二次創作小説(新・総合)

それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.567 )
日時: 2025/04/20 21:31
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)




久々のコラボ案件です!WSTinYのメンバーが協力して依頼に立ち向かう!果たして彼らの運命やいかに…!?





「それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA」(導入編)





 ここは夢見草の創造・管理する世界。そしてさまざまな世界の中継点にあたる「クロスオーバーワールド」。ここでは「大乱闘スマッシュブラザーズ」として誘致されたファイターたちのための特設ファイトリングと彼らが生活するための館があり、ほぼ毎日行われる大乱闘の放送で人々は盛り上がっている。またそれ以外にも出自の異なる者たちが移住・定住の末に生活していたり、わざわざ元の世界からやって来て交流したりと多くの賑わいを見せているのだ。
 そしてクロスオーバーワールドには世界を守るために結成された特殊機関ギルドである「World Saver Team」、通称「WST」が存在しており、方や前述のスマブラファイター、方や魔導師、方や冒険者、方や著名な芸能人…などとさまざまな特技や強みを持つ人材が多く集っている。彼らは人探しや猫探しといった普通の探偵が行いそうなものから大型イベントの司会進行や裏方、クロスオーバーワールドで暴動の鎮圧や挙げ句の果てには全く異なる次元・世界との接続・交流まで、ありとあらゆるさまざまな依頼を受けている。種族や出自の異なる者が多く集いトラブルが起こりやすくみえるこのクロスオーバーワールドの平和が保たれているのは、WSTとそれに属する正ギルドメンバーたち、そしてギルドメンバーのバックアップとして協力する者たちのお陰だといっても過言ではない。そして、今そんなWSTのギルドに向かっているのは……。





美園「ああ、こんなに長引いちゃって…!これじゃあ楽器合わせの練習時間がどれだけ取れるか……もうっ!」



 彼女の名前は伊吹美園。自身を普通を称する美園に大きな特徴はない。強いていうなら藍色のロングヘアをシニヨンに結っているのと、アップルパイと紅茶と良質な音楽を好む程度だ。かつて幼馴染たちを追って学校の踊り場の鏡からクロスオーバーワールドに迷い込み、そのままWSTに所属した経歴を持つ少女だ。彼女が通っている高校の委員会の話し合いが遅れたため、駆け足でギルドへ向かっている…。そしてギルドメンバー専用入り口から秘密のパスワードを入力し、ようやくギルドに到着した!





美園「ごめんなさい、遅れたわ!」










カミュ「ぐあっ!?……コリエンテ、貴様あああああー!!!!!
コリエンテ「はーっはっは!スターの横取り成功!これで1位はあたしがもらったよ!そう簡単にあたし以外を優勝はさせないからね!ざまーみろ!!」
真斗「ぐぬぬ、今回のスターもコリエンテが…。なかなか上位には上がれないな…」
美園「……一体何をやってるのよ、あなたたち」
タロー「あっ、美園ちゃーん!!」










 そんなクロスオーバーギルドの交流場所である大型リビングルームとソファーは、現在4人の人物が陣取っていた。
 画面内で起こった出来事に思わず声をあげて横にいる少女を睨みつける長身の金髪白人の男、そんな金髪の男をアカンベェポーズで挑発する水色のショートヘアが軽やかに靡く小柄なウサギ耳の少女、ソファーではなく礼儀正しく座布団に正座しつつも現在の状況が苦しく唇を噛み締める左目下の泣きぼくろと切り揃えられた青髪が特徴的な青年、美園の姿を捉えて一旦テレビから目を背け、手を挙げて美園を出迎える人懐っこい印象を与える日焼けした少年。美園も含めて、彼らが今回の話の中心となる。





タロー「こないだ買ったマリパだよ!マリオパーティ、ジャンボリー!イェーイ!!」
真斗「俺がマリオパーティをやるのは初めてだと連に打ち明けたところ、お前を待っている間に4人でやろうということになったのだ。だがトップを爆走するコリエンテの牙城が中々崩せなくてな……」
コリエンテ「ふふん、さっきまで希望に満ちてた伯爵さん?残念だったね!この世は弱肉強食!みんな自分が1番活躍する瞬間を狙って動いているのだ!イヤッハー!!」
カミュ「貴様ァ…!この屈辱は必ずや利子を付けて突き付けてやるぞ!例えゲームであろうがこの俺の敗北は有り得ん!!誇り高きシルクパレス伯爵の攻撃を受け、最終的に最下位に転落したのち絶望に沈むがいい!!」



 金髪の青年はカミュ。北国の小国から来日して来た異邦人。身内のマリオパーティの展開に怒る現在はともかく、普段の気品ある振る舞いから4人組アイドルグループユニット「QUARTET NIGHT」のメンバーとして実力を示し、人気を博している。なおアイドルとしてはキャラ変しており、そのことで当時は賛否両論あったようだが現在ではかつて以上の支持を得ている。
 ウサギ耳の少女はコリエンテ。彼女は普通の人間ではなく、動物の特徴が強く出た「ミューモン」という身体能力と音楽センスに秀でた種族であり、たぐい稀なギターテクニックでインディーズバンド「雫シークレットマインド」の名物ギタリストの座についている。「美味しすぎる水」というミネラルウォーターの販売バイトもしておりそちらも好評。
 青髪の青年は聖川真斗。人気7人組アイドルユニット「ST☆RISH」のメンバーの1人。クラシック音楽の演奏で鍛えたピアノの腕前は勿論だが、本人の特技である裁縫や刺繍、料理の教養を活かした個人番組や書籍も注目されている。
 そして日焼けした少年は連太郎ことタロー。あまりにも個性豊かなポップン学園高等部組の中心人物の1人であり、幼馴染や友人たちと共に「ギラギラメガネ団」というユニットに属している。彼はそこでドラムを始めてあまり時間が経っていないのだが、天性の音楽感性とサーフィンで培ったリズム感で既にドラマーとしての才覚を見せている。ちなみに高校2年生である。



 だが、彼らにはこのクロスオーバーワールドにて別の顔がある。ひとつは冒頭で紹介されたクロスオーバーギルドの正規メンバーだということ。そしてもうひとつが…。





美園「マリオパーティもいいけど…。4人とも、『パシフィカ』の練習はどうするのよ」





 そう、彼らはクロスオーバーワールドでオリジナルのバンドユニットを組んでいるのだ!その名も「パシフィカ」!ギター2人、ドラム1人、ベース1人、キーボード1人という構成であり、美園は得意楽器ではないギターを、カミュも同じく得意楽器ではないベースを手に取っての異色の構成になっている。『パシフィカ』の活動中はそれぞれ本名ではなくCORIE、SONO、CHRIS、TARO、MASAのステージネームで活動している。ちなみにステージネームを用いている理由はノリと、あくまで本業と分けるためである。
 「パシフィカ」は不定期活動ゆえいつ現れるか分からない神出鬼没な登場に加え、確かな演奏テクニックとパッション、個性を持つ。そのためアマチュアバンドながら彼らのエネルギッシュな演奏とパフォーマンスはクロスオーバーワールド内で密かに人気を博しているのだ。



コリエンテ「えー?そりゃ確かに練習は大事だけどさー。…マリパ、キリのいいところまで終わらせちゃっていい?」
真斗「ちょうど誰かがスターを3個獲得で終了のルールでやっていたのだ」
タロー「そうだよ美園ちゃん!たまにはパーティゲームでのんびり遊ぼうよ!!」
美園「あんた達ねぇ……;そんなこと言い出したら、今日中に終わらなくなるのは分かっているのよ」
カミュ「元を辿れば貴様が大幅に遅れて到着したのが悪い」



 すっかり超ボリュームかつ良質なゲームである新作マリオパーティの虜になってしまっている4人のメンバーたちと、それを咎める旋律紡ぎし少女。





コメントなどはしばらくお待ちください

それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.568 )
日時: 2025/04/20 21:35
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)

ーーー



と、その時!






BGM:ULTRA POWER 





迅「Dope! Sick! Awesome! crazy!!」
雷那「SUPER HYPER ULTRA POWER!!」
コリエンテ&タロー&真斗&カミュ&美園「アラァーーーーーッ!?」





 はい、唐突にクラブミュージックが流れ出したと思ったら何故か赤髪のやや小柄な少年と、黒と金の入り混じったツインカラー・ツインテールが特徴的な少女が2人揃って歌いながら神輿を模した自動型手押しカートの上に乗り、爆速でリビングルームに乱入して来ました(爆弾投下)。しかも彼らのバックには何故かDJセットがあります。何ででしょうね?唐突に現れた2人組に「パシフィカ」の5人はたまらず奇声をあげて倒れてしまった。おい、全員倒れ方がどこかの赤いピエロみたいだったぞ?





真斗「何奴!?……ってお前たち、緋桐と夕立ではないか!?」
迅「はい、お久しぶりです真斗さん!タローさん!お三方も!!」
美園「……ねえ雷那、迅くん。ソレは一体何なの……?」
雷那「あっ、これですか?今あるイベントで使うために試運転している改造手押しカートです。なるさんがアイディアを出して、舞ヶ原のみんなと共同で製作したやつで……」
タロー「えーっ!?すっごい!アレ、俺たちも使いたいよ!あのカート、単純な移動もだけどちょっと大きくしたら救護活動とかにも使えそう!!」
コリエンテ「ヤバいwwwこれは一本取られちゃったwwwアンタたちだったらあたしのスターをあげてもいいよwwwファーwwwww」
カミュ「……おい、今の俺たちは完全なるオフタイムだ。用がないならとっとと帰れ愚民ども」
雷那「ちょっ、ちょっと待ってください!急な登場は謝りますし、ちゃんと用事はあります!…ありますからカミュさん、そんな目であたしたちを見ないで下さいってば!;」
サーニャ「……ああっ、ここに移動していたのね?あなたたち…。見失っちゃうかと思った……」
真理子「ヒィッwwwヤバいwwwアレwwwお腹痛いwwwはひぃwwwヤバい、お腹つるwwwつっちゃうよ〜wwwww」



 あまりにも強烈な登場の仕方をした顔見知りの別サイドのオリジナルキャラクター2人を追いかけて、何故か北国の元ナイトウィッチとゲーマー少女も登場した。いつもの如く爆笑しているゲーマー少女を片目に、迅と雷那へ呆れを隠せていない視線を向けつつも、ナイトウィッチはきっぱりと伝える。



サーニャ「こんな登場シーン、驚くとかそういう問題じゃないわよ…。それより迅くん、雷那ちゃん。早くみんなに要件を言ったほうがいいと思うわ。大事なお話なんでしょ?」
真斗「む?……おい2人とも。要件、とは?」
迅「そうですね。おふざけはここまでにして…。皆さん、今回の私たちは正式な依頼で此方に来ました。これは、私たちのこれからの行く道を左右する大切な話なんです……」
迅&雷那「どうか、皆さんも舞ヶ原高校の『新設野外フェス』を盛り上げてくれませんか!?」





「迅と雷那の依頼:舞ヶ原の野外フェスを盛り上げて下さい!」
 夢見草サイドの皆さん、お久しぶりです。実はこの度、こちらの通っている学校・舞ヶ原高校で新たに新イベントの「野外フェス」が開催されることになりました。これは以前まで開催されていたあるイベントのリベンジでもあり、舞ヶ原の新たな門出の始まりでもあります。そのためイベントに関連する生徒たちは絶対に成功させたいと意気込んでいます。
 自分たちもこのイベントに参加する予定なのですが、企画を立てている時に「パシフィカ」の皆さんのことを思い出しました。そしてイベントの場数を踏んでいる皆さんなら必ず野外フェスによい結果をもたらしてくれると思い、今回こちらに依頼として応募しました!エキシビジョン担当のパフォーマーとしてイベントに出演していただけないでしょうか?皆さんのスプラッシュ魂でステージを盛り上げて下さい!どうぞよろしくお願いします!!
報酬:依頼金、Am◯zonカード5000円分を依頼参加者の人数分、阪奈の焼いたこんがりお肉をギルドの皆さん分、イロドリミドリのドラマー・明坂芹奈の実家のカレー喫茶のクーポン券をギルドの皆さん分
補足1:野外フェスをより良い形で成功させるには舞ヶ原生徒の協力が必須である。依頼者の迅と雷那は快く協力してくれるが、それ以外の他の生徒及び協力者を見つけられるかはギルドメンバー次第。
補足2:迅は舞ヶ原の正式な学生だが、雷那は舞ヶ原ではなく別の学校の生徒。2人は今回コンビを組んでエキシビジョン枠としてイベントに参加するようだ。
補足3:しかし、雷那の通っている学校では、現在ある問題が……?





それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.569 )
日時: 2025/04/20 21:39
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)

雷那「…あの、本当にありがとうございます。さっき勝手に騒いだのに依頼の話を聞いて頂けて、その上夕食まで頂いて……」
美園「問題ないわ。依頼に関しての話し合いは長くなるだろうからね。お家の方か、後は…そうね、保護責任者の方には連絡した?」
迅「問題ありません、とっくのとうに家には今日の夕飯は要らないと伝えているので。それではいただきま……んっ、美味しい!!」
雷那「本当!あたし、和食ってあまり食べないけど、これは食べやすくていいわね…!」
真斗「よかった。有り合わせのものですまないが、お前たちの口に合ったのなら何よりだ」
タロー「真斗の作るご飯はめちゃくちゃ美味しいからね!ホント、サユリちゃんに負けないくらい!!」



 彼らが来訪したのが夕方ということもあり、依頼者の2人に許可をとり今回は食事会の形式をとって話し合いをすることになった。ちなみに彼らに振る舞われた夕食は炊き込みご飯に大根おろしを添えた秋刀魚の塩焼きと豚汁、ほうれん草のお浸しだった。デザートにはフルーツゼリーがある。
カミュ「……おい愚民ども。さっさと話を始めろ。そもそも『野外フェス』とは何か?そこで俺たちの力を使う意味は?加えて、何故リトヴャクと、あの阿呆までいるのか?」
真理子「ドイヒー」
迅「真理子師匠ェ…」



 いつものやり取りをする彼らを横目で見たのち、DJ見習いの少年はギルドメンバーたちに向き直って口火を切る。



迅「改めてお話ししますね。俺の通う学校…『舞ヶ原高校』って言うんですけど、ある音楽大学の付属高校なんです。なので生徒たちの進路希望も音楽関係が多くて、実際に既に海外へ留学してその実力を世界に示している人もいます。」
真斗「ふむ…。俺の母校の早乙女学園と少し似ているな。あそこは芸能科と音楽科のみの学園だったから。卒業生も俺たちのようなアイドルに限らず、音楽関係者が多い。演奏家、作曲家、クラブ関係者などな」
雷那「そうだったんだ…。確かに真斗さんの母校、舞ヶ原と性質が近いかもしれませんね」
迅「それで、どうしてもできることに限りがある学生での音楽活動だと、個人よりコンビやグループを組んで活動する方がやりやすいじゃないですか。なのでうちの学園内には数多の音楽グループがあるんですが、その中でも特に著名なグループユニットがあります」
コリエンテ「へー。あたし全然知らないや。ねえ、教えてよ?」
 首を傾げる水ウサギのスイマーギタリストの質問に対して頷き、素直に答えた。
迅「まずは7…いや、今は6人組か。明るくエネルギッシュで挑戦的な気風で生徒たちから大きな支持を得ている新感覚6人組ガールズバンドの『イロドリミドリ』。次に結成して1年ながら確かな人気と実力を持つ正統派4人組ガールズバンドの『Hanamina』。そして生徒会に所属する女子生徒3人が運営する『舞ヶ原シンセ研究会』。ここは『S.S.L.』や『SSL研』などという呼称でも知られており、ストリーミングでいくつかオリジナルの楽曲も出していますね。…まあ、この3グループな訳です。彼女らは今回のイベントの中心的存在として、野外フェスを絶対に成功させようと意気込んでいるんですが、それにはかつて学園で起きたある出来事が関係しています」
サーニャ「あら、どれもガールズユニットなのね」
雷那「ああ、舞ヶ原は元女子校だったんですって。それで女子比率が高いんです」
真理子「ん?ある出来事?…迅くん、それって何?」



 それは依頼者の話を何気なく聞いたゲーマー少女がふと発した一言だったが、迅は強く反応し、少し顔を曇らせた。



迅「……真理子師匠、コリエンテさん、それに皆さん。『学内の生徒主催の音楽イベント』ってどう思いますか?」
コリエンテ「え?…それ、めちゃくちゃ面白そうだし楽しそうじゃん!ね、みんな!」
タロー「うんうん!俺たちのポップン学園にも似たようなイベントがあるよ!特に文化祭だと俺やナカジやサユリちゃんたちの『ギラギラメガネ団』ももちろんだけど、Dとかハヤトとか、他にもたくさんの自分の音楽を披露したい生徒が音楽室や体育館、地下室で演奏するんだよ!!」
雷那「ああ、ポップン学園は危険なことや迷惑なこと以外は何でもアリらしいですからね…。校風もとても自由らしいし、そちらの文化祭はとても盛り上がるんでしょうね」
美園「まあ楽しそうだとは思うけど…。生徒といっても全員未成年でしょう?私も人のことは言えないけど、トラブルや揉め事が起こった際のことは気になるわね。ポップン学園はDTO先生とか、教師にしっかりしている方が多いから大きな問題はないのでしょうけど。教師の方は少しでもイベントに関与されていたの?」
カミュ「伊吹と同意見だ。さらに、内輪の出来事は規律や自制心が乱れがちになる。既に早乙女学園を卒業しプロとしての意識を持つようになった一十木や来栖たちでさえ、ST☆RISHのみで集まった時は気が緩みがちになるからな。…おい貴様もだぞ、聖川」
真斗「はは…。カミュ先輩はやはり手厳しいですね」
迅「……やはり俺たちの見込んだ通りだ。皆さん、鋭いですね」



 静かに咎めたカミュと、心当たりがあるのか苦笑した真斗を興味深く見たのち、DJ見習いの少年は続けた。



迅「……実は、3年前まで舞ヶ原にはあるイベントがあったんです。それが『体育館ジャック』。軽音部がそのイベントの日だけ体育館を占拠する生徒主導の伝統的なイベントでした。うちは音楽学校なんで、当時の生徒たちは全員イベントをとても楽しみにしていたそうです。生徒のみならず一般の人たちへの公開もされていましたし、実際に俺もこの体育館ジャックの噂を聞いて、舞ヶ原進学に興味を持った部分があるので」
真理子「体育館を丸ごと占拠するんだ!めちゃくちゃ面白そうじゃん!それに舞ヶ原の目的や気質なら生徒みんなが楽しめそうだよね……え?3年前まで?今はやってないの?」
迅「……今は、完全廃止されました。3年前に起きたある大きな騒動が原因で」





夢見草サイド全員「!?」





 かつて舞ヶ原に存在した体育館ジャックとその廃止のきっかけとなった出来事。それはあまりにも衝撃的なものだった。



迅「…俺が入学前のことなので非常に詳しい、という訳ではないのですが。それは3年前の体育館ジャックで起こりました。あまりにも盛り上がりが過ぎた素行の悪い生徒たちの間で乱闘騒ぎが発生してしまったんです。」
サーニャ「ら、乱闘!?…一応確認するけど、スマブラ屋敷で行われているような公式試合じゃなくて、本物の喧嘩よね!?」
迅「はい。しかもタチが悪いことに、当時の軽音部員には気性が激しい者やあまり素行がよろしくない者もいたようで、その乱闘は一般の方も巻き込みかねない大規模なものになってしまったそうです。不幸中の幸いとして一般客が完全に巻き込まれてケガをすることはなかったようですが、当時の生徒の中には数人ケガ人が出ました。さらに備品や楽器の一部に関しては完全に壊れてしまって…」
カミュ「……おい。そのような事態に発展して、誰も止めなかったのか?流石に乱闘騒ぎを起こした馬鹿だけではなかろう。進行担当の輩もいたのだろう?」
迅「もちろん司会進行を担っていたり、役職についていた当時の真面目な軽音部員たちが乱闘の鎮静化を図ったようでした。ですが、もはや彼らが気付いた時には部員だけで止められるほどの騒ぎではなくなっていたと。…結局、その年のライブは中断、そして中止。この騒動がきっかけで軽音部の全ての部員が非難の対象となり、その責任を取る形として体育館ジャックは完全廃止となりました」
タロー「そんな…。でも、ケガした人や備品がたくさん壊れちゃったなら、イベントがなくなっちゃったのは仕方ないよね…」
コリエンテ「インディーズのバンドをやっているこっちも他人事じゃないよね。あたしなんてダイビングのパフォーマンスでお客さんと触れ合ったりするし!あたしたちもトラブルには気を付けないとなぁ……」
迅「それだけならまだ良い…いや良くはないか。マシ、だったのかもしれません。」
美園「え?どうして……?」
迅「体育館ジャックの廃止を提案したのは当時1年生だったある元軽音部員でした。『またこのような出来事が起こったら困る、それにもしこれ以上酷い騒動になったら自分たちも責任が取れなくなってしまう』…と。彼女の言うことはもっともです。しかしこれに猛反対したのが当時の3年部員全員でした。『お前は長年舞ヶ原で行われ、守られてきた伝統的な行事を潰す気なのか!?』と…。2年部員は元軽音部員寄りの意見の生徒も3年部員寄りの意見の生徒もいるため、部内で体育館ジャックを巡る意見が完全衝突したのち、決裂。結局体育館ジャックは廃止ということになり、同時に当時の軽音部は空中分解して廃部……。今の舞高には音大付属高校にも関わらず、ガラガラの寂れた軽音同好会があるのみです」
真斗「そうだったのか…。俺の出身地は古都である京都なものでな。実家の関係で古くからの決まり事に接する機会は多い故、つい色々と考えてしまった。唐突に遮ってしまいすまない」
雷那「あー、そうだったんですね。いえいえ、気にしなくていいですよ」
迅「続けますね。……何より、1番胸糞悪いことになってしまったのは体育館ジャックの廃止を訴えた元軽音部員です。彼女は舞ヶ原の音楽イベントに憧れて入学してきたのに、自分たちの代ではこのようなことになってしまった。絶望と無気力感に苛まれた彼女は学園から姿を消しました。舞ヶ原の退学も考えたようです。…幸い、周囲の人に恵まれて現在は復学していますが」
美園「うわぁ…。勇気を出して声を上げた人が、1番苦しむことになるなんて……」



 かつて舞ヶ原学園で行われていた音楽の祭典は暴動と絶望に塗り潰された。特に「今後も同じことを起こさないように」と、体育館ジャックの廃止を訴えたある元軽音部員の生徒は一般生徒の批判と「伝統を勝手に壊すな」という当時所属していた先輩軽音部員たちの怒りの板挟みに遭い、一時期は学校から完全に姿を消してしまったという。



真理子「あれ?でも復学したってことは、今はその人も舞ヶ原にいるんだよね?」
迅「そうですね。…ここで先ほどカミュさんが質問された『なぜ野外フェスなのか?』ということに繋がります。1番はその元軽音部員のためです。体育館ジャックのままだと、彼女のトラウマが再燃してしまいますからね。芹那先輩たち…今回のイベントの中心人物たちはこの野外フェスイベントを自分たちの証として舞ヶ原に遺したいようですし、それにやるからには関係者皆が一丸となってイベントに臨みたいですから」
カミュ「ん?…おい愚民、まさか……」
迅「お察しの通り、現在彼女は舞ヶ原3大音楽ユニットグループのひとつ、『HaNaMiNa』に在籍しています。そのツインギターの片割れ、『萩原七々瀬』。彼女がかつての騒動に巻き込まれた1番の被害者です」
夢見草サイド全員「!」
迅「本来なら、七々瀬さんはこのイベントには参加しない予定でした。ですが、彼女とグループを組んでいる皆さんを中心とした上級生の先輩方が説得してくださって…。だから、七々瀬さんのためにも、新しい生徒主催の音楽イベントは、七々瀬さんのトラウマを再燃させないために体育館では行わない『野外フェス』という形にした訳です。ご納得いただけましたか?」





ーーー

それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.570 )
日時: 2025/04/20 22:04
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)

ーーー



カミュ「野外フェスという形を取る目的は理解した。かつての音楽イベントとは違う形で、生徒主導の音楽イベントを復活させる。その際に参加者全員が遺憾無く、満足のいくようにする。それが今の貴様らの目的だと。……だが、なぜそこで俺たちの力を欲する必要がある?野外フェスを盛り上げるにしろ、その3大グループとやらのみで良いのではないか?特にシンセサイザーの研究会はオリジナルの楽曲を出すほどなのだろう?」
迅「はい。まあこれは俺たちの個人的な理由なんですけど…。『C-Ref』……まあ、俺たちの世界のクロスオーバー空間ですね。そこに通じるための場所を、よりによって軽音同好会の隣に設定してしまったんです。しかも俺は『イロドリミドリ』の一部のメンバーと同学年でそれなりに親しくしていて。だから巻き込まれたんですよね。『お前もイベントに参加しろ』って」
美園「あらら。…でもそれは運営の生徒さんたちが迅くんのDJテクニックや実力を見込んでのことじゃないかしら?音楽イベントの再興が懸かった非常に大切な機会ですもの。それに実力がないならそもそも登板させようとはさせないんじゃない?」
迅「そう言って貰えるのは嬉しいですけど…。正直にいうと、かなり荷が重いんですよ。だって俺たち、イロドリミドリやHaNaMiNaやSSL研と違ってイベントに出たことは1度もないんです。それに学園が誇る実力派3大グループと、実質的に完全無名な自分たちが同じステージに上がるんですよ?完全な前座扱いにしてもやり切れるかどうか……」
タロー「その気持ちは分かるかも。俺も1人だけで『ナカジやサユリちゃんやエッダやマサムネたちと張り合え!』って言われたら、無理だと思う〜……;」





迅「……という訳で私は思い付きました!夢見草さんの世界の皆さんはみんなイベント好きでエネルギッシュだから飛びつく!特に『パシフィカ』の皆さんなら絶対に協力してくれる!それに義理堅いので巻き込んだら最終的には何とかしてくれると☆」
真斗&カミュ&美園「オ イ」
コリエンテ「ちょっwwwあたしたち、モノホンの部外者なのに責任重大なんだけどwww」
タロー「マジ!?それで俺たちを選んでくれたのは嬉しいよ!…あれ?でも何で俺たち5人なの?ギラギラだけじゃなくて、スタリやカルナイや雫を呼ぶっていうパターンもあるでしょ?」



 他のメンバーたちがツッコミを入れたり笑う中、サーファードラマーのさりげない発言に、DJ見習いの少年は頷く。



迅「ええ、もちろん最初はその案もありましたよ。美園さん以外の皆さんを元のグループで呼ぶという案が。…ですが、雷那や他の皆さんと話し合った結果として、これは少し違うと思ったんです。な、雷那」
雷那「うん。本来は学園だけじゃない、世間的にも有名なグループとのコラボレーションは非常に光栄なことなんだと思う。これをメインに宣伝したら、舞ヶ原にはきっと多くの人が来てくれると思う。だけど……。これもオフレコで言うけど、元のグループで呼んでしまったらあなたたちの話題性に全てが塗り潰されると思ったのよ。イベントまでのあたしたちの奔走も、3年の皆さんの思いや気遣いも、かつての七々瀬さんの苦しみや葛藤も全て…。仮に今回の野外フェスが成功したら記念すべき第1回になる。でも、それがスタリやカルナイや雫やギラギラの知名度のお陰で成功したとは思われたくない……」
カミュ「……随分と傲慢、かつ横柄だな。貴様ら」
雷那「すみません、でもこれだけは譲りたくなかったんです。だから、エキシビジョンで出演して貰うにしても…。言い方が悪くなってしまうけど、そちらには知名度がイベント全体を塗り潰さない程度には目立ちすぎないようにして貰う必要がありました。その条件が合致して、そしてその中でも1番素晴らしいパフォーマンスをしてくれると確信したのが、あなたたち『パシフィカ』の5人としての出演だったんです」
真斗「俺たちがバンドグループとしてはアマチュアという扱い、だからか?」
雷那「それもあるけど……。ね、迅?」
迅「……今まで色々と発言しましたが。皆さんに、うちのイベントに出演して頂こうと思っていたのは本心です。あなたたち5人の演奏とコンビネーションは素晴らしかった。管理人から紹介されたのもありますが…。俺と雷那は観ましたよ、『ヴェニシリンでのパシフィカ・初パフォーマンス』の映像。それといくつかのゲリラライブのものも」
コリエンテ&タロー&真斗&カミュ&美園「……!」
サーニャ「あっ、迅くんたちもみんなのバンドパフォーマンスを観たのね?」
雷那「はい。それにこの情報大社会、ちょっとインターネットで調べれば当時の動画が確認できたわ。映像にはなぜかモザイクが掛かっていたけど、それでもあなたたちの織りなす音色を確認するには十分なほどだった」
迅「……それに、アレを観て心を動かされない音楽関係者は絶対にいませんよ。あなたたちの演奏は、未来の俺の目指すものに、少し近いものがあった。そりゃ、俺の専攻はDJミュージックなのでジャンルや方向性は少し異なりますが…。それでも、確かな喜びと羨望がありました。ステージに立ついちパフォーマーとして、もしあなたたちのように観客を沸かせられればどれだけ良いか。だから、俺たちは元のユニットではなくて、『あなた達5人』に頼もうと思ったんです!……それで。『私たち』の今回の依頼、引き受けてくれますよね?」



 救援の時と同様に飄々と、かつ慇懃無礼な態度のDJ見習いの少年だが、「パシフィカ」のパフォーマンスを真剣に賞賛する様子に嘘偽りは見られなかった。それは彼の発言に頷きながら隣に座っているツインカラー・ツインテールの少女も同じだ。それを受けて、「パシフィカ」の5人は……。



真斗「……承知した。お前達の依頼、この聖川真斗…いや。MASAを含む5人が引き受けよう」
雷那「本当ですか!?」
真斗「1チームの副リーダーである俺の言葉に偽りはないぞ。…構わないな?」
タロー「もっちろん!俺は出動準備、バッチリだよ!!」
コリエンテ「あたしも、あたしも!そっちのウラのジジョーとか関係なく、あたしは最初っから出る気満々だったよ!!」
美園「はあ、そこまで言われちゃったら…。力を、貸したくなっちゃうじゃない」



真斗「……カミュ先輩。いえ、CHRISも、問題ありませんよね?」
カミュ「…………はあ。仕方あるまい。おい愚民ども2名。貴様らは今回の俺たちの活動に全面協力することを誓え。シルクパレスにおいて契約・盟約は絶対だ。…もし破ったら、迷わず貴様らを永久凍土の地へ送ってやるぞ?アーティスト活動をしている俺と聖川、コリエンテの希少な時間を貴様らのために費やしていることを忘れるなよ」
迅「ええ、ええ…!本当にありがとうございます!このご恩は忘れません!!」
美園「そうと決まれば、野外フェスの日程を教えてくれない?練習期間が必要だし、私たちも選択曲や構成を決めないといけないから」
コリエンテ「あとさ、肝心の会場はどうするの?野外っていうなら外だよね?あたしは水ウサギ族だから大丈夫だけど、雨が降っても平気なの?」
迅「今から…ちょうどひと月後ですね。開催場所ですが、我が校のグラウンドの予定です。生徒全員はもちろん、外部の観客の皆さんを入場させても問題ない程度には広いです!あと改築で屋根があるので多少の雨風なら凌げます!」



 交渉が成立した。彼ら5人はかつて悲劇に塗り潰された学園の音楽の祭典の新たな形での誕生のため、動くことになった。



それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.571 )
日時: 2025/04/20 21:49
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)

ーーー



そして、もうひとつ。



真斗「…そうだ、もうひとつ疑問点があったな。野外フェスの件で俺たちに目を付けたことは理解している。…だが、なぜ田名部とリトヴャクまでこの場にいるのか?ゲーム関連で、何か……?」
迅「ああ、それは俺が頼んでお2人にも同席してもらったんです。…雷那、言ってもいいのか?」
雷那「……うん。皆さんならいい方向に向かわせてくれるって信じてるから。それに、もう真理子さんには少しだけお話ししてるんでしょ?」
真理子「……んじゃ、ここはちょっくらあたしが導入の説明するね?」



 フルーツゼリーの盛り付けられていた容器を机に置き、うんと伸びをしたゲーマー少女が口を開く。



真理子「迅とは料理対決がきっかけで連絡先を交換しててさ。そこで、迅から雷那の学校で起こっちゃった大問題についてちょっとだけ相談を受けてたんだ」
美園「雷那の学校?……ねえ真理子、どういうことよ?」
真理子「雷那の通う学校は舞ヶ原じゃなくて、奏坂学園付属中等部、及び高等部。ここは女子校で、音楽ゲーム・リズムゲームとシューティングゲームを融合した新感覚パフォーマンス競技である『オンゲキ』の先進校として知られている。あたしもたまに動画で見るんだ。ほら、『ASTERISM』とか『R.B.P』とか…。サーニャちゃんなら聞いたことあるでしょ?」
サーニャ「!!…ええ!この間『マリーニャ』のゲームコラボ活動の件でご一緒させて頂いた企業の係長さんが、『ASTERISM』の大ファンなんですって!彼女たちはオンゲキのプレーヤーのアイドル的存在…『プリメラ』に最も近い存在だと言われているわ!」
カミュ「ほう。……おい愚民の女、この情報は正確なものか?」
雷那「はい…。『ASTERISM』や『R.B.P』は数あるオンゲキユニットの中でも特に高い実力を持つユニットです。『R.B.P』のメンバー…奏坂の生徒会の皆さんとは日ごろから親しく付き合いをさせてもらっていますし。それにあたしも以前『ASTERISM』の3人と公式試合をしたことがあるんですけど、彼女たちの実は確かなもので、完全敗北しました。…でも、今はオンゲキどころか、奏坂で普通の学校生活を送ることすら大変な状況になってしまったんです……」
タロー「えっ!?何で!?」



 奏坂学園が力を入れている『オンゲキ』。音楽ゲームとシューティングが好きな雷那もかつてはオンゲキに打ち込み、ひとりでの挑戦ながらそれなりに楽しんでいた。だがタローの一言にツインカラー・ツインテールの少女は肩を震わせ、溢した。



雷那「…あの人のせいだ…。あの人は有栖さん、いや、有栖さんだけじゃない!茜先輩も楓先輩も、それどころか、今の奏坂の全てを否定しにやって来た……!!」
コリエンテ「あの人!?え、雷那、それって、一体誰!?」
雷那「はっ、すみません。…………『皇城(すめらぎ)セツナ』。『R.B.P』及び奏坂生徒会所属メンバーの1人、『珠洲島有栖』(すすじま・ありす)さんの実姉です。」
真斗「ええと…。すまない夕立、俺たちはお前たちやお前たちの学園事情については全く詳しくない。なぜその者が奏坂学園の全てを否定することになるのか、俺たちに教えてくれまいか?」
雷那「あっ、そうですね。ごめんなさい、つい……」



 コリエンテと真斗の言葉を聞いた彼女は一旦お冷に手を伸ばす。そしてひと息吐き、話し始めた。



雷那「皇城セツナは急に奏坂学園に来たと思ったら、勝手に『堕落した学園を建て直す。そのために自分が次の学園の理事長になる』って言い出したんです。しかもアイツの提案してきた方針といったら、SNSの全面禁止だとか、朝5時起床とかの厳しすぎるスケジュールとか、そんなものばかり。オンゲキを始めとした部活関係や課外活動も廃止。緩くて自由な校風がウリだった今までの奏坂とは正反対。完全に生徒の自由や主体性を奪いにきました」
美園「うわぁ、それは随分と横暴ね…。今の時代にSNSの全面禁止はないわ……」
サーニャ「……でも何でその人はそれほど堂々としていることが出来るの?だって、彼女はあくまで有栖さんのお姉さんってだけでしょう?」
雷那「……実は、有栖さんは代々奏坂の理事を務めてきた一族の出身なんです。生徒たちからの人望も厚くて、次の理事長になるのは有栖さんだろうって、奏坂の生徒たちはみんな思っていました」
真斗「なるほど。そうだったのか。だから珠洲島有栖は生徒会に属しているのだな?」
雷那「はい。……皇城セツナは海外で帝王学を学んできたようなんです。ただでさえ元から優秀、文武両道の才媛として著名だった皇城セツナは海外留学を得てさらにパワーアップしたようで…。彼女の傲慢だけど完全無欠、威風堂々とした物言いには誰も反論できませんでした。実妹の有栖さんでさえも。……その上で、あの人は有栖さんを『まともな意見もできない馬鹿な妹』だと罵って来たの。
コリエンテ「えー…。そりゃないわー……」
雷那「もちろんそんな訳はないし、有栖さんが何もしてこなかったら誰も彼女を支持していない。奏坂の生徒の代表として、そこはあたしが保証するわ」
真斗「……」
タロー「そ、それで、その後はどうなったの?」
雷那「茜先輩と楓先輩…。奏坂の生徒会長と副会長が生徒会の権限を利用した『総選挙』を開催しました。そして次期理事長権を巡って奏坂学園生徒一同は皇城セツナと完全衝突しました」
美園「…ん?あれ?生徒会と皇城セツナが衝突している?それだけで『普通の学園生活が送れなくなる』なんてことはないわよね?その過程で、暴動でも起きてしまったの?さっき迅くんが話した、体育館ジャックの時のような……」
雷那「…………」





雷那「生徒会メンバーのグループである『R.B.P』の3人が、総選挙中のオンゲキバトルで皇城セツナ1人に敗北したからです。そのせいで、今奏坂学園の生徒側は大混乱していて全く統率が取れていない状態なんです……」
夢見草サイド全員「!?」





ーーー

それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.572 )
日時: 2025/04/20 21:53
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)

ーーー





サーニャ「え、嘘でしょ…?ひ、1人で……!?」
カミュ「ん?おいリトヴャク、なぜそこまで驚く必要があるんだ。現にそこの愚民は以前に1人で模範演舞を……」
サーニャ「それは例外中の例外!……オンゲキって普通は3人チームで行うものなんです!しかもローカルルールじゃなくて、公式試合で!?それだとよほど実力差があるとしか思えない……!あり得ないわ!」
雷那「本当、サーニャさんの言う通りですよ…。あり得ない、としか言いようがなかった。あたし、あの時の試合は茜先輩たち生徒会メンバーの応援のために行ったんです。……でも、皇城セツナの負の感情を利用した猛攻の前に、3人とも、ただ倒れていくしか…。みんな、なすすべがなかった……」



 オンゲキを少し知っていたナイトウィッチの補足に重ねるように、ツインカラー・ツインテールの少女は方を震わせた。



雷那「あたし、元々音ゲーとサバゲーが好きで、オンゲキの存在を知った時からオンゲキの才能はあると思っていたんです。周囲の人たちはオンゲキに興味のない人が多かったから、ソロでそれなりにエンジョイしていた。だけど、1人で出来ることには限りがあった。前述した『ASTERIUM』との勝負に負けた1番の原因も、結局は人数による弾幕の物量差です。でもこれがあたしの限界なんだって。あれだけ実力もあってコンビネーションが優れている『ASTERIUM』に1人でそれなりにやれたのなら『まあいい方なんだろうな』って、そう思うことにしました」
サーニャ「……」
真理子「……それで?今、あんたはどう思ってるの?」
雷那「とても悔しいし、悲しいです!1人でも、いや、『1人だからそこそこやれればいいや』っていうあたしの考えごと、皇城セツナは粉砕していきました!あたしの尊敬する茜先輩、楓先輩、有栖さん…!そしてそれ以外のたくさんのオンゲキプレーヤーたちを、アイツはたった1人で屠っていきました…!皇城セツナによって、これはただあたしが弱かったってことだったんだって思い知らされたんです!こんなのあたしが甘かっただけなのに…!!」
コリエンテ「雷那…」
雷那「……ここだから言いますけど。あたし、皇城セツナを倒して奏坂の未来をより良い方向に変えたいとか、そういうおおそれたことは思っていません。別に『ASTERIUM』の3人のようなプリメラになりたいとも、オンゲキの将来に携わりたいとも思っていません。それどころかもうすぐオンゲキは辞めようと思っているんです。これからは迅とのコンビの音楽活動に専念しようかと思っていて…」
真斗「…ああ、以前に言っていたな」
雷那「…でも、オンゲキを通して得たものは多くあります。有栖さんたち『R.B.P』と出会えたのもそうです。『ASTERIUM』との敗北も、自分の甘さを痛感したという意味では大事な経験になりました。他にも色々な人たちとの出会いがありました。……だからこそ、最後は自分でオンゲキへのケジメが付けたいんです。だから、だから…!皇城セツナには負けたくない!何より奏坂が今のままなのは嫌だ!!以前までの、あたしを含む奏坂の生徒が元気に過ごせる学園生活を取り戻したい!!」
迅「……俺からも、お願いできますか?依頼の追加なのでかなり無礼なことになるのは分かっていますし。野外フェスはともかく、俺は奏坂の件については完全に部外者ですし、雷那と比べたら奏坂の人たちとの付き合いは非常に短くて少ないです。それでも仲良くなった人たちもいますし、奏坂学園が今の状態のままなのは見かねるものがあるので。……真理子師匠とサーニャさんはゲームに詳しくて、ギルドの所属歴も長くて実力がありますよね?俺と雷那、あなたたちお2人なら、少しでも奏坂をよい方向に導いてくれるのでは…という淡い期待があるんです」
雷那「お願いします!奏坂の生徒に勇気を与えてください!どうか、あたしたちに力を貸してください…!」



 普段の物静かで気怠げな雰囲気とは異なり、勢いよく頭を下げる雷那。迅も彼女に合わせて横で頭を下げる。まさかの依頼内容の追加だが…。



真理子「……サーニャちゃん。どうする?」
サーニャ「…私、いくらゲームが好きでFSP系が得意だからといって、オンゲキバトルは観る専だから経験は全くないの。もちろん、他のこちらのギルドメンバーも誰もオンゲキはやったことがないし、オンゲキの件に対応できる人材は完全にいないわ」
雷那「そんな……」
サーニャ「……『オンゲキの件』だけだったらね!」
迅「え?…あのサーニャさん、それはどういう……」
サーニャ「今の話をまとめると、『オンゲキ素人の私たちが皇城セツナに勝つ必要はない』のよね?奏坂学園の生徒たちの士気を上げることができればいいのよね?……それなら、舞ヶ原のイベントを活用することができる。私たちにも出来ることがあると判断したわ!」
真理子「依頼中に別の依頼の追加とか、アンタたちめちゃくちゃ人使いが荒いよね〜?……この件はめっちゃ高く付くよ?それでもいいの?」
迅&雷那「!…はい、お願いします!!」
真理子「その言葉、聞いちゃったからね!!後悔は一切受け付けません!……いい、サーニャちゃん!?」
サーニャ「ええ!大丈夫よ、真理子ちゃん!依頼は絶対に成功させましょう!!」
真理子「オッケーオッケー!んじゃ、いきますか!」





真理子「HALサイドのみんなー!こーんにっちはーっ!まりまりまりーここと、ゲーム大好きみんな大好きな真理子ちゃんでーす!!」
サーニャ「あなたはカイ?私はゲルダ?どんな出会いもプリヴェット!オラーシャ育ちのサーニャです!」
真理子&サーニャ「真理子とサーニャ、2人合わせてマリーニャ!みんなまとめて、私たちの虜にしちゃうぞ♪……いっきまーす!!」
迅&雷那「イエェェェェーイッ!!待ってました、マリーニャあああああー!!!!!」
コリエンテ「久々の『マリーニャ』の出動じゃあああああー!!!!!野郎ども、2人に道を開けろおおおおおー!!!!!」
タロー「『マリーニャ』のお通りだー!!ドンドンパフパフ、ドンドンパフパフー!!」
美園「もう、真理子ったら。やる気があるのはいいけど、毎度毎度、あのテンションの高さは何なのよ。サーニャちゃんまでつられているし…」
真斗「…だが、この2人が付いているなら奏坂は必ずよい方向に進むだろう。あいつら2人は確かな実力を持つ!」
カミュ「リトヴャクはともかく、なぜあの阿呆は普段から真面目に物事に取り組まないのやら。……おい、当初の予定より達成目標が増えた。必要事項の確認をするぞ」





ーーー

それは愛と純情のセンチエレトリックってことだろSAGA ( No.573 )
日時: 2025/04/20 22:01
名前: 夢見草(元ユリカ) (ID: JC82K/KY)

ーーー



ともかく、HALサイドからの依頼内容が想定していたものより増えてしまったので、改めて情報を整理することに。



「今回の依頼の達成目標」
・舞ヶ原で新たに開催されることになった「野外フェス」のパフォーマンスを成功させる(「パシフィカ」の5人が担当)
・奏坂学園で行われる理事権を巡る総選挙にて在校生徒の士気を上げ、皇城セツナ以外のものが勝利できるような基盤を整える(「マリーニャ」の2人が担当)



「重要な用語」
・野外フェス:舞ヶ原で1ヶ月後に行われる予定の生徒主催の音楽イベント。下の体育館ジャック騒動の汚名払拭、そして生徒たちの更なる躍進のために計画された。
・体育館ジャック:3年前まで行われていた生徒主催の音楽イベント。ガラの悪い生徒によって暴動が発生し、廃止となった。この出来事は結果として舞ヶ原に関わる多くの人々に暗い影を落としてしまった。
・「イロドリミドリ」:舞ヶ原3大ユニットのひとつ。6人組の新感覚ガールズバンド。
・「HaNaMiNa」:舞ヶ原3大ユニットのひとつ。4人組の正統派ガールズバンド。
・「S.S.L.」:舞ヶ原3大ユニットのひとつ。シンセサイザーのグループで、舞ヶ原3大グループの中で既にストリーミングの楽曲を出している実力派。
・萩原七々瀬(はぎわら・ななせ):舞ヶ原の3大音楽ユニットグループのひとつ「HaNaMiNa」のツインギターの片割れ。体育館ジャックの際に巻き込まれて傷心。体育館ジャック騒動の1番の被害者。
・オンゲキ:奏坂学園でメインに行われている新感覚競技。基本的には3VS3のチーム戦であり、BGMに合わせてシューティングを撃ち合う。
・プリメラ:オンゲキプレーヤーの中でも優れた者に贈られるアイドル的な称号 。
・珠洲島有栖(すすじま・ありす):奏坂の生徒会メンバーの1人で、オンゲキユニット『R.B.P』のメンバー。雷那の憧れの人物の1人であり、代々奏坂の理事長を輩出して来た一族出身であり、次期理事長候補と言われていた。理事権をめぐって実姉である皇城セツナと対立するが、敗北する。これにより、奏坂の生徒たちは現在大混乱と失望に陥っている。
・皇城(すめらぎ)セツナ:有栖の実姉。完璧超人だが、同時に尊大で傲慢な性格。次期理事長として名乗り出ており、堕落した奏坂学園を支配すると宣言。歯向かった有栖ら「R.B.P」の3人をたった1人で蹴散らし、奏坂学園を混乱に陥れたと言われている。





カミュ「現時点で重要な用語はまとめ終わったな。……野外フェスのパフォーマンスの段取りは問題ないだろう。この俺たちのマジェスティックな演奏で、舞ヶ原高校の生徒一同及び他関係者を平伏させ、俺たちの愚民にする。仕事以外のこのひと月の空き時間は『パシフィカ』の練習に専念するぞ。担当曲が決まればそれを最高峰まで研ぎ澄ませ、仕上げるまでだ」
サーニャ「だけど、万が一野外フェスを気に入らない人たちによる妨害があったら怖いわね…。加害者たちのことも知りたいから、3年前の事件のこともより詳しく調べた方がいいかも。学園側や運営としては外部のお客さんも呼ぶ気だろうけど、入場口でしっかりお客さんのチェックさせて!怪しい人は入場拒否を!特に七々瀬さんのトラウマを掘り起こしそうなガラの悪い人の入場は避けた方がいいわ!」
迅「確かに、イベントへの妨害の件は思い付きませんでした。考えたくはないですが、ないわけではありませんからね…。この件は生徒会長の芒崎(のけざき)先輩に伝えておきます!出演者や裏方の生徒全員に情報共有もしておきますね!」
真理子「うんうん!あたしたちも当日は会場に行くよ!こう見えても護衛や厄介ごとの制圧の経験は多いからね?…あとは真斗くんたちのツテを借りて、数人はプロの警備員さんを会場にスタンバイしておくのもアリかもね?」
真斗「ああ、俺もそう考えていた。月宮さんや日向(ひゅうが)さん、社長に相談してみよう。任せてくれ。……対して、奏坂の依頼の方は、いくばくか抽象的だな。奏坂の生徒たちかわ再び皇城セツナに立ち向かえるよう、士気を上げれば良いのだろう?だがどうすれば…。夕立、オンゲキプレーヤーとしてお前には何か意見はあるか?」
雷那「すみません、説明が…。えっと、うちの学校の総選挙は伝統で、オンゲキバトルでより支持者を得た者が勝者になります。今回の選挙の参加者は皇城セツナのやり方に反感を持つ奏坂の生徒たち、特に今ある実力派オンゲキグループ全てと…皇城セツナです。ただ、現在は最有力筆頭だった『R.B.P』が敗退。他のグループも皇城セツナの連日に及ぶ猛攻に次々屈していて…。参加している実力グループで残っているのは今年のオンゲキシューターフェスの優勝グループ、『ASTERIUM』のみになってしまいました……」
タロー「マジで!?もうそんなに負けちゃったの!?大ピンチじゃん!?」
雷那「…でも、オンゲキバトルの大会には1発逆転のシステムもあるの!それが『エールシステム』!これはオンゲキプレーヤーが受け取ることが出来る声援…『エール』をカウントしたもので、ポイントとして集計されます。いくら強くたって、観客の皆さんに支持されなきゃ意味がないからね?最終的な選挙の投票権は奏坂の者にしかないけど、この『エールシステム』は奏坂以外の人々…。つまり迅や舞ヶ原の人たちや、真理子さんやサーニャさんたち夢見草サイドの皆さん全員も対象になります!」
コリエンテ「マジでマジで!?やったー!ならこれで、あの、雷那が言ってた…生徒会の妹ちゃんにエールをたっくさん送ればバッチリじゃない?」
雷那「…ただ、残念ながら敗退したシューターへのエールは集計対象外になります。なので有栖さんたちには、もう……」
美園「あらら。それが生徒会の皆さんへ適応されれば良かったのに;…でも、希望はまだある…!まずは『ASTERIUM』の子たちよね?」
雷那「はい。……悔しい話ですけど、もう『ASTERIUM』に頼るのみだと思います…!だから、彼女たちが皇城セツナに勝利するのが1番の理想ルートで、正攻法ですね」
真理子「なるほどねー。糸口は細いけど、今はこれしかない……。仕方ないか。クロスオーバーの関係で一応舞ヶ原とは知り合いではあるんでしょ?素直にこっちの事情を説明して『ASTERIUM』の子たちに協力してもらうのが1番いいんだけど……あっ」
迅「?……師匠、どうかしましたか?」
真理子「…………雷那。依頼に必要ってことで、ちょっと無茶、頼んでもいい?」
雷那「ゑ?」



 ただパフォーマンスをして終わり、ではなく、今回はかなり難易度が高い依頼になることが予想される。果たしてメンバーはクリアできるのか?



「予告」
迅「……という訳で、うちの野外フェスに外部からのグループが参加してくれることになったんだ!」
???1「おおーっ!つ・ま・り!ソイツらはあたしらの同志でもあり、ライバルって訳だな!?ようし!どっちが良いパフォーマンスが出来るか、やってやろうじゃねえか!!」
???2「???1ちゃん、落ち着いて。……あの、その人たちは一体誰なの?」
迅「そうだな、お前らも一応関係者だから…。オフレコで頼む。……巷で噂のクロスオーバーバンドユニット、『パシフィカ』だ」
???3「え?……ええっ!?あ、あの『パシフィカ』ですかっ!?本当ですか!?私、彼らの大ファンなんですっ!CORIEさんの鮮やかかつ大胆で繊細なシークレットギターテクニック、TAROさんの天性のリズム感から打ち鳴らされる明るく希望溢れるドラムテクニック、MASAさんの水流のような美しく麗しく、それでいて甘く切ないピアノメロディ、CHRISさんの正確かつ気品溢れる低音パートの演奏と歌声、そして彼ら全員を支えて導くSONOさんの芯の強いリズムギター…!そんな彼らと同じステージに立てるなんて、私、本当に光栄です……っ!!」
???2「いや、『パシフィカ』って誰…?というか、???3ちゃんも落ち着いてよ……」



???4「…あーあ。私たちのコンビも負けちゃったし、このまま奏坂は皇城セツナのものになってしまうのかしら…。私はいくら卒業が近いからといっても、中等部の後輩たちまでずっとこの状態なのはいけないわよね。でも、一体どうしたら…。気分転換に推しの『マリーニャ』の配信でも観ようっと……。あと、特定されない程度にコメントを送ってみようかしら……」



to be continue…






導入だけでここまで長くなってしまった;今回はここまで!感想があれば、どうぞ。