二次創作小説(新・総合)

Re: MMトウスター 〜物語の痕跡〜 ( No.212 )
日時: 2023/05/03 16:51
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

男として生まれたからには、誰もが一生に一度は夢見る『地上最強の男』。

これは、最強に近付く為に手段を選ばず、肉体を鍛え続けながら戦い続けるある2人の男の物語である。
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地下闘技場、それは表舞台の格闘家にとっての、まさに「聖地」。
どんな技術でも、どんな流派でも関係なくタイマンで戦う、真の最強を決める場所。


その会場に今、二人の男がグラップラーとして立っている。


1人はジャック・ハンマー。

もう1人はリカルド。

共に、偉大な父を持ち、それらを継ぐために命を懸け、肉体改造を施した怪物に近い者たち。

なぜ彼らが出会い、戦うことになったのか………

時は数時間前まで遡る。

ーーーーーー

リカルド「こんにちは、少しいいですか?」

雪「え?貴方は確か……リカルドさん?」

リカルドがある日、りりすた革命団に訪ねてきたのだ。
と言っても、リカルドから見た絡みはクロノス社で戦闘中をしている時ぐらいで雪達とは何の接点も無いのだが

雪「たくっちスノーだったら最近はもう革命団に姿を現してないよ?」

リカルド「ああ、そうでしたか……最近姿が見えないのでここに居ると聞きましたけど」

雪「あ、もしかして何か用事?私やこの革命団で何とかなることだったら相談くらいは乗れるよ」

リカルド「では……」


………

雪「誰でもいいから裏の格闘家と戦いたい?」

リカルド「ええ、僕もミスター鬼龍……父を継ぐ者になる為にはまだ実績が足りません」

リカルド「一応、僕自身も何かしらの格闘技チームに所属していたことはありますが少しでも力を解放すると相手は大怪我を負ってしまうのでプロにもなれなくて」

雪「それで、ルール無用の裏の人間なら遠慮なくやれるってわけね」

雪は考える素振りを見せると、 雪は立ち上がり、部屋を出て行くとすぐに戻ってくる。
雪の手にはある程度の資料が握られていた。
雪はその資料をテーブルに置くと、それを指差して言った。

雪「ある世界に『地下闘技場』っていうのがあるんだ、表向きは普通に過ごしている格闘家達もここでは皆なんでもありの戦いをしているって」

リカルド「ウワサは聞いたことがあります、空手道の大手『神心会』のドン、愚地独歩……中国二千年の伝統を宿す烈海王などといった様々な武闘家が参加していたとか」

雪「で、その地下闘技場で行われた真の強者を決める大会『最大トーナメント』の優勝者……」


雪「名前は範馬刃牙、確か今は十八歳だからチャンピオンながらかなりの若手だね」
リカルドは雪の話を聞き終えると、その場でその範馬刃牙について調べ始めた。
リカルドはしばらくすると、困惑の顔を浮かべる。

リカルド「ダークウェブに地下闘技場の特別試合の映像が残ってました」

雪「基本撮影NGだからね、最大トーナメントをやってなくても刃牙と戦いたいって男は数多くいるんだ、それを映像に残したい人も。」

リカルド「ですが……」

リカルドはその動画を見る。
その映像、僅か1分。相手はイタリアで最も過激で最も残虐な覆面レスラー……生半可な人間では血祭りに合うだけのその選手が……

僅か30秒未満でノックアウトされた図だ。


リカルド「なるほど、確かに強い……チャンピオンというのも伊達ではないようだ、ただ……ここズームで」

リカルドは動画を止め、ほんの一瞬映った刃牙のある表情に集点を当てる。
目をひそめて、口をつむぐ……まるでこの表情は……

リカルド「押し殺してますね、欠伸を……まるでこの試合に満足していないような」

リカルド「まあ、こんな一瞬で終われば満足もしないとは思いますが」

雪「ああ……それね、最近の刃牙はなんというか…強くなりすぎたみたいでね、何をやっても何と相手しても……勝手に欠伸が出るくらい退屈しているんだって」

リカルドは一通り動画と資料を見た後、立ち上がり調べに入る。

リカルド「なるほど……それは尚更都合がいいじゃないですか」

リカルド「勝てる勝てないは別として、彼の眠気覚ましにでもなれなきゃ僕は『龍を継ぐ男』になれない」

リカルドは準備をして、刃牙の所に向かおうとした時だった。
着信音が鳴る……非通知。
雪の携帯からだ。雪は電話に出ると、通話口に向かって重々しい雰囲気が感じられる。

雪「……!何か、用ですか」

雪「……はい、すぐ側に居ますけど」

リカルド「僕です?はい、初めましてリカルドです、どこの何方かは知りませんけどわざわざ調べて近くの人にかけてくるなんて……」

リカルド「はい?試合?僕が刃牙君の前にあなたと?そもそも貴方は……」



リカルド「………『ジャック・ハンマー』?」
雪から場所を特定してもらったリカルドは急いで向かった。
そして今に至る。
ーーーーーー

ジャック・ハンマー、最大トーナメント準優勝者で、刃牙の腹違いの兄。
ジャックと刃牙の父親は『地上最強の生物』と呼ばれる危険な男だった、経緯や動機は違えどこの兄弟は父を超えるため、父以上の最強になるために、己の肉体を改造していった。
その結果が今のジャックである。
ジャックは、これまでに幾度となくドーピングを繰り返し、骨格を限界まで無理矢理伸ばし、1日三十時間という矛盾によって成り立つトレーニングによって筋肉を増やした。

そんなジャックが今、リカルドと戦う。
リカルドもまた『怪物を超えた怪物』と呼ばれた父の元に生まれ、故郷ブラジルでゲリラに襲撃され何発弾丸を打ち込まれても死なず、銃弾をかわし、更には相手の顔面を破壊する拳を持つ正真正銘の化物だ。

観客席は誰もいない、というよりジャックが誰も伝えないようにして地下闘技場に来た為……誰もこの戦いを知らないのである。

雪とたくっちスノー以外は。


雪「たくっちスノー」

たくっちスノー「仲間からリカルドがあのジャック・ハンマーとやり合うって聞いてな……急遽すっ飛んできた」

たくっちスノー「とんでもない戦いだぞ……お互いに改造人間で、とんでもない父親を持つ者同士と来た……」



たくっちスノー「『龍を継ぐ男』対『鬼を継ぐ男』、『明日を掴んだ男』対『明日を捨てた男』『拳獣』対『怪物』………」


たくっちスノー「しかしなんでジャックが急にお前の電話に?」

雪「それが……よく分からないんだ、電話だと弟とやりたいならまず俺を倒してみろとか言ってたらしいんだけど」

雪「なんでだろうね、普段はそういうこと言う人じゃないんだけど……」

そうこうしているうちに試合開始時刻になった。

リカルド「貴方ステロイドユーザーなんですよね、服用は済ませまし……」


リカルドが言葉を発する前にジャックの鋭いパンチが飛び、リカルドはそれを上手く受け止める。

ジャック「これが答えだ」

リカルド「なるほど、よーく分かりましたよ」

そして、二人は自然な流れでゴングも無しに戦いが始まる。
両者、固有のファイトスタイルを持たないフリーな戦法同士。

ジャックの脳までエネルギーが行き渡るその頭をどんなに殴られても、少し怯むだけで動きは止まらず攻めを止めない。


たくっちスノー「おいおいリカルド……頭って普通殴られたら意識失うぞ……それを何回もくらって耐えてるジャックもどうかしてるが」

たくっちスノー「おいリカルド!刃牙はジャックに1回勝ってるんだ!そんな所で苦戦はするなよ!」

リカルド「分かってますよ、それは向こうも同じ」

たくっちスノー「は?」

リカルド「ミスタージャックは言いました、僕を潰した後に……」

リカルド「刃牙君と再戦する予定だと。」

この戦いは頂点を決めるのでは無い。
お互いに勝った方に刃牙と戦う権利が与えられる『前座戦』なのだ。
リカルドはこの戦いに負けられない。
リカルドは思う。

(……僕の父は……本当に強く、そして、僕の全てを救ってくれた。)

(あの時、ブラジルで死を待つのみだった僕に輸血をして命を救ったのは……あの人だった)

「『龍を継ぐ者』は僕がなるんです!」


リカルドの信念と共に振り上げた拳は遂に腕の軌道が見えない程になる。
ジャックの頭部に数発ものの弾丸のような拳が打ち込まれていく。


ジャック「『灘神影流』……お前の父親、宮沢鬼龍の使う殺人拳」

リカルド「まだ誰の指南も受けてないのでこっちは完璧にマスターしてるわけではありませんが、霞付きはあの人もよく使っていたし……」


たくっちスノー「何よりリカルドと相性がいい……元々、時速500マイルの銃弾と同等のパンチを出せるってのに、それを更に超高速で連発出来る霞付きを使えば……」


たくっちスノー「リカルドの両腕は最早マシンガンと同等だ!!」

機関銃の如く放たれ続ける拳。
だが、ジャックはそれでも怯まない。
ジャックはただひたすらにリカルドの攻撃を受けながら迫ってくる。

雪「あっ!危ない!!なにか仕掛けてくるよ!!」

リカルド「!!」

ジャック「フンッ!!」

ジャックは体を殴られても一切動きが止まらず迫ってくるのは変わらない。
骨延長手術で無理矢理伸ばしている為、その分耐久性は無くなっているにも関わらずである。

リカルドが少しでも力を解放すれば、常人なら顔面が吹っ飛んだように抉れるというのに、ある程度の傷しか付かない………

リカルド「貴方本当に人間なんですか?これだけ能力を解放して怪我もしない人は貴方が初めてですよ」

ジャック「一般的なヤワな肉体と俺を一緒にするな」

ジャック「たとえ大型トラックが目の前に突っ込んできても潰れる事はない、それが俺の見てきたグラップラーだ」

リカルド「!」

ジャック「貴様も、宮沢鬼龍も……まだ、まだ刃牙どころか俺の足元にも届かん」


たくっちスノー「!?」

信じられない光景が目の前に起きた。

たくっちスノー「ば……馬鹿な!?リカルドが……」

たくっちスノー「体重120キロのリカルドが……」

たくっちスノー「軽々しく持ち上がったッッッ!?」

ジャックは、リカルドの腕を掴んで持ち上げたのだ。
ただそれだけで、リカルドの体は宙に浮いた。
そのままジャックは脚を振り上げると……
ズドォン!!! 思い切り地面に叩きつけた。
観客席は思わず息を飲む。
衝撃により砂埃が舞い散る。

地下闘技場のリングでもある土はこれまで倒されてきた格闘家達の折れた歯や爪が掃除されてないまま混ざって残っている……頭から落ちればひとたまりも無い。

ジャック「殺人拳灘神影流、怪物を超えた怪物……アメリカ大統領すら恐れる4番目の人間、肩書きも実力もある」

ジャック「だがそれも世界規模の井の中の蛙、本当の怪物とは……龍すらも喰らう」

ジャック「俺達兄弟が相手取りたいのはそういう男だ…」

リカルド「……なんか」

リカルド「自分が敬愛しているものをバカにされたみたいでムカつきますね」

リカルドもこのまま言われたままではいかない。
まだ奥の手を隠している……が、それは向こうも同じ。ジャックが地面を踏みつけると、ジャックの体が浮き上がる。
ジャックは空中で回転しながら拳を放つ。
ジャックの拳は風を切る音を立てて飛んでくる。
リカルドも負けじと蹴りを放ち、ジャックの腹部へ命中させる。
ジャックは腹を押さえながら着地すると、再び音を切るほどの拳のぶつかり合いとなる。

リカルド「ねえ貴方、まだ本気出してないでしょ」

ジャック「お前が言えたことか……?」


リカルド「そうですね、すみません……僕も出し惜しみしてました」


リカルド「ちょっと禁じ手みたいな技になりますが……覚悟してくださいね」

ジャック(……来るか)


ジャックは察した、この男は何かを仕掛けてくると……
ジャックの勘は当たった。
リカルドの体中に血管が浮き出る。
その瞬間、リカルドの姿が消えた。
いや、消えてはいない。
ジャックの目でも追えない程のスピードを出した、それだけの攻撃……

リカルド「灘神影流……!!」





「幻魔拳!!!」

リカルドの拳は空を切り、ジャックの頭部を狙う、しかし予測は出来たようで頭部には当たらず、肘に………いや、当たる寸前で止まる。


雪「え……何?なんで当てないの?」

たくっちスノー「……当てない技だからだ」

雪「え?」

たくっちスノー「打撃を寸止めにすることで脳の視床下部に特定のイメージを植え付け自立神経を乱れさせ、幻痛……つまり、身体はなんともないのにダメージを受けているように錯覚する」

たくっちスノー「しかも、治す方法は今の所無い」


ジャック「!!」

ジャックも違和感に気づく、周囲から見れば何ともないが、幻魔拳を防ぐのに使用した右腕が……

たくっちスノー「俺達から見れば何ともないが、ジャックの目には右腕は肉が爆発したように吹っ飛んでいるように見えるだろう」

雪「灘神影流……そんな技が………」

たくっちスノー「だが……」


リカルド「………」

リカルドも左腕を抑えている。
………ジャックは右腕を確認しながらも気にせぬ素振りで何かを吐き出す……肉片だ。

ジャック「……一手、速すぎたナ」

雪「え?え?」

たくっちスノー「今のは本当に一瞬が命取りのハイスピードな戦いだった」

たくっちスノー「リカルドが隙を突いて高速で動き、幻魔拳を放つがそれをガード……そして、打ち終わったタイミングを逃さず、噛み付いたんだ」

雪「噛みつき……!」

たくっちスノー「ジャック・ハンマーの真髄はインファイトでも徹底的な攻撃でもない……『噛道』という他に真似出来ない独自流派だ」

たくっちスノーが解説する中、ジャックの両腕の筋肉は更に膨張する……
ジャックは両腕を交差させると、思い切り開く……
ジャックは両手を広げて広げた……

たくっちスノー「!!」

「なあ、そんくらいにしときなよ」

と、会場から声をかける者が。

ジャック「刃牙」
刃牙であった。
刃牙は観客席の柵に寄りかかりながら話す。

刃牙「なんか騒がしいなと思えば、また内緒で闘技場貸し切ってこんなことしてたんだ」

刃牙「それ以上やるとホントに死んじまうから、そろそろやめといた方がいいでしょ」

刃牙「……な~んて言って引き下がるような性格じゃない事は知ってる」

刃牙はため息をつくと、指笛を吹き鳴らす。
刃牙の背後から一人の小さな老人がゆっくりと歩いてくる。
たくっちスノーはその男を知っていた。

たくっちスノー「徳川光成御老公…この地下闘技場、並びに最大トーナメントを作ったバトルジャンキージジイ……」

徳川「リカルド君……だったかな、途中からだが見させてもらったよ、君の試合」

徳川「刃牙と…戦りたいそうじゃな」

リカルド「これはどうも、貴方のお気に入りに勝手に喧嘩を売ってご立腹ですか?」

徳川「いいや、その逆」


徳川「ジャックもこの儂に声もかけずにこんな試合をッ!」

刃牙「なんというかさ……ズルいんだよね、お互い。」
刃牙は呆れた顔をしながら言う。
刃牙は二人の元へ向かうと、リカルドの肩に手を置く。

刃牙「今回は認めない、記録にも残らない」


刃牙「ジャック兄さんも死期が近いのは分かるけど」



刃牙「もっかい俺とやりたいならまたここまで来なよ」

ジャック「…やるのか、最大トーナメントを」

徳川「当然じゃろうッ、今までのは世界規模、それすらワシらは井の中の蛙大海を知らずで地上最強ではなかった!」

徳川「お前達も知っているじゃろうッ!最強の原始人『ピクル』が神に挑み敗れた、あのラグナロクを!」


刃牙「そ、だから今度は世界規模。」


刃牙「俺やオヤジもひっくるめて参加する『時空最大トーナメント』…リカルド、アンタもこれに出なよ」

刃牙「いや、アンタ以外も」

リカルド「…!」

リカルド「……僕の事を調べましたか」

雪「どういうこと?」


たくっちスノー「宮沢鬼龍の血を引く『龍を継ぐ男』は一人じゃないんだ」

鬼龍はあらゆる女を愛し、関係を持ち…その子供は世界中にいる。
その子供達はそれぞれが鬼の血を引いており、それぞれ強さや特技、性質が違う。
その子供達は力を継ぎ、そして鬼龍の血と技術を宿している。

リカルド「でも僕は義兄弟は知りませんよ」

ジャック「お前より前に『龍を継ぐ男』を名乗った人間が地下闘技場に来たことがある」

リカルド「なるほど、それで僕を…なら、先に潰しておかないと、名前は?」




刃牙「長岡龍星」

リカルド「……」




「分かりました、その大会出ましょう、龍星君と戦らせてくれることを条件に」

こうして、時空最大トーナメントが人知れず知れ渡り、龍を継ぐ男達は惹かれあう…の、かもしれない。

『ジャックVSリカルド編』
END