二次創作小説(新・総合)

Re: MMトウスター 〜物語の痕跡〜 ( No.213 )
日時: 2023/06/13 23:27
名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)

それは、また当たり前のように時の海を走ってきた時のこと……


雪「あれ?船の近くに誰か来てる」

ヨウコ「毎度の事ながら、運転中でがっつり動いているのにどうやって乗り込んでいるのかしら皆………」

雪「まあそれは私達もよくやるから……誰が来たかな」

ガチャ

マリオ「よっ」

入ってきたのは、マリオだった。

雪「マリオ?そういえば君……革命団入ってなかったんだ」

マリオ「クッパがしつこくてよその世界行く暇も中々出来ないんだよ……と、それはいい」


マリオ「最近はお悩み相談みたいに色々来て悪いが、今回のは真剣にヤバい頼みだ」

雪「真剣じゃなくてヤバくない時一度もなかったけどねこの界隈」

………

マリオ「クロノスゲームの時からたまに目撃されるようになった、俺の偽物」

マリオ「まあ偽物自体は珍しくもなんともないし沢山いるが……その内の1つ」

マリオ「それが問題だ」

マリオの偽物のうち、最近発見されたもの………比較的大柄で、周囲の物を見境なく破壊する力を持ち、それでいて非常に凶暴である。
それは『MX』と呼ばれている。
その特徴を聞いた時、雪は思わず眉をひそめた。

雪「うわぁ……」

ヨウコ……確かにこれは深刻な問題ね」

マリオ「ああ、だから一緒にどうにかして欲しい。お前ならなんとか出来ると思ってな」

雪「わかった、私達としても気になっていたからね」

………
雪「MX……私たちはまだ本格的に遭遇してないけど、あちこちで目撃情報は聞いてるわね」

ヨウコ「人を襲い周囲を破壊しているんだから、分類的には敵……でいいのよね」

雪「なのに……どこを探し回っても情報が全く見つからない。」

信じられないことにMXは分かっていることが何一つ無い。
何者なのか、協力者がいるのか、どう作られたのか、そもそもどんな生物なのか。

分かっているのは見た通り、マリオによく似た風貌をしているというだけだ。
ただその表情は見ているだけで不安になるような、どこか狂気じみた笑みを浮かべているらしい。

ヨウコ「でもその割には結構好き勝手やってるようだけど?」

雪「まあ、この辺はもうちょっと調べる必要があるかもね」
……

マリオ「とりあえず俺は何か分かるまでここに居させてもらうぞ」

雪「大丈夫なの?こんな所居て……そっちの世界忙しいって言ったばかりなのに」

マリオ「ちょっとくらいならクッパだって大人しくしてるだろ、俺の力だけで成り立ってる国でもない」

マリオ「それに、MX自身が何を考えているかわからない以上放っておくわけにもいかないしな」

雪「……そう」

ヨウコ「んー、確かにこのままだとあちこちの世界に悪影響しか与えなさそうだし、早めに手を打つ必要があるかもしれないわね」

雪「皆、MXがどこにいるのかだけでも分かる?」

雪「と言っても……PCに強いひとあんまりいないんだよね、革命団」

雪「AIはちょっと頑張りすぎてダウンしちゃったし、ダリアも最近帰ってきてない……」

マリオ「おいおい大丈夫かよ?こんなハイテク技術みたいな船に乗っておいて……ちょっとやらせてくれ」

雪「え、出来るの!?君の世界まだそういうインフラ整備とかされてないのにハイスペPCが」

マリオ「いや俺……一応玩具会社の社長なんだけど……」


マリオ「あ、見つかった」

雪「え!?」

ヨウコ「嘘つき!?早く言ってよ!」

マリオ「なんかお前らより先に見つけた奴がいたみたいだぜ?」

マリオの偽物を発見した者は、ある人物に報告していた。
それは、ゲームクリエイターにして革命団の協力者でもある男。
彼は、自身の作ったゲームをプレイしながら、画面に映っている光景を見て、呟いた。

「奴らも……いずれ巡り会うことになるだろう」

「あの悪魔に……」


……

MXの反応があるところに雪とマリオの2人で向かってみることにしたのだが……


雪「この世界が一番MXの目撃情報が多いところ……なんだよね」

マリオ「ああ、見たところは普通のビル街ひしか見えないが……油断は禁物だ」


雪「お互いそういうのには慣れっこでしょ」

マリオ「それはそうだ」
2人はビルの屋上に降り立つと、辺りを見回す。
すると、目の前の景色が突然歪み始め……次の瞬間には、荒廃した世界が広がっていた。
雪とマリオが降り立ったのは、荒れ果てた荒野の真ん中だった。
雪は目を細めて辺りを観察し始める。

雪「あれ……?さっきまでこんな景色だったっけ」

マリオ「いや、もうちょっと普通の世界だったような気もするが」

雪「じゃあこれ一体……」

マリオ「……」

マリオがじっと前を睨んでいることに気が付き、雪もそちらを見る。
そこには、1人の男が立っていた。
黒い髪で長身の男。
顔立ちはマリオそっくりだが、その表情はまるで悪魔のよう。

『MX』。正体不明のマリオに似た怪物が、すぐ目の前に居た。

雪「MX!?」

マリオ「こいつが!」

マリオはすぐさま雪にハンマーを作ってもらい、構える。
しかしMXは、そんなマリオを無視して……雪の方へと歩み寄っていく。

雪「へ……私?」

マリオ「まさか……こいつ、雪を狙っているのか」

雪「ど、どういうこと……?」
雪は思わず後ずさりするが、すぐに壁に当たって逃げ場を失う。


MXの拳を盾でガードし、ひとまずビルから飛び出していく。
その際に雪はマント羽根をポケットから取りだし……

雪「マリオ、これ!」

マリオ「お前俺の世界のアイテムも作れるのか!?」

雪「ダメ元でやってみたらなんか出来た!」

マリオ「よし!」


マリオ「マントマリオ!」

マリオ「これで少しは時間稼ぎが出来るはずだ!」

マリオはマントを広げて雪を担ぎ、ムササビのように飛び上がってビルから降りていく。
MXはそれを見て、野鳥を掴み……

……
雪「わっ!ワッ!!マリオ!!」

雪「MXもマント装備して追いかけてきた!!」

マリオ「何!?」
マリオは慌てて方向転換して逃げるが、それに合わせてMXも方向を変えてくる。
そして……

マリオ「なにぃ!?」

雪「ああああああ!!!」
マリオは突如現れた巨大なモンスターに吹っ飛ばされる。
雪も、その衝撃に巻き込まれて吹き飛んでいく。
マリオは空中で体制を整え、雪は咄嗟に槍を作り出して地面に刺し着地する。

雪「次から次へと変なのが来るよ!!」

マリオ「どうやら本格的に良くない状況になりつつあるな……」

雪「とにかく、ここから離れないと……って、ん?」

マリオ「どうした?」

雪はふと足元に違和感を覚え、下を見ると……

雪「うわああ!?なにこれ!?」

マリオ「どうなってる!?」

雪達の足が沼のようなものに沈んでいき、動けなくなっていた。
しかも、どんどん体が重くなっていく感覚に襲われる。
雪達は必死に抵抗するものの、抜け出すことが出来ない。
雪は焦りながらマリオに話しかける。

雪「マリオ、大丈夫?」

マリオ「なんとかな」

雪「これ、なんだと思う?罠かな?それとも底なし沼?」

マリオ「分からない……一応攻撃は出来なくは無いが、これは……」

そうこうしているうちにMXも降りてきた、マリオはファイアボールで牽制をかけるが、MXは意に介さない様子で歩いてくる。

雪「だめ、全然効いてない」

マリオ「このままでは……」

その時、突然背後の地面が盛り上がり、中から人型の何かが這い出してきた。
それは……スケルトンだった。

雪「次から次へと…!」

マリオ「この状況……もう口に出すまでもないよな」

MXと……ここに来てから今まで自分を襲うこの謎の現象や生物は…全て協力者だ、ということは、つまり。
このMXもまた……マリオを模倣しているだけでは無いということだ。
しかし、目の前にいるのは確かにマリオとそっくりではあるが、明らかに別の存在だ。
恐らくこのMXこそが……ここにいる存在全てを率いている。

マリオ「お前策はあるか?」

雪「ふふ……仲間呼んでなんとかなるならとっくにしてるよ」

雪とマリオは互いに武器を構えつつじりじりと距離を詰める。

雪「でも、ここでやられるわけにはいかないんだよね」
雪は手に持っていた槍をしまい、代わりに剣を作り出す。
それを握りしめると、一気に走り出した。
同時にマリオも駆け出し、巨大モンスターを倒そうとしていた。
……
が、その時……

雪「待って、まだ誰かいる!」

この惨劇のようなあまりにも狂った状況で、あまりにも異様な光景……

赤い髪の白いスーツを着た女性が、この光景を悠々と歩いているのだ。

雪「あれ……人、だよね……ここに来て、普通の人?」

マリオ「おい、危ないぞ!」

2人が呼びかけても反応をしない、生物達も次第に女性に群がっていくが……


「………」


「ばん」

その掛け声と共に



周囲に居た怪物は粉々に砕け散った。

雪「……え?」

それと同時に、歪んでいた天候も元のように青い快晴に戻り…
MXも予想外だったのか、これまでずっと閉じていた重い口を開いた。


MX「シ……ハイ……?」

雪「え?」


一言呟いた後、またマントを広げて空へと飛んで消えていった。



マリオ「あっ……待て!」

雪「待って、追いかけるより先に……あの人……」

雪「あ、あの……貴方は……」

雪「人間……ですよね……?」

雪は女性に問いかけた。
その女性はゆっくりと振り返る。
その姿は……赤い髪の、どう見ても人にしか見えない存在。
雪とマリオは思わず身構える。
しかし……その表情は先程までの悪魔のような怪物達とは打って変わって……優しい笑顔をしていた。

「うん」


「人に見えるなら、そうじゃないかな」

……
元に戻った景色で、2人は女性から話を聞き、名刺を受け取っていた。
名は『マキマ』肩書きは

雪「………公安対魔特異課、あっこれ特盟の組織のひとつだ!」(時空特殊警察連盟の略)

マリオ「時空の公務員か……で、その特異課ってどんな組織だ?」

マキマ「簡潔に言うと『デビルハンター』、勿論他の世界に行けばそれ以外の怪物も相手をする場合があるけど、基本的に私達はこの世界から生まれる悪魔を始末している」

マキマ「今、キミたちが目撃したような『悪魔』をね」

マリオ「悪魔……っていうのはあのMXに手を貸していた奴らか?」

マキマ「『幻覚の悪魔』『トラックの悪魔』『脂肪の悪魔』『骨の悪魔』『沼の悪魔』」


マキマ「あの狭い範囲で同時に5体ものの悪魔が、たった2人を狙っていた」

雪「………!」

雪「そっか、この世界の悪魔……」

マリオ「何か知ってるのか?」

雪「ちょっと本で見たぐらいだけどね……この世界の悪魔の根源、強さや立場の基準は恐怖にあるんだ」

雪「まあ簡単に言うと人が一体どれだけ元になったものを恐れているかってことなんだけどね」

マリオ「それをMXが次々と……とすると」

マキマ「うん」


マキマ「その『MX』と呼ばれている存在も、私の世界で見れば悪魔の部類に入る」

マキマ「通称は『英雄の悪魔』、まだ発見されたばかりだけど既に数百もののデビルハンターを葬っている、非常に危険な存在だよ」

雪「英雄の…悪魔…」
マリオが顎に手をやり、真剣に考え込む。
マリオにとって聞き覚えのない単語だが、どうにも無視できない言葉だと感じたからだ。
雪はそんなマリオの様子を見て首を傾げる。マリオは少し考えた後、恐る恐るマキマに話しかける。


マリオ「えーと、マキマさん……だったか」

マリオ「雪が言うには、この世界は人が怖いと思った物を司ってる奴が強いんだな?」

マキマ「概ねその認識で大丈夫だよ」

マリオ「『英雄の悪魔』っていうことは英雄……?言い方を変えればヒーロー、勇者、戦士、救世主……」


マリオ「怖がるどころか、尊敬、敬愛、心酔……怖い要素なんてどこにもないと思うが……」


マキマ「……」

マキマ「本当にそう?」

マリオ「………」


マキマ「私からも質問をします」


マキマ「MX……英雄の悪魔と遭遇して、ここまで、どんな力があるように見えた?」

雪「………」

雪「誰もが目を奪われていく存在感……人の努力を嘲笑うかのような天才的な才能と応用力……」


雪「何より……自身の思うがままに導く、圧倒的カリスマ」


マキマ「英雄が何故英雄たりえるのか、それはその力が決して自分達に向かってくることはないから」


マキマ「…………向かってこない、ということは、ない」

マキマ「同じ人間の形をしているのに、どんな兵器でも壊せず、どんな怪物でも殺せない」
マキマ「だから、人々はその圧倒的な力の前にひれ伏すしかない」

雪「……それ故に人は英雄を敬う、その力が決して自分に降り注がないように」

雪「行き過ぎた敬愛と恐怖は……思ったより大差ない、覚えがあるよ」

マリオ「……そのMXこと英雄の悪魔が俺そっくりな見た目してるのは?」

雪「この世界、まだリアルワールドと含めると古めだから…スーパーマリオブラザーズが作られたばかりでしょ?一般的な英雄ヒーロー像が君の姿になっているんだと思う」

雪「というか、そう考えるしかない」

マリオは腕を組みながらしばらく考えていたが、やがて納得したように大きく息を吐いた。
マリオは立ち上がる。
マリオはマキマの方へ向き直り、手を差し出す。

マリオ「戻るぞ、雪」

雪「え!?MXを追わなくていいの!?」

マリオ「まだ何も分かってなかったアレの事をある程度分かってきたんだ、それだけで充分だ」


マリオ「それに……何かあったら特盟にも声をかけられるようになったしな」

雪「そっか!良かった!」

マリオ「じゃあ、俺は行くぞ。またなマキマさん」

マキマ「うん、ありがとうね。お二人とも」

マキマ「気をつけて帰ってね」

マリオ「ああ」
雪「はい!」
2人はマキマに別れを告げる。
そして……雪とマリオは振り返る事なく、その場から立ち去っていった。
……
マリオ達はマキマと別れた後、船へと帰る準備を進めていた。

雪「ねえ、マリオ……一つだけ、一つだけまだ気になることがあるんだ」

マリオ「どうした?」

雪「MXが喋ってたあの言葉……『シハイ』どういう意味だろうなって」

マリオ「シハイ……支配?大方、仲間にした悪魔が全滅したから、流石に焦ってたんじゃないのか」


雪「だといいけど……」

MX……またの名を『英雄の悪魔』
その怪物と相見えるのは、まだまだ先になりそうだ。



『英雄の悪魔編』
END