあった!そしてサユリの「動機」をタローに見られたと思ったナカジは、恋人を守るために親友を手に掛け、処刑された…。





第3章 「操りピエロ」





「メイプルの甘言」

 ナカジがタローを殺してから1週間。一向にアイドル間のコロシアイが始まらないことにメイプルは苛立っていた。アイドルたちが自分に屈しまいと抵抗を決め込む様子に残酷なタマゴ型の生物は無駄な抵抗をと苛立つも、あることを思い付きにんまり笑う。ある日の夕食後、大部屋でアイドルたちが談笑している中、彼は現れた。

メイプル「みんな!おっはよーございまーす!」
全員「…おはようございます」
メイプル「みんなちゃんと挨拶が出来るようで結構結構!でも、コロシアイ生活は順調じゃないみたいだね?だってボクが密室の事務所っていう最高の環境を用意してあげているのに、ここ1週間全く殺人事件が起きないし、コロシアイのこの字もないですぞ?」
凛「あんたが何を企んでいるのか分からないけど、私たちはもう人殺しやその犯人を暴く裁判なんかしないわ。あんたを1発ぶん殴ろうかと思ったけど気が変わったわ。この事務所を脱出して、あんたを正統な方法で裁いてやる」
メイプル「無駄無駄!どんな権力者もボクを裁くことなんて出来ないですぞー?そうだ!良いことを思い付いたから、この場で発表しちゃいますよ!」
音也「みんな、もう部屋に戻ろうよ。こいつの話を聞いていても良いことなんて何もないよ」
メイプル「人の話はちゃんと聞くんですぞ!…次のコロシアイで上手く人を殺せた人にはこの事務所を脱出させてあげることに加えて、僕が1つだけ願いを何でも叶えてあげますぞ!」
真斗「は?」
アン「1つだけ願いを何でも叶える?」
ロージア「冗談キツイわよ?あんたにそんなことが出来る訳?」
メイプル「この事務所を用意してみんなをここまで連れて来れたボクに出来ないことは何もないんですぞ!出来ないことといえば、この事務所内で起こるコロシアイ生活をストップ出来ないことくらいかなー?」
藍「…バカじゃないの?」
メイプル「なっ、バカって、何がですぞ!?」
藍「アンタが本当に今言ったみたいな『なんでも願いを叶える』ことが出来るならやってみれば?どこかのランプの魔人みたいに出来れば、だけど。でも、そんなことに反応するバカなんて誰もいないでしょ?アンタはコロシアイ生活の誘発を招いて、それをニヤニヤしながら高みの見物を決め込むのが目的だって分かり切っているんだからさ。このふざけた事務所からの脱出なら正当な方法でしてみせるから、アンタは僕たちの邪魔や目障りになるようなことは一切しないでくれる?」
メイプル「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ~!こ、この事務所の責任者であるボクになんて暴言を!許せませんぞ!」
藍「許せないのはふざけた行動で僕たちに何とかコロシアイを起こさせようとするアンタの方でしょ?それ以上何かないんだったら今すぐさっさと消えて」
メイプル「―――――っ!そ、それじゃあお望み通りいなくなってやりますぞ!でもこれで困らないようにね!アディオス!」

この場にいるアイドルたち全員がそうだが、特にメイプルへの好感度が氷点下を突っ切っている超アイドル級の科学者の冷静な言葉の弾丸にメイプルは真っ赤になり、前回の「動機」を提示した時のようにすぐアイドルたちの目の前から消えてしまった。藍の容赦ない言葉の連続に呆然とする他のアイドルたちであったが、彼の一声で全員我に返り、次々自室へと戻っていく…。

藍「…みんな、何ボケっとしてんの?もうすぐ消灯時間だ、さっさと部屋に戻ろうよ」
那月「は、はい。そうですね…。じゃあみんな、今日はこれでおやすみなさい、ですね!」
シアン「うん、そうだね!おやすみにゃん!」
クロウ「……」
シアン「?…クロウちゃん?どうしたの?」
クロウ「…シアン、気を付けた方が良いぞ」
シアン「気を付けた方が良いって、何がにゃん?さっきのメイプルの言葉がどうかしたの?」
クロウ「…そうじゃない。何か、嫌な予感がする…」
シアン「?」

 『嫌な予感』。自室に戻る途中のシアンにぽつりと語るハリネズミ族の少年の一言に、ただただシアンは首を傾げるだけだった…。





感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.278 )
日時: 2021/05/30 15:40
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

「紙飛行機の少女の思い」

 前回と同じように、コロシアイ生活の中で閉ざされたシャイニング事務所の内部は解放されていく。今回は3階の一部と1階から少し歩いたところにあった大型の倉庫が解放され、アイドルたちによる探索が可能となった。3階には何故か学校のような美術室と作品置き場にしろということなのか物置に仕えるようなスペースのある部屋があり、ただ絵を描いたり物を作れるだけでなく、油絵などの本格的な美術作品の製作も可能になっていた。大型倉庫の方は巨大なコピー機やコピー用紙、そしてボンドやピアノ線などの様々な物資が置かれ、少し距離はあるものの、様々な作業を行う中で足りなくなった物資を補充できると便利になっていた。そんな中、美術室の構造を観察していた超アイドル級のクラフターの少女が、美術室の状態や画材などの保存状態と倉庫に置かれていた物資の状態から、ここで絵画やペーパークラフトの教室が出来ると発言する。

シアン「サユリちゃん、クラフト教室って?」
サユリ「うん。あのメイプル社長が用意したものということだけが癪だけど、ここの部屋の設備や備品の状態はとても良いし、倉庫の方も用意されている物資は大量の折り紙やクレヨンや色鉛筆、クラフト作品の専門に使えるような紙や紐まで置かれていたのよ。これを上手く使えば閉じ込められている私たちの娯楽も増えるし、きっと新しいコミュニケーションにも繋がるわ!美術が得意じゃなかったり手先が器用じゃなくても大丈夫!美術や工作やクラフトに詳しい私が先導して教えるからね!」
ロージア「折り紙とか塗り絵だけじゃなくて、あんたの専門的な技術まで教えてくれるの!?それって最高じゃない!」
サユリ「もちろん、任せて!」
凛「それはいいけど…ねえ、サユリ。ちょっと聞いてもいいかしら?いきなり作品教室を開こうってどういうことなの?あなたはもう大丈夫なの?」
サユリ「…うん。私がこの生活で貢献できることって言ったらお料理や得意の工作やペーパークラフトを生かしたことだから、これでみんなのストレスを軽減してコロシアイ生活から少しでも目を逸らせればいいなって思ったの。それに自惚れかもしれないけど、私の作品や私のクラフトの腕前は良いって以前から評判を貰えていたからね。何より、こうやって自分の出来ることで貢献していくことが、私がこれから生きる意味になると思うの」
アン「サユリちゃんが生きる意味、ですか?」
サユリ「…私は幼い頃に肺炎をこじらせて死んでいたかもしれなかったけど、お父さんとお母さんによって命を救われた。そしてこのコロシアイ生活ではもしかしたら『動機』のことで人殺しをしてしまっていたかもしれなかった私を、ナカジくんが身体を張って守ってくれた…。私は2回、他人によって命を救われているわ。もちろん私の命が救われた一方で亡くなってしまった人がいたという事実や、コロシアイ生活の過程でレトリーちゃんとコリエンテちゃん、そしてナカジくんとタローくんが亡くなってしまったことはとても悲しいし、今でも辛いけど…。でも、私が生きて彼らのことを語り継いで私の中だけじゃなくて他の人たちの記憶の中に『レトリーちゃんやコリエンテちゃん、ナカジくんやタローくんは生きていた』って伝えることそのものが私の生きる意味であり、彼らへの供養になるのかなって考えたのよ。この1週間の間、そのことをずっと考えていた…。はじめは私自身が死んでしまいたいと考えるほどつらくて悲しかったけど、もう大丈夫!それにいつまでもくよくよ悲しんでいたらタローくんから心配されてナカジくんからはとても怒られちゃうからね!」
シアン「サユリちゃん…!うん、サユリちゃんのその考え方、シアンはとても良いと思うにゃん!あたし、毎日サユリちゃんの工作教室に通うにゃん!」
サユリ「ありがとう!でも工作教室はあくまで興味のある人だけの参加でいいからね!単純に興味のないことをしたらつまらないからね;」

 そして翌日の工作教室初日、この日は全てのアイドルが美術室に集まり、サユリの工作教室に耳を傾けた。折り紙から塗り絵、本格的なクラフト作品の作り方まで丁寧に分かりやすく教えるサユリの教室は大好評であり、全員現在の状況を忘れることが出来た。特にシアンは工作やクラフト作業の筋が良く、ビーズを使用したブレスレットを上手く仕上げてサユリからハナマルの出来を貰うことが出来た。その日以降は他のことをしたくなった一部のアイドルは工作教室から抜けていたが、サユリは気にせず集まったアイドルたちににこやかに、そして熱心に自分の技術を教え続けた。工作教室の中でシアンとサユリはロゼットという可愛らしいクラフト作品を合同で製作し、ロージアはハート、スペード、ダイヤ、クローバーをモチーフにしたアクセサリー、凜は特製の栞の製作に取り掛かっていた。意外なことに藍とカミュもクラフト作業に興味を示し、彼らは専用の紐を使用したタッセルや初心者用キットを利用した刺繍を製作していた。そして美術室の机の上にはサユリ特製の鮮やかなブルーのサーフボードの飾りと、黒いメガネの飾りが大切に飾られていた…。



もしサユリちゃんが美術の先生だったら、不器用でセンスのない自分でも絶対に美術を好きになれていたと思います;感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.279 )
日時: 2021/05/30 15:45
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

ここからは注意



「第3の殺人」
 興味のあるアイドルたちが美術室に集まりサユリを中心としたペーパークラフトや工作教室が連日行われる中、作業中に足りなくなった折り紙を取りに行った藍が大型倉庫に行ったきり戻って来ない。はじめは折り紙を探しに行くついでにトイレや別の場所に行っているのかと思ったが、10分、20分、いやそれ以上経っても美術室へ戻らない彼のことが心配になったシアンは、シアンを心配したのと単純にこの事務所内での単独行動は危険だと思いシアンに着いてきたロージアと共に藍を探しに行く。3階の美術室から1階外れの廊下まで距離があと少しの時、シアンはふと何かの物音がする事に気づいた。



ガシャン…!ガシャン…!ガシャン…!



シアン「今の音って、何…!?」
ロージア「分からないわ…!だけど何か、コピー機の作動音のような…?」
シアン「この変な物音、倉庫の方からするにゃん…」

 不可解な物音は大型倉庫からであり、シアンとロージアは物音の原因のする部屋へ行く。大型倉庫には藍が数十分前に向かったのでそこで何かしているとシアンとロージアは思った。大型倉庫に着き、ドアを開けようと思ったが、倉庫には何故かロックがされていて扉が開かない。倉庫内には、先に向かった藍が既にいるはずなのに…。



シアン「ドアが開かない…!藍ちゃん、あたしだよ。シアンと、隣にロージアもいるにゃんー!ねえ、中にいるんだったらドアを開けてー!!」
ロージア「あいつ、シアンさんやロージアちゃんたちの声が聞こえないのかしら?ううん、上に通気口があるから廊下の物音が聞こえるはずよね…?」
シアン「メイプルから倉庫の鍵を取りに行くという点もあるけど、このままだと藍ちゃんが心配だにゃん…。ドアを壊したくはないけど、緊急事態だから大丈夫だよね…?」
ロージア「確かこの倉庫のドアは窓が小さいから中がよく見えないわよね?そうした方がいいかもしれないわ…!」



 緊急事態と判断し、メイプルからお咎めを受ける覚悟でシアンとロージアは近くにあった観葉植物のポットを利用して思いっきり窓を割る。そしてそこから手を伸ばし、ドアのロックを解除した。ガチャンと室内のロックが解除されたため、2人は急いで大型倉庫に入る。しかし、そこには…。



ロージア「ねえ…!これってマジなの…!?」
シアン「そんな…!嘘だよね…!?」



 ミューモンの少女2人の目に信じられない光景が飛び込んで来た。彼女たちは目を大きく見開き言葉を失う。倉庫内を支配しているのは室内に張り巡らされた幾重ものピアノ線。耳に嫌でも響いてくるのは倉庫内に設置された大型コピー機の無機質な作動音であり、この大型倉庫の隅に鎮座するコピー機はひたすら紙を印刷し続けている。使用用途がまったくないコピー用紙は倉庫の床を埋め尽くしている…。
 室内に張り巡らされたピアノ線とコピー用紙によって白く染まった床だけでもシアンとロージアは戦慄するが、問題は室内の中央。倉庫の中央には…。





 数十前に席を外した、超アイドル級の科学者の美風藍の首吊り死体があったのだ…!





ロージア「嫌ああああああああああー!!!!!」
翔「お前ら、どうしたんだよ!?一体、何が…!?」





ピンポンパンポーン!
「遺体が発見されました。クロを暴くための捜査を開始します」





クロウ「死体発見アナウンスだと!?誰かが殺されたのか!?」
カミュ「また殺人が起こったのか…!?」

アン「これって、死体発見アナウンスですよね…!?」
サユリ「まさか、藍くんが…!?」
音也「藍さんが事件に巻き込まれたの…!?」
那月「そんな…!」



 3人以上が死体を発見したため、死体発見アナウンスと主に藍の殺害の件の捜査が始まった。アイドルたちは藍の遺体が発見された現場の大型倉庫で捜査を行う。そこで分かった事は…。

クロウ「遺体の顔はすげえ青ざめているし、死因は首を絞められての窒息死だな。その際に使われたのはカーテンか、この布か…?」
音也「床に倉庫の鍵があったよ!そう言えば、この大型倉庫の鍵ってスペアはないんだよね…?」
カミュ「つまり、美風の遺体が発見された当時、この大型倉庫は密室状態になっていたという訳か」
真斗「上の通気口、これは2メートル強の高い位置にある。俺や四ノ宮やカミュさんたちは手を伸ばせば届くかもしれんが、ロージアなどの小柄な者は何か物を使わないと登る事が出来ないだろう…。そこの椅子やテーブルを使っても難しいか…?」
アン「…いいえ、テーブルや椅子は倉庫内の特定の位置に固定しているから、通気口の近くには持って行けませんね…」
翔「もしあったとしても、テーブルや椅子を使って上るって、これは無理だろ…。特に俺らの中で1番小柄なロージアは完全に無理じゃねえか?」



「備考」
・藍の死因は首を絞められての窒息死で自殺の線が濃厚。凶器には倉庫内に設置してあったカーテンや何枚もの布を使用したと思われる。
・上の通気口は2メートル近い高い所にあり、アイドルたちの中でも身長が高い那月(186cm)やカミュ(183cm)や真斗(180cm)たちなら背伸びをすればギリギリ手が届くかもしれないが、クロウや翔などの小柄な者、ロージアたちなどの女子勢にとっては難しい。特に生存アイドルたちの中で1番小柄なロージアは例えハシゴや椅子があっても非常に厳しい状態。
・ただし通気口に手が届く可能性のある3人には全員サユリの工作教室に参加していたため美術室にいたと言うアリバイがあり、彼らが美術室から退出したのもトイレなどに行った5分間程度なので、その間に3階から1階へ移動して藍を絞め殺す反応は不可能。
・倉庫の鍵は室内の床にあった。鍵のスペアはなく、藍の遺体の発見時に大型倉庫は密室状態…!



・・・と、アイドルたちの大半が藍の死は自殺と思い込む。だが…。



シアン「あれ?この倉庫の窓やドアのつまみ、どこかおかしいにゃん…?それに通気口に何かの擦れたような跡が…?」
凛「藍くんの首に縄の締め痕が…?」(まさか…)
那月「こんなところに釘がありますね。どうしてでしょうか…?」
ロージア「あれ?一部だけコピーの紙に穴が開いているんだけど?よく見るとそれが何枚か混じっているみたいだし…!?」
サユリ「しかもこの紙、普通のコピー用紙よりも強度が強いわ。まさか、この紙って…!?」



「追加情報」
・大型倉庫内のドアやつまみに謎の違和感がある…。
・さらに通気口に謎の擦れ痕があった。よく見ると、その跡は紐状のような…?
・藍の首に縄のような締め痕があった。それは倉庫にあった布やカーテンと比べるとまったく違う。
・大型倉庫のところどころに何故か釘が数本刺さっていた。
・さらに床に散らばっている紙の数枚は普通のプリント用紙より強度が強く、穴が開いているものがあった。





第3の殺人事件が…。感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.280 )
日時: 2021/05/30 15:50
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

「真犯人は誰だ?」

 3度目のアイドル裁判が始まり、遺体や現場の情報の整理と犯人であるクロの特定や目星付けが行われる。そこでアイドル全員から疑われたのは超アイドル級の格闘家である来栖翔だった。何故なら、彼は犯行当日唯一サユリのクラフト教室に来ておらず、彼のアリバイを立証出来る者が誰1人としていなかったのだ…。さらに運動神経の良い翔なら例え背が低くても何とか通気口まで体を寄せ、脱出することが出来るとも考えられる…。

翔「俺は藍を殺してなんかいない!それにあの大型倉庫にも藍の遺体を見つける時までは行ってねえよ!」
音也「でも、翔は俺たちの中で唯一アリバイがないじゃないか…!俺だって翔を疑いたくないけど、でも…!」
那月「翔ちゃん、藍ちゃんとも仲良しだったじゃないですか…!どうして…!?」
アン「アリバイや殺害現場の近くにいた痕跡がある以上、どうしてもあなたが容疑者の有力候補になってしまうんです…」
サユリ「翔くん、仲の良かった藍くんを…」
凛「一体どうしてなのよ…!」
ロージア「あんたは捜査に協力的だし、正義感の強い男じゃない!何で殺人なんて…!」
真斗「来栖、出来れば俺もお前を信じたいが…」
クロウ「……」
翔「俺は犯人じゃない!人殺しじゃない…!誰か、誰か信じてくれよ…!」

 顔面蒼白となって自分の無実を訴える超アイドル級の格闘家だが、無情にもアイドル裁判は翔をクロとした前提のもので進みつつある…。しかし翔の必死の様子にどこか妙な違和感を覚えたシアンは、ふと電子手帳を読み返す。すると…。

シアン「!」
クロウ「?…シアン、どうした?」
シアン「みんな、あたしの話を聞いてほしいにゃん!翔ちゃんは絶対に犯人じゃないよ!」
全員「え!?」
翔「シアン、俺を信じてくれるのか…!?」
シアン「うん!だって、翔ちゃんが犯人だったら『あれ』は絶対にあり得ないもの…!」
凛「あり得ないもの?ねえシアン、それって何かしら?」
サユリ「私たち、シアンちゃんが翔くんを無実だという根拠が分からないの…。翔くんは私たちの中で唯一アリバイも立証出来ないし…。シアンちゃん、教えてくれる?」
シアン「分かったにゃん!みんな、まずはこれを見て!」

 シアンが電子手帳からあるデータを見せる。それは今まで行われたアイドル裁判の事件のファイルであり、関係者の名前がずらりと記されていた。

ロージア「第1の殺人と第2の殺人、そして今回の第3の殺人のデータね。シアンさん、これが翔の無実と何か関係あるの?」
シアン「もちろんにゃん!みんな、ここのある場所を見て!」

 シアンが指差したのは遺体を発見したアイドルたちの名前の欄。レトリーの遺体を発見したのはサユリとアンとカミュと凛と那月と多い。タローの遺体を発見したのは音也と翔と藍と、事件のクロであったナカジ。そして今回の事件である藍の遺体を発見したのはシアンとロージアと翔。

アン「遺体の発見者の項目ですね。第1の事件はキッチンでお菓子作りをしようとした私とサユリちゃん、お菓子作りの様子を見に来た那月くんとカミュさんと凛ちゃんが発見しています。第2の事件はプールで泳ごうとしていた音也くんと翔くん、そしてたまたま個室が更衣室の側にあった藍くんと…ナカジくんでしたね。第3の事件はシアンちゃんとロージアちゃんが同時発見し、そのすぐ後に翔くんが倉庫に入室して来たのでしたよね」
真斗「このデータのどこに…ああっ!」
音也「マサ、どうしたの!?」
真斗「そうか…!そういうことか!たしかに来栖はクロでは絶対にないぞ!」
カミュ「どういうことだ、聖川」
真斗「死体発見アナウンスです!みんな、嫌なことではあるがあれの仕様を思い出してくれ!」
サユリ「死体発見アナウンス…ああっ!」
那月「!…そうですね!確か、あれは…!」
シアン「みんな分かったみたいだね!そう、死体発見アナウンスは『クロ以外の遺体の発見者が3人』現れたら流れることになっているにゃん。第1の事件は目撃者の5人みんな、第2の事件はナカジちゃんを除いた3人、そして今回の第3の事件は…!」

 死体発見アナウンス。これはアイドルたちが共同生活を行っている事務所の安寧を一気に壊し、事務所内でアイドル同士の殺人が起こってしまったことを知らせるものだ。だがこれにも良い点はある。発見者のうち最低でも3人はクロではないことが証明されるのだ。もちろん第2の事件のナカジのようにクロ本人が場に居合わせることはあるが、あの時の場合は音也と翔と藍が死体の発見者としてカウントされており、ナカジは死体発見者の条件に満たない対象外として判定されている。今回の死体発見アナウンスが流れたのはシアンとロージアが倉庫の窓を割って鍵を開け無理やり大型倉庫に入室したのち、同時に藍の遺体を発見。そしてトレーニングルームからの帰りにたまたま近くにいたロージアの叫び声を聞いた翔が大型倉庫に入室してきた直後…!



クロウ「…だから、翔はクロではない。藍を殺した犯人じゃないってことか」
翔「…っ!良かった、俺が、藍を殺してなんかいないって分かってもらえて…!」

 超アイドル級の格闘家は逆説的に無実が証明されたことに流石に脱力し、裁判場のテーブルにぐったりもたれかかる…。アリバイがなく犯行可能であった彼を疑ってしまったことに裁判所内のアイドル全員が謝るが、彼はもういいよと笑って許した。しかし、今までは翔がクロという前提で裁判を進めてきたのでこれで犯人探しが振り出しに戻ってしまった。



クロウ「…そうなるとやっぱり怪しいのは、そのままでもあの通気口に手が届きそうな真斗と那月とカミュになってくるな」
那月「だけどクロウちゃん、僕たちはあくまであの通気口には背伸びして手を伸ばせば届きそうってだけですよ…。それに僕もパワーはある方だけど、少し距離が足りない上にあの通気口の入り口に手を掛けてぐいっと上るのは少し無理があります…!」
凛「それにあの大型倉庫にあった椅子やテーブルも固定されているから、それを利用して上に上ることは出来ないと思うわ」
カミュ「それに真犯人によるカモフラージュという点もあり得るだろう。誰が美風を殺害できてもおかしくないように」
ロージア「その線は十分あり得るわね。そういやロージアちゃんは今回の事件でずっと気になっていることがあるんだけど、いいかしら?あの場に散らばっていた不気味な白い紙、数枚変な穴が空いていたのよね?」
那月「僕も気になることがありました!床に数本釘があったんです!それに窓やドアのつまみに何故か変な違和感が…!」
音也「釘?誰かが打ち付けたの?ただの大型倉庫に、何で?あと、窓やドアのつまみに変な違和感…?」
凛「そういえば私もロージアや那月と同じように変に思ったところがあったのよ。藍くんの首、紐で絞められたような跡があったのよ」
クロウ「それって絞殺死体の首に出てくる『吉川線』か?それならたしかに不気味だし、他殺の可能性の方が高いよな」
アン「それに紐といえば、通気口の一部には紐の跡のようなものがありましたよね…?やはり誰かがトリックを使用して、通気口に紐を通したのでしょうか…?」
翔「でも、何で紐を通気口に通す必要があるんだ?」
サユリ「あと捜査時間中に少し調べてみたんだけど…。もちろん普通のコピー用紙もあったんだけどね、殺害現場に広がっていたいくつかの紙は普通のプリント用紙じゃないわ!普通のものとは手触りが違うし、クラフト作品でも使用可能なものだったのよ!」
真斗「何だと?だが、どうして真犯人はその紙を現場にばら撒いたのだ…?」

 みんなの発言を黙って聞いていたシアンだが、何故か数人のアイドルたちの発言に違和感を覚える。慌てて電子手帳の情報を確認すると、とんでもないアイディアが浮かんできた…!

シアン「みんな!みんな!今、あたしの中で全部が繋がったにゃん!」
全員「!」
翔「本当か!?なら、全部言っちゃってくれ!情報がこんがらがり過ぎてもう訳がわかんねえ…!」
シアン「わかったにゃん。今回の殺人事件のトリックだけどね…!」





シアン「真犯人は工作教室でサユリちゃんから聞いた工作やクラフトの情報を犯行に利用したんだと思う…!」



感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.281 )
日時: 2021/05/30 15:56
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

 シアンが推測した通り、今回の犯行トリックはサユリの工作教室で行われた工作やクラフトが関わっていた。特にクラフト工作に使われる紙は入手経緯が容易な上、使用用途や作る物によっては相当な強度を持ったり木を切る事も可能な刃にもなる…。しかもクラフト工作に使用可能な紙は前もって大型倉庫の中に用意され、先生役であったサユリの手によって美術室に運ばれ、彼女から工作教室に参加したアイドル達の手にも渡りやすい状態と化していた…!
 つまり真犯人は大型倉庫に行った藍を紐状のもので首を絞めて殺害した後、自殺したかのように見せかけるために現場を偽装した。偽装工作の方法だが、この大型倉庫の窓やドアの内側には中から鍵を開け閉めするためのつまみがついている(このつまみの別名を「クレセント」や「サムターン」などと言う)。そのつまみにピアノ線を巻きつけて、もう一つの端を延ばして窓の周囲の換気扇やドアの隙間から外に出す。それを外から引っ張れば、外からつまみが回せる。そして強く引っぱるとピアノ線が取れるようにしておけば、巻きつけた紐が取れた後には「鍵のかかった部屋」=密室が残される。扉や窓のつまみに違和感があったのはそのせいだろう。真犯人はサユリから得た情報を利用して糸とペーパークラフトで使用される強度の高い紙を重ねて足場を作り、それで作った足場で上にある通気口から脱出したのち、「クレセント」とピアノ線を利用した仕掛けを作動させて大型倉庫を密室状態に。これで部屋中に糸が張り巡らされた奇妙な密室の完成。あとは起動させたコピー機内のコピー用紙を混ぜて、より現場をかく乱させるのみ。

シアン「これであの奇妙な部屋が出来た理由と密室トリックの完成にゃん。まさか、サユリちゃんの工作教室で手に入れた知識を利用して殺人をする人がいるなんてみんな想像していなかっただろうけど…」
サユリ「そんな…!私がみんなに教えたクラフトワークや工作の知識が…!」
真斗「小川、しっかりしろ!…ということは、犯人は工作教室に参加し、かつ小川の知識を利用した人物か!」
翔「でも俺は最初の工作教室には行ったけど、折り紙とか簡単なものしか触ってないから、ただの紙がそんなに強度を持つとかは知らなかったぜ…」
音也「俺も知らなかったよ。俺も工作教室の2日目は2階の音楽室へ気分転換にギターを弾きに行っていたし。マサと那月も俺と一緒にピアノやバイオリンを弾きに行っていたよね?…そうなると、犯人はサユリちゃんの開いた3日間の工作教室にちゃんと毎日来ていた人になるよね?」
シアン「そうにゃん。あたしは工作教室に毎日行っていたから一緒にいた子たちを知っているにゃん。毎日美術室に来ていたのは先生役だったサユリちゃんと、あたしとロージアと凛ちゃん。それに今回殺された藍ちゃん。そして…」





シアン「…カミュちゃん。カミュちゃんなら頑張ればちょうど通気口に手が届くし、今回のトリックも出来るよね?」
カミュ「……」





 アイドルたちの証言や現場の情報を改めて整理すると、真犯人候補が浮上した。それは3日間行われたサユリのクラフトワーク教室に全て参加しており、かつ通気口にも手が届く可能性のある超アイドル級の伯爵だった。ネコ族のミューモンの少女から疑われる彼だが、いたって冷静に対応する。

カミュ「確かに俺は小川のクラフト教室に全て参加し、通気口にも手が届く可能性がある。だが、仮に俺が犯人だとするとあのような大掛かりな偽装工作は何故行う必要がある?俺は通気口に手が届く人間だし、大型倉庫をあのような惨状にしたところで何の意味がある?それに時間の問題もある。美術室のある3階から大型倉庫のある1階までは歩くと行きだけでも10分以上掛かるし、何より、第1の事件や第2の事件と異なり美風を殺した凶器は現場から見つかっていないだろう?」
シアン「…っ」
凛「…そうなのよね。私が見た藍くんの首にあった、彼を絞め殺したであろう凶器はまだ見つかっていない」
那月「あと美術室から遠い大型倉庫まで行くには、例えどんなに急いで走っても5分以上は掛かります…。今日僕たちが美術室から出て戻ってくるまでに掛かった時間はみんな5分以内なので、往復のことを考えると多分犯行は不可能です…」
真斗「確かに謎が残るな。仮にシアンの言う通りにカミュさんが犯人だと仮定しても、あの大掛かりなトリックを使用して大型倉庫に紙をばら撒き、足場を作る必要は何故あった?カモフラージュの線はあるが、他の者ならともかく、俺たち180cm以上ある3人なら通気口へ行くのに足場は必要ないはずだが…?」
クロウ「これはいわゆる『ハウダニット』ってやつだな。何故真犯人はあの大掛かりなトリックを使用して藍の殺害現場を偽装する必要があったのか。ともかくそれが今回の事件解明のカギになることだけは間違いないな」
アン「私もそれくらいは聞いたことがあります!『ホワイダニット』…動機と違って犯人や犯行方法を重視する作品のことなんですよね?」
シアン(残った謎は3つ…!カミュちゃんがあのトリックを使用した理由、犯行を行うのに邪魔な美術室と大型倉庫間の距離と時間、藍ちゃんを殺した凶器…!死体発見アナウンスのことと毎日工作教室に通っていたメンバーと状況から犯人は多分間違いないの…!でもこの3つを解決できないと、あの冷静なカミュちゃんの様子は崩せない…!)



 彼の態度を崩すため、真実を暴くためにシアンは必死の形相で電子手帳と、それに記されている第3の事件の現場の状況や証拠や証言を読み漁る。するとある考えが彼女の脳内を電流の如く駆け巡った。これは荒唐無稽なものだと全員から非難されるかもしれないが、あの残酷かつアイドルたちのコロシアイを誘発するメイプルの仕込むことも考えると決して有り得ないものではなかった。



シアン「!」
サユリ「シアンちゃん…?」
シアン(きっとこれにゃん…!普通ならこのことはあり得ないけれど、でもこの案を強気に出していかないと、あたしたちは真実に辿り着けない…!)
音也「シアンちゃん、どうしたの!?いきなり震え出して…!?」
シアン「分かったにゃん…!こじつけかもしれないけど、これなら現場をああする必要が出てくると思うにゃん」
ロージア「あんな風に?…ねえシアンさん、それってどう言うことよ?」
シアン「カミュちゃんは絶対にあのトリックを使わなきゃいけなかったの。そうしないと、短時間で大型倉庫から美術室に戻れないから!」
翔「はあっ!?どういうことだよ…!?」
シアン「3階の美術室から1階の大型倉庫に行くには歩いて10分、全力で走っても5分以上は普通にかかるにゃん!そう、普通なら!」
クロウ「『普通なら?』…おい、まさか…!?」





シアン「…もし大型倉庫の中のあの通気口から、3階の何処かへ素早く移動出来る抜け道か何かに繋がっていたとしたらどう?」
全員「!?」
カミュ「…!」





感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.282 )
日時: 2021/05/30 16:02
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

3階から1階へ素早く移動出来た理由は?



真斗「おい、シアン、『抜け道』とは…」
シアン「カミュちゃんは藍ちゃんが折り紙を取りに行った少し後に美術室から退出して、3階から1階に繋がる抜け道を利用して大型倉庫内に藍ちゃんより早く移動した。そういえば、カミュちゃんがお手洗いに行ったのって藍ちゃんが退室したほんの少しあとだったよね?…そこで藍ちゃんの首を締めて彼を殺したあと、急いで自分以外のアイドルみんなにも藍ちゃんの殺害可能なんじゃないかと目が向くようにカモフラージュも兼ねてサユリちゃんの情報を利用したトリックで糸を使って部屋を密室状態にしたりコピー用紙やクラフト用紙で満たしたあと、足場を使って上り通気口から素早く脱出、1階から3階へ戻ったのにゃん。こうすれば『部屋の移動には最低往復10分以上は掛かるから自分の犯行は無理だ』と言えるようになる。カミュちゃんが何で抜け道の存在を知っていたのかは知らないけど、3階の探索中に偶然見つけたか…。もしかしたら第2の事件の『動機』の手紙に偶然抜け道の存在が書かれていたのかもしれないにゃん。…もしかしたらカミュちゃんの『動機』もサユリちゃんと同じくらい重いものだったのかもしれないね。メイプルのやることは悪質だから、それくらいは普通にあり得るのにゃん」
凛「確かにあいつの性格やあいつがやることは腐っているから、殺人の動機が出来そうな人へ殺人を起こしやすくするような情報を送り付けることはあり得るわ…!」
サユリ「それに動機のことも…!シアンちゃんや音楽室で話してくれた凛ちゃん、ナカジくんの『動機』はちょっとした秘密や隠しておきたい恥ずかしいこと程度だったけど、私以外のアイドルにもバラされたら他のアイドルの殺害を決意するような爆弾級の『動機』があってもおかしくないわ…!」
那月「でも、もう1度だけいいですかシアンちゃん?何で足場を作る必要があるんですか?ミューちゃんさんは僕よりほんの少し背が低い程度でパワーもあるし、わざわざ上ろうとしなくても手を伸ばして通気口に体を寄せるくらいなら、彼が頑張れば出来るんじゃ…」
シアン「スムーズに通気口へ移動するためにゃん!あの通気口は足場がないと1番体が大きな那月ちゃんでも体を寄せて上るのが厳しい通気口だから、そのままだとモタモタしてたら誰かに見つかる可能性がとっても高くなるにゃん!現に美術室にいなかった翔ちゃんがたまたま1階の大型倉庫の近くのトレーニングルームにいたしね!特に、かく乱用のコピー用紙を準備したあとなら他のみんなにコピー機やコピー用紙が起こす物音から気付かれるかもしれないし、それだと移動時間を誤魔化すためのアリバイトリックが全部無駄になる…!」
那月「!…そう、そうでしたね…!」

 サユリ以外のアイドルもコロシアイのきっかけになり得る爆弾級の「動機」を抱えていたこと、メイプルの残酷さから抜け道の存在を前もって彼が知っていた・もしくは知らされていた可能性があると全員が思いつく。シアンの型破りなアイディアがきっかけとなり犯行可能な状況が明かされつつあり顔に冷や汗を浮かばせている伯爵だが、彼はあくまで冷静にシアンに反論した。

カミュ「…お前の提示した、アリバイを無視可能なショートカット可能な抜け道がある可能性は認めよう。だが、この事件の謎はまだ残っているだろう?」
ロージア「!…そうだ、藍を殺した凶器…!」

 そう、被害者である藍の命を奪った凶器だ。だがその反論も、シアンの一言によって打ち砕かれることになる。

シアン「…凶器も、多分予想は付いているにゃん。藍ちゃんの命を奪ったのは凛ちゃんの言っていた通り、紐状のものにゃん」
クロウ「まあ、そりゃそうだな。凛の言っていた『藍の首に浮き出ていた跡』はまず『吉川線』だろうし」
シアン「これもサユリちゃんから聞いた話なんだけど、クラフトワークには紐を使った作品もあるんだよね?…サユリちゃん、もう1度知らないみんなのためにも教えてくれる?」
サユリ「え、ええ…。クラフトワークにはいくつかの作品があるのだけど、紐状のものを使った作品も確かにあるの。麻紐を使ったネックレスやアクセサリー、麻紐で編んだトートバッグとかね。初心者でも簡単に出来るのはジュート紐っていう専用の紐を作ったコースターとか…!?」
シアン「あたしは飾りを作っている最中にサユリちゃんから聞いていたから知っていたけど、クラフト作品で使われる材料のひとつに『ジュート紐』っていう専用の麻紐があるのにゃん。それをカギで編んだりして大きなバッグやコースターを作れるんだよね。そういえば、ちょうどクラフト教室でコースターを作っていた子がいたよね?…ちなみにあたしはサユリちゃんと一緒にロゼットっていう飾り、ロージアはビーズでハートとスペードとダイヤとクラブのアクセサリー、凛ちゃんは特製の栞。そして殺された藍ちゃんは初心者用のキットを利用して簡単な刺繍を作っていた…」
アン「待って!待って下さい、シアンちゃん!それって…!?」
シアン「あとカミュちゃん。いつもカミュちゃんが持っている青い綺麗な石の付いているステッキ。あれって石と杖の部分がしっかり繋がっているように見えるけど、本当は石の部分が上手く取れるものなんじゃないの?使用者のカミュちゃんなら自分の持ち歩いているステッキの仕様は分かっているだろうし、もしあたしの言った通りに本当に杖と石の部分が取れるタイプのものなら、その中に藍ちゃんの命を奪ったジュート紐が隠してあってもおかしくないと思うんだけど?」
カミュ「…っ!」





論破!






感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.283 )
日時: 2021/05/30 16:10
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

「滅びゆく祖国」

 シアンによって今回の殺人事件のクロと見抜かれた超アイドル級の伯爵は潔くステッキの石部分を取り外し、杖の中からクラフトワークで使用するジュート紐をするすると取り出した。それを机の上に置くと彼は自分の敗北を認めて、藍の殺害に至った動機を口にする。

カミュ「…よく分かったな。俺が美風を殺したと」
那月「そんな…。どうしてなんですか!?ミューちゃんさんは藍ちゃんと仲良しだったじゃないですか!僕はあなたたちがお食事の時に、シンセサイザーやチェロのことで楽しくお話をしているのを聞いていたんですよ…!?」
カミュ「それはな四ノ宮、俺は一刻も早くこの事務所を出たかったからだ。そう、滅びゆく俺の祖国を救うためにな」
真斗「祖国?…待って下さい、カミュさん!それは…!?」
カミュ「聖川、お前は知っていたようだな?そう、俺の祖国『シルクパレス』は北国の小国だ。厳しい自然の中にシルクパレスでさか見ることの出来ない特有の美しさがあり、人々も貴族層から貧しい庶民まで手を取り合って国を支えようとしていた。俺はそのシルクパレスの代表として、祖国の広告塔として働けることを誇りに思っていた」
凛「…立派な、国なのね。でもその国が『滅ぶ』って…!?」
カミュ「第2の事件の小川と同じように俺の『動機』もとんでもない情報が記されていた。元々厳しい自然の北国の小国であるシルクパレスは埋蔵してある資源が少ないが、某大国らから成る国際連合の調査から実は貴重な資源のひとつである『レアメタル』が埋蔵してある可能性が高くなったと報じられたと。そしてその情報により大国や近隣の国々によってシルクパレスは戦火の中心となり、戦争に敗れた我が祖国は各国の領土として没収されて国としては既に滅びていると…!何より俺の敬愛するシルクパレスの統治者である女王陛下は他国に抵抗したとして処刑され、多くの国民たちも他国からの侵入者によって殺されたり人質にされ自由や尊厳を奪われたと…!あの悪趣味な社長が俺を誑かすための作り話だ、そんな事実は信じるかと思ったが、『動機』のことをバラされた小川の様子とそれを巡って中島が連の殺害に至った経緯から俺は『動機』の情報が真実だと認めざるを得なくなった…。俺も結局はあの憎き残虐な社長に踊らされた1人だ。既に滅んでいたとしても祖国の様子を一目でも見たくなった俺は、小川の得意とするクラフト工作のトリックを利用した…!たかが糸やピアノ線や紙の強度が工夫次第であれほど増すとは思わなかった。あれは便利なものだったぞ」
音也「そういや、少し前のニュースでやっていたっけ…!北欧やヨーロッパである小さな国の領土を巡って戦争が起こっていたって…!被害に遭った国の人たちは人質にされたり抵抗したら酷い殺され方で殺されたりしたって…!『あれはない』ってニュース番組の専門の人たちがたくさん非難していたのを俺は覚えているよ!」
サユリ「私の自慢のクラフトワークのことを褒めてくれたのは嬉しいよ…。でも、何でなの…?藍くんを殺したのはどうしてなの…?」
カミュ「第3の動機は『この事務所からの脱出とともにひとつだけクロの願いを叶える』というものだっただろう?はじめは俺も人を殺してまで祖国の様子を確かめようとは考えていなかった。だが美風は、あ奴は…!」



藍『でも、そんなことに反応するバカなんていないでしょ?』



カミュ「俺にとってシルクパレスの件は『そんなこと』程度ではない!生まれ育ち、誇りに思う祖国の一大事だ!それ故に美風のあの発言は、あれだけはどうしても許せなかった…!」
アン「その一言で彼に強い殺意を抱いてしまったんですね…。例え藍くんが誰かを貶める意図のないただの何気ない一言として発言していたとしても、あなたにとって、それは大きな地雷となって彼への殺意を呼び起こしてしまった…!」





被害者:超アイドル級の科学者 美風藍
クロ:超アイドル級の伯爵 クリスザード・R・カミュ
犯行:藍をクラフトワークで使用したジュート紐で絞殺したのち、現場を偽装工作して自殺に見せかけた。『動機』の書かれた紙に同時記載されていたメイプルから知らされていた「抜け道」の存在と第2の事件から立ち直ったサユリがシアンやみんなの目の前で披露していたペーパークラフトや工作の話を思い出し、今回のトリックを思いついた。動機は祖国が滅亡の危機に瀕していることへの焦りと、その際に発せられた藍の何気ない発言によるすれ違い…。





次レスは彼のオシオキ…。感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.284 )
日時: 2021/05/30 16:16
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

前回、前々回と続き注意…



メイプル「『クロの願いをひとつだけ叶える?』…あんなこと嘘に決まってるじゃないですか〜!そんな嘘をあっさり信じちゃうなんて、それこそバカじゃないの?ボクが用意した『抜け道』の情報をあっさり利用したり、冷静な判断が何も出来なくなっちゃったんですね〜!うぷぷぷぷ〜!」
カミュ「そんな…」
ロージア「ふざけんな!そんな言い方はないでしょ!」
メイプル「部外者は黙ってるんですぞ!ところで犯罪者の伯爵さん?最後に何か言い遺すことはないの?」
カミュ「…殺人事件のクロとして暴かれた以上、俺が処刑対象になることは至極当然だ。殺すならさっさと殺せ」
メイプル「最後だけは潔いですね〜?そこは嫌いじゃないですぞ。そんな誇り高いキミにはとっておきのオシオキを用意したからね?結局キミの祖国がどうなったかは、あの世で確かめるんですぞ?あっ、ちょっとしたトラブルで殺しちゃった藍くんへの謝罪も忘れずにね?」
カミュ「…美風…」

 カミュが藍を殺した理由とそれに至った動機は明かされたが、第3の動機は結局アイドル同士のコロシアイを誘発するものであり、約束など叶えるつもりもなかったと白状するメイプル。メイプルの完璧な企みに踊らされて人殺しをしたという事実に彼は動揺を見せたが、すぐに平静を取り戻し、潔く他者を殺めた自分を処刑しろと宣言する。そして殺してしまった友人のことを思って顔を歪める…。最後にオシオキ会場へ向かう鎖に繋がれる前、超アイドル級の伯爵は超アイドル級の格闘家に振り向き、こう言い遺した。



カミュ「…来栖、お前を全ての人間から疑わせる状況にしたことは謝罪する。すまなかった」
翔「……」
メイプル「それじゃあ、ワックワクドッキドキのオシオキターイム!」





GAME OVER
カミュくんがクロに決まりました。オシオキを開始します。





ビュォォォォ…




カミュ「…ここは…」



 コリエンテ、ナカジと同じように鎖に繋がれ引き摺られた彼はある場所にいた。そこはある外国の城下町であり、吹雪が吹き荒れている…。街の様子はすっかり寂れ切っており、外出する人も非常に少ない。まばらに人の姿は見られるが、その誰もが俯き下を向いており、幸福そうに見えないことは明らかであった…。





「伯爵凱旋」
超アイドル級の伯爵 クリスザード・R・の処刑執行





カミュ「まさかここは、俺の故郷であるシルクパレスなのか…!?」

 彼の記憶の中にある、厳しくも美しく栄えていた祖国の城下町の姿は何処にもなく愕然とするが、このまま突っ立っている訳にもいかず、カミュは城下町を歩き出す。目指すのは城下町の奥に聳え立っており彼が敬愛する女王の住まうシルクパレスの城だ。だが、女王の住む城へ向かおうとする彼の足元から、乞食の少年が靴を奪い去っていく。

カミュ「!?」
乞食の少年「そんなに金持ってそうな見た目をしているなら、少しくらい持っていってもいいだろ!」

 何をしているんだと思わず言い返そうとしたが少年の逃げ足は速く、あっという間に消えてしまった。構っている暇もなく再び歩みを進めようとしたところで、今度は子どもを抱えた母親が彼の上着を奪い去っていく。

母親「うちには金がないんだ…!この子を生かすのには温かいものが必要なんだよ!ごめんなさい、ごめんよ…!」
カミュ「子どもの見本となるべき母親が盗みを働くのか…」

 子どもを抱えた彼女も逃げ足は速く、あっという間に消えてしまった。超アイドル級の伯爵は盗みを働く母親に呆れたものの、今度は理由が理由ということでそこまで追及しようとはせず、気持ちを切り替えてお城へ向かおうとした。だがそんな彼の元に多くの国民が群がり、上品で身なりの良い伯爵の青年に手を伸ばす…!

若い男「あんたの綺麗な金髪が欲しい…!それを切れば高く売れるはずだ…!」
少女「何で男なのにそんなに綺麗な青い目を持ってるのよ…!?あたしのくすんだ目と取っ替えてよ…!」
老婆「白くて澄んでいて陶磁器のような肌だねえ…!あたしの若い頃を思い出すよ…!ねえ、その肌をあたしにくれないかい…!?」
中年男性「長い腕と脚をしてるな…!見るからに健康そうだし、これならいくらでもこき使えそうだ…!」
卑しい男「顔立ちも悪くないな、女ではなく男というのが非常に惜しいが…!」
カミュ「俺の祖国の住人が、こんなに卑しい輩と化しているとは…!?」

 貧しいが誇り高い心を持っていたはずの祖国の住人たち。他国の大国や連合軍との敗戦を経験してここまで廃れてしまったのか…。内心やるせない思いを抱える超アイドル級の伯爵だが、それを無視して黙々とお城へと歩み続ける。それは長い髪を切られた上に引っ張られ、石を投げつけられ、包丁や銃などといった凶器を向けられ、彼がいつ暴徒と化した住人たちに襲われてもおかしくない環境であった…。そしてとうとう、目当てであった女王の控えるお城へと辿り着いた!

カミュ「陛下!ただ今帰還しました!」

 お城に辿り着いたカミュは酷い姿だった。そこには普段の美しく誇り高き伯爵の青年の面影はなかった。靴や靴下はとっくに剝ぎ取られており裸足、コートや上着は盗まれ薄手のシャツ1枚という恰好、自慢の美しいブロンドヘアは暴徒と化した住人たちによって無理やり切られてざんばら状態、腕や脚にも住人達の狂気によって傷付けられたいくつもの傷が付いており、幾筋も血が滴り落ちていた…。この状態では吹雪が吹きすさぶこの街では非常に苦しいことが理解できるものであり、事実北国出身で寒さに強いはずの彼でも凍えてしまうかと思えるほどだった…。そんな彼の目の前に、遂に女王が姿を現した。

女王「凱旋ご苦労。随分苦労したようだな?」
カミュ「…これほどのこと、私めにとっては取るに足りません。陛下」
女王「そうか?ならば何故我が国民たちの苦悩と訴えに応えず、貴様はのうのうとやって来れたのだ?」
カミュ「…は?」
女王「聞こえてくる民衆の声に耳を傾けず、挙句の果てに殺人まで犯した伯爵は我が国には必要ない」
カミュ「お待ちください、陛下!先日の敗戦によるショックと士気の低下が原因でしょうが、現在の住人たちは強い狂気に囚われております!まずは彼らの精神状態の安定に努めねば、この国は狂気に満たされ滅んでしまいます!」
女王「問答無用」

女王はまるで聞く耳を持たない。腰に装備していたサーベルをすらりと抜き、ぎらつく銀の刃を伯爵の青年の首筋に突き付けた。

カミュ「陛下、お話を…!」





ザシュッ




 次の瞬間、『何か』がゴトリと音を立てて落ちた。そして沸き立つ国民たちの歓声をバックに、積もり積もった真っ白な雪で敷き詰められた交道の上に、大量の赤黒い液体が流れだした…。





伯爵のステッキを入手しました!





感想まだ

アイドルロンパ Chapter3 ( No.285 )
日時: 2021/05/30 16:22
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

「格闘家の少年のひとりごと」

メイプル「エクストリィィィィィーム!しかし、あんなのが本当にあれほどまでして守りたかった『祖国』というやつなんですかねー?国民はみんな自分のことしか考えていない最低最悪な奴らで、女王も誰の言うことも効かない高慢ちき!あっ、でもそれを守ろうとしていた伯爵なんて、すぐカッとなって友達を殺すような人殺しでしたね!それじゃ、低俗で落ちるところまで落ちるのも当たり前ですぞ!」
那月「ううっ…!藍ちゃん…!ミューちゃんさん…!」
音也「那月、早くここを出よう…!これは悪い夢だ…!」

 前回、前々回と同じように処刑を終えて興奮しきって叫ぶメイプル。尊敬していた人物を一気に失い顔を覆って泣き出す超アイドル級の演奏家と、顔面蒼白になりながらも彼の肩を支え、裁判所からの退出を促す超アイドル級のサッカー選手。彼らに倣い、次々とアイドルたちは裁判所を出ていく。そんな中、ネコ族のミューモンの少女は知人の処刑を目の前にして青ざめつつも何か思い詰めた表情の超アイドル級の格闘家の少年の様子が気になっていた。彼は今回の被害者となった藍と親しかった人物の1人であり、処刑されたカミュから最期に遺言を言い渡された人物であり、アイドル裁判が中盤までの間違った方向のまま進めば他のアイドルたちから殺人事件のクロとして冤罪を着せられていたはずだった。いずれにせよ、今回の事件に何か思うところがあったことは間違いない…。
 その夜、中々寝付けずにいたシアンは何か温かいものを飲もうと自室をこっそり抜け出して食堂へ向かった。すると食堂には先客がおり、彼は電子レンジでホットミルクを注がれたマグカップを手に取っていた。

シアン「翔ちゃん…」
翔「…シアン、お前も眠れなかったのか?」
シアン「うん…。だって、さっきあんなことがあったし…」
翔「…まあな。なあ、少し話さねえ?そうしたらお互い上手い具合に眠くなるかもしれないだろ?ちょっとで良いから俺の話に付き合ってくれねえか?」
シアン「うん!あたしで良ければ喜んで!」

 ネコ族のミューモンの少女と格闘家の少年はテーブルを挟んで向かい合った。彼らの手元には温かいホットミルクがあり、日中発生したアイドル裁判の緊迫した様子とは打って変わって穏やかな時間と空間が2人を包んでいた。

シアン「…翔ちゃん、もしかして藍ちゃんやカミュちゃんのことを考えていたのかにゃん?」
翔「…ああ。正直、藍とカミュさんの間でコロシアイが起こるなんて全く思ってなかった。俺はあの2人とずいぶん前に共演経験があったけど、その時は普通に仲の良い人たちだったしさ。前回のナカジとタローといい、このコロシアイ生活は俺たちの間に出来た友情や思いや絆をどんどんちぎって潰して台無しにしていくな…」
シアン「シアンは、アイドルのみんなと会うのはこの事務所に閉じ込められてからだけど、メイプルがみんなの気持ちをどんどん踏み躙ってたくさんの揉め事を起こそうとしていることだけは分かるにゃん…!メイプルは絶対に許さない…!」
翔「俺も同じ気持ちだ!それに、結構ショックだったよ。アリバイがないってだけであんなにあっという間に疑われるんだなって。正直疑われている時はめちゃくちゃ怖かったし、あの時はクロを間違えたことによる全員の死を覚悟したぜ…」
シアン「翔ちゃん…」
翔「でもまあ、もし同じ状況だったら俺も同じようにアリバイのない奴を疑って責め立てていただろうから、偉そうなことは言えないけどな!…それにさ、この短い間で少しだけでも考えたんだよ」
シアン「考えた?一体何を?」
翔「…カミュさんが何で最期に俺宛に言葉を残したのかなってこと。あの人は『動機』の件と藍の何気ない発言が原因で人殺しをした。それは決して許されないことだ。だけど、彼は藍を殺す前も殺した後も心のどこかではずっと悩んで葛藤していたのかもしれない。今思えばあの人は俺が疑われている最中、俺に対して何も言わなかったしな」
シアン「…そういえば、そうだったね」
翔「殺される直前、カミュさんはみんなにクロとして疑われて殺されそうになった俺に謝ってくれた。最初は藍を殺した人がいきなり何言ってんだと思ったけど…。俺はあの言葉がさんの本当の本質だと今は思ってる。あの人をあそこまで焦らせて人殺しをさせようと追い詰めたのはメイプルだし、それは前の殺人事件のクロになってしまったコリエンテにしろナカジにしろ同じことだ。もちろん藍もレトリーもタローも、こんなふざけた事務所の中で殺されるような奴らじゃなかったよ。俺は頭は良くないけどこの事務所の中で発生する殺人事件の連続とか、さっきまで笑っていた人が急に殺されていなくなったりとか、惨い処刑方法とか、それらが起こす色々な感情が俺の中をぐるぐる渦巻いていて自分でもよくわからない部分はあるけど…。とにかく俺、絶対に生き残ってこのイカれた事務所を脱出してやるよ。メイプルなんかの思惑には絶対に負けねえ…!」
シアン「それはあたしも同じ気持ちだよ!翔ちゃん、絶対あいつに負けないようにしようね!」
翔「おう!ごめんな、色々話を聞いてもらって。コロシアイの話はデリケートだし、他の奴らにはちょっと話せないし。…今回は特に那月が相当ショックを受けていたみたいだから、明日からはあいつのフォローに動くよ。お前もあいつから話を聞いてみたらどうだ?人と話すと気分が軽くなるしさ」
シアン「そうだね。那月ちゃん、最後凄く泣いていたもんね…」
翔「ああ、あいつはちょっとメンタルが弱いところがあるから心配だ。何か悪い方向に進まなきゃいいんだけど…。じゃあ、そろそろ俺は部屋に戻るよ。おやすみ!」
シアン「うん!翔ちゃん、おやすみなさい!」

 今回の事件で特に大きなショックを受けたと思われる、顔見知りの超アイドル級の演奏家の様子に不安を覚えつつも、自分の中に抱えていたどこかモヤモヤとした気持ちや他者に言えなかった本音や現在の心境をシアンに吐露出来たことが良かったのか、翔は笑って自室へと歩いて行った。

シアン「殺人事件のクロとして疑われてショックを受けても、みんなを気遣ってあんなことが言えるなんて…。翔ちゃんは本当に強いね…。あたしも翔ちゃんの心の強さを見習わないといけないにゃん。もうアイドルたちの間のコロシアイなんて、起こさせない…!」

 残ったホットミルクを一気に飲み干すと、シアンはマグカップを洗い場に戻して自室へと歩き出す。そんな彼女の様子を、物陰で誰かが伺っていたとは知らずに…。





Chapter3 「操りピエロ」
生き残りメンバー 残り10人

to be continue





次はカミュ様と、今回の被害者である藍ちゃんのオシオキ案。感想まだ

アイドル ( No.286 )
日時: 2021/05/30 16:30
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: rGfwxYhx)

これで最後!



・「伯爵のステッキ」
 ある青年が持ち歩いていたステッキ。彼の祖国の特産品である青く美しい宝石が付けられている。一見美しい1本のステッキのように見えるが、実は石と杖の部分が分離して取り外せるようになっており、細長いものや小型のものなら収納可能になっている。



・カミュ「伯爵凱旋」
 とある廃れてしまった国の城下町に彼はいた。吹き荒れる吹雪の中カミュは奥にそびえたつお城を目指し、歩みを進める。その途中でこじきの少年が彼の履いていた靴を奪って逃げていく。次に子供を抱えた若い女性が着ていた上着を剥ぎ取る。やがて進む彼のもとには多くの貧しい人間がたかり、「綺麗な髪をくれ」「澄んだ碧眼をくれ」「白い肌をくれ」と口ぐちに喚く。挙句の果てには石を投げつけられたりするが、それでも彼はお城の前に到着した。寒さに強いはずの彼でさえ凍えてしまいそうな中、とうとう目的であった女王に会うことが出来た。だが女王は「聞こえてくる民衆の声に耳を傾けず、挙句の果てに殺人まで犯した伯爵はいらない」とサーベルを抜き…。
死因は女王に首を刎ねられたことによる斬首。モデルとなったのは原作の十神のオシオキ案であり、それをベースに色々考えました。心の支えにしていた祖国の廃れ具合をまじまじと見せられ、最後はやっと会えた女王様に見捨てられ首を刎ねられてしまう無情さ、理不尽さが肝だったりします。



・藍「A.I.〜まだ見ぬ世界〜」
白衣を身にまとい真っ白な広い実験室に佇む藍。彼は実験の最中であり、アシスタントのメイプルが手伝う中薬品を調合している。だが誤ってメイプルが間違った薬品を投入してしまい、部屋に有毒の気体が充満し始める。窓を探すも見当たらず、ハンカチを当ててやり過ごすもこのままでは体に毒が回って死んでしまう。何とか走り回ってドアを見つけたものの、ドアを開けた彼の目に映ったのは血のついたスパナや工具、見るからに怪しげな機械が大量に包まれた部屋だった。本能的にまずいと悟るが直後に科学者の格好をしたメイプルに捕まってしまい、体のあちこちに管を繋がれる。もう助からないと目を瞑った彼を見たメイプルは満足げに機械を作動した…。
 最終的な死因は繋がれた管から大量の電撃が流れたことによる感電死であり、実験していた側の藍ちゃんが無能な助手に振り回された挙句、最後に自分自身が実験対象側になっちゃった、というもの。タイトルは彼の楽曲のタイトルのひとつから取りました。



今回は以上です。感想OKです