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死体発見アナウンスを聞いたのかぞろぞろと休憩室に入り込んでくる。みんなが向付の姿を見るとそろえて同じ顔をしていた。そのみんなの列の後ろには大量のファイル
抱えた落ち武者もいた。

「ザ・落ち武者ファイル２！！またまた殺人が起こってしまったので、素人のお前たちにこれを差し上げましょう」
落ち武者は落ち武者ファイル２を俺たち全員に渡していく。俺は前回と同じ要領で落ち武者ファイルをめくっていった。


ザ・落ち武者ファイル２


死亡　　超高校級の残念系　向付信留

死因　　不明

死亡時刻　　午前６時

死亡場所　　２Ｆ休憩室


死亡時刻が午前６時ということは朝食時にはすでに死んでしまっていたということか。通りで部屋に行っても返事がないわけだ。
死因は…不明？全身に御札が貼ってあるが呪殺ではないだろう。仮に呪殺だとしても呪いかけることのできるなんていやしない。死神でもいれば話は別だが。

「ん？」

俺は休憩室の向付がいるすぐ後ろにあるテーブルの上にドクロのマークが入った瓶を発見した。手に取ってみると、中にカプセル式の薬が入ってある。ラベルのドクロマークが意味するのは一つこの瓶の中身は毒薬だ。さらに瓶の蓋が完全にしまっておらず誰かが使った形跡があった。


『カプセル式の毒薬』
休憩室のテーブルに置いてあった毒薬。誰かが使った形跡がある。


となると向付は毒殺されたことになるのか？ただ殺されたにしては部屋が綺麗すぎる。犯人に毒殺されたのなら部屋で襲われているはずなのにこんなにも綺麗なのは可笑しい。それとも別の場所で殺されていて休憩室に連れてきた可能性もあるか。


『休憩室の状況』
殺されたにしては部屋が綺麗。別の場所で殺された可能性もあるか？


俺はメモをとったあと次は向付に目をやった。死体状況は身体にたくさんの御札を貼っており、その御札一つ一つに「呪」と書いてある。さらに向付を囲うかのように向付のまわりにたくさんのロウソクが置かれている。しかし、こんな無駄なことをする必要があったのか？犯人の手がかりとなるものが増えるだけじゃないのか。ただ殺すだけなら毒を飲ませればいいだけなのに。


『犯人の手間』
向付の全身に御札を貼り、さらにそのまわりにロウソクを置いている。


「ちょっと士導いいか？」
「ん？司翼か？なんだ？」
司翼は向付の口元を指差す。向付の口には血痕があり、血は頬を伝い床に垂れていた。
「血痕？普通に考えれば毒薬を飲んだ際に吐血したってことだよな」
「僕も最初はそう思ったけど、向付は何かが違うんだ」
司翼は向付の服をめくり体を確認していく。そして、何かがわかったのか体を見るのをやめた。
「うん、やっぱり可笑しい」
「何がだ？」
「僕のお母さんとお父さんは毒薬を飲み自殺したんだけど、その時どっちの体にも斑点があったんだよ。要するに死因が毒なら体のどこかに斑点が出るはずなんだ。だけど向付にはそれがない。もしかして、毒殺じゃないんじゃないか？」
「何か悪いこと聞いたな」
司翼は胸の前で手を振る。そんなことないよとでも言いたいのだろう。


『口元の血痕』
口から血が流れ床に垂れている。毒を飲んだ際に血を吹いたのだろうか？


『司翼の証言』
毒殺の場合体のどこかに斑点が出るらしい。


「だけど、斑点が出ないのもあるんじゃないのか？それに現時点では毒以外に殺せそうなものもないし」
「…そもそも殺されてないとか？」
俺は司翼の言葉にハテナを浮かべる。
「殺されてない？」
「いや、なんでもないよ」
そう言うと司翼は休憩室を出て行った。殺されてない？どういうことなんだ？


『司翼の言葉』
「そもそも殺されてない」。一体どういうことだろうか？


部屋の捜査はこんなものだろう。
今回の殺人の動機は間違いなく『バイオレンス・キル』だ。ただ、バイオレンス・キルを動機にすることができるのは主人公のシルエットだった向付だけだ。その向付が殺されたということは犯人は何を動機にしたんだ？その答えを知るためにも食堂に行って『バイオレンス・キル』をもう一度プレイすることにした。

ー食堂ー

あれ？動かない？
俺は休憩室を出た後食堂でもう一度『バイオレンス・キル』をプレイするためにゲーム機の前に来たが、どうにもゲーム機の電源が入らない。
「あれれ？士導君もう一度ゲームですか？」
「落ち武者っ！お前が電源を消したのか？」
「いいえ。これは一人一プレイしかできないようになっています。なので、士導君はもうできません」
そういうルールは先に言っておくべきじゃないのか？と思ってしまう。だけど、今はこんなこと言ってる場合じゃない。
「そう言えば、俺の他にもゲームをクリアした人間がいるとか言ってたな。あれ誰だったんだ？」
「言えませんね。しかし、ゲームをクリアしてパスワードを解除した人間は確かにいます。これ以上士導君といるとさらに情報を与えてしまいそうなので、我はこれにて退散！」
落ち武者は手に持っていた煙玉を地面に叩きつけると煙が充満しているうちに俺の前から姿を消した。俺は軽く咳払いをすると、自分の服をパンパンッと払った。
ゲームが出来ないということは『バイオレンス・キル』のことは俺の記憶だけが頼りなわけだ。俺の記憶にあるものはＡ男が自殺したことや御札が貼られていたこと。他には…向付とＡ男の関係性はゲームだけでは分からなかったが間違いなくあるはずだ。


『ゲームをクリアした者』
自分よりも先にゲームをプレイし、クリアした人がいる。その際、パスワードも解いている。


『登場人物』
Ａ男のシルエットが向付と一致していた。


『Ａ男の死因』
Ａ男の死因は校舎の屋上からの飛び降り自殺だった。Ｂ男たちが目撃している。


『御札』
次生まれたときはいじめられないように願ったＡ男が自らに貼った。


動機となる『バイオレンス・キル』のことはこんなもんか。あとは『バイオレンス・キル』と同じタイミングで
落ち武者が俺たちに渡したギガントハンマーか。


『ギガントハンマー』
落ち武者が全員に支給した殺人道具。破壊力は歌土井を一撃で殺すほど。


「おい！士導！」
俺が声のする方を振り向くと食堂のドアのところで憩崎がいかにもな痛々しいポーズをして俺を手招きしていた。
「なんかようか？」
「闇の王の名も無き手下の闇の力を蓄える場所に行ってやろうと思ったらたまたまお前を見つけてな。ちょっと俺様に付き合え」
俺は憩崎を軽蔑するような目で見つめると憩崎はその理由がわかったらしく頭を抱え込んだ。
「最近、言ってなかったのに！気を抜いたらすぐに出てしまうこの中二病！と、とにかく向付の部屋についてこい！」
闇の王の名も無き手下の闇の力を蓄える場所っていうのは向付の部屋のことだったのか。名も無き手下が残念系を意味しているのか。華狗也とはまた違った意味でイライラしてきた。


ー向付の部屋ー

思ったよりも綺麗な部屋だった。そこまでは前回の車鳥の部屋と同じだが、今回は違った。ベッドの上にあるも封筒。中を開けてみて俺は確信した。間違いなく落ち武者が俺たちに配った弱みの封筒だ。しかし、紙は一枚ではなかった。もう一枚の紙には遺書と書いてあった。俺は遺書を一通り眼を通すが俺は遺書の違和感にすぐ気がついた。名前がない。


『遺書』
向付の部屋にあった遺書だが、名前がない。

俺は遺書を封筒にしまうと自分のポケットに入れ、再び部屋の捜索を開始するが、目はまたすぐに止まった。向付の部屋のゴミ箱が妙に荒れていることに気がつくと即座にゴミ箱に近寄った。
ゴミ箱の中には紙を切った後の紙屑が大量に捨てられている。そして、おそらくこの切った跡を見るとこの形は御札だろう。
またも謎が広がっていく。御札は向付自身が作ったものだとしたら本当に一体誰が殺したんだ？


『向付の部屋のゴミ箱』
御札を制作したあとの大量の紙屑が捨てられていた。


「士導ー。進展はあったか？」
「まぁまぁかな。俺もう一度休憩室行って向付を見てくる。じゃあお先な！」
学級裁判までの時間がそこまで迫っている中俺は再び休憩室に向かって走り出した。

「静流くん？どうしたのそんな慌てて」
「華狗也か…。時間がないからな。そっちはどうだ？」
「実は僕も今からこの部屋のこと調べるんだ？一緒にどう？」
俺は華狗也のあとについていき向付の死体の前までにきた。前来た時に調べていない箇所を探り出しながら死体のあちこちに触れてみた。顔から徐々に下がっていき胸を触り始めた時点で俺は違和感を覚えた。
…胸辺りが妙に不安定だ。
骨が折れている、もしくはなくなっていると考えるのが妥当だろう。毒が死因として骨にまで影響を与えるほど強いものを飲んだのだろうか？


『不安定な骨盤』
胸の骨が脆くなっているか、なくなっている。どちらかは現在不明。


華狗也は他のどこも見ずにただ口元を見ていた。
「華狗也。ずっと口元ばかり見て何してる？」
「静流君、この口元の血だけど。一度拭いた跡があるよ。もし僕の仮説が正しいなら…」
華狗也は急に立ち上がり休憩室の隅まで歩き、そこにあるゴミ箱に手を入れた。そして、その中から取り出したあるものを俺に見せる。
「それは…メガネ拭き？」
「おそらくね。それに血がついてる。犯人は一度口からの流血を止めようとしたけど血の多さに諦めたんじゃないかな？」
「一度血を拭いた？何のために？」
華狗也はテーブルの上に置いてある毒薬の瓶を指さした。俺はそれを手に取るが、怪しいところが全くわからない。
一応効能と注意書程度はメモしておくか。


『捨てられたメガネ拭き』
休憩室のゴミ箱に捨てられていた。血がついている。

コトダマ更新！
『カプセル式の毒薬』
効能　自殺専用
微量でも人を死に追いやることができる
注意書　
１、５粒以上の大量摂取で即死
２、そのままの服用では摂取から効果を発揮するまで約１０時間かかる
３、水と同時服用で２時間で発揮する。
４、１粒では死にきれない可能性がある
５、即死以外の場合、効果を発揮してから１日は免疫力によっては助かる可能性がある


ところで、華狗也はもう犯人がわかっているのだろうか？前回の学級裁判でもいち早く犯人を見つけていた。一体何者なんだ、華狗也は？
俺は死体を踏まないようにして死体を飛び越えるが、死体を意識しすぎたためにそばにあったロウソクを数本倒してしまった。
俺がその倒したロウソクを元に戻していると、
「静流君！ストップ！」
不意に反応して俺は手を止めた。
「なんだ？」
「静流君、そのロウソクの裏になんか文字書いてるよね？それなんて書いてある？」
文字？ロウソクの底を見ると確かに文字が書いてある。しかし、これはハズレだ。御札に書かれてある「呪」とい文字が写っていただけだった。
「残念だったな。ダイイングメッセージとかなら需要があったのにな」
「…そうだね」
倒したロウソクを見つめながら残念そうに華狗也は呟いた。


『ロウソクの裏の文字』
御札の文字が写り「呪」となっている。


ピンポーンパンポーン
「捜査は進んでますか？進んでなくとももう学級裁判の時間です！お前たちの形だけの友情を今こそ発揮する時ですよ。準備ができた人から食堂隣のエレベーターの前に集まってください」


俺が着いたころにはみんな揃っていた。お互いがお互いを見つめ合っている。ある者は全員を疑い、あるものは全員を信じているのだろう。俺の考えは後者だ。みんなを信じたい。だけど、やらないといけない時がある。
それが…学級裁判！

俺は重たい足を一歩前に進めた。エレベーターの中に入ればもう戻れない。それでも俺は行く。
全員が入り、エレベーターはようやく動き出した。長いを沈黙を経てエレベーターはついに学級裁判場にたどり着いた。


逃げることのできない

そして

殺された仲間のために

二度目の命懸けの学級裁判は



幕を開ける！！！




コトダマ一覧
『カプセル式の毒薬』
『休憩室の状況』
『犯人の手間』
『口元の血痕』
『司翼の証言』
『司翼の言葉』
『遺書』
『向付の部屋のゴミ箱』
『不安定な骨盤』
『捨てられたメガネ拭き』
『ロウソクの裏の文字』
『ゲームをクリアした者』
『登場人物』
『Ａ男の死因』
『御札』
『ギガントハンマー』

学　級　裁　判　　開廷！！

落ち武者
「さて、まずは学級裁判の説明からいたしましょう…」

春ヶ咲
「それなら前回聞いただろ」

落ち武者
「そうですか。わかりました。では議論を始めてください。最初は今回の動機となった『バイオレンス・キル』からいきましょうか」

海土
「え？あれ動機だったの？」

清水
「動機以外には考えられないからね」

柴白
「ごめんなさい…。私あのゲーム怖かったからやらなかったの…」

清水
「柴白さんのようにあのゲームをプレイしてない人もいるみたいだから、まずはあの【ゲームの内容】から話していこうか」

司翼
「登場したのは【Ａ男】、【Ｂ男】、【Ｃ男】、【Ｄ子】の四人でＡ男がいじめられているのがゲーム内容だったね」


【Ａ男】　←　『登場人物』


士導
「そして、その登場人物のうちの一人Ａ男はシルエットが向付そっくりだったんだ」

黒薔薇
「あのゲームが動機となっているなら、Ａ男が向付なのは間違いないだろうな」

司翼
「そして、その後Ａ男は死んだ…」

地近
「ゲームにはなかったけど、あれは絶対【Ｂ男に殺された】んだよ！」

憩崎
「まぁそうだろな。Ｂ男じゃなかったらＣ男に殺されたかのどちらかだろ」


【Ｂ男に殺された】　←　『Ａ男の死因』


士導
「お前ら何言ってんだ？ゲームやったなら死因が自殺だったってことくらいわかるだろ？」

地近
「静流君こそ何言ってるの？ゲーム内のどこにもＡ男が自殺したシーンなんてなかったよ！」

士導
「どういうことだ？自殺したシーンならあっただろ！ゲーム３日目でＡ男は屋上から自殺したじゃないか！」

憩崎
「そもそもあのゲームに３日目なんてなかっただろ！少なくとも俺がやったゲームには２日目と４日目しかなかったぞ」

士導
「憩崎に聞きたいんだけど、Ａ男の死体が見つかった時、Ａ男は身体中に御札を貼ってたよな？あれの理由はわかるか？」

憩崎
「知らないな。どうせ、【Ｂ男が貼り付けた】んだろ？」


【Ｂ男が貼り付けた】　←　『御札』


士導
「残念ながらそれは違う！お前らは本当に３日目のことを知らないのか」

清水
「僕も３日目のことは知らないけど、ゲームの４日目が終わった後、パスワード入力画面に移り変わったんだ。残念ながら僕はわからなかったけど、士導はわかったの？」

士導
「いいや、わからなかった。だけど、パスワード入力画面のパスワードは既にロック解除された状態から始まったんだよ」

清水
「それから３日目が始まったと？」

士導
「実際には１日目と３日目がパスワード入力画面のあとで始まった」

鍵村
「しかし、私もパスワード入力画面で詰んだが、士導以外の人間でパスワードを破ったのがいるということか？」

春ヶ咲
「士導が嘘をついていなければな」

宇津木
「確かに士導君が嘘をついていて実はパスワードを破った可能性もあるよね」

海土
「だけど、パスワードを破ったことを黙っとくことにメリットなんてないと思うんだが」

柴白
「あの…、向付君がパスワードを解いた可能性もあるんじゃないかな？」

清水
「いや、それはないよ」

黒薔薇
「なぜだ？」

清水
「確か落ち武者は言ってたよね。ゲームをクリアした人にはプレゼントがあるって。それで士導君は何も貰ってないんだよね？」

士導
「あぁ。俺がゲームをクリアした時、落ち武者が言ってたんだが、賞品はもうあげてしまいましたって」

清水
「となると、賞品をもらったのはパスワードを解き一番最初にエンディングを見た人になるわけだ。もし、それが向付君だった場合、他の人はその賞品のことは知らないのに向付君を殺したことになる。要するに動機が犯人にはないことになる」

憩崎
「だが、学級裁判の最初に落ち武者が今回の動機となった『バイオレンス・キル』としっかり言ってたからな。向付が賞品受け取った、つまり、一番最初にゲームをクリアしたとはならないわけだ」

鍵村
「なるほど。だけど、もし向付が賞品を受け取っていないならそれはそれでまた新たな謎が生まれたぞ」

司翼
「おっと、鍵村さん。僕と同じことを考えていたようだね」

清水
「司翼君。君の意見を聞かせてもらおうかな？」

司翼
「僕の前に清水君は今回の事件についてどう思うの？」

清水
「ん？僕？普通に考えれば毒薬による殺人だろうけどね」

司翼
「本当に【殺人だったのかなぁ？】」


【殺人だったのかなぁ？】　←　『司翼の言葉』


士導
「お前さっきも意味不明なこと言ってたよな。殺人じゃなかったりしてとかなんとか」

司翼
「あれ聞こえてたんだ。小さな声で言ったつもりだったんだけどなぁ。まぁいいや、今から僕が殺人じゃないと言った根拠を話していくよ」

図川
「でも、あれはどう考えても殺人だよ」

司翼
「それを決めつけるのはまだ早い。まずだけど、向付君は【何で殺された】のかな？」


【何で殺された】　←　『カプセル式の毒薬』


士導
「まだこれと決まったわけじゃないが、今の時点ではカプセル式の毒薬が一番怪しいな」

司翼
「そう。士導君の言うとおり死因は毒。カプセル式の毒薬を飲むことで向付君は息絶えてしまったと考えられる」

柴白
「だけど、犯人がそれを使って殺したんだとすると、ちょっと露骨すぎる気もしない？」

憩崎
「確かにな。毒で殺されたことがバレないように瓶ごとどこかへ隠すはずだよな」

司翼
「そうかもしれないけど、僕の推理だと犯人は毒薬の瓶を隠せなかったんだ。その説明は後でするから次に進もうか。次は殺された場所についてだけど、休憩室について【思いあたること】はある？」


【思いあたること】　←　『休憩室の状況』


士導
「休憩室の中は殺人が起きたとは思えないほど片付いていたな。向付の周りに置いてあったロウソクを除けばな」

春ヶ咲
「でも、それは犯人が片付けただけかもしれないだろ？」

司翼
「いいや違う。そもそもあの部屋では争いは起こっていないんだ」

宇津木
「いやいや、それはないでしょう。殺人が起こったんだよ。争いがなかったことはないんじゃない？」

鍵村
「それは犯人がいた場合の話でしょう？向付が…
自殺だったらどう？」

士導
「なっ！自殺！？」

海土
「何バカなこと言ってんだよ！」

地近
「自殺！？いやでもそもそも【毒薬を飲んだ証拠】もないのに？」



【毒薬を飲んだ証拠】　←　『口元の血痕』



士導
「毒を飲んだ証拠なら口元の血痕がそうだろ。毒を飲んだことで吐血したんだよ。でも、筋が通ってるからって自殺は何のメリットもないのに不自然だろ！」

地近
「本当にメリットって何もないよね。私たちを困らせることぐらいしか…まさかそれが狙い？」

海土
「それはないだろうな。俺たちを困らせるのが目的なら誰かに殺されたように見せかけるだろ、普通。だけど、それは自殺だった場合だ」

司翼
「君たちが何を言おうとも僕は【動かぬ証拠】を持っているんだよ」



【動かぬ証拠】　←　『遺書』



士導
「お前が言ってるのは向付の部屋に置いてあった遺書のことか？」

柴白
「それなら私も見たよ。あ、そうだあの遺書は…」

司翼
「そう。向付君が自殺するにあたってのことが書かれている遺書が向付君の部屋から見つかっているんだ。もうこれは自殺以外ありえないでしょ？」

士導
「いやだけど、あの遺書は名前すら書いていなかったんだぞ。名前を書いていない遺書をそうやすやすと信じていいのか！」

司翼
「急いで書いたから書き忘れたんじゃない？とにかく、僕の【推理に間違いはない】！」



【推理に間違いはない】　←　『司翼の証言』



士導
「…待て」

司翼
「どうしたの？」

士導
「お前言ってたよな。毒殺の場合は身体のどこかに斑点ができるって」

司翼
「言ったね。でもたぶんあの毒薬は斑点が出ないタイプのものだったんだよ」

清水
「いや、それはないね。だいたい自殺という推理自体間違っているんだよ」

司翼
「僕のどこに間違っている部分があるって言うんだ！」

清水
「時間だよ。君の推理では向付君は毒薬を飲んでからどれくらいで死んだと思ってるの？」

司翼
「【即死以外ありえないだろ】」



【即死以外ありえないだろ】　←　『カプセル式の毒薬』



士導
「それは違うぞ！」

司翼
「何が違うんだい？」

士導
「あの毒薬は即死しないものなんだよ。あれが効果を発揮するのは時間がかかる。だけど、お前の推理だと即死。つまり、お前の推理は間違っている！」

司翼
「なるほど。なら士導君。君の推理はどうなんだい？教えてよ」

士導
「それは…まだ…」

清水
「いや、そんなことないよ。静流君は答えに近づくための手がかりを持っている。あとはそれを組み合わせるだけだよ」

海土
「清水はもう誰が犯人かわかっているのか？」

清水
「いいや。まだわからない。ただ本当の死因ならわかったよ」

春ヶ咲
「本当の死因なんてあるわけないだろ。【毒薬が死因】なんだよ」



【毒薬が死因】　←　『ギガントハンマー』



士導
「いや、待て。毒薬が死因と決めつけるのはまだ早い気がする…。落ち武者が俺たちに配布したギガントハンマーの可能性もあるはずだ」

地近
「でも、ギガントハンマーって一振りで　歌土井君の体を削ったほどの威力なんだよ？もし、向付君の死因がギガントハンマーならすぐにわかりそうだけど」

清水
「そう、すぐにわかるはずなんだ。だけど、犯人が向付君の横に毒薬を置くことで向付君は毒で殺されたと思わされていたんだよ」

司翼
「犯人？てことは、向付君は自殺ではないと？」

柴白
「だけど、さっき言ってたよね？今回の犯人には動機がないとか」

清水
「うん、そうだよ。今回の事件は自殺ではないけど、犯人に動機はないんだ。…利用したんだよ。向付君を」

鍵村
「向付を利用したということは向付は犯人の計画を知っていた可能性があると？」

清水
「そうだよ。これはあくまで僕の推理だけど、ゲームをクリアしたらもらえる賞品の中身は【向付君の過去】で犯人はそれをつかい向付君を脅した。そして、向付君は自分が殺されるとも知らずに【犯人の指示】に従った。最後に休憩室に呼び出され殺されたんだ」



【犯人の指示】　←　『向付の部屋のゴミ箱』



士導
「その指示が向付の体に貼り付けられていた御札の作成だったんだな」

清水
「その通り」

憩崎
「だけど、そこまで【無駄なこと】する必要があったのか？」



【無駄なこと】　←　『犯人の手間』



士導
「華狗也の推理通りだと、犯人はゲームの死体と同じ状況にすることで、向付を効果的に脅したんだろ。そのことを向付に伝えて御札を作らせた華狗也の推理通りだとそこらへんも辻褄があってくる」

宇津木
「ギガントハンマーの方の話はどうなったの？死因はギガントハンマーだって言ってから話が進んでないよね？」

春ヶ咲
「ギガントハンマーでやったなら体のどこかが傷ついているはずだろ。だけどよ、向付の死体には【傷なんてなかった】ぜ」



【傷なんてなかった】　←　『不安定な骨盤』



士導
「それは違うぞ！俺たちは毒薬を意識しすぎて見損なっていたんだ。傷ならあった、胸にな」

清水
「犯人は向付君の胸をギガントハンマーで叩き殺した。吐血はその際に起こったものだったんだよ。しかし、犯人にとって吐血したのは予想外だった。本来、毒薬は飲んでから十時間経ってからでないと効果を発揮しないから吐血も毒薬が効果を発揮した時にしてないとおかしい。だから、吐血したのをみんなにバレないために【血を消した】んだ。



【血を消した】　←　『捨てられたメガネ拭き』



士導
「犯人はメガネ拭きで向付の血を拭き取った。そして、そのメガネ拭きの持ち主は



春ヶ咲、お前のものだろ！」

春ヶ咲
「俺のもの？俺以外にもメガネをかけてるやつはいるだろーが」

士導
「メガネを今かけてる人はメガネ拭きは必要だし、メガネを持ってない人はそもそもメガネ拭きを持ってるはずがない。つまりメガネを持っているが今は使ってない人物が犯人なんだ！なぁ、春ヶ咲」

春ヶ咲
「残念だけど俺じゃあない。そもそも向付は自殺なんだろ？俺が犯人って言うならまずは【自殺じゃないことを証明してみろよ】。どうせできやしないんだろ」



【自殺じゃないことを証明してみろよ】　←　『ロウソクの裏の文字』



士導
「これを見てもまだ自殺だと言い切れるのか？」

春ヶ咲
「なんだそれ？ロウソクか？裏に文字が書いてあるが」

清水
「そう、裏に文字が書いているんだよ。もし、向付君が自殺したとすれば、ロウソクを自分の周りに置いてから毒を飲んだことになるよね？」

鍵村
「そうか？だって毒薬は飲んでから効果を発揮するまで【時間がかかる】んだろ？なら飲んでからロウソクを置いても可笑しくはないだろ」



【時間がかかる】　←　『カプセル式の毒薬』



士導
「それは直接毒薬を飲んだ場合の話だ。あの毒薬は水と同時に服用することで大幅に効果を発揮するまでの時間を短縮することができるんだ」

図川
「でも、水を飲んでないなこもしれないよね？」

清水
「自殺するということは早く死にたいってことでしょ？そんな人間が効果が出るまで時間がかかる方を選択するわけがないんだよ」

士導
「で、ロウソクの話に戻るぞ。ロウソクの裏に文字があるということはロウソクは御札の上に置かれていたことになる。つまり、ロウソクは御札より後に置かれたんだ」

柴白
「犯人が向付君を殺してから、周りにロウソクを置いたことでその一つに文字が写っちゃったんだね」

士導
「そういうことだ。そして、これらの犯行をした人物は春ヶ咲お前なんだよな？」

春ヶ咲
「違う！向付は自殺だ！殺してなんかいない！」

清水
「往生際が悪いなぁ。なら今回の事件を最初から振り返って終わりにしようか」



　　　　　　　　クライマックス推理！！

act1

まずは犯人はゲーム『バイオレンス・キル』をクリアして落ち武者から賞品を受け取った。その中に入っていたものはおそらく向付の弱みとなるものだったんだろう。


act2

犯人はそこで向付を利用することを考えた。まず向付を脅し大量の御札を作らせた。おそらく犯人は向付に殺人計画を話し共犯者に仕立て上げようとしたんだ。


act3

そして、朝６時前向付はおそらく犯人の指示に従い休憩室に入った。自分が殺されるとも知らない向付は油断してたんだ。その隙に向付を倒し胸をギガントハンマーで叩いた。その際の吐血はのちのちの毒殺に見せかけるためには都合の悪いものだった。犯人はそれを消そうと自分のメガネ拭きで血を拭き取ったが血の量に完全に消すことを断念した


act4

最後に自殺と見せかけるために向付の近くに毒薬を置き俺たちの視線がそれに向くようにしたんだ。本当の死因がギガントハンマーだとバレないように。仕上げに向付の周りにロウソクを置いて犯人は休憩室を去った。


士導
「これらを行ったのは春ヶ咲お前だ！」


　　　　　　クライマックス推理　終了！！


春ヶ咲
「お見事だ。向付をそそのかしさらに見方に付け殺したのは俺だ…」

柴白
「だけど、春ヶ咲君はなぜ【パスワードが解けたの】？」



【パスワードが解けたの】　←　『ゲームをクリアした者』



士導
「それは春ヶ咲が超高校級のゲーマーだからだ。春ヶ咲にしてみればあれぐらい簡単なものだったんだろ？」

春ヶ咲
「まぁな。さて、落ち武者よ。そろそろ投票タイムに入ってくれ」

落ち武者
「はい、わかりました！それではお前たちはお手元のスイッチを押して投票してください。その答えが正解だったらいいですねぇ」


　　　　　　学　級　裁　判　　閉廷！！

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「大正解です！向付君を殺した犯人は春ヶ咲君でした！」
終わった。二度目の学級裁判が。結果は信じたくないが向付を殺したのは間違いなく春ヶ咲なんだ。動機なんてない。ただ春ヶ咲のここを出たい！という気持ちが刺激され今回の事件が起きたんだ。もし、俺が春ヶ咲の立場なら殺していたかもしれない。そんな同情求めてないかもしれないが。
「さて、もうじきおしおきされる俺からお前たちへ遺言だ。この学園にはまだ人がいる…」
「余計なこと喋られる前にはりきりっていっちゃいましょう！お仕置きターイム！！」
春ヶ咲は開きかけた口を閉じると鎖に引っ張られるがままに奥の部屋に連れ去られた。

春ヶ咲くんがクロに決まりました

おしおきを開始します





超高校級のゲーマーのおしおき
「絶望の達人」






落ち武者は手に２本のバチを持った。
モニターにはリズムゲームの画面が映し出される。
「春ヶ咲くん、よく聞いてくださいね。このリズムゲームでは流れてくる赤の音符と青の音符をタイミングよく叩いて高得点を出します。

それだけではありません。この赤の音符と青の音符は春ヶ咲くんの身体と連動しています。赤を叩けば右半身、青を叩けば左半身が傷ついていきます。

それでは、ミュージックスタート！！！」

音楽が流れだすと赤の音符と青の音符がリズミカルに流れてくる。
落ち武者が振りかぶって赤の音符を叩く。


「ツッッッ！？」

青の音符を叩く。

「ンッガハ！！」

赤の２連符を叩く。

「ッッッッッッッ！！！！」

それから俺は赤と青を叩かれ続けて意識が身体がなくなっていくのを感じた。肩から下はもう身体はなくなっているだろう。

いや、もしかするともう脳以外はなくなっているのだろうか。


「いえいえ、違いますよ春ヶ咲くん。そうやってすぐ現実逃避をするのは現代人の悪い癖ですよ。これからがクライマックスなのにそれを味わわずして何を味わうんですか？」

画面には赤と青の連打が表示される。

やめろ

やめろやめろ

やめろやめろやめろ

やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ
もうやめてくれぇぇぇぇぇぇ！


そんな俺の願いは無視して、画面に映し出された赤と青の連打を無慈悲に行った。



落ち武者が叩き終えると、春ヶ咲の身体があった場所に血だまりがあり、その真ん中に黒縁の眼鏡が落ちていた。

落ち武者はそれを



………踏みつぶした。

「ねぇ士導くん」
学級裁判が終わり、皆が沈黙し声も発さず部屋へ帰っていくなか華狗也は空気も読まずに話しかけてきた。
「士導くんて推理が得意なの？今回も凄かったねぇ」
「それはこっちの台詞だ。前回も今回も答えを知っているにも関わらず、俺たちに謎解きさせるように自分はヒントだけを与えて何も言わない。お前は一体何を知ってる？お前は何がしたいんだ」
「それは言えないなぁ」
華狗也はニコニコしながら俺の顔を見る。
「ただ、僕はこのゲームの最後を知っている。誰がどんな結末でどんな最後を遂げるのか全て知っている。それを踏まえた上でこのゲームに参加しているとしたら何が目的だと思う？」
最後を…知っている？またわけのわからないことをと言いたいが、学級裁判で誰よりも最初に答えにたどり着いていたのは間違いなく華狗也だ。それはこの学園生活の全てを知っているからだというのか。
「全て知っているなら何故終わらせようとしない？お前は人が殺されていく様が見たい…」
この学園の中には１人裏切りものがいる。
「お前…まさか…」
華狗也はニコニコをやめない。
「違うよ。僕はみんなの仲間さ。終わらせないのは終わらせれないからだよ。僕の力じゃ誰も救えない。士導くん、君が動き出さないと終わらないんだ」
華狗也はそれだけを言い残すと俺の返事も聞かずも聞かずに部屋に帰っていった。
俺が動き出す？あいつは何を考えている。


華狗也は部屋に入ると鍵を閉め、ベッドに飛び込んだ。
「僕の偽物の才能じゃ誰も救えない。でも…僕なら」



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松谷は森の中を進んでいた。森の中にある学園を目指して。
それは突然松谷の目の前に現れた。外見こそ勝ち組が丘学園と類似している建物が。
「士導さんも無茶な注文してくれるな」
言葉とは逆に松谷の泥だらけの顔は微笑んでいた。茂みを抜け出すとすぐさまその建物に入っていった。
植物に侵食されているその建物は松谷の足を幾度となくさらった。その度傷つく松谷だったが、足を止めることなく少しずつ奥へと進んでいった。
校長室、と書かれた標識が目の前に現れると松谷は急ぎ足で中に入った。
「そんなに急かさないでください。それ以上はけがをしてほしくないです」
「こんな場所ずっといたくないだろ？それより聖、これを見ろ」
松谷が指さすその先には士導と書かれたネームプレートが落ちてあった。
「それにこの部屋」
周囲をぐるっと見渡すと散らかっている。本棚の本や書類は全て床に落ち、机の引き出しは全て開き中身がむき出しになっている。
「おそらく黒薔薇の仕業だ。黒薔薇がこの大量の種類の書類の中から何を持ち帰ったかはわからない。持ち帰った書類のせいで僕たちの仕事が長くなるからわからない。けど、士導さんの命令だ」
松谷は腕まくりすると、散らかっている書類の１枚を手にした。
「さっ、仕事だよ。聖は机の上にあるものから頼むよ」
聖は頷き机の上に散らかった書類を漁り始めた。



chapter2　　負け組より生まれた漆黒の怨念　　完