二次創作小説(新・総合)
- Re: MMトウスター 〜物語の痕跡〜 ( No.214 )
- 日時: 2023/08/02 22:00
- 名前: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (ID: VOI/GMTL)
一度は考えたことがあるだろう。
大空を支配するリザードンと、荒海にも負けないカメックス
二つのポケモンを組み合わせれば最強のポケモンが作れるのでは? と。
そしてそれは実現する。
……
「こんなトコに兄貴の一人が居るって聞いてみたが…」
「どうみても研究施設だよなここ…いや、ある意味ではいよいよこう来たかって感じだが」
海を渡る研究施設の廃墟、彼は一人でその研究施設に向かった。
理由は簡単だった。そこに未知の力が眠っている、そして数多くいる兄弟のうちの一人という確信があったから。
「………ったく、少し歩くだけでこれだ」
「しかもポケモンの世界……こんなことなら何かしらポケモン連れてこりゃ良かったな」
浸水している床を進み、電工掲示板が明滅する廊下を通り、なんとか彼は目的地に辿り着く。
「……見つけた」
しかし、彼が見たものは意外な光景だった。
「兄貴と……なんだアレ」
彼が目指した場所に居たのは兄らしき存在と……変わった形のボール。
「兄貴!」
そして、そのボールから現れる謎の存在。
彼が見た光景は……兄の身に迫った危機であった。
彼は思わず駆け出し、兄に呼びかけた。
しかし……二人の反応は全く逆だった。
兄は彼の声に驚き、大きく飛び退いたのだ。
「お前……何故どうしてここを見つけた?」
「ええ?なんだ、誰かに知られちゃまずかったのか……こう言おう、俺はアンタの兄弟だ、カーレッジ・フレインに造られた」
「………体のどこかにナンバーはあるか?」
「……これでいいのか?」
彼は兄の体をよく観察する。すると、左手の甲に数字が刻まれていることに気づいた。
そして同時に、それは自分の体にも刻まれている。
そしてその数字は……兄より遥かに多い。
「……なるほど、どうやら俺の『弟』という認識でいいようだな」
「俺はわけあって名前を多く兼用している、ここではアメジストって名乗ってる」
「お前も何かワケありか、そういう奴の方が信用できる、私はメタモルだ」
「おい、早速だが何がどうなってるか全くわからねえぞ」
「そのボールから出てきたやつはなんだ?」
アメジストはメタモにそう問いかけた。メタモは少し驚いた表情を見せたが、すぐに説明を始める。
「一度は考えたことがあるだろう。
大空を支配するリザードンと、荒海にも負けないカメックス
二つのポケモンを組み合わせれば最強のポケモンが作れるのでは? と。」
「はあ……まあ、それが出来るなら」
「ついてくるんだ、いいものを見せよう」
……
MMトースター
【戦慄のフュージョンポケモン編】
メタモは奥の扉を操作し、地下に続く階段へ続く扉を開ける。
二人は階段を降り、メタモは照明のスイッチを押した。
すると……そこに広がる光景にアメジストは息を吞んだ。
「うお!?なんだこりゃ!」
その空間にあったのは、見上げるほど巨大なコンピュータだった。しかも、それだけではない。壁一面がモニターになっている。
「遺伝子のデータを集めるなら、これくらいは必要でね……」
「遺伝子…?」
「私はここでポケモンの遺伝子の研究をしているんだ…まぁ、表舞台に出ている者と違う個人的な趣味に過ぎないがね」
「そして、これが個人的な実験で出来たものだ」
メタモは更に……標準サイズの水槽を持ってくる。
そこに泳いでいたのは……
「どうだ、ついさっき実験したばかりなんだ」
「な……なんだ…これ……」
金魚……?いや、それっぽくもあるが、何かが違う。
黄色と黒、それにこのつぶらでチャーミングな顔には覚えが……
「ピカチュウとトサキントの遺伝子を組み合わせて作ったのさ……」
「遺伝子を採取できたポケモンは1000種類のうち現在たったの420種類、それでも2つ組み合わせればその可能性は1万をゆうに超える」
「そして……形によっては、既存の物をはるかに超える究極の生物が完成するんだ」
メタモはキーボードを操作し、スクリーンに映像を映す。そこには、様々な種類のポケモンが映っていた。
もちろん彼も知っている……有名なモンスターや、最近ではあまり見かけなくなった伝説のポケモンも沢山映っている。
しかし……問題はその形だ。まるで人間のような顔を持つものや、鳥の翼を持った蛇のような……とても、生物に対する冒涜のような、受け入れ難い物だ。
「………そして、最近完成したばかりなんだ」
「リザードンとカメックスの遺伝子を混ぜて組み合わせた最強のポケモンを!」
ゆっくりと培養ケースの蓋が開く。
中からは……カメックスのような、リザードンのような、それでいて歪な顔を持った存在が現れる。
そして、そのポケモンは目を覚ましたかのように体を震わせたかと思うと……こちらに視線を向けた。
まるで獲物を見つけたかのような鋭い視線だ。
「素晴らしいだろ?最強のポケモンの誕生だ」
「アンタ……とんでもないものを作りやがったな」
「まるで破壊兵器を作ったみたいに言うんだな、私が作ったのは生命だ、神に対する冒涜かもしれないが、研究は神に喧嘩を売ってこそだ」
「そうじゃないだろ!こんなの作って……どうやって生かすんだよ」
「生態系においても最強だとも、リザードンの翼、カメックスの甲羅と大砲……海陸空、史上初の3つ全ての領域で生息出来る」
「フュージョンポケモンこそが、新たな環境の支配者になるんだ」
メタモは、まるで子供に言い聞かせるように……そして、その子供の反応を楽しむかのようにそう告げる。
「っ……」
アメジストは歯を食いしばりながらカメックスに近づこうとするが……その前に別のフュージョンポケモン達が立ちふさがった。
「……兄貴!」
「反応からしていいものでは無いことは分かっていた、残念だ…実の兄弟なら受け入れてくれると思っていたが」
「お前……口ぶりからして何回もここに来たやつを始末していたな!」
「何が最強だ!自分のエゴでポケモンを好き勝手いじくり回しやがって!」
ケースが次々破られ、合成させられて異形の形となったポケモンが次々と飛び出してアメジストを取り囲む。それでも、アメジストは一歩も引かない。メタモはアメジストに噛み付くように言い放つ。
しかし、メタモは全く動じていないようだった。
それどころか……挑発的な笑みを浮かべているようにも見える。
そして……その体は宙に浮いた。
「これは………」
「『サイコキネシス』あんたもよく知ってるだろう、エスパータイプの最高峰の技だ」
「何故そんなものを……!」
「それだけじゃない」
「俺は今回ポケモンは忘れてきた、でも取りに行こうとはしなかった」
「最悪、兄貴のヤツを借りるつもりだったからな……だが、今そうなる」
「え……そ、それは!?」
アメジストの片腕に付いているのは……『スナッチマシン』
通常とは異なる事例に遭遇した時、相手からポケモンを奪う事が出来るという……特殊な相手にのみ使うことを許される装置だ。
だが……今回の事例は、充分特殊だ。
「よし、お前の初仕事だ!!」
……そして、アメジストはスナッチマシンから自分の腕を外し、合成ポケモンに向ける。すると、彼らの体は吸い込まれるように消えていき……そこには一つにまとまったスナッチボールだけが残った。
「出てこい!!フュージョンポケモン!!」
スナッチボールを投げると、先程のリザードンとカメックスが混ざったフュージョンポケモンが目の前に現れる。
「………お前が『どっち』を使えるのかは分からない、だから勘で命令するけどごめんな」
「かえんほうしゃだ!!」
……
周囲を焼き払った後、アメジストはメタモを確認する……どこにもいない、フュージョンポケモンも消えている。
あの一瞬で上手く逃げたようだ、今残っているのは……今スナッチしたこのポケモンだけだ。
「兄貴……仕方ない後回しだ、問題は……」
メタモが何を企んでいるか……今はそれを考えるのはやめよう、まずはここから脱出しなければ。
アメジストは近くのボールを投げる。するとスナッチボールから向こうへとポケモンの主導権が変わった。
「何が最強のポケモンだよ」
「ほんの一瞬お前の顔を見た時分かったよ、なんか辛い思いをしていたんだなって」
「だからせめてお前だけでも解放してやりたかったんだ 」
「炎と水の力……お前は『スチーム』って名付けよう、一緒に旅に行こう、そして…元の姿に戻してやりたい」
アメジストはスチームを連れて、研究施設から離れていった。
その日スチームは夢を見た。
カメックスでもリザードンでもない自分が、どちらの群れにも入る事が出来ず檻の中で独りぼっちだった夢。
そして……最後に1人の青年が檻を外し、自由な空へと逃がしてくれた夢を見た。
【戦慄のフュージョンポケモン】
END
