二次創作小説(新・総合)
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.109 )
- 日時: 2015/05/09 01:25
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: e1D/tu7D)
chapter2 負け組より生まれた漆黒の怨念
コロシアイ学園生活残り27日
キンコンカンコーン。
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
今一番聞きたくない声だ。できればこの声は俺の幻聴であってほしい。
俺は寝転んだまま目だけを動かすと、まだ勝ち組ヶ丘学園の中にいることを確認した。できれば、昨日ことも含めて俺がこの学園で生活していることも夢もしくは幻覚であってくれたらと願っていたが、どうもこれは現実らしい。
起き上がることに拒否反応を起こしている体を無理矢理起こすと俺は部屋を出た。
ー食堂ー
食堂はいつもより2人少ないのにも関わらずいつもと同じような雰囲気で、俺は内心驚いていた。
「やぁ、おはよう静流君」
突然、肩に手をおかれ振り返った。
「華狗也…」
華狗也はボサボサの寝癖を掻きながら、そして不気味にニコニコしながら俺の手を引っ張り食堂に入った。朝から男に迫られると気持ち悪い。元気のなさで声には出せなかったが俺の顔はそれを物語っていた。全員がこっちを見て少し引いている気がしたので俺は華狗也の手を振りほどくと華狗也と距離をとる。華狗也が俺から離れた席に座ったのを確認してから、俺は席に座った。
「朝から何をいちゃついているのですか?しかも男子同士で」
背後に華狗也よりも不気味なオーラを感じ俺は首だけをゆっくりと後ろに回した。
「落ち武者っ!!」
「お前たち、今日はビッグニュースをお持ちいたしました。なんと、本日より二階を解放します。二階は主に運動系の部屋が多いので体を動かすにはもってこいですよ。では、ここに地図を置いておくので。1人一枚ですよ」
落ち武者に一番近かった俺はすぐに地図をとり、全部見えるように広げた。
新たに解放されたのはプール、卓球場、テニスコート、第二体育館それから休憩室か。確かに運動するには嬉しい設備ばかりだけど、俺にはあまり関係のないフロアだな。と思っていた時だった。
「男子!朝食後第二体育館でバスケしようぜ」
「ほう。このコート上のオーディンと呼ばれた俺様に勝てると思っているのか?」
ー第二体育館ー
「チーム編成は士導、海土、春ヶ咲、向付がビブス組だ。で、ビブスつけないのが清水、図川、歌土井そして俺様だ。これでいいな自称最強の春ヶ咲さんよ」
「それでいいぜ、コート上のオーディン!」
憩崎と春ヶ咲が始まりの握手がなかなか終わらない。お互いに手を握り合っていることを忘れているのかずっと見つめ合っている。自虐なのであまり言いたくはないがさっきの俺と華狗也のより酷い。
やっとのことでジャンプボールが始まった。海土がさきにボールに触れると素早く春ヶ咲に渡し中央に展開していく。春ヶ咲が真ん中を越えたあたりで歌土井が進路を塞ぎ、ボールを奪おうとするが自称最強なだけあって歌土井を綺麗にかわすと俺にパスを出した。が、そのパス途中で華狗也が遮った。俺が華狗也からボールを奪おうとすると華狗也は見事なターンを決め俺をかわしそのままスリーポイントを決めた。
「お前自宅警備員じゃなかったのか?」
「バスケットボールくらいやったさ。ゲームで」
「ゲームかよ」
俺は海土からパスを貰うと華狗也をかわそうと試みたが華狗也の完璧な位置どりになすすべなく向付にパスを出す。向付は俺からのパスを受け取るとすぐさまゴール下の春ヶ咲にパスを出した。
「コート上のオーディン!これが俺の力だ!」
春ヶ咲が向付のパスを受け取ると同時に放ったボールはリングの上で円を描きそしてゴールした。
憩崎もそれに対抗心を抱いたのか仲間のパスを貰うと同時にドリブルを開始した。しかし、春ヶ咲が憩崎もマークし仕事はさせない。どんどんコートの端へと追い込まれていく憩崎に華狗也がフォローに入り、憩崎との連携プレーで春ヶ咲をおいていった。華狗也は再びスリーポイントシュートを放つがリングに当たりボールは宙を舞う。そのボールを俺は取ろうとジャンプするが、憩崎の方が高く跳び先にボールに触れた。落ちたボールに図川がつめシュートを決めた。
「やるじゃねーかよ。コート上のオーディン」
「お前こそな」
なかなか熱い試合だったが、俺は感じていた。俺以外上手くて俺浮いてる気がする。
- ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.110 )
- 日時: 2015/05/10 01:07
- 名前: 紅茶 ◆Z4fzOkmu8Y (ID: e1D/tu7D)
「清水!!」
憩崎からのパスを受けた華狗也がゴール下から完璧なシュートを入れた。
「さて、もうそろそろ終わろうか」
春ヶ咲が終わりの合図と思われる笛を鳴らすと全員が地面に腰を下ろした。実際、勝ち組ヶ丘学園に来てから運動という運動を誰もしていなかったので疲れるのも予想通りで、それに加えて俺はバスケができないのでさらに疲労がたまった。
汗まみれの腕で顔を拭き俺は立ちあがった。
「誰か一緒に風呂でも行かないか?」
ー浴場ー
結局全員が俺についてきた。みんな俺と同じで今すぐにでも汗を落としたいのだろう。
ロッカーに汗まみれの服を入れ俺は一番乗りで浴槽に浸かった。
「あぁぁ」
つい声が出てしまう。
水面から放たれる湯気が天井に当たり、しばらくしてから落ちてくる。それに当たるとこの熱い空間の中で唯一一瞬寒くなれた。
俺はなんとなく辺りを見回してみると浴場の端に今は閉まっている扉があった。扉の上には「この先サウナ」と書かれている。
「何でサウナに入れてくれねーのかな?俺はあそこでいい汗をかきたいのによ。なぁ憩崎、落ち武者のとこ行って開けてもらうように言おうぜ」
春ヶ咲が若干遠くにいる憩崎に声をかけるが立ちあがったのは華狗也だった。
「それ僕が行ってくるよ。僕もサウナ入りたいしね」
そういうと華狗也は浴槽を出ると桶いっぱいのぬるま湯を浴びて浴場を出て行った。
「何か最近あいつ妙に親切だよな。学級裁判の時は敵か味方かわからないような感じだったけど」
俺もそれは思っていた。車鳥が死ぬ前日華狗也の部屋で一泊した辺りから俺の華狗也への嫌悪感が少し和らいだのは間違いない。最初は人を平気で殺すような人間だったのに。むしろあれは俺の見間違いだったのか。血だらけのナイフを持ち俺も見て不気味に笑うあれ華狗也じゃなかったのか?そうも思えてきた。
後、気になることと言えば華狗也の封筒だ。中田はあれが動機となって車鳥を殺したけど、華狗也はなんと書かれていたのだろう?あんな変態に弱みなんてあるのかと思ってしまう。もしくは俺のように濡れ衣を着せられて…。突然、頭の中で母親が思い浮かぶ。
あれ?俺の母さんはどうして死んだ?
確か落ち武者に殺されて…。いや違う俺は母さんの最期に立ち会っている。
落ち武者は殺していない?
じゃあ誰が…。
まさか本当に俺が…。
「春ヶ咲君、ダメだったよ。我の都合により現在は解放できませんだってさ」
「そうか、ありがとな」
「なぁ華狗也」
「何だい?」
華狗也は服を着たまま浴場に入ってくる。
「お前落ち武者とどこで喋ったんだ?」
「秘密さ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.111 )
- 日時: 2015/05/11 12:23
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: e1D/tu7D)
コロシアイ学園生活残り26日
キンコンカンコーン。
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
身体が痛い。普段運動をしないのに、急にバスケットボールをしたからだろう。すなわち、あれだ、筋肉痛ってやつだ。
俺はしっかり伸びをしながらベッドからおりて食堂に向かった。
ー食堂ー
「あれ?憩崎と春ヶ咲がいないな。どうした?」
「朝風呂だってさ。昨日から随分仲がいいことだ」
昨日は自称最強やらコート上のオーディンやらでもめてたのに、一日で一緒に朝風呂行くほどまで仲が良くなかったのか。しかし、仲が良くなることはこの学園生活ではメリットであり、デメリットでもある。
メリットは仲が良くなりコロシアイが起きないパターン。みんなが仲良くしてれば落ち武者が脅してこようとも怖くない。
それもよりも怖いのは、仲良くなったのを利用されるパターン。これがデメリットだと俺は思う。
俺はテーブルの上に置いてある誰かが作ってくれたサンドイッチに手を伸ばした。具は卵とハムか。割と俺の好きな具だ。
「美味しい?」
「俺は好きだな。この味」
柴白は笑顔になり、手を合わせた。
「よかったぁー。あ、そうだこの後みんなでテニスしよってなってるんだけど静流君もどう?」
「いいよ。俺あんまり得意じゃないけどな」
本当はテニス、というか運動を今日はしたくなかったが飯作って貰っておいて頼みを断るのは悪い気がした。あと、テニスできないし。
ーテニスコートー
テニスコートは二面ありダブルスでトーナメントすることになった。ペアはくじ引きで、俺は鍵村と組むことになった。鍵村はだるそうにしながらもサーブの練習をしている。心地よい音のサービスショットが俺の目の前を通り過ぎっていった。
「士導はテニス経験あるの?」
「人生で一度もないよ、鍵村は?」
「あんたよりはあるよ」
初戦の相手が向かい側のコートに陣どった。地近、春ヶ咲というデコボココンビだ。
「春ヶ咲?メガネはどうした?」
遠目から見ると春ヶ咲だとすぐに分かったが、近くに寄るとメガネを外している春ヶ咲が春ヶ咲だと認識するのにかなり時間がかかった。
「ああメガネな。昨日のバスケの時に誰かと当たって曲がっちまってよ。仕方なくコンタクトにしてる」
「メガネじゃない方が爽やかだけどな、春ヶ咲の場合」
俺の言葉を最後に一試合目が鍵村のサーブで始まった。それに反応して地近も短い足で走り打ち返した。前衛の俺は地近の返球の落下地点まで走り思い切りラケットを振った。が、得点は相手チームだった。
「士導、お前空振りって…」
鍵村はうつむきながら笑っている。俺も恥ずかしさのあまり笑うしかなかった。
再び鍵村のサーブで地近を走らせる。そして、その返球の落下地点にまた俺が行こうとすると後ろから鍵村が「私が行く!」と言ってきたので俺は素直に場所を空けた。結果的に鍵村は強烈なスマッシュを決め、同点にした。その後も俺の活躍は皆無に等しかったが、鍵村のおかげで俺は一回戦を突破した。
二回戦の相手は華狗也、捕鷹ペア。またも鍵村のサーブで試合が始まるが今度はさっきのようには行かなかった。鍵村のナイスサーブを余裕で返しそのボールに回転をかけて俺の方に飛ばしてきた。俺はそのボールに全く反応できず一点を奪われた。
「華狗也お前テニスもできるのかよ」
「テニスもやったことあるよ、ゲームで」
だんだんと点差は広がっていき最後は俺がサーブ権を持っていた。俺が華狗也の方にサーブを打つと華狗也はそれを鍵村に返し、そのボールに対して鍵村はスマッシュ気味のボールを放った。が、それも華狗也に止められ俺は華狗也のボールにギリギリ追いついたが浮いてしまい捕鷹の強烈なスマッシュを食らった。
試合は華狗也、捕鷹ペアの圧勝で終わった。主に俺のミスで負けたが。俺がテニスをできないをわかってて俺ばかりに打ち返してくる華狗也のせいかもしれない。鍵村は俺がミスするたびに笑っていたしフォローをしてくれそうにもなかった。俺がミスするのを楽しみにしていたようだった。
一方でトーナメントは決勝戦を迎え、優勝したのは海土、柴白ペアだった。俺は華狗也、捕鷹ペアが勝つと思ったが海土、柴白ペアが強すぎて華狗也たちも一歩及ばなかった。
楽しい一日になったと俺は思ったが、悲劇は夜に起きた。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.112 )
- 日時: 2015/05/11 17:43
- 名前: 紅茶 ◆wiCxtrVptM (ID: e1D/tu7D)
俺たちはいつも通りの時間に夕食をとると、女子組は風呂に入り、男子組は食堂で女子の風呂待ちすることになった。たまたま図川がトランプを持っていたので男子で大富豪をしていた。
「8切り、からの4二枚!はいっあがり」
「さっきから清水つよくね?なんか仕組んでるだろ」
「たまたまだよ」
華狗也の4二枚の上に俺は7を二枚重ねる。残りの手札は8、10、ジョーカーの三枚。順当にいけばジョーカーからの8切り、そして10を出せば勝てる。
全員がパスをしたので早くも俺に番が回ってきた。俺は手順通りまずはジョーカーを出す。一人、二人とパスをしていき、俺は勝ちを確信した。が、残り一人というところで、海土がスペードの3を俺のジョーカーの上に重ねた。大富豪の世界で唯一ジョーカーに勝てるカードスペードの3、世間ではスペ3返しと呼ぶ対ジョーカーのテクニックで俺のカードをそっちのけた。
まだ慌てる時じゃない。海土が7以下のカードを出せば俺に勝機はある。だが、俺の夢は儚くして散った。海土が出したカードは10。俺をやむを得ずパスを選択する。俺がパスしたので、次は歌土井。歌土井は10の上にAを重ねた。歌土井の後誰も出さずまた歌土井に番が回る。歌土井が出したカードは5。続く憩崎は6、さらに図川が7とつないだ。そして、向付が8切りでワンクッションをおき、4を出す。春ヶ咲は6、海土が7を出せば勝てる。
「8切り、からの9で俺上がりね」
またしてもチャンスは来なかった。それどころかそれ以降俺がカードを出すことはなかった。
「じゃあ最下位の士導に罰ゲームだな。くじを引いて出た紙に書いてあることを実行しろ」
負けたのは事実だし、仕方ないと考え俺はくじを引いた。
「!?」
俺は中身の酷さに顔を真っ青にし、紙を落とした。
「えーなになに。『女子が入ってる間に風呂覗き』」
「ちょっと待て!これはないだろ。俺の命の保証されてないじゃないか!」
俺が何を言ってもみんなは笑っているだけだった。「学級裁判だけは起こすなよ」などと洒落にならないことまで言い出した。
大体風呂覗きなんてどこからするっていうんだよ。ストレートに浴場に入るとか絶対無理だろ。捕鷹とか鍵村が一番怖い。
渋々食堂を出ると俺は浴場の前に立った。後ろを振り向くと他の男子が笑いながら俺を見ている。
どうにでもなれ!
俺は浴場のドアを開けようとした。その時だった。
「お前たちもうすぐ就寝時間ですが、その前に準備が整い次第体育館に集まってください」
落ち武者のアナウンスが校内に響き渡った。落ち武者からの呼び出しということはまた動機か。
俺は覗きのことなどすっかり忘れすぐに体育館に向かった。
「何か今浴場のドアのとこに人影があったよね?」
「サイテー。後で殴ってあげよ」
ー体育館ー
風呂上がりのため女子は少し遅れて体育館にやってきた。
「これでやっと全員揃いましたか。じゃあ本題にはいります。まずはこれを見てください」
そう言うと落ち武者はスイッチを押す。すると天井からハンマーのようなものが落ちてきた。
「ギガントハンマー!!」
全員の目がハンマーを見たことを確認し落ち武者はそれを手に取った。
「これを今からお前たち全員の部屋に一つずつ置いておきます。是非コロシアイに役立ててください。それとこちらのゲーム機を食堂の端に置いておきます。名付けて『バイオレンス・キル』。クリアした人にはプレゼントがあるかもしれないですよ」
これが動機?ハンマーとゲーム機だぞ。ハンマーなんてそこらへんのスーパーに売ってそうな安物臭すらしている。
「…ん?なんかお前たち『そのハンマーで本当に人を殺せるのか?』みたいな顔をしていますね。ではお見せしましょう」
そう言うと落ち武者は俺たちの方へ近づいていき一人一人の顔を眺めていった。全員眺め終わると歌土井に近づきそして腹にそのハンマーを振った。
「えっ?」
一瞬の出来事に何が起こったのか分からなかったが、目の前で歌土井が血まみれになっていることだけがわかった。
「これでわかりましたか?」
落ち武者が姿を消した後、女子たちの悲鳴が体育館に響いた。
俺は震えながらも歌土井の顔に触れた。腹に目を向けると随分痩せていた。いや、腹がハンマーによって消し飛ばされたのかもしれない。
俺は血だらけの歌土井を前に体育館に倒れた。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.113 )
- 日時: 2015/05/13 01:58
- 名前: 紅茶 (ID: e1D/tu7D)
コロシアイ学園生活残り25日
キンコンカンコーン。
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
朝か…、って朝っ!?何時間寝てた!?そもそもここどこだよ?
俺は辺りをぐるりと見渡すが、誰かの部屋にいることはわかったが誰の部屋かはわからなかった。時間は8時前、ということはみんなもう食堂に行ってるころか。ここまで連れてきてくれた人にお礼を言わないといけないし、とりあえず行くか。
ー食堂ー
食堂の空気が重い。俺は昨日歌土井が死ぬのを見て気を失ったんだな。その後ことはわからないが、みんなも気を失うまではいかなくともそれに近いところまでショックを受けたに違いない。動機もなく、ただ落ち武者の都合で殺したのだから。
「士導君。寝心地はどうだった?」
「意識がなかったからどちらとも言えないな。っていうか司翼が一人で部屋まで俺を運んでくれたのか?」
司翼はサンドイッチが口に入ったまま首を振る。
「僕以外にも海土君、憩崎君。というか男子全般かな」
「その男子らは今どこだ?」
司翼は「あそこ」と指を指す。その先にあったのはゲーム機で『バイオレンス・キル』と書かれている。昨日歌土井を殺したハンマーと一緒に設置されたものだろう。
そもそも歌土井が落ち武者に殺され、みんなの気持ちの状態もよくないだろうしコロシアイが起きるとは思えない。さらに動機がゲームってなおさら起きないだろ。
「司翼はプレイしたのか?」
「僕はまだ…」
「後でやってみるか」
俺はみんながゲーム機周辺から姿を消すと即座にゲームをプレイするため電源をいれた。
『バイオレンス・キル』
二日目
あまり聞きたくない効果音からゲームは始まった。
ボコッ!ドガッ!
A男「ちょっと…返してよー!」
B男「うるせー!お前が約束破ったからだろ!」
ボコッ!ドガッ!
B男「用が済んだら財布は返してやるよ。中身は保障しないけどな」
B男はA男の財布を持ち笑いながらトイレを出て行った。トイレの中にはA男がただ一人壁際に寄りかかっており顔面含む身体全域にアザができていた。
しかし、そのような状況でも後にトイレに入ってきた人はA男を助けようとしなかった。B男を敵に回すのは誰もが嫌だったからだ。
しばらくしてからA男は立ち上がりボロボロになった服を着直してトイレを出た。だが、A男に悲劇は再び訪れる。トイレを出てすぐにA男の腹に飛び蹴りが入った。
ケホッ!ケホッ!
A男は腹を押さえながら立ち上がり前を見る。
C男「お前!俺の大事なD子に手を出したらしいな!」
A男「…へっ?違うよ!B男君に殴られた反動で当たっただけ…」
A男の言葉を遮るようにC男は再びA男の腹に蹴りをいれる。
C男「次やったらこんなもんじゃ済まねえからな!」
C男はA男の顔面に唾を吐くと、トイレの前から姿を消した。
このゲームはイジメを題材にしているのか。なんて趣味の悪い。もっと趣味の悪いのは、このゲームの主人公とか言うかいじめられっ子、A男のシルエットから見るに間違いない、向付だ。確かに向付は残念系だが、ここまでされるほどと言われればそんなことはない。
このゲームは何を意味してるんだ。そもそもゲームの始まりが二日目ってどういうことなんだ?プレイしていればわかるのだろうか。まずは続きをプレイしてA男と向付の関係を探らなければ。
『バイオレンス・キル』
四日目
校庭でA男の死体が発見された。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.114 )
- 日時: 2015/05/14 02:03
- 名前: 紅茶 ◆Z4fzOkmu8Y (ID: e1D/tu7D)
四日目
A男の死体が発見された。朝早くから学校はそのことで持ちきりで、警察の人間もちらほら見かける。
緊急集会が開かれ、警察の人の話によると、A男は自殺でほぼ間違いない。校舎の屋上から飛び降りて死んだと思われる。
しかし、一つおかしいのはA男の身体の数十カ所にお札が貼られていた。それも自分で作ったものではなく、正式のお札だった。
『バイオレンス・キル』 END
続きをプレイするにはパスワードを入力してください
入力完了
…は?パスワードなんていれてない。なのに、パスワード入力完了?どういうことだ?しかし、続きが見れるというのなら見ておいて損はないだろう。動機だからな。それに中途半端に終わって気持ち悪いというのもある。
俺は『バイオレンス・キル』の画面をタッチし、スタートのボタンを押した。
『バイオレンス・キル』
一日目
B男「おい、A男!この前貸した金さっさと返せよ。10日過ぎてるから十倍な」
A男「えっ?お金なんて借りてない…」
B男はA男に掴みかかる。小柄な体型のA男は空中に浮いた。
B男「貸したよなぁ。この前パチンコ行ったときに玉足りないからって俺に金借りたよなぁ?12万円」
A男「でも…あれはB男君が僕に返してくれたお金…」
B男「あぁん?」
B男の顔面の迫力にA男はB男から目をそらした。B男はA男を地面に叩きつける。そして、A男の体の上にまたがり手をロックし、A男がB男に抵抗できないようにした。
B男「期限は明日だ。今日じゃないだけありがたいと思え!」
B男はA男を無理やり起こさせるとA男の胸に全力でパンチした。A男では耐えきれるはずもなくいつも通りぶっ飛んだ。が、不幸にもA男の体はD子に激突した。
D子「きゃあ!」
A男「ごめん…なさい」
D子「私に触れないでよ」
D子は地面に倒れているA男を蹴り、その場から去った。
いじめの主犯格はB男で、いじめとはあんまり関係ないがおそらく交際関係にあったC男はD子を殴られたと勘違いしA男を殴った。今のところB男とA男の関係はわかるが、A男とC男は関係なしか。そしてそのA男が向付のシルエット。これは向付のシルエットでなければならなかったのか。それとも単に落ち武者の気まぐれか。できれば、後者であってほしいが。
『バイオレンス・キル』
三日目
A男は学校の屋上に来ていた。手には複数枚のお札が握られている。
A男は今日で人生をやめる決心をしていた。もう今の生活に耐えれない、このまま生きるくらいなら死んだ方がマシだ。だけど、もし僕がもう一度この世界にA男としてではなく違う人間として生まれてきたならその時は今のようなことにならないように願いたい。不運を取り除くためにお札まで持ってきたんだ。
A男はそのお札を体のあちこちに貼っていった。最後の一枚を貼り終えた時にA男が後ろを振り向くとそこにはB男とC男それにD子が立っていた。
B男「お前こんなところに呼び出してよ。ムカつくから殴らせろ」
C男「それになんだよその格好?俺らでも呪うつもりか?」
A男は黙ったままでいた。B男はA男の態度に我慢が利かなかったのかA男に殴りかかった。
A男は避けることなく正面からそのパンチを浴びた。しかし、信じられないことにA男はB男のパンチを受けておきながらも倒れなかった。
A男「僕がもし、強い人間だったなら毎日が楽しかっただろうな!」
B男「何?よく聞こえなかったんだが」
A男はB男に向かって全力でダッシュし、そのままB男の顔面のど真ん中を殴った。流石のB男も不意をつかれた攻撃なだけに一瞬よろけたが、すぐにA男を睨んだ。A男はB男から逃げ、B男はA男を追いかけた。そして、B男がA男の背後から飛び蹴りをお見舞いするが、A男には当たらなかった。
B男「は?」
A男の姿がB男の視界に入ってこない。
B男「C男!A男はどこ行った?」
C男「今…自分から…飛び降りた」
D子「ここって監視カメラあったよね?すぐに逃げないと私たちが疑われちゃう!」
C男「さっさと屋上から下りるぞ!」
これで全部みたいだな。これが、動機。まさかと思うが、これが事実だったりしたらその人の過去を晒しているようなもんじゃないか。問題はそれが誰かだが。普通に考えれば向付だよなぁ。落ち武者のことだからそんな単純ではない気もするが。
「おやおや?士導君もクリアしましたか」
「クリア?ゲームの割にはコマンドが一つもなかったけどな。それに士導君もってどういうことだ?このゲームをクリアした人が他にもいるということか?」
「それは言えませんねぇ。でも、そろそろコロシアイが起きるころではないでしょうか?」
落ち武者はそれだけいうと、煙を撒き散らし俺の前から姿を消した。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.115 )
- 日時: 2015/05/16 01:26
- 名前: 紅茶 ◆Z4fzOkmu8Y (ID: e1D/tu7D)
『バイオレンス・キル』をプレイし終えた俺は、落ち武者が俺たちに渡した二つ目の動機、というか凶器を拝見するため自分の部屋に戻った。
ギガントハンマー。これが歌土井を殺した凶器か。次また殺人が起きるとすればこれが使われるのはほぼ間違いないだろう。殺人が起こればの話だが。
ピンポーン
嘘で楽しくないことを考えているとインターホンがなった。俺はそのインターホンで我に返り、早足でドアを開けた。
「柴白…と鍵村か。何かようか?」
「暇だったから喋る相手を探してたんだぁ」
「柴白だって私と喋るより、士導と喋る方が楽しいだろと思って連れてきた」
接点もないのに、喋って楽しくなると思ったのか?
「奈夜ちゃんもさ、一緒に喋ろうよ」
「ん?まぁいいけど」
俺を誘う意味はあったのか?柴白と鍵村が二人で喋ってたらいいんじゃないか?と思ってしまう。大体女子の話題に男子がついていけるわけがないだろ。どうせ俺だけ話に置いて行かれるパターンだよ。
仕方なく柴白と鍵村を部屋の中に入れると、俺は二人を椅子に座らせお茶を淹れてあげた。
「士導のくせに気がきくな」などと言っている鍵村を無視し俺も椅子に座った。鍵村はお茶を飲み干すと俺におかわりを要求してくる。イライラを押さえながら俺は鍵村のコップにお茶を淹れた。
「そう言えば、静流君の才能って結局何だろう?」
鍵村ばかりに気がいっていて柴白の存在を忘れそうになったところで柴白が呟いた。
「それが俺も思いだせなくてさ。落ち武者の手違いらしいから早く記憶を戻してほしいんだけど」
「おい、士導。おまえ本気で落ち武者の言うこと信じてるのか?」
鍵村が人を殺しても可笑しくないよな目で俺を見つめる。
「信じるも信じないも今は落ち武者しか全てを知らないんだから信じなくても聞き入れしまうだろ?」
「でも、記憶が戻らないのはなんで静流君だけなんだろうね?手違いなら全員消えてる方が普通なのに」
柴白もお茶を飲み干し俺におかわりを要求する。同じお茶を淹れるだけなのになぜかイライラは起きなかった。
「実は士導の才能は落ち武者にとって不利益って線はどうだ?士導に記憶を戻すと落ち武者は何か困るんじゃないか?」
「かもしれないが…。だとしたら俺の才能って落ち武者さえも後ろに退かざるを得ないほど凄いものってことになるだろ?でも、才能に関わりそうなもので心当たりのあるものってないんだよ」
「もしかして静流君の才能って超高校級の落ち武者の上司とかだったりして!だとしたら、落ち武者が静流君に思い出してほしくないのも納得がいくよね」
柴白が何かを思いついたような顔をしたので、一瞬期待したが斜め上をいく発想で腰が抜けそうになった。そもそも柴白の考えでいくと俺と落ち武者は仲間になってしまうじゃないか。そんなことは嘘でもやめてほしい、心臓に悪いから。
それからしばらくは普通の世間話になった。意外と話についていけることが判明し、最初思っていた展開とは真逆の方向へ進んでいた。俺が女子のトークは男子には絶対わからないと想像していたせいか、柴白と鍵村のトークにギャップを感じた。
「と言うかお前らいつまで俺の部屋にいるんだよ。もう夜だぞ。続きは自分たちの部屋でやってくれ」
「何言ってんだ士導、ここまで来たら今夜は徹夜だろ?士導もつき合え」
優しい口調で話す鍵村だったが、目は「反対したら殺す」と言わんばかりの目をしていた。
「はい…」
やっぱり鍵村怖い。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 episode0 ( No.116 )
- 日時: 2015/05/17 13:45
- 名前: 紅茶 ◆Z4fzOkmu8Y (ID: e1D/tu7D)
コロシアイ学園生活残り24日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
「っともうそんな時間だったのか…」
俺は時計を何時間かぶりに確認する。最後に時計を見たのが柴白が寝た2時だから5時間ぐらい無心で喋ってたのか。俺は鍵村によくわからない話につき合わされてたのに、柴白のやついいタイミングで寝やがって。ずっと喋りっぱなしだった鍵村は徹夜にも関わらずピンピンしている。
「おい、柴白起きろー」
「ん?んんぅぅ…」
柴白は一度目を開くと、ここがどこだが察したのか勢いよく立ち上がった。
「みんな徹夜だったんだ…。ごめんね寝ちゃって」
「気にするな。その分士導がちゃんと起きてた」
「寝たら殺すみたいな顔をしてたから寝れなかったんだよ。ははは」
俺は鍵村に聞こえない程度の声で柴白の耳に囁いた。
ー食堂ー
いつもより数十分早く食堂に着いた。着くと同時に柴白は急ぎ足で厨房の方へ走っていった。柴白はいつも全員の朝食を作っているためみんなより少し早く食堂に来ているらしい。
「おい、鍵村!俺たちも朝食作り手伝うぞ」
既に食堂の隅のテーブルに腰を下ろしている鍵村を手招きする。
「は?何で私もなんだよ。お前だけで手伝えばいいだろ」
「昨日、俺を寝させてくれなかった罰だ。ほら、さっさと手伝え」
俺はそれだけ言うと厨房に入った。中では既に柴白が朝食作りを始めていた。そこに面倒臭そうな顔で鍵村が入ってくる。
「これテーブルに運んだらいいのか?」
「え?運んでくれるの?ありがとう」
俺は鍵村に2つあるお盆のうちの一つを渡すテーブルに運びにいった。
「そう言えばさ、鍵村ってメガネ掛けてるじゃんか。お前目悪いの?」
「右目0.002左目0.003だ。まぁ、普通だ」
どこが普通なんだ。メガネ外したら生きられないじゃないか。鍵村は普通だけど、実は過去に何かあって目が悪いんじゃないか?で、それがこの前の封筒に書かれていたりして、俺の勘だけどな。
「逆に言えば、この学校ってメガネ掛けてるやつ少ないよな。私と春ヶ咲に中田、それに歌土井だけだったからな」
食堂にようやくみんな集まった。いや、違う。誰かいない…。
俺は頭の中から全員の顔を掘り出していく。…向付だ。
「おーい、誰か向付見てないか?」
全員がお互いの顔を見合っているが、「見た」の一言は返ってこなかった。仕方ない俺が見に行くか。
しばらくして食堂に帰ってきた。部屋に行ったが返事がなかったのだ。放っておいてもいつか来るだろう。俺もテーブルに腰を掛け朝食に手をつけた。
「ごちそうさま!柴白、いつもありがとな」
「ううん、いいのいいの」
そこにテニスのラケットを持った悪魔がやってきた。
「士導、ご飯食べたらテニスするぞ。柴白め付き合え」
悪魔が俺と柴白にラケットを手渡す。
「じゃあ私皿洗いしてから行くね。さき行っといて」
「お、俺もトイレ済ませてから行くから先行っといてくれ」
俺はあからさまな口実でその場を離れるとすぐに自分の部屋に入った。嘘とはいえ一度トイレに入る。早く部屋を出ても怪しまれるしな。
トイレから出た俺は食堂で柴白がまだ皿洗いをしていたので、手伝うことにした。柴白の手際がよく5分ほどで全員の皿を洗い終えた。
「じゃあ行こっか」
俺は柴白と食堂を出ると二階へ続く階段を登った。登った先には先に行ってるはずの鍵村が休憩室の中を見ている。
「おい、鍵村。お前テニスコート行ったんじゃなかっ…」
俺はふと休憩室の中に目をやった。
「向付!!」
俺は休憩室のドアを開けるとすぐに向付に近寄った。奇跡的に生きてることを祈ったがそれは叶わなかった。
休憩室の真ん中で全身にお札を貼った向付が
倒れていた。
「嘘…だろ?」
俺に続いて休憩室に入った海土が思わず声をあげた。
「死体が発見されました。一定の操作時間の後学級裁判を行います」
死体発見アナウンス。その人間が死んだことを意味する悪魔のアナウンス。それが鳴ったということは…。
遅れて入ってきた柴白が中の状況をようやく把握する。言葉も出ない様子で震えながら壁に体を預けた。