二次創作小説(新・総合)
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.21 )
- 日時: 2021/08/06 15:18
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
学園生活がこれから始まる中、NRCの治安の悪さを痛感する中で、先輩であるトレイの提案でマロンタルトを作ることになる。
精一杯マロンタルトを完成させるが・・・
中原中也のサーカスより引用あり
ローズハート家の捏造あり
??????「お前が俺のクラスに入る新入りだな?」
優「はい。改めまして、時ノ小路優です。僕の世界の僕の暮らしている国ではファミリーネームを先に名乗るので、時ノ小路が名字で優が名前です。」
グリム「俺様はグリム様なんだゾ!」
??????「ほぅ?」
優たちが自己紹介を終えると、黒と白の髪に黒と白の毛皮のコートを身にまとっている男性教師はまるで2人(1人と一匹)を値踏みするかのように2人を眺める。
??????→クルーウェル「中々悪くない毛並みだ。わるく無い・・・日頃から手入れを忘れないように。俺はデイヴィス・クルーウェル。気軽に、クルーウェル様、と呼んでもいいぞ」
優「ではクルーウェル先生で。クルーウェル先生はなんの授業を担当されているんですか?」
クルーウェル「俺は理系科目を担当しているな。仔犬にもわかりやすく言えば、錬金術や魔法薬学の授業だな」
なるほど・・・と優が理解を示すと、今度は黒猫を連れた赤いローブを纏った中年男性がゴホンと咳払いをし、次は自分の番だと言わんばかりの表情をした。
????→トレイン「私は魔法史や動物言語学を始めとする文系科目を担当するモーゼス・トレインだ。こちらは使い魔のルチウス」
ルチウス「オ"アァ〜」
文系科目と聞いて、優は目をキラキラと輝かせた。
文系科目が大好きな優にとって、文系科目の担当教師は尊敬以外の言葉は何一つ出てこない。
・・・ちなみに優が元の世界で得意としていた科目は現代文、古文、歴史(日本史世界史両方)、音楽、美術・・・見事に文系オンリーである。
苦手な科目は科学・・・といっても、優本人が苦手に思ってるだけで、普通の人物からみればできる方・・・むしろトップクラスである。
優「文系科目・・・!僕文学大好きなので今からでも授業が楽しみです!」
トレイン「そうか。それはとても楽しみだ。」
優「はい!ルチウス君もよろしくね」
優にナデナデされたルチウスはご満悦と言わんばかりに目を細める。
????「じゃあ最後は俺だな!」
大きな声の方を見ると、赤いジャージを着た筋肉質の男性がいる事がわかる。
????→バルガス「俺はバルガス。お前みたいなモヤシ共の体力育成や飛行術などの体育系科目を担当しているぞ。」
優「なるほど・・・体育も一応はできます。頑張りますね!」
バルガス「おお、中々細いが骨のあるモヤシだな!」
優「褒め言葉として受け取るべきでしょうか?ありがとうございます。」
クルーウェル「では、これからお前達のクラスに行くぞ」
クルーウェルに案内されてついた教室は、『1-A』と書かれた札が下がっている。
どうやらここが優たちの通う事になるクラスのようだ。
クルーウェルは「少し待っていろ」と優とグリムに指示し、教室に入る。
しばらくしてから「入れ」という声が響くと優は扉を開いた。
クルーウェル「知っている者もいるかもしれないが、この仔犬はお前らの新しい仲間となる。仔犬ども、自己紹介をしろ」
優「はい。」
チョークを手に取った優は黒板に『Yu Tokinokouzi』と『Grim』と書いて前を向き直る。
優「初めまして、時ノ小路優です。僕の世界の僕の暮らしている国ではファミリーネームを先に名乗るので、時ノ小路が名字で優が名前です。オンボロ寮で監督生を務めることになりました。これからよろしくお願いしますね。」
グリム「俺様はグリム様なんだゾ!偉大な魔法士になる存在なんだゾ!」
優「グリムったら・・・あ」
お辞儀をして前を見ると、見慣れた顔があることに気がつく。
エースとデュースだ。
まさか同じクラスだったとは予想もしていなかった。
向こうも予想していなかったようたが、すぐに手を振る。
クルーウェル「クルーウェル様は寛大だからな。この時間は時ノ小路への質問タイムにするぞ。」
サバナ寮生「よっしゃ授業潰れたぞ!」
ハーツ寮生「何質問すりゃ良いんだ?」
スカラ寮生「こういうのってめちゃくちゃワクワクするなぁ・・・」
真っ先に手を上げたのはエースだった。
優「エース君、どうしたの?」
エース「優の好きなもんとか嫌いなもん、好きな食べ物とか嫌いな食べ物、趣味とか特技は何だ?」
優「僕の好きな物は、純文学に詩歌に大衆小説に短歌に俳句に童話・・・っていうか文学全般と友達!嫌いな物は、話を聞かずに一方的に非難する事。好きな物は梅干しとキャラメル。嫌いな食べ物は苦い物。趣味はTRPGや演劇のシナリオ作成、小説や詩の執筆。特技は詩、短歌、俳句、小説の暗唱だよ。」
どう質問すればいいのか分かったのか、次々と手を上げていく生徒が増えていく。
質問はかなり花開いたが、かなり長々としたので一部抜粋する事になった。
ポム寮生「何で梅干しとキャラメルが好きなんだい?」
優「梅干しはひいお祖父様が大好きだったからで、キャラメルは僕の世界の文豪の小林多喜二さんって人の小説にキャラメルが登場するからですね」
サバナ寮生「さっきの質問に出てたお前の曾祖父さんってどんな奴だ?」
優「そりゃあ尊敬してもしたりないくらいにすごく立派な人で、数多もの苦境を乗り越えて『第二の国民詩人』と呼ばれたすごい詩人だったんです!・・・もう亡くなっちゃったし、生きてた頃の記憶はほとんど無いけど、僕にとっては誇り高き素敵な人でした。」
スカラ寮生「ご家族はどんな人?」
優「お父様とお母様、お祖母様と叔父様が2人です。お祖父様は亡くなりましたが、彼はとても優しくひいお祖父様に似たのか文学の道を歩んだそうですよ。お父様は三人兄弟の末っ子かつ審神者という歴史を守る大切なお仕事をしていて、お母様はピアノの調律師なんです。」
オクタ寮生「名前の由来はどんな感じなんだい?」
優「お父様とお祖父様がひいお祖父様である空渡彼岸さんの本名である『優斗』から一文字とって名付けてくれたんです。ちなみにお父様は『優朔』さん、叔父様方は『優白』さんと『優星』さん、お祖父様は『優之介』さんといったように、ひいお祖父様と関係のあった文豪から名前を少し頂いて名付けられたそうなんです。あと、ただ単にお父様や叔父様方、お祖父様の優しい子に育ってほしいという願いも籠もってるんですよね」
ハーツ寮生「お前の父さん達の名前の由来になった文豪ってどんな奴なんだ?」
優「お祖父様の名前の由来になったのはひいお祖父様の養父であった芥川龍之介先生、叔父様やお父様の名前の由来になったのは、ひいお祖父様の所属していた北原一門の師匠や兄弟子である北原白秋先生、萩原朔太郎先生、室生犀星先生ですよ」
イグニ寮生「優氏が本が好きになったきっかけは・・・?」
優「小さい頃から本を読んでいたからですね」
ディア寮生「将来の夢はあるのか?」
優「作家になりたいって夢はあるんですけど・・・ご先祖様がすごい文豪だから、謙遜しちゃうんです。司書や本屋起業、出版社に就職するか迷ってるんです・・・」
たった一瞬。たった一瞬だったが、優とグリムはすぐにクラスに馴染んだ。
早速と言わんばかりに、優は文学の布教を始めている。
ちなみに今優が布教しているのは『中原中也』の『山羊の歌』だ。
特技を詩、短歌、俳句、小説の暗唱と言ってる為、早速収録されている詩の一つ『サーカス』を暗唱してみせた。
優「『幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
幾時代かがありまして
今夜此処ここでの一殷盛
今夜此処での一と殷盛り
サーカス小屋は高い梁
そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ
頭倒さかさに手を垂れて
汚れ木綿の屋套のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
それの近くの白い灯が
安値やすいリボンと息を吐き
観客様はみな鰯
咽喉が鳴ります牡蠣殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん
屋外やぐわいは真ッ闇くら 闇くらの闇くら
夜は劫々と更けまする
落下傘奴のノスタルヂアと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん』・・・どうかな?」
グリム「何かカッコいい詩なんだゾ!」
デュース「特に最後のゆあんゆよんゆやゆよんっていうのが印象に残るな!」
優「僕も同じこと思ったよ!」
感想まだです。
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.22 )
- 日時: 2021/08/06 14:32
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
優たち4人は食堂に集まり、昼食を食べている。
ちなみに優が選んだのはオムレツであり、理由は言うまでもなく文豪である萩原朔太郎の好物である為だ。
優「オムレツ・・・うん、美味しい!」
グリム「ふなふなふなふな・・・」
エース「グリム食い方汚ねぇぞ」
・・・こんな光景、治安の悪いNRCではスカラビアの生徒でもない限り見ることは叶わない。
それなのに周りに花が浮かんでいるように見えるが、気のせいだろうか?
優「そういえば君たち2人の寮は今朝行ったけど、他の寮はどんな感じなの?」
そこにケイトとアイビーグリーンの短髪で優しそうな造形の生徒がやってくる。
ケイト「学園のメインストリートにグレート・セブンの石像が立ってるじゃん?あの7人に倣ってこの学園には7つの寮があるんだよ。」
エース「げぇ!?あんたは・・・」
優「ケイトさんですね。あともう一人は・・・初めまして。時ノ小路優です。僕の世界で僕の暮らしている国ではファミリーネームを先に名乗るので、時ノ小路が名字で優が名前です。」
???→トレイ「お、中々礼儀正しいやつだな。俺はトレイ。トレイ・クローバーだ。ケイトと同じハーツラビュルの3年生だ。」
エースとグリムは今朝追い出された事に苛立っていたが、どうやら寮の決まりだったらしい。
そして彼ら曰く『寮の外なら従わなくても良い』らしい。
グリム「そういえばここの寮ってどんなのがあるんだゾ?」
トレイ「じゃあ説明するぞ。」
優が頭の中で纏めると、こんな感じだった。
・ハートの女王の厳格の精神に基づく『ハーツラビュル寮』
・百獣の王の不屈の精神に基づく『サバナクロー寮』
・海の魔女の慈悲の精神に基づく『オクタヴィネル寮』
・砂漠の大賢者の熟慮の精神に基づく『スカラビア寮』
・美しき女王の奮励の精神に基づく『ポムフィオーレ寮』
・死者の国の王の勤勉の精神に基づく『イグニハイド寮』
・茨の魔女の高尚の精神に基づく『ディアソムニア寮』
そして今自分の所属しているオンボロ寮である。
トレイ「どの寮に所属するかは闇の鏡が魂の形を見て決めるんだが、大体はキャラが決まってるからな」
デュース「キャラ、ですか?」
ケイト「例えば・・・あの子!」
ケイトが示した生徒を見ると、白髪褐色の狼の獣人で、黒いブレザーはもとより黄色のベストと黒と黄色の腕章をつけていることがわかる。
トレイ「彼はサバナクローの寮生だな。あそこは獣人の割合が多くて格闘技やスポーツの達人が多いんだ。」
グリム「ふーん?じゃああの白と薄紫の腕章のやつは?」
グリムが指さした先には眼鏡をかけた生徒がいる。
ケイト「あれはオクタヴィネルだよ。それで、その手前にいる臙脂色と黄色の腕章はスカラビアの寮生。筆記試験はそこ2寮がデッドヒートしてるね」
ふーんと優が見ると、そこには紫と赤の腕章をつけたやたらキラキラしい生徒が2人いる。
確かあの色はポムフィオーレだったな、と思い出す。
奥を見るとディアソムニアの生徒もいることがわかる。
しかし、イグニハイドの寮生はほとんど座っておないことが分かる。
優(イグニハイドの人達、言い方悪い気もするけど根暗が多いのかな・・・?)
エース「あれ?子供が混じってる?」
優「え?」
優がエースの言葉につられて見てみると、その相手はリリアだった。
確かに外見は完全に子供だが、優はどこかリリアと初めて合った時から明らかな爺臭さを感じた。
ふと近くを見ると、マレウスがいる事にも気がつく。
トレイ「うちの学園は飛び級入学ありだからな。でも彼は子供じゃないぞ?俺達と同じ3年生の・・・」
するとリリアが蝙蝠のように逆さまになってこちらに現れる。
リリア「リリアじゃ。リリア・ヴァンルージュ」
優「あ、リリアさんこんにちわ!昨日ぶりですね!」
リリア「おぉ、優か。昨日は大変じゃったようじゃな?」
思わずびっくりしたが、あまり驚かなかった優はそのままリリアと談笑を行う。
その様子に思わず周りは目が点となる。
するとそこにマレウスもやってくる。
優「あ、マレウスさんもこんにちわ!」
マレウス「優か。お前は中々楽しんでいるようだな。」
優「そうでしょうか?・・・そう言えば、僕がオススメした僕の世界の文学、どうでしたか!?」
マレウス「あぁ、なかなか面白かったぞ。人間の葛藤や贖罪の物語、こちらでは中々ないからな」
エース「いやいやいやちょっと待て!」
優「どうしたの、エース?」
マレウスとそのまま文学談議に行くところだったが、何とかエースがツッコミを入れる。
優からしたら理解不能だ。
エース「おっまえ!何で、どうしてあのマレウス・ドラコニアと仲良くなってんの!?」
優「2日くらい前にオンボロ寮で会ったんだ。その時に僕の世界の小説、『恩讐の彼方に』を布教たんだ。」
デュース「そ、それでそのまま仲良くなったのか・・・」
リリア「しかし、ワシのこの登場に驚かないとはなぁ・・・」
優「僕の世界の文豪の志賀直哉先生は晩年の時に蝙蝠の真似して鴨居にぶら下がったという逸話がありますし・・・それに比べたらマシかな〜って」
エース「ちょっと待て」
優「どうしたの?」
まるで信じられない事を聞いたと言わんばかりの表情をしており、説明をしてくれと言わんばかりの様子だ。
トレイ「そ、その志賀さんって人は享年何歳なんだ・・・?」
優「確か・・・享年88歳です」
マレウス「中々元気な人間だな」
ケイト「いやいや元気すぎでしょ!?ってかその文豪さん80すぎで何やってんの!?」
優「いや、これはかなりマシだと思いますよ?志賀先生たしか山手線・・・電車に撥ねられて頭蓋骨見える大怪我負ったのに12日で完治して退院、後に兵庫という場所に療養しに行ったけど、大阪というところで途中下車して三日三晩遊び回ったという逸話が(マジです)・・・」
エース「待て!まじで待て!」
その場にいた全員が「は?」とか「何て?」と言わんばかりの表情をしている。
自分も文豪図鑑等を読んだ時に思わず「この人もしかして化け物・・・?」なんて失礼なことを考えてしまったが、それは本当にそう思っても仕方がない。
その後、リリアとマレウスは元々座っていた場所へと戻る。
優は楽しそうに手を降って見送っていた。
ケイト「で、でもあのヤバヤバのヤバのマレウス君と仲良くなる1年ってすごいね〜まあ、それを言うならうちの寮長も激ヤバなんだけど」
エース「ほんっとうにな!タルト一切れ食ったくらいでこんな首輪つけやがって!心の狭さが激ヤバだよ!」
???「ふーん?僕って激ヤバなの?」
優「あ・・・」
エースの後ろにはワインレッドの短髪にグレーの瞳をした生徒がいる。
二本のアホ毛がハートのような形になってるのが面白い。
だが、その表情はとても不機嫌に見える。
恐らくだが彼が寮長だろう。
優とデュースが止めるのも聞かずに言葉を吐き続ける。
エース「そーだよ!厳格を通り越してこんなんただの横暴だよ!」
デュース「エース、後ろ!」
エース「ん?でぇ!?寮長!?」
エースに好き勝手言われていた人物は不機嫌だと言うことを包み隠さずの様子である。
エースの様子からタルトを食べた事を反省していないのは丸分かりだ。
???→リドル「君、僕はリドル・ローズハートだ。昨日は僕の寮生がすまなかったね」
優「いえいえ。僕が助けたかっただけですし・・・」
エース「ていうか寮長!これ外してくださいよー!」
リドル「反省していないのに外すわけがないだろう!全く・・・」
優「エース!」
エースの反省のない態度からリドルは落胆した様子で去っていく。
トレイ「じゃあ、これから何でもない日のパーティー用のタルトを作るか?それならまだリドルも許してくれると思うぞ?」
エース「でも俺作ったことないし・・・」
ケイト「それなら、トレイ君とけーくんが放課後一緒に作ってあげるよ。」
優「いいんですか?」
トレイ「構わないぞ。時期だから、マロンタルトでも作るか。材料はこっちで用意するから放課後食堂の厨房に来てくれるか?」
優・デュース「はい!」
グリム「分かったんだゾ!」
エース「・・・へーい・・・」
明らかにサボる気しかなさそうなエースは優が膝カックンしておいた。
感想まだです
- Re: きらびやかな日常 第二章 ( No.23 )
- 日時: 2021/08/06 14:38
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
本日最後の授業は魔法史だった。
トレイン「それでは今日の授業はここまでとする。」
ハーツ寮生「やっと終わったー・・・」
サバナ寮生「かったりぃぜ・・・」
優「エース君、デュース君。お疲れ様・・・グリムも頑張ったね」
グリム「俺様にできないことはないんだゾ!」
エース「まあ余裕〜「でもついてくのぎりぎりっぽかったけど」お前なぁ・・・」
デュース「お前がそういうってことはそうなんだろうな。でも、俺はもっと頑張らないと・・・」
優「・・・デュース君、これからトレイさんとケイトさんのところに行くよ!勉強についていくのはいいけど、無理は良くないよ?」
デュース「!?何で分かって・・・」
一応だが優も探索者の端くれだ。
その為何となくだが心理学で考えている事が分かる。(ちなみに優の技能は図書館、目星、聞き耳、説得、芸術(文学)、精神分析学、応急手当、心理学、投擲である。逆に幼馴染兼親友の陽斗は目星、キック、こぶし、マーシャルアーツ、頭突き、武道、芸術(サッカー)、跳躍、組み付きとかなり脳筋)
優「何か悩みがあるなら聞くよ?」
デュース「・・・強いて言うなら、お前みたいな優等生になりたい。」
優「優等生に?っていうか何で僕みたいな!?」
デュース曰く、どうやら中学時代は荒れていた・・・要するに元ヤンらしく、優等生になろうと思ったきっかけが母親が泣きながら祖母に『自分の育て方が良くないのか』と連絡していたのを見たことらしい。
そして、この学校に入学する事になった時に誰よりも喜んでいたのがデュースの母親だったそうだ。
優「なるほど・・・優等生になりたい理由は分かったけど、何で僕みたいな?」
デュース「物覚え良いし、要領だってかなり良い。僕はかなり要領悪いのに・・・それに、ご両親に名付けてもらった名前みたいに誰にだって優しいし、真面目だし・・・」
優「そうかなぁ・・・でも、変わろうと行動してるのが、僕はすごいと思うけどね。さ、そろそろお二人のところに行こう。」
エース「へーい」
食堂の厨房に向かう途中でも、エースはリドルに対する不満ばかりだ。
何故あれだけ怒られているのにあんなにも不平不満を零す事ができるのだろうか?
もしもこの場にリドルがいれば、この先しばらくは首輪を外してもらえないだろう。
?????「おやぁ?リドルについてしいたいかにゃあ?」
優・エース・デュース・グリム「(うわ/おわ/ふな)ああああああああああああ!!!!?」
その場に首が浮いており、髪型は猫のようにはねた短髪で紫をベースに薄紫のメッシュが入っており、首から下が無い。
こんなの悲鳴をあげるなという方俺はが無理だろう。
現にエースとデュースとグリムは腰を抜かし、優はSANチェックに成功したもののSAN値が2減った。
?????「おっと、体を出すのを忘れたにゃあ」
優「体あったんですね!良かった!っていうかあなたは!?後リドルさんについて何か知ってるんですか!?」
?????→チェーニャ「おみゃあ意外と冷静だにゃあ。俺様は猫のような人のような魔力を持った不思議な奴、アルチェーミ・アルチェーミエヴィチ・ピンカーだにゃあ。まあ、チェーニャって気軽に呼んでほしいにゃあ」
優はともかくとして、エースとデュースとグリムは頭がこんがらがってちんぷんかんぷんだ。
グリム「アル・・・何なんだゾ・・・?」
エース「グリムお前諦めるの早すぎだろ!アルチェーミ・・・何だったっけ?」
デュース「お前も人の事言えないぞ!・・・そういう僕と一言も分からないが・・・」
優「よろしくお願いします。アルチェーミ・アルチェーミエヴィチ・ピンカーさん。あ、チェーニャさん、でいいんでしたっけ?」
チェーニャの難しく長いフルネームを1回も噛んだり躓いたりする事なくスラスラと言うことのできた優に3人から驚きと尊敬の入り混じった瞳を向けられ、チェーニャ本人はまさかこの名前を覚えられるとはという驚きを見て取れた。
チェーニャ「おみゃあ俺のフルネームを間違えずに言えるってすごいにゃあ!」
優「そうでしょうか?人の名前と顔を覚えるのは最低限の礼儀では?」
そう言うと優は改めてリドルの事を聞く。
優「それはそうと、チェーニャさんはリドルさんの事をご存知なんですか?」
エース「ってかまじで知りたい!どうやって育てたらあんな横暴に育つんだよ!」
優「こらエース!」
エースをたしなめる優を気にも止めず、チェーニャは少し話す。
チェーニャ「リドルについて知りたきゃ、まずはあの眼鏡に聞くにゃあ。俺ならまずあいつに聞くにゃあ。」
優「眼鏡・・・トレイさんの事ですか?幼馴染、という事ですね?」
チェーニャ「そうだにゃあ。じゃ、それじゃーな。フンフフーン♪」
透明になり、鼻歌を歌いながらチェーニャを優たちは少し困った様子で見送っていった。
グリム「・・・何だったんだゾ?」
優「さあ?じゃあ行こうか。ついでに、リドルさんについても聞こう?」
エース「だな!」
感想まだです
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.24 )
- 日時: 2021/08/06 14:43
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
場所は食堂の厨房に移る。
たくさんの栗に卵、小麦粉や生クリームにアーモンドプードルに砂糖が用意されており、何でもない日のパーティーが如何に豪華か分かるだろう。
トレイ「まずは栗を剥くぞ。グリムとデュースは魔法で、優とエースは手作業でやってくれ。」 優「はい。」
エース「へーい・・・」
正直栗を剥くのは手作業でも魔法でもキツい。
エースがデュースとグリムを見ると、少し手間取っていることが分かる。
トレイとケイトは余裕で次々と剥いていく。
そして優の方を見ると・・・エースは愕然とした。
優は手際よく次々と栗を剥いてゆき、彼の近くにはすでに剥かれた栗で大きな山ができている。
それを見ていた5人(4人と一匹)は優のあまりの手際の良さに思わず手が止まっている。
優「よし、できた!・・・あれ?皆さん何で手が止まってるんですか?」
トレイ「ここまで手際が良いとは思わなかったからな。少しびっくりした・・・」
優「ああ、エースとデュース、グリムは自己紹介タイムの時聞いてると思うけど、僕には叔父が2人いるって言ってたよね?」
グリム「確かに言ってたな・・・それがどうしたんだゾ?」
優「叔父様は2人いるので少し区別がいるので・・・優白叔父様はケーキ屋さんを営んでいるんです。それで、彼から栗の剥き方も教えていただいたんです。彼の仕事がお休みの時、たまにお手伝いしてお菓子作りをするんですよ」
デュース「それで手慣れてるのか・・・じゃあもう一人の叔父さんは何をしているんだ?」
優「優星叔父様は図書館の司書を務めているだよ。」
ケイト「めっちゃお金持ちじゃん!」
優がエースにコツを教えつつ手伝いや片付けも自ら率先して行っている。
とても美味しそうなマロンタルトが出来上がった。
優「やーっと終わったぁ・・・」
エース「めちゃくちゃキツい・・・」
優「そりゃそうだよ。お菓子作りは意外と力仕事だからね。」
エース「じゃあこれから寮長の所に一緒に「行かないよ」何でだよ!?」
優も道連れにしようとしていたエースだが、優はサラリと断る。
優「そりゃオンボロ寮の修繕作業とか、僕の世界の本の翻訳作業とか、この世界の勉強とかもあるし・・・それに朝は仕方なく、だよ。今はトレイさんとケイトさんという第三者がいるし、大丈夫だと思うけどなぁ・・・」
エース「マジかよぉ・・・」
優「じゃあ次の日には首輪外されてるだろうし、じゃあね」
エース「お、じゃあな」
デュース「また明日な」
優はエースとデュースたちと別れたあと、優はトレイにリドルの事を聞き忘れたことを思い出す。
『また別の日に聞けばいい』。そう思いながら、Mr.Sのミステリーショップという購買に訪れる。
そこは様々な物が売られている。
だいぶ派手な格好をした褐色の肌の男が店員だろう。
??→サム「おっと、小鬼ちゃん、何か欲しいものがあるなら・・・このサムにお任せを!」
優「じゃあパスタとツナ缶、ケチャップにひき肉と油、レタスにミニトマト、薄力粉に粉砂糖に無塩バターに卵、マロンペーストにアーモンドプードルをください。」
グリム「ふな?何でそんなに買うんだゾ?」
優「そりゃあのタルトはパーティー用で僕らは食べられないからね。だから、僕ら用のマロンタルトだよ!今日の晩御飯はミートスパゲッティとツナサラダ、デザートにマロンタルトだよ!」
グリム「ふな!?豪華なんだゾー!」
優「じゃあ早く戻ろう?グリムも手伝ってくれるよね?」
グリム「もちろんなんだゾー!」
オンボロ寮に戻ると優はエプロンを身に着け(オンボロ寮にあったボロ布をパッチワーク風にアレンジし、それでエプロンを手作りした)、掃除を始める。雨漏りはしばらくの間はバケツで凌ぐことにして、休日の間に直そうと決めると、優はキッチンに立つ。
ゴーストたちも手伝い、ミートスパゲッティとツナサラダ、ミステリーショップでかったロールパンにマロンタルトといった豪勢な晩御飯になった。
ゴーストA「んー、美味しいねぇ」
ゴーストB「これならもし卒業してもここの食堂で働けるよ〜」
ゴーストC「見栄えもいいし、君良い夫良い主夫になれると思うなぁ〜」
優「ありがとうございます。でもこのくらいできて当然ですよ。親は仕事が忙しくていない事の方が多いですし、優白叔父様や優星叔父様から教わったんですよ。」
グリム「優〜!早くマロンタルト食べるんだゾー!」
優「グリム、口にケチャップ付いてるよ!」
グリムの口についているケチャップを拭き、最後に取っていたマロンタルトを食べる。
栗の芳醇な味わいが口の中に広がり、タルトレットのサクサクとした食感が5人(1人と一匹と3体)の口の中を踊る。
グリム「ふなぁ〜めちゃくちゃ美味しいんだゾ!」
優「うんうん!我ながら上手にできたよ!」
ドンドンドン…
優「何だろ?」
グリム「今日と昨日でもう3回もノックされてるんだゾ・・・」
もう何度も扉を叩かれている為慣れてしまったのだが、優はこれでまたエースやデュースだったら蹴り飛ばしてやろうという決意を胸に秘めた。
エース「なあ優、今日もここに泊めて「えいや!」いっでぇ!?」
デュース「ぐふっ!?」
優はその決意を現実のものとし、二人の腹に回し蹴りをくらわせた。
だが、優の頭の中にはある考えを浮かべた。
二人の服は寮服というかなり派手な格好をしており、エースの首輪は外されていないどころか、デュースにも首輪をつけられていた。
優「どうしたの?タルト持っていって謝ったんでしょ?」
感想まだです
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.25 )
- 日時: 2021/08/09 14:24
- 名前: 桜木霊歌 (ID: TKLsfDAG)
エースたちの話を纏めた結果・・・
①ハートの女王の法律『第562条 「なんでもない日」のティーパーティーにマロンタルトを持ち込むべからず』に反していた(トレイも把握していなかった)
②結果せっかく作ったマロンタルトを破棄される
③そのまま『首をはねろ!(オフ・ウィズ・ユアヘッド)』を二人揃ってくらう。
④怒ってそのまま寮を飛び出す。
優「嘘でしょ!?っていうか副寮長さんが把握してない法律まで把握してるって・・・」
グリム「どんな時でも食いたいもんは食いたいんだゾ・・・」
エース「もう横暴通り過ぎてこんなの暴君だろ!」
確かに言いたいことは分かる。
だが、あることを思い出してエースに一言物申す。
優「トレイさん!トレイさんに聞いてみよう!」
デュース「クローバー先輩に?」
優「チェーニャさんが言ってたよね?リドルさんの事はトレイさんに聞けってさ。聞き忘れちゃったし・・・」
エース「だな!たく思い出すと腹が立ってくる!」
そう言ってる間に、エースとデュースの腹の虫がなる。
そういえばまだマロンタルトもミートスパゲッティもツナサラダもロールパンも残ってたなと思い、2人を机の方へ案内した。
・
トレイを搜す為に聞き込みをしており、トレイが図書館にいると教えてもらい、早速4人は図書館へと向かった。
優「トレイさん・・・」
トレイ「ああ、お前達か。どうしたんだ?」
エース「俺達、寮長のやり方に納得いかねーんだけど。」
そのエースの言葉を聞き、トレイは頭に手を当てて「・・・だろうな」と弱々しい声で一言言った。
優「トレイさん、あなたはリドルさんの事をどう思ってるんですか?」
エース「そうやって小さい頃からあいつにペコペコしてきた訳?」
まるで自分とリドルが幼馴染である事を知ってるかのような話し方で、質問してきたことにトレイは驚いたような様子だった。
トレイ「・・・!?何でそれを・・・」
デュース「チェーニャって奴から教えてもらいました」
トレイ「なるほどな・・・あいつ・・・」
グリム「それ以前に、お前の方が歳上なんだろ?ビシって叱ってやれ!」
グリムが最もな意見を述べるが、トレイは「無理なんだよ」と弱々しい声で呟いた。
トレイ「俺にはあいつを叱る資格なんて無いんだ」
優「・・・リドルさん、何か訳ありなんですね?話していただけますか?」
トレイ「・・・ああ。」
トレイから聞いた話によると、リドルの両親は地元でも高名で知らない者はいないと言われるほどの魔法医術士(ツイステッドワンダーランドの医者みたいなもの)であり、特に母親の方はかなり優秀だったそうだ。
その為、リドルの母親はリドルにも優秀であることを求め、学習プログラムは分刻みで刻まれていた。
学習プログラムのみが分刻みで決められていたら、まだマシだったのだろう。
リドルの母親はリドルの事をルールで厳しく縛り付けていた。
食べる物も着る物も、消耗品も友達も・・・眠る時間も何もかもが決められていた。
両親の期待に答えるために、あのユニーク魔法を10歳で完成させ、成績もエレメンタリースクールからずっと学年主席をずっと維持し続けていた。
そんな生活を送っていたリドルが『厳しいルールで縛り付けること』が皆の為になるという思考になるのは時間の問題だった。
リドルがそうなったのは、母親の教育が原因だろう。
エースはトレイに何か言おうと思ったのだが、優の様子を見て思い留まった。
優は優で、とある人物たちを思い出していたからだ。
それは、優の曽祖父である『空渡彼岸』とその姉であり、優に夢の誘いを受けてみろと言った優の先祖である『桜木霊歌』。
2人は幼い頃は両親に『医者になれ』と言われ、道を決めつけられていた。・・・いや、幼い頃に喘息を持病で持っていた彼岸は後継ぎとしては不出来としてネグレクトを受け、霊歌は毎日勉強漬けの日々で友人を作る事すら許されなかった。
だが、霊歌はそんな日々が嫌になり家から東京へと逃げ出した(当時の霊歌:11歳 当時の彼岸:5歳&しかも密告文を新聞社や警察署に匿名で送りつけたというおまけ付き)
だからこそ、優はリドルと2人を重ねてしまった。
もしも霊歌が彼岸を連れて逃げ出すという選択肢を選ばなければ、自分もリドルと同じような人間になっていたろだろうか?と優は考えた。
優「・・・だから、ご自分には叱る事はできない、と?」
トレイ「ああ・・・」
その言葉を聞いた優は涙を瞳に浮かばせ、とても悲しそうな表情をした。
そして一息ついて、とある詩を唱った。
優「『幸福とは茨の道を越えてこそ得られるもの也
幸福とは藪の中を抜けてこそ得られるもの也
幸福とは苦しみを耐え抜いてこそ得られるもの也
幸福とは間違いを正してこそ得られるもの也
幸福とは皆の笑顔を大切にしてこそ得られるもの也
幸福とは他者の痛みを理解してこそ得られるもの也
幸福とは自分の意志を貫いてこそ得られるもの也
それが出来ぬならば、真の幸福を得ることなどできぬのだから』・・・」
トレイ「今のは?」
優「ひいお祖父様の詩集、『一縷の望みは月越えて』の収録されている詩、『茨の幸福』ですよ。この詩はひいお祖父様にとっての幸福の定義を描いているんです。・・・トレイさん、あなたはリドルさんに嫌われるのが怖くて気の弱いイエスマンになってるだけでしょう!?お願いします、トレイさん・・・彼を・・・リドルさんの事を思うなら、彼を突き放すべきです!このままハートの女王の法律やお母さんの決まりに縛られていれば、リドルさんは本当の幸福を得る事はできない!」
トレイ「・・・」
優の言葉、彼岸の詩に宿る強い心に何か思うところがあったのか、どこか苦い表情をしている。
するとそこにどこからか学園長が現れた。
クロウリー「話は聞かせていただきましたよ!」
優「うわびっくりした・・・」
クロウリー「トラッポラ君は首輪を外してくれと謝るのも嫌だけど、穏便に説得できる気もしない、と?」
エース「まあ、そんなとこ」
クロウリー「そんなに寮長とウマが合わないのなら、転寮するという選択肢とありますが。」
優「でも今の寮って闇の鏡が魂の資質を見て決めたんでしょう?勝手に変えてもいいんですか?」
優の質問には、学園長は『優の言うとおりで、仮にそうするとすれば面倒くさい手続きや儀式が必要になる』という旨の返答をするが、エースは「転寮は逃げるような感じがしてヤダ」と答えた。
そんなエースの様子に、学園長はある提案を出す。
クロウリー「ではローズハート君に決闘を申し込んで君が寮長になっちゃえばいいんですかね?」
優・エース・デュース・グリム・トレイ「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええー!!!!?」
クロウリー「声が大きい!」
そういえばリドルは入学してから僅か一週間で寮長になったそうだ。
と言う事は、リドルもかつては決闘で寮長になったのだろう。
しかし、ここでは魔法を使った私闘は禁止されているはず。
その事を優が指摘すると、学園長はこういった。
クロウリー「私闘はね。学園長立ち会いのもとで行われる決闘は話が別です。」
エース「よっしゃやってやろうぜ!」
優「馬鹿エース!相手はたったの一週間で寮長になったんだよ!?そんな相手に勝てると思ってるの!?馬鹿なの!?あ、馬鹿だったよじゃなきゃタルト食べないし!」
優の言い様は見事だが、エースは一言も聞いてない。
だが、ある一言をエースは聞き逃さなかった。
エース「優今俺の事エースって・・・」
優「へ?」
エース「今俺の事、呼び捨てにしたじゃんか」
優「あ・・・!何というか、不可抗力で・・・」
エース「別にいいじゃんか!これから俺の事、エースって呼べよ?」
デュース「じゃあ僕も、デュースって呼んでほしい」
2人の提案を優は少し戸惑ったが、すぐに微笑んで「うん」と口にした。
優「改めて、これからよろしくね。エース、デュース」
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- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.26 )
- 日時: 2021/08/07 06:38
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
結果、優も決闘に立ち会いに行ったのだが、周りは「嘘だろ!?」、「マジかよ!?」、「冗談だろ!?」といったものが多い。
クロウリー「では、この手鏡が割れると同時に決闘は始まります。ではレディ・・・ファイト!」
学園長が手鏡を落とし、それと同時に事前に首輪を外されていたエースとデュースはマジカルペンを構えるが、それより先にリドルが寮長の杖を構え、ユニーク魔法の詠唱が早かった
リドル「首をはねろ!(オフ・ウィズ・ユアヘッド)!」
二人にあっという間に再び首輪をかけられた。
優「だから言ったのに・・・」
優のエースとデュースを見る目は、呆れというか、憐れみというか・・・何とも言えない感情が込められていたが、リドルの手腕はなかなかのものだ。
たった一瞬であの杖を構え、ユニーク魔法を発動させる。
為せる技なのか・・・いや、よくよく考えれば霊歌やシェヘラザード、レイナのような両手杖射撃職である創造主はあれよりも早く杖を構えられる。
赤ずきんやゲルダのような両手杖射撃職の主役はリドルと同じくらいのスピードで杖を構えられるだろう。
だが、優にとっては聞き捨てならない言葉が容赦なく響いた。
リドル「全く・・・君たちといい監督生といい・・・大した魔法も使えない親から生まれてロクな教育も受けられなかったんだろう。不憫だね。」
優「・・・は?」
優の耳にはそんな言葉が聞こえた。
何が?誰が?どんなだと?誰が不憫だと?
優の心にはフツフツと怒りの感情が湧いてくる。
大人しく滅多な事では怒ることの無い優は怒りで体を震わせている。
足が動き始めたその瞬間だった。
パァン!
エースがリドルを殴ったのだ。
周りにいる寮生たちや学園長、そして殴られた本人は驚いている。
クロウリー「ちょ、ちょっと何やってるんですかトラッポラ君!この決闘は魔法のみ。魔法以外は禁止されています!その為失格ですよ!」
エース「構わねぇよ!友達や俺の家族を侮辱されておいて、黙ってられないだろうが!」
優だって同じことを思っていた。
優「・・・そうですよ・・・僕の事はまだしも、僕の家族までも侮辱するなんて・・・許せないです・・・!あなたがどれだけ優秀でも、そんなにルールばかり優先して、失墜しようが僕には関係無いんですけどねぇ!」
リドル「何を訳のわからない事を言ってるんだい!?お母様の言う通りにルールを守っていればいいんだ!お母様は正しいんだ!」
優「何言ってるんですか?あなたにはあなたなりの信念や誇りがあったと思っていましたが、何もなかったどころか、お母さんに言われたから!?意味が分かりませんよ!何もわかってない子供はあなたじゃないですか!」
ただでさえ家族を、尊敬している曾祖父を侮辱されたのだ。
怒りは収まる事はないし、相手も全く引く気はない。
・・・それが原因だったのだろうか?
あるいは・・・意図せず怒りに任せてしまった言葉がとんでもない地雷をリドルの足元に落としてしまった。
優「本当に巫山戯ないでください!あなたに僕の家族の何が分かるんですか!?尊敬するひいお祖父様や大叔母様の事を分かるんですか!?僕だってあなたのお家族の事を何一つ知りませんが・・・あなたの『お母様に言われたからルールを守っている』というくだらない理由で何のメリットもないくだらない法律を守るだなんて・・・馬鹿みたいじゃないですか!」
リドル「馬鹿、だと・・・!?ウギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
顔を真っ赤に染めて癇癪を起こすリドルの様子を見て、優は再び容赦なく、そして意図せず爆弾を落とした
優「何とみっともない・・・それで寮長がよく務まったものですね!」
優の言葉に反応したのか、リドルに何が当たる。
それは生卵だ。
リドル「・・・は?」
優「え!?」
ハーツ寮生「監督生の言う通りだ!もう耐えられないしウンザリだ!」
そんな寮生の言葉に賛同するかのように、次々とブーイングが次々と響き渡る。
優は落ち着くように指示するが、興奮した人間というものは止まることはできない。
リドル「誰だ!?誰がこんな真似をした!?今すぐ名乗り出ろ!」
どの寮生も名乗り出ない。
リドルに怒ってはいるが、ここまで大事になることは望んでいない。
リドル「もういい。ウンザリなのはこっちだ!どれだけどれだけ首をはねてもまたルール違反を繰り返す・・・!名乗り出ないなら、全員連帯責任だ!首をはねろ!(オフ・ウィズ・ユアヘッド)!」
その場にいたトレイとケイト、学園長と優を除いた寮生に首輪がつけられる。
優は咄嗟にグリムを庇った為、グリムは首輪を間一髪でつけられずにすんだ。
ケイト「トレイ、これやばいよ!あんなに魔法を連発したら・・・」
トレイ「くっ、リドル止めろ!」
そんなトレイの言葉は聞こえていない。
リドルは優を標的としている。
リドル「薔薇の木よ、奴をバラバラにしろ!」
エース・デュース「優!」
優「・・・!」
エースとデュースが優を救う為にこちらに走るが間に合いそうもないし、優自身も躱せるようなものではない。
優は思わずグリムをギュッと抱きしめる。
少しでもグリムが怪我をしないように、守るように自らの背中を盾にし、目を閉じる・・・!
トレイ「!薔薇を塗ろう(ドゥードゥル・スート)!」
トレイのその詠唱と薔薇の木が優に襲いかかるのはほぼ同時だった。
そして、優が感じるであろう痛みは、ほぼ感じなかった。
その代わりにぺちペチペチと、紙・・・いや、カードのような物が当たる感覚がした。
思わず目を開けると、そこに落ちていたのはトランプだ。
優「え・・・今のは・・・?」
リドル「!?トレイ、なぜ邪魔を・・・!?」
先程の詠唱、そしてリドルの言葉でこの状況はトレイのユニーク魔法で生み出された現象だと理解する。
優「トレイさん今のは・・・」
トレイ「俺のユニーク魔法、薔薇を塗ろう(ドゥードゥル・スート)だ。この魔法は落書き(ドゥードゥル)のように短時間だけだけだが、物や魔法の要素を上書きできるんだ」
グリム「どういうことなんだゾ?」
優「ようは食べ物の味を変えたり、有害の魔法を無害な魔法に短時間の間変えられるって事ですね?」
トレイ「分かりやすく例えてくれてありがとう。」
だが、その行動はリドルに対しては明らかな痛手だった。
リドル「トレイ、何でなんだ!?だったら僕は今までなんの為に頑張ってきたんだ!!!」
リドルの言葉に優は耳を貸す。
彼は親のせいであるべき道を歪められて育てられた被害者だ。
それと同時に、曾祖父や大叔母のあり得たかもしれない姿。
そう思っている優がリドルに向ける瞳は、同情と悲しみが入り混じっていた。
しかし、学園長はどこか焦っている。
クロウリー「いけませんローズハート君!それ以上魔法を使い続ければ、魔法石が『ブロット』に染まりきってしまう!」
学園長の言うブロットが何かは分からないが、止めなければならないのは確実だ。
しかし、激昂しているリドルにその言葉は届かない。
リドル「僕が!僕こそが!絶対!絶対!正しいんだあああああああああああああ!!!!!」
トレイ「リドルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」
ハーツラビュルらしい赤色の魔法石がインクを垂らしたような黒が染め上げていく。
その光景は、優にあの悪夢を思い出させるのは容易だ。
そして夢と同じように魔法石が完全に黒く染まると、衝撃波が発せられると同時にリドルの姿は様変わりしていた。
元々白かった肌は病的なまでに白くなり、グレーの瞳は血のような赤に代わり、右目は赤い炎を灯している。
黒と赤のドレス・・・ハートの女王のドレスをボロボロにしたような、それでいてインクの滴ったような印象を与える服に変わり、海外の葬式でつけられるような網掛けのようなメイクが施されていた。
そして、後ろには継ぎ接ぎだらけかつ頭がインク壺のハートの女王のような怪物・・・ドワーフ鉱山で見たような怪物が後ろに鎮座していた。
正しく優が夢で見た彼と同じ姿に変化してしまった。
優「な、何!?」
クロウリー「ああ、なんて事だ・・・私がついていながら、生徒をオーバーブロットさせてしまうなんて・・・」
グリム「オーバーブロットって何なんだゾ!?」
クロウリー「オーバーブロットとは、魔法士が一番避けねばならぬ状況です。彼は今負のエネルギーに囚われて感情と魔力のコントロールを失っている!」
優「ようは闇落ちバーサーカーって事ですね。把握しました!」
クロウリー「優君の理解が早い!まあその解釈は正しいです。このままではローズハート君の命も危ない!」
グリム「命いいいいいいいいいい!!?」
なら短時間かつ的確に攻撃を当てて正気に叩き戻せばいい。
優はすでに足を一歩踏み出し、導きの栞と空白の書をその手に携えて戦闘準備を始める。
クロウリー「ちょ、何をしているんですか!?いくら君が強力な魔法が使えるとはいえ、オーバーブロットは学生、それも1年生が対応できるものでは・・・」
優「それでも僕は助けたい!家族の事を侮辱された時は怒りましたけど、死んでほしいとは思ってません!それに、彼を救えるのは僕だけだから!」
優は導きの栞と空白の書を強く握りしめ、リドルを強く迷いの無い意思の込められた瞳を向けていた。
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- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.27 )
- 日時: 2021/08/06 15:00
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
優「桜木霊歌!接続!」
空白の書に導きの栞を挟むと同時に光が放たれ、優の体に纏わりつく。
身長は少し伸び、体格は丸みを帯びた柔らかい女性のものに変化し、髪色は変化していないものの、髪は腰までの長さに伸ばされる。
着ていた制服は白いブラウスに白い花の刺繍の施されたフワフワの赤いフレアスカートに変化し、履いていた靴と靴下は茶色いロングブーツと白いニーハイソックスを変化している。
そしてピンクのフリルで縁取られたピンクのガーベラの形をした留め金のついた赤いケープを羽織り、桜や日々草、白詰草で作られた花冠が頭に乗っかる。
驚くほど優の大差無いくらい変化はない彼岸花を思わせる赤い瞳に幼気の残る顔立ちの少女の姿に変化する。
空白の書は少女の身長とほぼ同じ長さと大差無い木造りかつピンクトルマリンやルビーが所々に埋め込まれ、先端には桜の花を模した赤い宝石と三日月のチャームのついた両手杖・・・『星屑桜の杖』に変化する。
そう、優の先祖であり優の曾祖父『空渡彼岸』の姉である『幼き童話作家』の異名を持つ創造主こと、桜木霊歌だ。
霊歌(優)「さあ、夢の世界へ一緒に行こう!」
クロウリー・トレイ・ケイト「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!?」
グリム「ふな!?優が女の子になったんだゾ!?」
デュース「ゆ、優が女の子に!?」
エース「接続って自分と性別が違っててもできるのかよ!?」
接続を知らないし見てすらいない学園長やトレイ、ケイトは純粋に驚いており、グリムとエースとデュースはまさか優が接続した登場人物が女の子だった事とそして使用者本人と性別が逆でも接続できる事に驚いていた。
霊歌(優)「あはは!びっくりするのは分かるけど、今は喧しいから少し黙っててね!」
そう言って優は真っ直ぐにリドルの方へ走り、その手に持つ星屑桜の杖をリドルに向けて振ると、先端についていた桜の花の宝石が光り、そこから光弾が放たれ、リドルに直撃する。
それと同時にリドルはかなり後ろの方へと飛ばされる。
優はそのチャンスを逃すまいとして確実かつ的確に杖を振るい、ダメージを与えていった。
だが、優の方は少しずつ思考や考えが霊歌寄りになっていってる。
接続は登場人物キャラクターズの魂と繋がる反面、長く接続していたり深く登場人物に共感すると、少しずつだが人格は接続した登場人物に似てくる。
今優が抱く感情や考えはほとんど霊歌のものだった。
リドル「何故だ!?何故僕を否定する!?僕は正しい!間違ってなどいない!」
霊歌(優)「・・・悲しいよ、リドル。あなたは私の生き写し。・・・そして、私や弟、優の辿っていたかもしれないIF(もしも)の姿。だから、こそだよ。私はあなたを止めて見せる!さあ、悪夢の時間はもうお終い!『桜並木の夢物語』!」
数多の光弾が空に放たれたかと思うと、それは光の雨になってリドルに降り注ぐ。
そして、着弾した場所から蔦が生え、リドルを伽藍じめにする。
それは幾重にも折り重なり、リドルの姿も見えなくなる。
そして蔦は桜の大樹に姿を変えて、美しさを醸し出す。・・・だが、花弁どころか気に咲いている花、そして木自体も枯れてゆき、最後には何も残らなくなる。
唯一残ったのは、オーバーブロットする前のリドルの姿のみだった。
リドル「僕が・・・間違っていた・・・?そんな訳、ないよね・・・?お母・・・様・・・」
霊歌(優)「おっととととと・・・」
優はリドルの体を咄嗟に抱える。
身長や体格はほぼほぼ一緒だと言えど、今の優は桜木霊歌・・・外見年齢16歳の女の子である。
少しふらついたものの、今の自分とほとんど同じで少し小さくて脆い体を優しく抱きしめる。
霊歌(優)「リドル、あなたの人生はこれからなんだよ・・・いろんな『可能性』、いろんな『もしも』、もっといっぱい見ようよ・・・」
そう言った優は体から光が剥がれていくような感覚を覚えながら目を閉じた。
感想まだです
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.28 )
- 日時: 2021/08/06 15:05
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
そして、優が再び目を開けると、そこは誰かの家だという事が分かるが、モノクロの謎の空間だった。
目の前には自分が先程、接続して戦ってくれた霊歌の姿もある。
優「霊歌さん、何で・・・!?」
霊歌「それはこっちの台詞!一体ここはどこなの?」
そんな疑問を挟んでいる中で、
???「8歳のお誕生日おめでとうリドル」
優・霊歌「!」
ふと声の聞こえた方向を見ると、そこにはモノクロだからか肌や髪の色は分からないが、リドルを幼くしたような外見の少年とリドルに面影のあり、彼と似たようなアホ毛のある女性の姿がある。
確かこの女性は『8歳のお誕生日おめでとうリドル』と言っていた。
という事は、ここはリドルの記憶の世界だろう。
リドル母「今年の誕生日ケーキは頭が良くなるレンチンたっぷりの大豆粉とナッツの低糖質ケーキよ」
優「えぇ・・・?」
霊歌「これ作って美味しいっていう人には申し訳ないけど、私には美味しくなさそうに聞こえるよ・・・」
リドル「ありがとう。ママ・・・でも、あのね、僕・・・1度でいいから真っ赤な苺がたくさん乗ったタルトが食べてみたいな・・・」
苺が大好きな霊歌は同士がいた事に少し嬉しそうになり、ニコニコとした様子でリドルに聞こえていないにも関わらず、触れられないにも関わらず、リドルの肩に手を置き(そしてすけて触れない)、一言言う。
霊歌「うんうん!苺美味しいよね!想区に迷い込んでからだけど、いちごタルト美味しいよね!」
優「霊歌さーん。リドルさんには聞こえてないですよー・・・にしても、リドルさんのお母さん、彼に似て美人ですね、」
そんな優の言葉を聞いて、霊歌はある一言を口にする
霊歌「確かにきれいな人だね。・・・でも、あの人達・・・私の本当のお父さんとお母さんのように、中身に一切期待できないけど」
接続している時に使用者と登場人物は互いの記憶を垣間見る。
霊歌には自分と似たような境遇にあったリドルの事を知り、リドルの母に良い印象を持てなかった。
霊歌にとっては、かつて『医者になれ』と自身を縛り付け、喘息を患っていた優斗・・・彼岸に対するネグレクトを行っていた両親に重なったのだ。
・・・実際に現実のものとなる。
リドル母「まあ、何てことを言うの!あんな砂糖の塊みたいなお菓子、毒みたいなものよ!一切れで一日分の糖質の理想摂取量をオーバーするわ!」
霊歌「は?」
優「何 言 っ て や が る ん で す か こ の お ば さ ん は ! 使う食材によっては糖質を抑えられるんですよ!」
こんなにもパティシエやパティシエール、お菓子作りを趣味とする人物に対する侮辱や冒涜に等しい事を言うような人間がいるだろうか?
霊歌は元々甘いものが大好きだからこそ怒ったのだが、優に至ってはマロンタルトを作っている時に言及したが、優の叔父の一人である『時ノ小路優白』は誰もがその名前を知る有名パティシエかつ、彼のケーキ屋はいつも行列の立ち並ぶほど人気で、優自身も彼にお菓子作りを教わった事がある。
その為優たちを怒らせるには十分すぎた。
霊歌「マジで何言うとるんやこのおばさん。やっぱり中身あの人らと一緒やわ。そりゃリドルもこんな人らの所で育ってしもたらあぁなるわな。」
・・・優は霊歌が本気で怒った所を久々に見た。
その証拠と言わんばかりに、霊歌の口調が大阪弁に変わっている(キャラ紹介見れば分かるが、私こと桜木霊歌は本気で怒ると大阪弁になる)
リドル母「さあ、今日はドコサヘキサエン酸とイコサペンタエン酸がたっぷりのヘルシーなマグロのソテーよ。」
優「そんなに長々と語られてもマグロのソテーという事しかわからないのですが?」
霊歌「てかそんなに言われてもさぁ、こっちが逆に困る・・・それ以前にタルトであんな事言ってたんだよ?絶対味薄くて美味しくないよ・・・」
リドルの母親の健康には良さそうだが、絶対に味は薄い・・・というか不味そうな料理に苦言を呈していると、リドルの母親は信じられない事を言い出した。
リドル母「ああ、でも8歳児の理想のカロリー摂取量は・・・1食600kcalだから・・・100g以上食べ過ぎないで。いいわね?」
優「ホントにこの人何言ってるんですか!?それだけ食べすぎないでほしいなら、それだけ作ればいい話なのに!」
霊歌「食べるものくらい自由にさせてあげなさいよ・・・」
明らかにリドルの母親はおかしい。
こんな事を言われ続けているのだから、きっと満足にケーキをお腹いっぱいに食べたこともないだろう。
そしてトレイからも教えてもらったが、分刻みの勉強スケジュールも厳しすぎるものだった。
リドル母「本日の古典魔法の勉強はここまで。明日までに今日の勉強に登場した魔法倫理学の言語哲学の教本を50ページ予習しておく事」
まだ8歳であろうリドルには分不相応の勉強量と勉強範囲。
逃げ出したくなるような課題の量に、優と霊歌は思わず頭を抑えてしまった。
だが、ある日の自習時間の時にリドルに転機が訪れた。
それはトレイとチェーニャとの出会いだ。
この2人はリドルと幼馴染だ。あんな状況でどうやってリドルが2人と幼馴染になれたのか?
そんな疑問があったが、あっさりと解決した。
自習時間の合間に2人と出会ったからだ。
そして3人は自習時間の合間にこっそりと抜け出し、遊ぶようになっていった。
そんな彼らに優と霊歌は微笑ましい気持ちになってゆき、リドルの念願のいちごタルトを食べさせてもらった時の表情は嬉しそうなものだった。
リドルはたくさん味わって食べた。
・・・時間を忘れてしまうほどに・・・
結果、自習時間を1時間もオーバーしてしまった・・・否、彼の勉強量から考えれば、このくらいの時間は大したことがないだろう。
だが、リドルの母親はそうは思わなかった。
リドルがルールを破ったからこそ、徹底的に彼を監視するようになった。
それ故に、リドルは遊ぶ事も大好きないちごタルトを食べる事も叶わなくなってしまった。
優「リドルさん・・・」
霊歌「リドル・・・」
その時、優と霊歌の耳にはリドルの声が響いた。
『ルールを破れば、楽しい時間まで取り上げられてしまう・・・』
『だから、お母様の決めたルールは絶対守らなきゃ・・・』
『この町で一番優秀なお母様は、いつでも正しいはずだから。』
『でも・・・ねえ、ママ・・・何でだろう?何故だかとっても胸が苦しいんだ・・・』
『お誕生日だけでいいから、いっぱいタルトが食べたい。』
『お外でいっぱい遊びたい。』
『もっといっぱい、お友達がほしいよ』
『教えて、ママ・・・どんなルールに従えば、この苦しさは消えるの・・・?』
紛れもない、そして優が聞きたかったリドルの我儘。
リドルの心からの叫びに、優にはどう答えてあげればいいのかは分からない。
だが、彼の心からの問いかけに答えることが人物がたった一人ここにいる。
その人物・・・霊歌は優が止めるのも聞かずにリドルの元へ走っていった。
そして、優の視界は真っ白に染め上げられた。
・
エース「・・・う・・・お・・・ゆ・・・おい優!」
優「あ・・・」
再び目を開けると、そこは元々いたハーツラビュル寮の庭園だった。エースやデュースをはじめ、グリムと1-Aのハーツラビュル寮生とトレイ、ケイトが優とリドルを心配そうに見ていた。
デュース「良かった・・・いきなり無反応になったからびっくりしたんだ・・・」
グリム「ホントに何も言わなくなるから、どうしたのか不安になったんだゾ」
優「そっか・・・心配かけてごめんね?」
トレイ「とりあえず、リドルを運ぼう。俺が「大丈夫。僕が運びます」え?でもな・・・」
優「心配しないでください。このくらいならまだ運べますよ。医務室まで案内してくれませんか?」
トレイ「・・・ああ」
トレイの案内のもと、優はリドルをおんぶして医務室へと運ぼうとする。
・・・だが、視界の隅にあるものが見えた。
それは、あの小人のような化け物の落したあの黒い石だった。
優は1度トレイにリドルを預けると、石を回収して学園長に投げ渡した。
多分、学園長の事だから石の事は放置しているだろうが、何かあったときのリスク減少の為に渡すのだ。
感想まだです
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.29 )
- 日時: 2021/08/06 15:10
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
僕は今日も自分の家でお母様に監視されて勉強している。
頑張らなくては、もっと期待に答えなくては・・・
寮長になったからと慢心はできない。
お母様の期待に答えないと・・・!
僕の後ろにお母様が立っている。問題を間違う事も躊躇う事もお母様は許してくれない。
僕には当たり前で、『普通』の毎日だ。
今は魔法薬学の復習予習を続けている。
これが終われば動物言語学の復習予習、その次は魔法史の、毎日毎日この繰り返しだ。
トレイもチェーニャも会いに来られない。もうあの窓は使えなくなってしまったから・・・
でも今日はどこか違った。お母様以外を感じたから・・・
でも、母方のお祖父様の気配でもお父様の気配でもない。
とても優しげで安心できる気配だ。
その気配をすぐそばで感じる。そして、その声を聞いたのはその瞬間だった。
??「ねぇ、それって面白いの?」
リドル「え・・・!?」
僕とお母様しかいない部屋の中にいたのは、癖の無い黒檀のような黒髪のロングヘアーに宝石のような赤い瞳を持ち、フリルのついた赤いケープと白いブラウスにフワフワの赤いフレアスカートを身に纏って白いニーハイソックスと茶色いロングブーツを履いて、極東の国にあるサクラという花と日々草、白詰草で作られた花冠を被った女の子だった。
その女の子は彼女の身長とほぼ同じ長さと大差無い木造りかつピンクトルマリンやルビーが所々に埋め込まれ、先端には桜の花を模した赤い宝石と三日月のチャームのついた両手杖を持っていた。
リドル母「ちょっと!どこから入ってきたのよ!リドルの教育に悪いから今すぐ出ていってちょうだい!」
女の子はお母様の言葉に怯まない。
むしろ、彼女はお母様に絶対的な嫌悪感を抱いている事が見て取れる。
??「黙っとけやおばさん。あたしはリドルに用事があるんや。あんたみたいなルール野郎には用はあらへん!」
とても育ちの良さを感じさせられたその容姿とは似合わない言葉遣いに思わず驚いたが、僕に用事というのが気になった。
するとその子は僕の手を握りしめる。
??「じゃあリドル、一緒に行こう!」
リドル「行くって、どこに・・・?」
??「広いとこ!」
そう言って女の子は僕を軽々と持ち上げて窓を壊して開ける。
そして窓から跳び下りると、そこは僕の知らない場所だった。
??「着いたー!」
リドル「こ、ここは・・・?」
??「帝国図書館。ここは私の国最大の図書館で、色んな本が置いてあるの!だからここで本を読もう!」
帝国図書館?聞いたことがないな・・・
それ以前に、本を読む・・・?僕にそんな事はできるだろうか?
お母様から童話すらも読ませてもらった事がないのに・・・
普通の生徒が知ってるかのような本を僕は知らない。自分で調べて初めて読むから・・・
だから、だから・・・
リドル「君のオススメの本があるところまで連れて行ってほしい、な・・・」
そういうと彼女はいたずらっぽく笑って「こっちだよ!」と言って僕を誘う。
知らなくて見たことのない文字なのに、何故か言葉が分かる。
彼女が連れてきてくれたのは、『文学コーナー』だった
彼女は「何か困った事とか見たい本のコーナーとかがあったら教えてね!」と言って早速本棚に向かった。
にしても、僕の知らない作家ばかりだ。
『芥川龍之介』、『泉鏡花』、『織田作之助』、『菊池寛』、『久米正雄』、『小林多喜二』、『坂口安吾』、『志賀直哉』、『太宰治』・・・やっぱり聞いたことがない。
後で調べようか?
そう思いながら本棚を眺めていたら、ある本に目が釘付けになった。
高い場所だったからはしごを使って本を取る。
表紙は何もない寂しげな駅で駅員と利用客らしき人物が描かれている。
題名は『失くし物探し駅』。作家の名前は『桜木霊歌』・・・やはり聞いたことがない。
本を手にした僕は、本のページを開き始めた。
・
物語を読んで泣いたのは久しぶりだった。
付喪神というものたちは分からないが、物に宿る妖精のような物なのだろうか?
だが、僕は今まで物について考えてきたことがなかった。
いつもいつも、お母様が使えないと判断したら勝手に捨てるからだ。
お母様に勝手に捨てられた失くし物たちはどう思っただろう?僕を恨んだ?お母様を恨んだ?
分からない・・・こんなにも何かについて強く考える事は、とても久しぶりだった。
??「大丈夫?」
リドル「あ、あぁ・・・大丈夫だよ」
そういう僕に怪訝そうな顔をした少女は僕の手にした本を見て、ぱぁっと太陽のような満面の笑みを浮かべて一言言った。
??「あ、私の本!こんなにたくさんある本の中から私の本を選んでくれたんだ!」
リドル「え・・・?」
今この子は何て言った?『私の本』と言った。
だけど、この子の私物が図書館に間違って置かれるか?・・・まさか・・・だが、考えられる可能性は1つだけだ。
リドル「まさか、君はこの本の作者の桜木霊歌さんなのかい・・・?」
??→霊歌「そうだよ!改めまして、桜木霊歌です!気軽に霊歌って呼んでね!」
ま、まずい・・・作者本人の前で作者の作品を見つけてしまった・・・読んだけど、どう伝えればいいんだ?
霊歌さんの喜びそうな感想を言えばいいのか?それとも・・・
僕の肩に手を置かれる。まるで、落ち着けと言われているかのように。
霊歌「落ち着いて。リドルの思う感想を伝えてほしいな」
リドル「すごく良い話でした。今まで物を大事にすることに付いて考えてなくて・・・だからこの本を読んでいいきっかけになれたなと・・・」
霊歌「そっかぁ・・・」
ふと僕の目を涙が伝う。
こんなにも儚くて美しく、それでいて緻密で優しげな文章。
それを思わせないような自由な霊歌さんは僕の憧れになった。
それで思わず、彼女に聞いてしまった・・・
リドル「どんなルールに従えば、この胸の苦しさは消えるんですか・・・?」
霊歌さんは悩んだあと、はっきりと一言言い放った。
霊歌「苦しさが消えるルールは無いと思うよ?」
リドル「無いって・・・何で・・・?」
霊歌「そりゃそうでしょ?誰かにとって正しいルールは誰かにとっては苦しい枷なんだから。」
リドル「じゃあ、どうしたらいいのさ?」
その質問には、霊歌さんはサクッと答えた。
霊歌「逃げ出すか助けを求める!」
リドル「助けって・・・」
霊歌「君にはいるんでしょ?暗い部屋から連れ出してくれた友達がさ」
___________________リドル!!!
感想まだです
- 在りし日の記憶 深紅の暴君 後編 ( No.30 )
- 日時: 2021/08/07 11:39
- 名前: 桜木霊歌 (ID: xIyfMsXL)
ハーツラビュルの医務室。そこでリドルは目を覚ました。
エース「あ、目ぇ開けた!」
ケイト「良かった・・・これで起きなかったらどうしようかとマジ焦った!」
リドル「僕は・・・一体・・・」
優「オーバーブロットという現象を起こして暴走していたんです。何とかなって、良かったですね」
そう言ってホッとした様子で微笑む優に、リドルは霊歌の面影を感じた。
そして、ポツリポツリと話し始める。
リドル「僕、本当はマロンタルトが食べたかった・・・」
トレイ「リドル?」
リドル「紅茶に入れるのは角砂糖じゃなくて蜂蜜が好きだし、本当はミルクティーが好きだし、薔薇だって白でいいし、ハリネズミをカップに容れる意味も分からなかった・・・」
どんどんと泣き声になっていくにつれ、彼の瞳から涙が溢れて、ぽたりぽたりとシーツを濡らす
「皆と一緒に食後のお喋りだってしたいし、本当は、トレイたちと一緒に、遊びたかった・・・うう、うわーーーーーーーん!!!」
寮生たちは毒気を抜かれたような表情だ。
そうだろう。あんなにも厳格なリドルのギャン泣きなんて見た事はない。
優はリドルが自分から本心を・・・リドルの我儘を聞くことができて、良かったと思った。
トレイ「リドル、ゴメンな。お前が苦しんでるの知ってて見ない振りしてて・・・だからこそ、ちゃんと言うよ。お前のやり方は間違っていた。だから皆にちゃんと謝るんだ。」
リドル「うん・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」
エース「だーもう!泣いて謝ったって許されると思うなよ!」
優「エース、君は空気読もうね?」
エース「さっき2回もとんでもない地雷落したお前に言われたくねー!」
・
エースがリドルを許す条件として提示したのは、何でもない日のパーティーのやり直しだった。
リドルと慣れないなりに頑張ってケーキを作ったり、トレイも手伝ったり、塗り残しの薔薇を皆で塗ったりと、前までに比べると全員は圧倒的に楽しげだった。
優「うん。美味しいですよ。」
グリム「ふなふなふなふな・・・」
エース「お前食いすぎだろ・・・」
チェーニャ「ふんふふーん♪やっぱりトレイの作るタルトは絶品だにゃあ」
エース・デュース「うわぁ!?」
リドル・トレイ「チェーニャ!?」
リドルとトレイの様子を見て、優はそういえば二人が幼馴染だと言う事を思い出す。
そういえばリドルの記憶の中にはトレイのみならずチェーニャもいた。
それならばチェーニャもリドルとトレイの幼馴染だろう。
だが、優はふと思った疑問を口にした。
優「そういえばチェーニャさん、どの寮に所属されているんですか?」
トレイ「そもそもチェーニャはうちの学校の生徒じゃない。ナイトレイブンカレッジの長年のライバル校『ロイヤルソードアカデミー』の生徒だ」
デュース「え!?違う学校の生徒!?」
エース「しかもロイヤルソードアカデミー!?」
優は他にも「魔法学校はあるんだ」と思ったが、よくよく考えればここは魔法が当たり前にある世界。
元の世界のように魔法が隠されている世界ではない。
ここ以外にも魔法学校があるのは当たり前だろう。
だが、トレイやエースの言葉を拾ったのか、一部の・・・いや、1年生以外のほぼ全ての生徒がいきり立った。
ハーツ寮生A「今、ロイヤルソードアカデミーって言ったか!?」
ハーツ寮生B「何だと!?どこだ!?すぐに追い出してやる!」
チェーニャ「おっと、じゃあタルトも食べたことだし、俺は帰るとするかにぁ〜。ふんふふふ〜ん♪」
そう言って透明化して去っていくチェーニャを寮生たちは追いかけていった。
グリム「・・・なんか皆殺気だったんだゾ・・・」
リドル「ナイトレイブンカレッジの生徒は高確率でロイヤルソードアカデミーを敵視しているからね」
トレイ「百年も負け続ければ、そうもなるというか・・・」
優「百年も負けてるのにライバルなんですか?」
ケイト「優君相変わらず言葉選び容赦ないね!?まあ、でもせっかくのパーティーなんだし、楽しもー!」
エース「やっりぃ!」
デュース「前に比べると、すごく楽しくなったな!」
優「僕はここの事よく知らないけど、そうだね!」
ここには和やかで、それでいて賑やかな雰囲気が周りに立ち込めていた。
前までの恐怖や気をはるような感情は何一つ立ち込めていなかった。
・
ここはサバナクローの寮長レオナの部屋。
そこに召使いのようにレオナを甲斐甲斐しく世話しているハイエナの獣人ラギーがいた。
ラギー「あーあ、いいなぁ。ハーツラビュルの奴ら、今日はご馳走食いまくりのパーティーらしいッスよ。サバナクローにもそういう腹が膨れる伝統ないッスかねぇ?」
そんなラギーの言葉にライオンの獣人であり、寮長のレオナはこう返す。
レオナ「ふん・・・晴れた日の昼間にケーキやらクッキーやら食いながら楽しいパーティーだ?虫唾が走るな。」
その二人には再び不穏な空気が纏う。
いや、虫の知らせというべきだろうか?
レオナ「それよりラギー、例の件だが・・・」
ラギー「任せてください。ちゃーんと準備進んでるッスよ。シシシ!」
レオナ「アイツラが呑気に茶を飲んでられるのは今のうちだ。気取ったマレウスの奴もな。ふふ、ハハハハハ!」
レオナの部屋には、彼の高笑いが響き渡っていた・・・
・
おまけ 優の裏設定
・優の父親である時ノ小路優朔は審神者(初期刀:山姥切 近侍:宗近)で、優の母親である時ノ小路杏はピアノ専門の調律師。2人揃って忙しい為ほとんど家に帰ってこない
・優の叔父は2人おり、三つ子の長男である時ノ小路優白は本編で触れた通り著名なパティシエで、彼の受け持つ店はいつも行列が絶えず、予約待ち3ヶ月なんて当然と言える。
・優のもう一人の叔父で三つ子の真ん中である時ノ小路優星は図書館司書と特務司書(初期文豪:重治 助手:鴎外)を兼任している
・上記の4人の仕事故にかなりお金持ちだが、優はカリムに比べると圧倒的に金銭感覚は普通で、かなり慎重になる。
・後にセベクとは読書仲間となる
・優の祖父である時ノ小路優之介、優朔、優白、優星は彼岸が自分と親しかった文豪の名前から名付けた(言うまでもなく龍之介と朔太郎、白秋と犀星である)
・優も探索者であり、技能は目星、聞き耳、図書館、説得、芸術(文学)、精神分析、応急手当、心理学、投擲とかなりバランスが良い(私主観)
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