二次創作小説(新・総合)
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.155 )
- 日時: 2020/04/19 21:39
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
chapter5 死と恋のバラード
コロシアイ学園生活残り15日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
結局あの人影が誰なのかは分からなかった。華狗也が俺に報告してこなかったことから考えるとあいつも人影の正体が誰なのかはわからなかったのだろう。だけど、正直半分嘘だと思っていたことが本当だった。みんなに言うべきなのか。それともそうじゃないのか。正体が誰かを分かってから言う方がみんなを混乱させなくて済むかもしれないな。とりあえずは華狗也に聞きに行こう。
「静流君も見つけられなかったのか。僕の方もさっぱりだよ。どこかに黒幕しか知らない抜け道があるとしか思えないほど不自然だよ」
「俺やお前が見た人影は本当に黒幕なのか?今まで姿を見せることもなかった黒幕がここに来て二人にも目撃されるなんてなんか可笑しくないか?」
「どうだろうね。それすらも落ち武者の策略だったりしてね。わざと僕らの前に姿を現したり」
華狗也の発言を遮るように俺たちの間に落ち武者が現れる。
「今我の噂をしていましたか?いやーすっかり我も噂されるほどお前たちに受け入れられるようになったとは。学園長として嬉しい限りです。それよりもお前たちはこっちですよね。また学級裁判を生き延びたお前たちに新たな場所についての地図をご用意いたしました。一人一部ずつあるので、順番に取って行ってください。それでは」
俺は落ち武者が置いて行った地図を一部手に取りそれを開いてみる。どうやら新たに開放されたのは勝ち組ヶ丘学園の四階らしい。四階にあるのはプラネタリウムに校長室、それに資料室と植物庭園。
俺が地図を片手に各部屋を探索しに行こうとした時だった。
「ちょっとまて。これだけ人数も減ってるんだし四階を探索し終えた後会議するってのはどうだ?見落としている情報だってあるわけだし」
「それは大いに賛成だよ。というか帰ってきたら僕からも提案しようと思ってたよ。じゃあ一通り見終わったら食堂に集まろうか」
華狗也の一声に全員が頷き、俺たちはその場を後にした。
ー資料室ー
地図を渡された時一番目に残ったのはここだった。俺たちが欲している情報などとっくに黒幕に処分されているだろうがそれでも俺にとってはまだ必要な情報が多く眠っているはずだ。
俺は扉を開いて中を覗いてみる。そこは図書室のように棚に本が積まれていた。これだけ本があるなら図書室はなぜ存在しているのかを考えさせられる。
俺はしばらく資料室の中を歩いてみるが、勝ち組ヶ丘学園に関する資料は図書室と同じようなものしかなく俺の記憶は今までと変わりなさそうな気配がしていた。そんな時だった。
「記憶…操作…?」
勝ち組ヶ丘学園の資料とは少し離れたところにある「記憶操作に関する記述」というタイトルに俺の視線は吸い込まれた。
俺の記憶は他のみんなとは違い思い出せない部分が多い。落ち武者は手違いって言ってたけどこれだけ時間が経っても思い出せないあたり黒幕に意図的に忘れさせられている可能性が高い。もしを記憶を自在に操ることができる術があるとすれば、俺だけが才能を思い出せない理由にも説明がつくかもしれない。そう願う一心で俺は本を開いた。
しばらくして本を読み終えたが中に書かれている記述は全て非現実的で未来に向けての理想が書かれたような内容だった。人の記憶を別の人に移し替えることができるとか、記憶を抜き取るとかそんなゲームの中のパラメータように人の記憶を操ることができるなどあるはずがない。
だけど、他に記憶に関係しそうな本はない。唯一の手掛かりはこの本ということだ。記憶に関してだけじゃない。勝ち組ヶ丘学園に関するものもほとんどない。勝ち組ヶ丘学園名簿だって図書室にあったものと同じだ。中身だって違う内容が書かれていたりしない。
「…は?」
タイトルが同じならば内容だってさほど変わらない。こんな小さい記述見落としても仕方がない。
俺が前に見た勝ち組ヶ丘学園名簿の一番下に新しい欄ができていたのだ。名前や才能だけでなく性別まで全て詳細が不明だが、確かに前に図書室で見た時には書かれていなかった。
俺たちが勝ち組ヶ丘学園に入学した時、人数は17人だった。相変わらず俺の名前は書かれていないが、一番最初に見た名簿には俺の名前もはっきりと書かれていた。今更俺の名前を隠す意味なんてないはずだ。だとするとここに書かれている詳細不明の人物は俺たちの誰もが知らない18人目の高校生なんだ。
俺が昨晩見た謎の人影。あれがこの18人目の高校生だとするとこいつが俺たちにコロシアイをさせている張本人、つまり黒幕ってことになるんじゃないのか。だけど、18人目の高校生の記述が少なすぎる。もっと情報がないと黒幕かどうかの問題ではなく存在しているのかも怪しい。こいつを知っている人物。
校長なら俺たち全員を知っているはずだ。
俺は勝ち組ヶ丘学園名簿をなおし校長室に向かった。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.156 )
- 日時: 2020/04/21 21:28
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
校長室と書かれた札が吊るされた部屋の前に着くと、勢いよく部屋のドアノブを回した。しかし、扉は開かない。逆方向にドアノブを回してみるもやはり開かない。どうやら鍵が閉まっているらしい。
本当はドアをぶち破ってでも中に入りたいが、監視カメラがある以上落ち武者に目撃されたら俺の命が危ないことになる。
俺は校長室に背中を向け、残り二つの部屋に行くことにした。
残りは確かプラネタリウムと植物庭園だったな。同じ階にプラネタリウムと植物庭園が共存しているなんてこの校舎は本当にどれだけ大きいんだ。考えられないことの連続であまり深く考えてこなかったが、これだけ大きい建物なんだから外から見ても目立つはずだ。そこに、助けの一人来ないなんてあまりに不自然だ。
そう考えているうちに植物庭園の前までそのまま中に入った。
ー植物庭園ー
広い。それが最初に思ったことだった。赤や黄など様々な色をした花に大きな緑の植物が俺を囲むように植えられていた。
少し歩いても景色が全く変わらない。花と草のアーチが俺をずっと出迎えてくれる。コロシアイの最中でなければ心が穏やかになれただろう。
さらに歩くとようやく終わりが見えてきたようだった。植物庭園の一番端にあったのは生物室と書かれた部屋だった。植物庭園の華やかさとは真逆の薄暗い雰囲気の部屋に俺は入ってみる。中も外見の通り薄暗くそれにとても寒い。怪しげな瓶や試験管がたくさん置かれており、そこから白い煙がたっている。海土がいればこの部屋について詳しく知ることができただろうな。俺にはわからない空間を冷やさないとできないことがあるのだろう。
俺が振り返って生物室から出ようとすると。
「落ち武者!?」
入り口の前に立っていたのは落ち武者だった。
「士導君が植物庭園に入った時からずっと後ろからついていっていたのにそれほど我って存在感が薄いですか?ああそうですか薄いですか。それはもう居酒屋で出てくるハイボールのように」
「まだ何も言ってないだろ。それに俺はまだ未成年だからよくわかんねーよ」
落ち武者は見るからに落ち込んで俺の方を見向きもしない…と思っていた。
「なんでこんな部屋が寒いのか気になりませんか?」
「気になりますか?って気になったところでお前は教えてくれないだろ」
「まぁそうですね。ですがせっかくですのでヒントくらいは教えて差し上げましょうか。部屋がとても寒いのはそうでないと保存がきかないものがあるからです。そこに保管庫がいくつかあるでしょう?訳があってあれを開くことは今はできないのですが、そこに隠されているのです。例えば、死体とか」
「死体!?誰のなんだよ!まさか死んだあいつらの死体がそこに入れられているのか?」
「例えばの話です。少なくともお前たちがコロシアイ学園生活中にお前たち自身で殺し合った人間の死体はありません。処刑された人も同様です」
「じゃあ死体は入ってないじゃないか。それともコロシアイが始まる前から死体保管してたとかもないのか」
「そうですね。そろそろ言っておきますが、このコロシアイ学園生活に参加している人以外は勝ち組ヶ丘学園に足を踏み入れていません。死体としても途中から学園内に運ばれたってこともありません。ヒントどころかかなり喋ってしまいました。我はここらへんで退散させてもらいましょうか」
落ち武者によるとあいつらの死体はもう処理されているってことか。じゃああの保管庫って一体何が入ってるんだよ。今は開けることができないらしいけど。落ち武者が隠すってことはそれ相応のものがそこに入れられているはずだ。しかし、校長室が開けられないのと同じでできないことを考えても仕方ない。時間も時間だしまだプラネタリウムには行けてないけどみんなとの約束もある。一度食堂に戻って俺の情報を共有しておかないとな。プラネタリウムに関してはまた明日行けばいい。それに誰かはプラネタリウムには行っているはずだ。自分の目で確かめる前に他の人から聞けばいい。コロシアイが起きてしまったせいでコロシアイ学園生活の日数がもとに戻ったんだ。そう慌てる必要はない。かと言ってゆっくり探すのも流石に悠長な話だけど。
さてみんなのところに行くか。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.157 )
- 日時: 2020/04/23 22:52
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
ー食堂ー
「さて、みんな集まったみたいだしお互い集めた情報を共有しようか。じゃあまずは僕から早速だけどこれを見て欲しいんだ」
そこで華狗也が取り出したのは金色に光る宝箱だった。
「これがプラネタリウムの中央に置かれてあったんだよね。残念ながら鍵は開かないみたいだけどあからさますぎてこの中には確実に重要な手掛かりが隠されている。僕はそう感じるよ」
「プラネタリウムに宝箱?逆に落ち武者の罠ってことはないのか?」
「可能性がないとは言い切れないけど、開けないわけにはいかないよね?開けられない以上とりあえずは宝箱の件は忘れるしかないよ。それよりも他に共有できる情報を持ってる人はいない?」
全員が次々に情報を共有していく流れに乗って俺も捜査してわかったことや落ち武者と話したことを全員に共有した。ただ、資料室で見た18人目の高校生についてはまだみんなに伝えることができなかった。かえってみんなを困惑させてしまうかもしれないし、また首謀者探しのように18人目の高校生を全員で探し出すかもしれない。俺以外の誰かが18人目の記載に気づいていれば便乗して俺も言ってもいいが、俺たちの目的は首謀者を見つけ出すことじゃない。仮に首謀者の正体が分かったからと言って俺たちにはそれ以上どうしようもない。
「なるほどね。4階について大体わかったよ。だけど、全員が校長室に入れてはいないどころか校長室に入る手掛かりすらないとはね。てことは僕の予想通りこの宝箱の中には校長室に関するものが入ってるはずだよ」
「その宝箱を開けられないのなら手掛かりだってないのも一緒だ。落ち武者がその宝箱を開けるまではな。それまで私は資料室でいろんな本を手にして情報を集めてみる」
手掛かりがないのも一緒。俺たちはいつも落ち武者の気まぐれで手掛かりを知るまでは何もない場所を探し続ける。また落ち武者の気まぐれを待つだけだ。
結局特に収穫もないままその日が終わった。学級裁判を乗り越えたからって俺たちが得られることは何もない。また新たな謎に振り回されるだけ。それがまた現実になりそうだった。
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コロシアイ学園生活残り14日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
食堂で素早く朝食を済ませた俺は昨日時間が足りなくて行けなかったプラネタリウムに行くことにした。朝から重い足を動かし4階に向かうとプラネタリウムに腰をかけた。
劇場が暗くなり、星を模した小さな光が点々と現れた。そこで映し出される双子座や獅子座といった俺たちに馴染み深いものではなく、落ち武者座といった理解不能な星座だった。さらに、聞く価値もないアナウンスが延々と流れ続ける。
「今貴方様の頭上に見える7つの星が繋がった星座は皆様お馴染みの負け組座でございます。負け組座は基本的に雨の日の空であれば年中いつでもご覧いただくことができます。また、その左に見えるのは絶望座にございます。一年を通してというわけにはいきませんが、春から冬にかけて主に東の空でご覧になることが可能です」
実にくだらない星座鑑賞の眠気を耐え、俺は最後まで見続けた。しかし、全て見たからと言って特に何かあるわけでもない。貴重な時間がただ無駄に流れていっただけだった。
「プラネタリウムは楽しんでいただけましたか?」
「またお前か。今度は何だよ。ここも重要な何か隠されているから出てきたのか?」
「まずは感想を教えてください。楽しんでいただけましたか?」
こいつ無駄なことさせやがって。
「楽しめたわけないだろ。非現実的な話ばかりでストレスが溜まっていくばかりだ」
「最初から本命は星座じゃなかったりして」
落ち武者の言葉に俺はあたりを見渡すがこれといって可笑しな場所はない。上映中もアナウンスと星座以外で違和感があったこともない。
「じゃあ本命はなんだよ」
くっくっく、と落ち武者は笑いながら答える。
「強いて言うならこのプラネタリウム全体ですかね。気づいてなかったのかもしれませんが上映中士導君は宙吊りになっている瞬間もあったのですよ」
「は?」
「このプラネタリウムは動くのですよ。壁も今士導君が座っている椅子も、全てが動くのです。なので宙吊りと言っても完全な宙吊りではなく部屋自体が逆になっていたのです」
「そんなこと信じれるわけないだろ。お前が試しにやって俺に見せてくれ」
「それは残念ながらできません」
だったら最初から適当なことを言うな。そう思われても可笑しくない。しかし、落ち武者から返ってきた答えは俺の創造をはるかに超える意味不明さだった。
「我は高いところが苦手なのです。部屋が動いて宙吊りになっている瞬間もあるので高いところが苦手な我はプラネタリウムを見ることができません」
「この部屋の構造の話は本当だとしたらそんな心配はいらないぞ。俺は椅子に座っている間は特に違和感はなかったからな」
「関係ありません。制作したのが我な以上構造を知っています。なのでそもそも椅子に座ることすらできないのです。そんなにこの部屋のことを疑うのなら何か物でも置いて試してみたらどうですか?我の言っていることが本当なのだと分かるだけですが」
ここまでの学園生活で非現実的なことを受け入れることは嫌だけど慣れた。落ち武者がここまで言うってことは本当なんだろう。それよりも無駄に長いプラネタリウムと落ち武者の話で疲労感が押し寄せてきていた。部屋に帰って休むかそれとも誰かと資料室でも行くか。
俺はプラネタリウムを出て疲労感からくる重い足で一階への階段を下りた。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.158 )
- 日時: 2020/04/25 23:31
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
朝起きて、食堂に行き、朝ご飯を食べる。誰もが毎日のようにしていることだろう。その後は、学生なら学校に行き大人なら職場に行く。それは皆が想像していた普通の日常だ。だけど、普通ってのは良くも悪くもない。つまり、ほんの些細なことでとても良く良くなることもあるし、逆にとても悪くなることもある。良い悪いのどちらでもないからどちらかの影響を受けやすいとも言える。仮に良い影響を受けたとして頂点に立ったとしても人はまた崩れ落ちる。人はそれ以上得るものがないと知ってしまったらそれ以上の成長をすることをやめる。成長が止まってしまえば後は落ちるだけ。落ちて落ちてまた落ちて上しか見てこなかった連中は下の世界を知らない。輝かしい成果をあげた人ほど上限がある世界と違い、下限のない世界を永遠に泳ぐことになる。そして人は下に落ちた人間を見ることの快楽をアダムとイヴが生まれた時から植え付けられている。だから人は負け組になる。負け組に惹かれる。負け組になり人が堕落していくその瞬間を見たいと思うようになる。それがたとえ人の道から外れていることだとしてしても負け組に堕ちてしまえばそれすらも正しいのかそうでないのかを判断できない。逆に言えば痛みも苦しみも悲しみのようなネガティブな感情を全て捨てることができる。人としての価値を引き換えにね。
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コロシアイ学園生活残り13日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
ピンポーン
俺が目覚めたのは珍しく落ち武者アナウンスではなく、インターホンの音だった。
「なんだ司翼か。脅かせんなよ」
「それは俺の台詞だ。いつまで経っても起きてこないから心配して起こしに来てやったのにさ」
司翼の言葉の意味が分からなかった俺はふと時計を見る。短針は数字の5に差し掛かろうとしていた。
「今何時だ?そろそろ5時みたいだけどまだ朝だよな」
「いつまで寝ぼけてんだ。もう夕方の5時だよ。AMじゃなくてPM」
そこでようやく俺は周りではなく自分が異常だということに気づいた。
「夕方の5時!?そんなことしたらあいつが黙ってないんじゃないのか」
「だろうな。だから何度もお前を起こしに来てやったのにちっとも起きないからさ。自己責任だぞ。だけどな奇妙なことに今日落ち武者を見たやつは一人もいないんだ。いつもなら校舎を徘徊しているはずだろ。それが今日に限って一人も見てないんだよ。それで俺たちはお前に何かあったんじゃないかと思い朝から様子を見に来ていたんだけど、寝てただけとはな」
誰も落ち武者を見てないとは珍しいな。いつもなら行くとこ行くとこに現れては邪魔だけして帰っていくってのにその落ち武者が姿を見せないなんて。前回の学級裁判からまた日が経ってるからコロシアイが起こらないことにイライラして動機を考えているだけだろうけど。ただ、夕方に起きるなんて規律を乱している俺に制裁を加えに来ると思っていたのに来ないところを見ると、むしろ落ち武者に何かあったのか?落ち武者は監視カメラで俺たちの行動をチェックしているはずだし、司翼が俺を起こしに来た段階で落ち武者も来るはずだ。
「とりあえず起きたんなら資料室に来いよ。全員揃ってるからさ」
ー資料室ー
「随分と呑気なことだな。こんな時間まで寝てるとは。こっちはそれどころじゃないというのに」
「話は司翼から聞いたよ。落ち武者の行方がわからないらしいな。それよりも司翼の話だと全員揃ってるって聞いてたけど、黒薔薇と華狗也の姿が見当たらないけど」
「あの二人なら心配するな。別件で席を外している」
俺は歩きながら捕鷹の話を飲み込み、俺に用意されたと思われる席に腰を下ろした。
「でも落ち武者がいなくなったからってなんで全員が集まってるんだよ」
「こうやって全員集まっている方が安全と思ってさ。捕鷹さんに言われた通り校長室を見てきたけど残念ながら開いてなかったよ。中から物音も聞こえなかったし校長室にも落ち武者はいないみたいだね」
「安全?」
「信じてないわけではないが、これまでもコロシアイが起こってしまっていた。じゃあコロシアイが起こる状況を作らなければいい。私たちがお互いに確認できるようにしておけばコロシアイが起こらないはずだ。支給されたスマートフォンも全て処分した。後は士導のスマートフォンだけだが、もし万が一落ち武者からのメッセージが来た時に確認できないと困るだろうから士導だけは持っておいてくれ」
次々と送られてくる情報をしきれず頭がパンクした俺を察したのか鍵村が傍に寄ってきてはこれに書けと言わんばかりにペンとメモを渡す。問題なのは言われたことを覚えれないわけではなく、言われたことを理解できないわけだからこのペンとメモははっきり言って今の俺には必要のないものだ。
「鍵村さん、静流君が求めてるのは筆記用具じゃなくて僕らが今何しているのかだと思うよ。僕から答えを言うと本当にただ集まってるだけなんだ。落ち武者がいなくなったのは気になるけどどうせ僕らの知らない場所で何か企んでいるだけだから、だったら僕らにできることって落ち武者の思惑通りいかないようにお互いを見張っておくことでしょ」
華狗也が校長室に黒薔薇と行ってたこともそうだ。少なくとも二人以上でいればお互いを監視し合う状況を作れるわけか。
その日俺たちは夜時間が来るまで一緒に過ごし、その後もお互いが部屋に入るのを確認して部屋に入った。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.159 )
- 日時: 2020/04/27 21:36
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
コロシアイ学園生活残り12日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
昨日の決め事通り今日も基本的には二人以上で過ごすことにしていた。何か行動する時であれば必ずもう一人がその人につくことを徹底していたが、そもそも特に何かすることも思いつかなく、朝ご飯を取り終えた俺は図書室から持ってきた本を延々と読んでいた。せっかく人がいるのだから口を動かしたいのだが、ずっと同じ人間と同じ場所で過ごしていたからか話題が思いつかない。対して本は図書室にも資料室にも一生かけても読み切れないくらいの冊数がある。活字の世界に入り浸れば退屈な時間をやり過ごすことができる。退屈な時間といっても一生あるわけではなく後12日しかないわけだが。
一冊目の本が終わり迎えると、俺は気分転換に少し伸びをしてみる。それで気分など晴れるはずもなく静かな食堂に俺の声だけが響く。それに誰か一人でも反応してくれたらまた違ったのでだが全員が自分の世界にのめり込んでおり、誰一人として俺の伸びに気づかない。
元々俺は本を読むのが得意な方ではない。理由は様々であるが、一つに景色を想像することが苦手というのがある。テレビと違い映像を自分の脳で再現する必要があるのが、どうも俺は苦手らしい。内容を理解するのに字を見てから、それを頭で再現する。そこまでして場面を理解するステップが二回も必要なのが非効率的だと俺は考えている。その点テレビは映像と文字が同時に流れてくるから自分の脳で考える必要がなく場面の理解までの時間が早い。高速化した世界で必要なのは正確さではなく、素早さが必要としているのにも俺の考え方はマッチしている。
だから、自分でも分からない。コロシアイ学園生活が始まり、学級裁判を数回乗り換えてきた。学級裁判を乗り越えるためには推理しなければならず、それは俺が苦手としていることだからだ。自分や他のみんなの命がかかってるから苦手を克服できたのか、それとも別の理由があるのか。
逆に学級裁判で俺は今まで持つことができなかったスキルを身に付けることができたとも言える。決してきっかけに感謝しているわけではない。ただ、残っている俺たちが全員一緒にここから出るためには必要不可欠な能力だ。
「もう夜だしご飯食べたら部屋に戻ろっか?」
地近の一言で沈黙は破られた。ふと時計を見つめると夕方になっていた。
何もしてないから食欲も特にはない。テーブルの上に置いてある朝食の菓子パンの残りを口の中に放り込み水で流し込んだ。大体こういった軽い夕食で済ませた後は夜中になって空腹に泣かされる。俺はそう予想して食堂に誰がいつ補充しているのかわからない菓子パンを三つほど手に取った。
俺以外の全員も今日は本を読むか寝るかくらいしかしていないから菓子パンだけで済ませ図書室から持ってきた大量の本を手に持ち自室に帰っていった。
部屋に帰ってきたが、部屋にいても食堂ですることと特に変わりなく、また本を読むだけ。変わった点と言えばトイレに一人で行けるくらいだ。
12日。厳密に言えば後11日しか俺たちに時間は残されていない。もっといろいろと校舎内を見て回りたいがコロシアイを起こさないことの方が重要だ。そうすれば落ち武者だってしびれを切らして俺たちの前にまた姿を現すはずだ。何故か分からないが落ち武者は俺たちにコロシアイをさせたがっている。落ち武者自身で俺たちを殺せば面倒な学園生活など無視できるはずなのに。それをしないってことは落ち武者の目的は俺たち全員を殺すわけではなく、コロシアイをさせること?そこに何の相違点があるのか俺には理解できなかった。最初から落ち武者の言うことなんて一言も理解できなかったが。だけど、俺たち全員を殺すことが目的ではないのなら、もしこのまま俺たちがコロシアイを起こさず学園生活の日数が終わった時落ち武者はどうするのだろうか。それとも前回みたいにまた無茶な動機を用意してくるのだろうか。何をされても俺たちはコロシアイを起こさない。これを徹底するしかない。そうすればきっと道は開ける。落ち武者の目的がまだ不透明なままだが、コロシアイをさせることが重要なら俺たちはしなければいい。いや、選べる立場ではないか。
俺たちはしなければならない。このコロシアイ学園生活を終わらせるために。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.160 )
- 日時: 2020/04/30 02:15
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
コロシアイ学園生活残り11日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
また食堂に行き図書室から持ってきた本を読む。おそらく何もなければ俺たちは残された時間をずっとこうやって過ごしていくだろう。決して使われることのない知識だけを頭に詰め込むだけ詰め込んで死んでいくのだろう。
そんな中ようやくやつが動いたのは昼が過ぎもうまもなく夜を迎えようとしている時だった。
「お前たち至急体育館にお集まりください」
久しぶりの落ち武者の声が食堂に響き渡る。嫌な予感がするけど俺たちは立ち上がり体育館に向かった。
ー体育館ー
扉を開けると体育館の中央に落ち武者は待ち構えていた。顔がいつもと一緒だが、態度からしてかなりご立腹のようだった。
「お前たちようやく集まりましたか」
「ずっと姿を見せなかったお前が急になんだよ」
「いつになったら次のコロシアイを起こすのですか?我はずっとそれを待っているのです。それなのにちっともそういった素振りすら見せないなんて」
「コロシアイをして欲しいわりにはその動機すら用意してないなんて。どうしたの?もうネタ切れかな?」
華狗也の挑発に落ち武者は顔色一つ変えずこう言い出した。
「いいえ。お前たちがコロシアイを起こさないから今日は新しい動機を持ってきたのですよ。その新しい動機とは、なんと内通者の正体です!」
落ち武者の話はいつも俺たちの想像をはるかに上回ってくる。だけど内通者の正体を暴くのは俺たちにさせる予定だったはずだ。そんなことしたらゲームにならないじゃないか。
「内通者の正体?君がそんなこと発表しちゃっていいの?」
「本当はお前たちに見つけて欲しかったんですけど、コロシアイが起きないのであれば仕方ないですね。ってことでもう自分を偽らなくていいですよ。士導君」
その場にいる全員の目線が俺に集まる。今なんて?誰が内通者だって?
「…は?はあぁぁ!?お前何適当なこと言ってんだよ。俺は内通者なんて適当な嘘をつくな!」
「お前たちが我が言ったことをどう解釈するかは自由です。我は伝えましたからね。それではお前たち再びコロシアイ学園生活を楽しんでください」
「ちょっと待てよ!」
俺の叫びもむなしく落ち武者は体育館から姿を消した。心地悪い目線が俺を取り囲む。
「士導、落ち武者の言うことを真に受けるのも良くないと思うが一応説明してもらえるか?」
「説明も何も俺は本当に内通者じゃないし、そんな心当たりもないんだって」
「落ち武者の言うことだ。真に受けていい話ではないが、仮に内通者だとしても2パターンあると考えられる。1つは、記憶がある内通者だ。首謀者の思惑を全て知って私たちをあざ笑うために送り込まれた糞野郎だ。もう1つは、記憶がない内通者だ。落ち武者によって記憶をなくされており、自分のことを内通者と自覚していない内通者。そこで思い出して欲しいんだが、士導は未だに自分の才能を思い出していない。私たちと比べて思い出している記憶の量が違う。思い出してない記憶の中に内通者という記憶もあるんじゃないのか」
「だとしたら今僕たちの目の前にいる静流君は内通者の静流君ではないってことだよね。仮に内通者だとしても記憶がないなら内通者でないのも一緒だよ」
「嘘かどうかはこの際分からない以上どうしようもない。問題なのは名指しで士導が内通者として挙げられ、士導自身に可能性が残っていることだろう。少しでも可能性がある以上士導を信じるというわけにはいかない。だから疑惑が晴れるまでは部屋にいてもらうことにしたいけど、どうだ?」
俺が内通者かもしれないのはもちろん信じ難い。だけど、俺自身も分からないのに疑惑を晴らすことなんてできない。
「ああわかった」
部屋に戻ってからもずっと腑に落ちないでいた。動機を言い出したかと思えば内通者は俺だと。そもそも内通者の正体をバラシてどうして動機になり得るんだ。余計に警戒するだけじゃないのか。
それでも内通者というワードを出すってことはもう何か起きてるんじゃないのか?俺たちの知らないところで何かが。
考えても仕方がない。誰かが俺の疑いを晴らしてくれるのを信じるしかない。そして、信じたその向こう側に希望があることを願うしかない。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.161 )
- 日時: 2020/05/01 23:37
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
コロシアイ学園生活残り10日
ピンポンパンポーン
「お前たちグッモーニン!朝が来ました。目覚めの時間ですよ」
俺たちのコロシアイ学園生活も気づけば10日を切っていた。その10日が俺の人生の最後になるのかもしれないってのに昨日の出来事のせいで部屋からも出れないでいた。華狗也が持ってきた朝食をたいらげ昨日に引き続き図書室から持ってきた大量の本を読んでいた。
俺が部屋から出れたのは昼過ぎのことだった。それは唐突に鳴り響いた。
ピンポンパンポーン
「死体が発見されました!一定の捜査時間の後学級裁判を開きます」
それまで何も考えず本を読んでいた俺だったが、それを聞いた瞬間本を放り投げ俺はベッドから飛び起きた。死体発見アナウンス。それは俺たちの誰かが誰かを殺した後目撃した時になるアナウンスだ。死体発見アナウンスが鳴り響いたということは。
「士導!お前も聞いただろ。今は自室待機なんていいからすぐにプラネタリウムまで来てくれ!」
俺が部屋から出た直後に俺を呼びに来ていた司翼と会い、俺と司翼は一緒にプラネタリウムまで走った。階段を上っていく途中から漂う煙たい匂いが俺の移動速度をさらに加速させる。
「士導を連れてきたぞ!」
プラネタリウムの入り口で立ち往生している他の生徒たちが俺の顔を見つめてくる。俺もそこで何かを違和感を覚えた。死体発見がアナウンスが流れたと言うことは誰かが殺されたということだ。それなのに今この場に全員いる。
「何の死体発見アナウンスだったんだ。全員いるじゃないか」
「そうなんだよ。だけどあそこを見てくれ。今落ち武者が鎮火してくれてるんだけど、その隣を」
俺は指さした方を見るとそこには白骨化しているが誰かの死体が確かにあった。でもだからこそ意味が分からない。死んだのは誰なんだよ。
しばらくして鎮火が終わりようやく俺たちもプラネタリウムの中に入れるようになった。
「待ってください。捜査するのですからこれがないと。ということで落ち武者ファイルです」
俺は慣れた手つきで落ち武者ファイルを開いた。
ザ・落ち武者ファイル5
死者 白骨化しているため不明
死因 白骨化しているため不明
ある程度予想はしていたが、落ち武者ファイルには何も書かれていないな。何が捜査に必要ですだよ。今回に関しては場所や時間すらも書かれていないのにこんなものあってもなくても一緒だろ。
「一応聞いておきたいんだけど。この場合も学級裁判ってやるの?」
「もちろんですよ。死人が出ているんですから」
「だけど、見てもらえればわかる通り僕らは全員生きてるよね。君の言ってることと矛盾しているんだけど」
「あのね。何度も言いますが学級裁判とは生徒の誰かが殺人を犯せば必ずするのです。それは今回も例外ではありません。なので捜査もしてもらいますし学級裁判ももちろん行います」
殺されたのは俺たちの中の誰かではないけど、殺した犯人が俺たちの中にいる?でも殺すにしたって白骨死体の正体を知っている人物なんてこの中にいるのか。そんなこと考えても仕方ないか。
「静流君。僕は信じてるけどみんなからの君への疑いがまだ晴れたわけじゃないみたいだからさ。今回僕と一緒に行動してもらうよ」
ああそうだった。俺は内通者の容疑者として疑われているんだった。
「じゃあ早速だけど、まずは死体周辺から捜査しようか」
華狗也に言われた通り俺は白骨死体の周辺を見渡した。まずはやっぱり白骨化させる意味がわからないな。被害者の正体を明らかにさせたくないのだろうけど、俺たちの知らない人物なのならわざわざ白骨化させる理由がない。
もっと気になることもある。
「落ち武者!?」
白骨死体の隣に動かない落ち武者が倒れている。さっき俺たちと喋っていた個体とはまた別個体みたいだ。てことはあの火事の中いたってことになるけど、人を白骨化させる程強力な炎なのに落ち武者はいつもと変わらないんだな。前から思っていたけどどんな技術を使ってるんだよ。
『落ち武者』
白骨死体の傍に動かない落ち武者が倒れていた。
次に捜査しないといけないことはあの炎の原因だ。まずは何故あんなに炎が広がっただが、それはどうやら簡単に説明できそうだ。さっきから歩いているだけで滑りそうになるくらい床がツルツルしていることから油を垂らしていたのだろう。問題はどうやって発火したかだ。プラネタリウムを見渡す限り発火の原因と見れるライター等はない。
『プラネタリウムの炎』
プラネタリウムの床には油が広がっていた。発火した原因はまだ不明。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.162 )
- 日時: 2020/05/05 04:51
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
炎の原因はまだ分からない。そもそも被害者が誰なのかも分からない。まるで光の見えない海を泳ぎ続けているかのようだ。だけど、信じたくないけどいるんだよな。俺たちの中に犯人が。落ち武者の話によるとこの学園にいるのはコロシアイ学園生活の参加者だけらしい。そうなると俺や華狗也が見た人影も参加者ってことになるわけだけど。これまで一切姿を見せてこなかったそいつが死体として俺たちの前に出てきた?そんな都合のいい話に片づけていいのか。
「あれ静流君?君の足元にあるそれ何?」
華狗也の声に反応して自分の足元を見てみると金色に光る鍵が落ちてあった。
「違うとは思うけど君の部屋の鍵じゃないよね」
「違うな。死体の近くにあったんだから死体が持ってたんじゃないか」
「ちょっと試したいことがあるんだ。来てもらえる?」
試したいこと?俺は今華狗也と行動を共にしないわけにはいかないわけだからついていくしかない。嫌な予感がするわけじゃないがこういう何か思いついた時に華狗也は常人には思いつかないことをしかねない。
拒否権もないので仕方なく華狗也についていくと華狗也は自分の部屋に入りそこから例の宝箱を持ち出してきた。金色の宝箱に金色の鍵。確かに一致してはいるがただでさえ開かなかった宝箱がそんな簡単に。
「開いたよ」
「開くのか…。で、中には何が?」
俺が期待を寄せながら華狗也の手が宝箱の中から出るのを待っていたが、俺の期待を裏切り中から首を出したのはまたもや鍵だった。しかし、どこに使うかは一目ですぐにわかった。鍵からぶら下がっているチャームに書かれている文字。
「校長室か。確かにあそこの鍵はまだ開いてなかったな」
「時間がないし急いで行こうか」
「ああ」
「時間がないからこのまま歩きながら話すから一回で理解してね」
俺の返事も聞かぬまま、華狗也は唐突に話し出した。
「今日の朝、僕らはいつものように食堂に集まって朝食を食べた後、君が内通者かどうかを見極めるために僕らはまた資料室で書類の山を読み漁ってたんだ。その時に宝箱がプラネタリウムに置かれていたことを思い出して僕らは全員でプラネタリウムを調査しようってことになったんだ。それが昼過ぎくらいのことだよ。それでプラネタリウムに入ったらすぐにドンっていう音がして音の正体を見つけようとしたら今度はプラネタリウムが燃え出したんだよ。どうしようもないからプラネタリウムを急いで出て、落ち武者を呼び鎮火してもらっていたら炎の隙間から今度は白骨死体が現れたんだ」
「その後は司翼が俺を呼びに来るところに繋がるわけだな。その謎の音の正体も俺がさっき現場を確認した時にはそれらしきものはなかったし後でもう一度現場を見ておいた方が良さそうだな」
「そうだね。でもまずは校長室を探そうか」
華狗也はポケットから校長室と書かれた鍵を取り出すとそのまま鍵穴に突っ込んだ。今まで開かなかった扉はガチャリという音と共にあっけなく開いた。
校長室に足を踏み入れるとそこはトロフィーや賞状が壁に並び、棚には無数の書類やファイルが並び、部屋の中央には来客用のソファと机が置かれたいたって普通の校長室が俺の目に飛び込んできた。可笑しな学園だからこそ校長室が一番まともではないと考えていたが予想が外れ逆に一番まともとは。
「いろいろ気になることはあるけど。静流君、あれ見てよ」
華狗也が指さす先にある校長先生用の机を俺も見てみる。特に変な箇所はない。俺が想像する校長の机だ。
「何も変なところはないけど」
「ネームプレートだよ」
華狗也に言われ、次はネームプレートに焦点をあてる。
「士導源?俺と同じ苗字みたいだけど」
「学園長の苗字が静流君と同じなんてそんな都合のいいことはないよね。学園長は君の親族だったと考えた方が話がまとまるんじゃないかな」
「待てよ。俺の身内の誰かが学校の校長をしているなんて言ってなかったし、そもそも士導源なんて名前の人間は少なくとも俺が知っている限りいないぞ」
「記憶を消されているんだよ。覚えてないことがあっても不思議じゃないと思うけど、試しにお父さんの名前でも言ってみてよ」
「俺の父さんの名前?ああいいぞ、俺の父さんは士導…、士導…」
思い出せない。思い出せそうなはずなのに思い出そうとすると記憶が逃げていく。さらに言えば思い出そうとすればするほど父さんの顔も思い浮かばない。
「やっぱりね。士導源、つまり勝ち組ヶ丘学園の学園長は君のお父さんってことで間違いないんじゃないかな」
『学園長』
名前は士導源。思い出せないことから父である可能性が高い。
どういうことだ。学園長が俺の父?じゃあ父さんが俺をこんなコロシアイに参加させたっていうのか。黒幕は俺の父さんなのか。それとも苗字が一緒の全くの別人なのか。士導源、お前は誰なんだ。
「だめだ。何も思い出せない。混乱するばっかりだ」
「君の父さんかどうか確かめたいけど、ゆっくりしている時間もないからそっちのファイルが入っている棚を二人で探そうか。僕のせいで考え込んでるみたいだけど切り替えれる?」
「馬鹿にするな。父さんのことも気になるけど今はこのコロシアイを乗り切ることが先だ。ファイルだな俺は右から見ていく」
「じゃあ僕は左からだね」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.163 )
- 日時: 2020/05/06 01:12
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
早速俺は棚から大量のファイルと書類を取り出し、選別を始めた。こんな大量の本を全て読んでいては学級裁判までに間に合わない。だから、読む本を選別する。キーワードは「勝ち組ヶ丘学園」。とは言ってもほとんどが勝ち組ヶ丘学園に関するものであり、選別が意味を成していなかった。
「勝ち組ヶ丘学園」だと大半が該当する。かと言って「士導源」や「落ち武者」で探してみても今度は全くヒットしない。欲しい情報が全てヒットするキーワード、つまり「勝ち組ヶ丘学園」も「士導源」も「落ち武者」も全てを含んでいるそんな都合のいいキーワードがあれば。
超高校級の負け組。ふとその言葉が俺の脳を横切った。華狗也の話では非人道的な組織らしいけど、俺たちにコロシアイをさせている張本人かもしれない連中。俺は「超高校級の負け組」をキーワードにもう一度ファイルと書類の山に立ち向かった。するとすぐにそれはヒットした。
「超高校級の負け組」の文字が書かれている書類。俺はホッチキスで止められたその書類に目を通した。
華狗也の言ってた通りこの世界には超高校級の負け組という組織が存在しているらしい。主な運動については書かれていないが、至る所に非人道的だとか常人には考えられないとか書かれている。俺が気になるのはその二つよりも何回も使われている言葉。
絶望。
具体的とも抽象的ともとれる言葉だからこそ、超高校級の負け組がしたことの重さが伝わっているようで伝わらない。
俺は超高校級の負け組についてまとめられた書類を一枚、また一枚めくっていく。そこで目にしたのは学園生活の文字だった。
「超高校級の負け組を更生する…だって?」
コロシアイがどうやったら超高校級の負け組を更生するっていうんだ。俺はまた一枚書類をめくる。
また、勝ち組ヶ丘学園名簿だ。だけど、今回の名簿は今までの名簿とは圧倒的に違う。俺の名前もあるし、それに何より18人目の高校生についての記述がある。
名簿の一番上にある名前を俺は知らない。名簿にはこう書いてあった。
超高校級の秘書。天岸死恋(あまぎししれん)。
俺たちの中に潜んでいた18人目の高校生にして、俺たちにコロシアイをさせている黒幕。
「どうしたの?天岸のことを見つけたの?」
「ああ。そうなんだよ。俺たちの中にいる18人目の高校生…って何でお前」
「僕の方も手掛かりになりそうなものがあったよ。例えばこことかね」
俺の疑問を払いのけ華狗也は書類を指さした。
「当初から学園生活をするつもりだったみたいだね。この書類にコロシアイのことが書かれてないことから考えると何かトラブルがあってコロシアイをすることになったんだろうね。そんなことをするのは負け組以外に考えられないから、このコロシアイ学園生活には負け組が関与していると思った方がよさそうだよ」
「だけど落ち武者は言ってたんだ。学園内にいるのはコロシアイの参加者だけだって。負け組が関与しているなら一体どうやって」
「なぁに簡単なことさ。僕らの中に負け組の人間がいるんだよ。少なくとも一人は内通者として僕らの中にいるらしいしさ」
華狗也の言葉がグッと胸に刺さる。天岸が死んだ以上負け組候補に挙がるのは俺たちの中の誰かだ。想像したくない現実から目を背けていたが、やっぱり俺たちの中にいるんだよな。だとしたら怪しいのって。
「まだいろいろ気になる単語がたくさんあるけど、これくらいにしておこうか。生きていれば校長室にはまた来れるんだし、今は学級裁判に集中しないと」
「そうだな。とりあえずもう一度プラネタリウムに戻ろうか。見落としていることがあるかもしれない」
俺は天岸死恋の記述がある書類をポケットに入れると、立ち上がり校長室をあとにした。
『超高校級の負け組』
非人道的な行為や絶望的な行為を繰り返す集団。コロシアイ学園生活に関与している可能性が高い。
『18人の参加者』
学園生活は当初18人で行われる予定だった。
『天岸死恋のプロフィール』
天岸死恋(あまぎししれん)。超高校級の秘書。18人目の高校生としてコロシアイ学園生活に参加していた。
ープラネタリウムー
「さっきのお前の話だと、プラネタリウムに入った直後に謎の音がしたんだよな?」
「そうだよ。その時は暗くてあまりよく見えなかったけど、あの音は何かの落下音だったんじゃないかな」
華狗也はそう言うが俺がさっきプラネタリウムを見渡した時も今改めて見渡しても謎の音の正体になりそうなものはない。強いていうなら死体の傍に落ちている落ち武者だけど、なぜ落ち武者が使われたんだ。
「落下音のことだけど、ここのプラネタリウムって壁や椅子が動く仕組みになってるんだよね。確か落ち武者は宙吊りになっている瞬間もあるってそのタイミングなら物を落とせるって考えたんだけど、問題は何を落としたのかだよね」
「その音ってもっと具体的にどんな感じなんだ?大きい音とか鈍い音とか音にもいろいろあるだろ」
「宝箱の鍵を見つけた時、僕はそれが落ちてきたんだと思ったんだけど、鍵が落ちたような小さな音ではなかったよ」
「一回落ち武者を起こして同じような音が鳴るか実験してみるか」
そう言って俺は落ち武者を起こして、それを押した。ドンっという音がプラネタリウムに反復していく。
「これだよ。確かこんな音だった。きっと犯人は落ち武者を倒したんだ」
音の正体が分かっても犯人はなぜ落ち武者を倒したのかはまでは分からないか。何の音か分かっただけでも収穫があったと前向きにとらえよう。まだ謎は残ってるんだ。1つの謎が解けたからって喜んでいる場合じゃない。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.164 )
- 日時: 2020/05/06 23:47
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
そう言えば、炎が広がった原因となった油を犯人はどこから調達したんだ?落ち武者から配られた殺人用具の中には油なんてなかったはずだ。となると油は犯人がどこかからプラネタリウムに運んだわけだけど、この学園内で油を調達できる場所なんて…、いやあるにはあるか。だけどそれならそれで別の問題もあるが。それにこのプラネタリウムは壁や椅子が動くって話もあったけど、本当に動いたのか?謎の音の正体が落下音ってことになったのは華狗也の推理なわけだけど、何か引っかかるんだよな。音は扉を開けた直後に響いたらしい。だとしたらその時壁や椅子は普段とは異なる位置にあったってことだけど今は普通に捜査できているわけだから元に戻ってるってことだよな。犯人はいつ戻したんだ。プラネタリウムに入った時も華狗也は違和感があったなんて言ってなかったし、その後俺が最初に入った時も確か椅子の位置は前にプラネタリウムに来た時と変わらなかったはずだ。犯人はいつプラネタリウムを普段と同じように戻したんだ?
『プラネタリウムの違和感』
プラネタリウムの壁や椅子が動いていたとは現場の状況からは考えにくい。
『華狗也の証言』
プラネタリウムに入った直後に謎の音がした。その後、しばらくしてから火事になって全員が締め出された。その間俺以外の全員は基本一緒にいた。
ピンポンパンポーン
「自分が知らないことでも、他人からしたら常識であることだってあります。自分の見ている景色も他人からしたら別の景色に見えているかもしれません。つまり、自分の知っていることが全てではないということです。例えそれが意図的なものだとしても。お前たち準備はできましたか?これより学級裁判を開きます。今行っている作業をやめ食堂横の赤い扉の前に集合してください」
もう時間らしい。まだ今回の事件に関しては不透明なことばかりだけど、後は学級裁判で明らかにするしかない。
「行こうか静流君」
「もうちょっとだけ付き合ってくれないか。確認したいことがあるんだ」
「確認したいこと?」
俺は食堂に向かいながら華狗也に事情を説明した。俺の確認したいこととは犯行に使われた油は食堂から持ってきたんじゃないかどうか明らかにしたいことだ。殺人用具の中に油がないとなると考えられるのは食堂だけだ。
「あ、確かにあるね」
食堂の厨房で華狗也が入るやすぐにそれを発見した。棚に大量に積まれた油、これが犯行に使われたかどうかはまだ謎だけど油自体は俺たちが手にできるものであることは確かみたいだ。
『床にしかれた油』
プラネタリウムの床には油がしかれていた。その油は食堂から持っていかれたものだと考えられる。
油が食堂にあるのは分かったけど、それをいつ犯人がプラネタリウムに運んだっていうんだ。まだ捜査中ならそれも考えながら捜査するんだけど、もう学級裁判が始まってしまう。一つ一つの手掛かりの繋がりもまだ分からないままだし。不透明な事件の割に考える時間が少なすぎる。
「考えすぎはよくないよ。頭を真っ白にした方が解ける謎もあるんだからさ。希望を持って進もうよ。そして乗り越えよう」
俺と華狗也は厨房の油をもとに戻し、その場を後にした。
「ってあれ黒薔薇さん?」
食堂に戻ってきた俺たちとちょうど入れ替わりになる形で黒薔薇が食堂の扉を開け中に一歩踏み込んだところで足をとめた。
「お前たちこんなところで何してる?もう時間だぞ」
「黒薔薇こそどうして食堂に?」
「時間になっているにも関わらず一向に扉の前に来ないお前たちを探してたんだよ。余計な手を煩わせるな行くぞ」
黒薔薇に連れられ食堂を出ると扉の前にはもう全員が集合していた。そのまま何も言わず俺たちは裁判場への扉を開いた。
随分と人数も減ったものだ。最初の学級裁判の時と比べて人数は半分以下になっている。裁判場へのエレベーターも狭いと感じていたのにもうそんな風に感じない。もうこれ以上エレベーターを広く感じたくはない。しかし、それは叶わぬ夢なのかもしれない。
今回の被害者は白骨死体として俺たちの目の前に現れた。校長室の書類から考えるとあの死体は天岸死恋だろう。
一度も話したことがない。
それどころか一度も会ったことすらない。
天岸死恋はコロシアイ学園生活の参加者だったみたいだけど、本当に黒幕なのか?
黒幕だとしてもそうじゃなかったとしてもどうして彼女は殺されたんだ。
そんな素性も知らない彼女を殺した犯人が俺たちの中にいる!
謎と謎に包まれた犯行。だとしても俺たちは進まなければならない。
希望と絶望の入り混じった灰色の学級裁判が幕を開ける!!
コトダマ一覧
『落ち武者』
『プラネタリウムの炎』
『学園長』
『超高校級の負け組』
『18人の参加者』
『天岸死恋のプロフィール』
『プラネタリウムの違和感』
『華狗也の証言』
『床にしかれた油』
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.165 )
- 日時: 2020/05/07 05:13
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
学 級 裁 判 開廷!!
落ち武者
「では、最初に学級裁判の簡単な説明をしておきます。学級裁判では、クロは誰か?を議論し、その結果はお前たちの投票により決定されます。ただしいクロ見つけたらクロだけがおしおき、もし誤ったらクロ以外がおしおきされ、クロだけが卒業できます」
司翼
「始まる前に確認しておきたいんだけど、今回の学級裁判もそのルールが適用されるのか?見てもらったらわかると思うけど、俺たちは全員生きてる。クロとかシロとかじゃなく俺たちがあの死体に関係あるのか?」
落ち武者
「もちろんですよ。この学園内で起きたことは全てお前たちに関係があります。今回の件だって例外ではありません。ではまずあの死体は誰のものなのかから考えることにしましょうか」
地近
「私たちの中の誰かではないってことは学園外の人間ってことになるんだよね」
士導
「いや、それはないよ。前に食堂で話したけど落ち武者によると今この学園にいるのはコロシアイの参加者だけらしいんだ」
鍵村
「だったらあの白骨死体は誰なんだ?【コロシアイの参加者は私たち17人】だった。生き残ってるのもここにいる私たち7人だけだ」
【コロシアイの参加者は私たち17人】 ← 『18人の参加者』
士導
「それがどうやら違うみたいなんだ。校長室にあった書類のよると学園生活は当初18人で行われるはずだったんだ」
地近
「待って。校長室の書類ってどういうこと?校長室は入れなかったはずだよね」
清水
「それに関してはまだ話してなかったね。実はプラネタリウムの白骨死体の傍に鍵が落ちていたんだ。結果的にその鍵は僕が前に見つけた宝箱を開けるものだったんだけど、その宝箱の中には校長室の鍵が入ってたんだ」
捕鷹
「私と鍵村は気づいたぞ。落ち武者アナウンスが流れる少し前だったから中をあんまり捜査できてはいないけどな」
鍵村
「で、士導話を続けろ。コロシアイの参加者は17人ではなく、18人だったって話だったな」
士導
「書類には参加者は18人って書いてたんだ。その名簿も一緒にまとめられてたよ。俺たち全員の名前が書かれていた名簿がな」
司翼
「俺たちの名前が書かれていた名簿もあったんだよな。だったらそこに【18人目の参加者】は何と書かれていたんだ」
【18人目の参加者】 ← 『天岸死恋のプロフィール』
士導
「18人目の参加者の正体は超高校級の秘書、天岸死恋。名簿にはそう書かれていた」
黒薔薇
「そんな名前聞いたことないな」
司翼
「だが、18人目の参加者が本当にいたのならこれで全て解決したな。あの謎の白骨死体はその天岸死恋とやらの死体ってことになるな。それに死体の傍に校長室の扉を開ける鍵が落ちていたんだろ。そんな大切なものを持っていたのだから黒幕だったってことだろ」
地近
「どういうこと?黒幕が死んでるはずなのにその学級裁判が開かれるなんて…」
清水
「簡単な話だよ。天岸死恋は黒幕じゃなかったんだ」
鍵村
「じゃあなぜ天岸は私たちの前に姿を現さなかったんだ。姿を見せなかったとしてもどうして死体として出てきたんだ。それに殺されたとしてもいつなんだ」
司翼
「いつ殺されたかもそうだが、犯人はもう決まっているはずだぞ」
黒薔薇
「犯人がもう決まっている?それは誰なんだ?」
司翼
「もちろん士導だ」
士導
「えっ…。俺が犯人?」
司翼
「そうだ。殺人時刻は昼過ぎ俺たちの目の前でプラネタリウムが火事になった時だ。だが、その時俺たちは朝からずっと一緒にいたんだ。だとしたらその時間帯に天岸を呼び、殺人ができるのは一人で部屋にいた士導だけだ」
士導
「それは違う!俺は本当に部屋にいたんだ!」
捕鷹
「だが、私たちにはアリバイがある。私たちには殺人は不可能なはずだ」
鍵村
「ちなみに、私たちはトイレに行くときも二人で行ったんだ。途中で誰かが一人になるタイミングはなかった」
清水
「まぁまぁ、現状士導君が怪しいのは確かだけど、明確な根拠がない以上決めつけるのもよくないんじゃないかな」
司翼
「明確な根拠?根拠などなくてもアリバイがないだけで十分だ。例えば、犯行の時間帯があの時間帯とは違わないなら犯人は士導で決まっている」
清水
「そもそも被害者の死因が何かもわかってないのに殺されたのが昼過ぎだなんて決めれないはずだよ」
鍵村
「知っているかのような口ぶりで話すようだけど。じゃあ聞かせてみろ。あの炎は実は死因じゃなかったって証拠をだ」
清水
「被害者は白骨死体として僕たちの前に現れたのは事実だけど、死体を白骨化させるには相当燃やさないとそうはならないはずなんだ。火事になったのは僕らがプラネタリウムを開けてからのことだ。それから死体発見アナウンスを聞いて、落ち武者が鎮火している時間はあったけど人間を白骨化させる程の時間じゃなかったはずだ」
捕鷹
「天岸とやらがかなりの細身で、白骨化するのに時間がかからなかったとしてもか?」
清水
「その可能性もあるだろうね。だけど現場にはもう一つ証拠が残されていたんだよ。それは鍵だ。例の宝箱を開けるための鍵が死体の傍に落ちていたって話だけど、人間を白骨化させる程燃えていたなら鍵だって溶けるなり、変形するなりしていたはずだよ。だけど鍵は綺麗な形をしていたし、宝箱を開ける時も問題なく使えたんだ」
地近
「確かにその理論だとあの炎が死因になったってことはないんだろうけど、白骨化してたってことはプラネタリウムを開けた時以外にも別の時間に燃やされていたんだよね。結局それっていつなの?」
司翼
「いやあの炎で死体が白骨化した可能性もまだあるぞ。事件の発端となったプラネタリウムを開けた時のことを思い出してみろ。プラネタリウムを開けた後謎の音がしたよな。まずはあれが何の音だったかを明確にする必要がある。それができれば見えてくるんだよ」
黒薔薇
「あの時のドンっという音は何かの落下音のようだったな」
司翼
「黒薔薇の言う通りあれは落下音だったと考えられる。では何が落下したか。それは天岸本人だよ。天岸の死体が俺たちがプラネタリウムに入るタイミングで天井から落ちてきたんだよ。その時既に何日も前から飲まず食わずの状態で身体が衰弱していた。そこにさらに天井から落とされたら地面にぶつかった衝撃で血が飛び散るよな。ただでさえ衰弱している体。そこから血が失われたとすると体に残っているものはほぼない。そういう状況ならばあの炎で白骨化させることも可能なはずだ」
地近
「天井から落ちてくるってそんなことができるの?プラネタリウムの天井は椅子にのぼった程度なら全然天井に届かないんだよ。そんなのどうやって天井に人間を置いておくの?」
司翼
「プラネタリウムには特別な仕掛けがあったんだよ。落ち武者もわざわざ俺たちに説明してきただろう。あのプラネタリウムは壁や椅子が動くんだよ。動いている時宙吊りになっている瞬間もあるらしいぞ」
捕鷹
「その瞬間で止めておけば天岸が天井に宙吊りになっている状況を作れるってことか。だけどお前の推理が正しかったとしても衰弱している人間が動かないとも思えない」
司翼
「犯人はそこであるものを使ったんだ。それは落ち武者だ。現場に落ち武者が落ちていただろ。落ち武者を使い天岸を固定しておいたんだ。衰弱しているうえに宙吊りで固定されたら流石に動けないはずだ。現場に落ち武者が落ちていたことを考えると【固定するのに使ったのは落ち武者】で間違いないだろうな」
【固定するのに使ったのは落ち武者】 ← 『落ち武者』
士導
「それは違うぞ!」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.166 )
- 日時: 2020/05/08 00:20
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
司翼
「ずっと黙ってると思ったらいきなりなんだ。現場に落ち武者に落ちてたんだぞ。関係ないわけがない!」
士導
「きっと落ち武者も事件に関係しているんだろうな。だけど、落ち武者を天井に固定するなんてできなかったはずだ」
捕鷹
「なぜそう言い切れる?死体だけだといつ逃げられるか分からないんだぞ」
士導
「落ち武者だからこそできなかったんだよ。前に落ち武者は俺に言ってたんだ。高いところが苦手な故にプラネタリウムを見ることができないってな」
司翼
「プラネタリウムは椅子に座って見ていれば壁や椅子が動いていたなんて感じなかったはずだ。高いところが苦手だとしても椅子に座ってしまえば関係ない」
士導
「それが関係あるんだよ。これも落ち武者が言ってたんだけどあのプラネタリウムを作った本人だからたとえ高さを感じなくてもプラネタリウムを見ることができないってな。つまり、落ち武者をプラネタリウムの構造を作ったトリックに利用するのは無理だったはずなんだ」
黒薔薇
「だが、確かに私はプラネタリウムを開けた時音を聞いたぞ。【落ち武者の落下音】と考えても何も不自然だえはないと思うけどな」
【落ち武者の落下音】 ← 『華狗也の証言』
士導
「俺はその音を聞いてないからこれは華狗也から聞いた話だけどプラネタリウムを開けた時謎の音がしたって言ってたけど、その音が2回も鳴ったなって聞いてないぞ。それか実際は2回鳴っていたのか?」
清水
「いいや。音が鳴ったのは確かに1回だったよ。そして落下音が1回しか鳴っていなかったのなら司翼君の推理は間違っていることになるよね」
士導
「落下音は1回だったんだぞ。司翼の推理では落ち武者を天井に固定した後プラネタリウムが逆さの状態で止めて置き扉を開けた瞬間に死体を固定した落ち武者が落ちてきたんだよな。だとしたら落ち武者が落ちた音と死体が落ちた音の両方が聞こえないと可笑しいはずだ!」
鍵村
「落ち武者と死体が同時に落ちたんだとしたら、と一瞬考えたがもしそうだとしたらもっと複雑な音になるはずだよな。でも私たちが聞いたのはドンっていう音だけだったな。それに私にはもう一つ気になっていることがある。それは司翼の推理は根本から間違っているかもしれないことだ」
司翼
「俺の推理が最初から間違っているだと…?それはどういうことだ」
鍵村
「お前の推理だと天岸は天井に吊るされていたことになっていた。ということは私たちがプラネタリウムに入った時椅子は動いていたことになるな。そこに【違和感】があるんだ。私たちは前提から間違っていたんじゃないかってな」
【違和感】 ← 『プラネタリウムの違和感』
士導
「俺も鍵村の意見に賛成だ。プラネタリウムに入った時椅子は普段の位置とは別の場所にあったのか?少なくとも俺が最初にプラネタリウムに入った時は何も可笑しなところはなかったぞ」
地近
「そう言われればそうだね。入った時に椅子が普段と違う位置にあったら気づくはずだもんね」
清水
「どうなの司翼君。ここまで根拠が出揃ってもまだ君の間違った推理を披露するかい?」
司翼
「…どうしてだ?…どうして士導を庇うんだ?そいつは内通者なんだぞ!そもそも俺たちに前に姿を見せなかった天岸の存在を知ることができたのは内通者である士導だけなんだぞ!」
捕鷹
「庇っているわけでない。ただお前の推理が間違っていただけだ」
黒薔薇
「だが、事件はふりだしに戻ったとも言えるな。少なくとも私たちが見た炎は致命傷ではない、落下死も違うとなればもはやいつ殺されたのかすら分からないな」
鍵村
「白骨死体として見つかっている以上少なくとも燃やされているのは確かだ。それが今日でないとするなら一体いつ燃やされたのか。そこから議論していくってのはどうだ?」
地近
「だとしても、今日に殺人が起こったからこそアリバイがないのは士導君だけってことになったわけでしょ。でも昨日以前ってそれこそみんなにアリバイがあるよ。人を殺す時間なんかあったかな?」
捕鷹
「アリバイがない時間を作れた人間が一人だけいる。それはまたもや士導、お前だ!」
士導
「今度は何だって言うんだよ。今日じゃなかったら俺たち全員にアリバイがあっただろ。何で俺だけアリバイがないんだよ」
捕鷹
「少し前に行動は二人以上でと決めた日があったはずだ。あの日食堂でそう決めた後私全員は朝から夕方までずっと資料室にいたんだ。その時士導はその場にいたか?いいやいなかった。士導の話では夕方まで寝てたみたいだが、それが嘘だったとしたら?」
鍵村
「アリバイがないのは朝から夕方まで。それだけ時間があれば犯行は十分可能だな」
士導
「待ってくれよ。犯行時間が夜かもしれないだろ。もし夜に殺されたのなら俺だけじゃない、全員にアリバイがない時間だ」
捕鷹
「犯行が夜に行われたとしても容疑者はお前ひとりに絞ることができるんだよ。犯行に使われたあるものがそれを証明してくれる」
士導
「あるものってなんだよ」
捕鷹
「犯人は天岸をどう殺したかはまだ分からないが結果的に燃やして白骨化させたんだったな。だとしたら炎が必要なわけだがライター程度の炎で人間が完全に燃え尽きるとは思えない。そこで犯人はあるものを使ったんだ。【プラネタリウムでも使われたあるもの】をな」
【プラネタリウムで使われたあるもの】 ← 『床にしかれていた油』
士導
「それって油のことか?」
捕鷹
「そうだ。プラネタリウムでの炎も床に油がしかれていた。だからこそあれだけ燃え盛ったんだ。犯人は殺人の時も同じ方法を利用したはずだ。だが、その方法を使おうとすると当然油を調達しなければならない。犯人はその油をどこで調達したんだと思うか?」
清水
「殺人用具の中にそれらしきものはなかったよね。だけど、僕と静流君で食堂の厨房で捜査していた時そこには油があったよ。そこ以外で油を入手できる場所も思いつかないし油は厨房から持ってきたと考えていいんじゃないかな」
捕鷹
「お前もそこに目をつけていたか。私も清水と同じ意見だ。犯行に使われた油は厨房から持ち出したものなはずだ」
士導
「でも食堂の厨房なら俺じゃなくても誰でも出入りできるんだぞ。油が入ってる棚さえ知っておけば油の入手にそんな時間もかからないはずだ」
捕鷹
「忘れたのか?この学園生活にはルールがあったはずだ。夜時間は食堂に入れないってルールがな。つまり、犯行自体が夜時間に行われていたとしても犯行に必要な油は厨房の中にあるから昼時間にしか取りに行くことができない。昼時間は私たち全員にアリバイがあるのに対し、お前だけその日の昼時間のアリバイがないんだ。私たちが資料室に移動した後お前は厨房から油を調達したんじゃないのか。その後呼びに行った時はあたかも寝ていたかのような振る舞いをしただけだったんじゃないのか?」
士導
「本当に違うんだ。あの日はただ本当に寝ていただけだったんだって」
清水
「うんまぁ捕鷹さんの話は大体わかったよ。でもまだ謎が残るね」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.167 )
- 日時: 2020/05/08 20:46
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
清水
「例えば静流君を呼びに行った時司翼は一人だったんだよね?だとしたら司翼君にもアリバイはないんじゃないの?」
司翼
「なんだそんなことか。確かに士導を呼んだ時は一人だったが、ちゃんと二人で部屋までは行ったぜ。なぁ地近?」
地近
「間違いないよ」
司翼
「さらに付け加えて言えば、士導と話している時も俺は地近がいることを確認していた。俺も地近も食堂に行ってたなんてありえないんだ。つまり、アリバイがないのは士導一人だけだ」
捕鷹
「士導がお前が犯人なんだろ?そして、お前が内通者なんだろ?勘で言っているわけではない。お前も校長室に入ったならわかってるはずだ。【学園長の名前】をな」
【学園長の名前】 ← 『学園長』
士導
「士導源。校長室のネームプレートにはそう書かれていたな」
捕鷹
「その士導源という人間。お前のどんな関係なんだ。兄なのか父なのか?」
士導
「わからない」
鍵村
「わからない?名前まで一緒なんだぞ。知らないわけがない」
士導
「知らないものは知らないんだよ。思い出そうとしても思い出せないんだよ!」
捕鷹
「覚えていないからこそお前が内通者ということに信憑性が出てくるんだ。士導源という人間はおそらくお前にとっても縁のある人間に違いない。だからこそ、士導は必ずその人間のことを知っていたはずだ。だが、覚えたまま学園生活に参加すれば黒幕のことを知ったまま参加することになる。そこで、士導源はあえて士導の記憶をなくしたんだ」
黒薔薇
「真の黒幕は学園長だったということか」
捕鷹
「黒幕と繋がっているわけだから天岸のことももちろん聞いたはずだ。それができるのは黒幕と血縁関係にある私たちの中に紛れ込んだ内通者、士導静流しかいない」
士導
「俺…俺が犯人?記憶がないだけで俺が内通者?そんなわけがない。俺が内通者としての記憶を失っていたとしても天岸を殺した記憶は俺の中にない」
司翼
「天岸の存在を知ることができたのは内通者だけだ。内通者以外は天岸の存在どころかこの学園内に18人目の存在がいることすら知らなかったんだからな」
士導
「…天岸の存在を知ることができたのは俺だけ?そんなはずはない。少なくも一人天岸のことを知ってた人物がいるはずだ」
司翼
「ここまで往生際が悪いとはな。そんな人物がいるわけがない」
士導
「それがいるんだよ。答えてくれ、お前は天岸のことを知っていたんじゃないのか?華狗也」
清水
「…」
地近
「清水君が天岸死恋を知っていたの!?」
清水
「僕が天岸を知っていた?それはちゃんと根拠があって言ってるんだよね?その根拠を聞かせてもらえるかな?」
士導
「さっき校長室でお前と捜査していた時のことだ。俺が天岸の資料を見つけた時のことだ。俺がお前にその資料を見せようとした時資料を見てもいないのに天岸の名を口にしたな」
清水
「そうだったっけ?僕は君の資料を見てから言ったと思うけど」
鍵村
「根拠というには弱いな。だが、清水が怪しいというのは私も同感だ。首謀者探しの時も始まりは清水の見たことのない人影を見たという一言からだったはずだ。この閉鎖空間の中私たちは学園内に私たち以外の人がいるなんて考えもしなかったが、あの時清水は既に天岸の存在を知っていたからこそ学園内にまだ人がいるなんてことが言えたんじゃないのか」
捕鷹
「それにさっきから士導を庇うような言動ばかりだが、士導が内通者ということも知っていたんじゃないのか?お前が黒幕と繋がっているなら士導を庇うのも天岸を知っていたのも全て辻褄が合うな」
清水
「褒められたことじゃないけどさ。僕ってそんなに疑われてたんだね。はははははははは、確かに君たちに隠してることはたくさんあるけどさ、僕が黒幕と繋がっている?それは悪い冗談だよ。だってそう思わせることこそが黒幕の思惑なんだからさ。この学級裁判だって僕や静流君を陥れるために開かれてるんだからさ」
鍵村
「私たちを惑わそうと嘘をついているのか?一応聞いておいてやる黒幕の思惑とやらを」
清水
「聞いてくれるんだね。黒幕と関係ある人間かもしれないのにさ。ま、信じるも信じないも君たち次第だけどさ信じてくれないとみんなここで死んでしまうからね。僕もまだ死ぬわけにはいかないからね。目的を達成するまでは僕は死ねないんだ。みんなには嫌でも信じてもらわないといけない。常識外れの話だけど信じる覚悟はあるかい?」
司翼
「信じるか信じないかは話を聞いてから考えることだ。聞く前から考えることではない。それよりもう前置きはいい。さっさと話せ」
清水
「あははは、正論だね。さて、話す機会を貰ったわけだけどどこから話そうかな」
地近
「じゃあまずは清水君が言ってた目的から話してくれる?」
清水
「僕の目的かぁ、一言で言うとある人物を導くことなんだ。でも、僕だけの目的じゃない。この学園生活自体がその人のためにあるんだ。その人が途中間違った道に進まないかを見張り、間違っていれば訂正してあげるのが僕の役目」
鍵村
「そんな話初めて聞いたぞ。それに、この学園生活の目的を知ってるなんて可笑しくないか?私たちはなんでここにいるか全員わかってないんだぞ」
清水
「だから、黒幕にとって僕は邪魔な存在なんだ」
捕鷹
「だからお前はそれをどこで知ったんだよ。黒幕と繋がっていた以外の答えでこの学園生活の目的を知っていることの証明ができるわけがない」
清水
「どこで知る?違うよ、知る必要なんてないよ。覚えていればいいんだよ」
捕鷹
「私たちは記憶を奪われているんだぞ!」
清水
「あるんだよ。みんなと違って記憶があるんだよ。だから、学園生活の目的も知ってるし、天岸死恋の存在も知っていた。記憶があるからこそ誰が黒幕かも知ってるんだよ」
司翼
「なっ!黒幕の正体!?いやそれ以前にお前だけが記憶を失っていないなんてそんな都合のいい話が本当にあるってのか?」
清水
「だから信じてもらわないと困るんだって言ったんだ。どれだけ都合がよくてもそれが真実ならば信じるしかない。実際君たちは信じてきたじゃないか。どれだけ理不尽で意味不明でも落ち武者の言うことを信じたからこそここまで生き残れたんだ。それとも落ち武者のことは信じれるけど、僕のことは信じることができないと?」
捕鷹
「お前の話は判断材料が少なすぎる。じゃあその黒幕の正体を言ってみろ」
清水
「あれ?まだ気づいてないの?校長室の書類とこれまでの僕の話を合わせれば答えは見えてくるはずだよ。【黒幕の正体】にね」
【黒幕の正体】 ← 『超高校級の負け組』
士導
「お前のいう黒幕の正体って超高校級の負け組のことなのか?」
清水
「わお一発で正解だよ。このコロシアイを仕組んだ黒幕、その正体は超高校級の負け組だよ。そういえば最初に超高校級の負け組ってワードを使ったのも僕だったよね。誰も知らない言葉を使ってたんだよ。そろそろ僕には記憶があるって信じてくれないかな」
司翼
「超高校級の負け組だと?そんなやつこの中にはいない。いるとすればまだ才能を明かしていない士導だけだ」
清水
「それは違うよ。超高校級の負け組というのは一人を指す言葉じゃないんだ。超高校級の負け組は世の中に溢れているんだよ。その中の何人かがこのコロシアイの中にいるんだ」
司翼
「だからそれが誰かを俺たちは聞いてるんだ!」
清水
「それを答える前に学級裁判を先に終わらせないとね。ほらまだ被害者が誰かもわかっていないしね」
黒薔薇
「被害者は誰かだと?それは天岸死恋で間違いないだろう」
地近
「それに今の話が本当だとしても学級裁判と何の関係があるの?犯人候補の士導君を庇う時間稼ぎにしか見えないよ」
鍵村
「そうだ。士導が犯人という私たちの結果を覆すことができるのか。そもそも被害者すら分からないって」
清水
「君たちの推理は先日士導が寝ていると嘘をついた時間に天岸を殺したんだよね。で、僕はそれが不可能だってことを示せばいいんだよね。それなら簡単だよ」
清水
「天岸は今も生きてるよ」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.168 )
- 日時: 2020/05/10 05:19
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
地近
「天岸が今も生きている??その根拠はどこにあるの?」
清水
「根拠なんかないよ。君たちが僕を信じるか信じないかのどっちかだよ。あ、そうそう僕が天岸が生きてるって言った理由はね。僕は昨日天岸に会ってるんだ。夜時間の日が変わったくらいの時かな?」
捕鷹
「さっきまでの話は本当かどうかわからないからこそお前を信じれることもできなくはないが、天岸が生きてるのは信じれるも何もありえないんだよ」
清水
「天岸が生きてることがあり得ない?どうして?」
捕鷹
「さっきの話を忘れたのか?今この学園にいるのは参加者である私たちだけだ。だから、あの死体は天岸ってことになったんだ。お前の話が本当ならあの死体は誰だって言うんだ?」
清水
「誰なんだろうねぇ?」
鍵村
「なんだその口振り。もう事件の真実に気づいてるかのようだな」
清水
「気づいてるも何も僕は天岸が生きていることを知ってたからね。推理するにあたっての情報が君たちとは違うんだ。この学級裁判の間でもちろん答えは出たよ」
司翼
「気づいてるのになぜ言わないんだよ。お前は疑われているんだぞ」
清水
「だからこそだよ。疑われているからこそ君たち自身で解決してほしいんだ。君たちが導き出した答えと僕の答えが一致すれば僕の疑いが晴れるってわけだよ」
司翼
「またお前の言ってることが正しい前提で考えるのか。そうやって俺たちを誘導しているようにも見えるが、俺たちだってそうだよなこの学級裁判を終わらせるには俺たち自身を信じるか清水を信じるかを選ばないといけないんだよな」
鍵村
「清水が言ってることが正しいとするならあの死体が誰なのかをはっきりさせないとな。落ち武者、お前に確認しておきたいことがある。何度も聞くが今学園にいるのは私たちだけで間違いないんだよな?」
落ち武者
「はい、間違いありません。ついでに死体として後から学園に運ばれたこともありません。そしてお前たち自身が殺しあった人間の死体もありません」
地近
「やっぱりその条件を満たすならあの死体は天岸で決まりだよ!」
清水
「そうかな?今の落ち武者の台詞をよく考えてみてよ。その条件に合う可能性が一つだけあるよ」
捕鷹
「条件にあう可能性?外部の人間の可能性はない。あいつらの死体を再利用したこともない。それでいて天岸以外の人間なんて本当にいるのか。話を聞けば聞くほど天岸以外の可能性が見当たらない」
士導
「…。…。…ん?死体の再利用?そうか、そうかわかったぞ」
捕鷹
「死体を再利用するにしたって再利用するものがないんだぞ」
士導
「いや可能性が一つだけある。歌土井の死体だよ」
鍵村
「歌土井の死体だと、だがあいつの死体は。そうか歌土井は落ち武者が見せしめのために殺されたんだったな。私たち自身が殺し合った死体に歌土井は確かに入っていないようにも見えるな」
司翼
「だとしてもだ。歌土井の死体をどこに隠しておいたんだよ。死体なんだからその辺に置いていたら腐るだけだぞ」
士導
「死体を保存しておける場所なら生物室があるじゃないか。あそこは室温が異常に低かったし、何より一番奥に一つだけ保管庫があったはずだ。あれは歌土井の死体を入れていたんじゃないか?」
捕鷹
「確かに歌土井の死体を使えば今回の状況を作れるな。それに犯人が死体をわざわざ燃やしたのにも疑問を抱いていたが歌土井の死体を使ったということを隠すためだったとも考えられるな」
司翼
「でもそれが正しかったとして誰に投票すればいいんだよ。歌土井を殺したのって落ち武者なんだろ」
清水
「大丈夫。考えがあるよ」
司翼
「あ?考えだと?」
清水
「まずはおめでとう。どうやら答えに辿り着いたみたいだね。そう今回の事件の被害者は天岸死恋ではなく、歌土井君だったんだ。そして、歌土井君を殺したのは僕らの誰でもない。犯人は落ち武者なんだ。だから投票は僕たち自身に入れればいい。全員が一票ずつ入ってる状態を作るんだ。ある意味全員クロって扱いかもしれないけど落ち武者を選べない以上それしか方法はない」
鍵村
「今までの話はあり得ない話ではないが、信じれる話でもない。私たちの命をお前に託して本当にいいのか?
地近
「士導君の件もあるし、全てを信じるには無理があるっていうか」
清水
「どちらにせよ。決断の時が来てるんだ。自分たちの希望を信じ切れる自信があるなら君たちの推理通りにすればいい。さぁ、落ち武者。投票タイムに移ってくれ」
落ち武者
「少々腑に落ちないこともありますが。いや腑に落ちないことばかりですが、ここでお前たちの希望が一体どれほどなのか確かめることもできますしいいでしょう。お前たちはお手元のスイッチでクロだと思う人に投票してください。さあて誰の希望が勝つのか。それとも絶望するのか。その正解なのか、不正解なのか!」
清水
「投票はもう済んだのかな?」
落ち武者
「全員の投票が終わりましたので結果発表をいたしましょう!」
清水
「あ、ちょっと待って欲しいんだ」
落ち武者
「なぜですか?もう投票は終わりました。変更は受け付けませんよ」
清水
「変更なんてとんでもない。まだ残ってるよ。事件の謎は」
落ち武者
「だからもう投票は終わりましたので、事件の謎が残っていようと関係ないのです。後はお前たちが選んだ人間がシロかクロかを発表するだけです」
清水
「じゃあこうしようよ。これから先は黒幕を見つけるための学級裁判ってことでどうかな?」
黒薔薇
「なぜ投票が終わってからそんなことを言いだすんだ」
清水
「投票が終わってからじゃないと黒幕が僕を殺しにかかってくると思ってさ。保険だよ」
司翼
「清水は黒幕の正体を知ってるんだよな。なぜ今なんだ。学級裁判は今までもあった。なぜ今回に限ってそれを明かすんだ。もっと前にしていれば犠牲だって少なくどころかなかったはずだぞ」
清水
「出会って間もない僕が黒幕の話をしたところで司翼は信じれるの?無理だよ。根拠がないもん」
捕鷹
「その言い方だと今はあるみたいだな。その根拠とやらが」
清水
「少なくとも今までよりかはね。じゃなかったらこんなこと言い出さないよ。てことでいいよね落ち武者」
落ち武者
「何を考えているのですか?君にそんな権限はありませんよ」
清水
「僕の質問にイエスかノーで答えるだけでいいんだよ。それ以外は求めていないし、必要ない」
落ち武者
「分かりました。認めましょう。これより学級裁判を再開します!!」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.169 )
- 日時: 2020/05/10 18:27
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
清水
「とは言ってももう投票は終わってるわけだからみんなが自分自身に投票している。つまり僕の推理が正しかったという前提で話を進めるね。まずは一つ目の事件の謎、それはあの音の正体だよ。答えから言うとあの音は落ち武者が倒れた音だったんだ」
鍵村
「落ち武者が倒れた音?それって現場にあったあの落ち武者のことだよな?」
清水
「そうだよ。僕と静流君であの音が何の音だったかを調べていたんだけど、落ち武者を倒した時に鳴った音が僕たちが聞いた音と一致したんだ」
地近
「だけどなんで落ち武者の音がしたの?」
清水
「落ち武者が現場の偽装工作をしていたからだよ。僕らにアリバイがある以上現場の偽装工作をできるのは落ち武者だけだからね。現場に白骨死体を置き、油を撒いた。最後に落下死に見せかけるよう自らが倒れたんだ」
捕鷹
「だが、その話がどうしたら黒幕につながるんだ?」
清水
「黒幕が【最後の仕上げ】を行ったんだ」
【最後の仕上げ】 ← 『プラネタリウムの炎』
士導
「それってプラネタリウムの炎のことだよな。今回の事件に関してあの炎の謎はまだはっきりしていないし、最後に行われた偽装工作と言ったらあの炎以外には考えられない」
司翼
「確かにあの炎は謎だな。結局発火の原因すら見つかっていない。おそらくは俺たちの目の前で死体を焼却することで死体は今白骨化したと思わせるためだったんだろうけど」
鍵村
「そこまでの偽装工作が全て落ち武者の仕業なのになぜ最後だけは黒幕なんだ?」
清水
「証拠を残さないようにするためだったんじゃないかな。落ち武者は目立ちすぎるからね。あの場で落ち武者自身が火を放っていれば僕たちはもっと早く事件を解決していたはずだよ。全て落ち武者の仕業ってことで片づけられるからね。でも、黒幕が火を放ったからこそこの謎は解けないままでいたんだよ」
鍵村
「で、それをやった人間は私たちの中にいると?あの場にいる人間にしかできないことだ。士導は外れるな。残ったのは私、清水、黒薔薇、地近、司翼、捕鷹の6人。火を放てるとしたらこの中の誰かのはずだ」
清水
「ここでは発火に利用したのをライターとして話を進めるけど、黒幕は火を放った後、ライターをどうしたんだろうね」
捕鷹
「火元を分からなくするためにどこかに隠したんだろうな。そして、私たちは見事にそれを見つけることができなかった」
清水
「見つけられなくて当然だよ」
捕鷹
「どういう意味だ?」
清水
「黒幕も最初は隠そうとしたはずだよ。だけど、捜査時間中だったから適当な場所に隠しても僕らの誰かが見つけてしまうかもしれない。そう思った黒幕は学級裁判の直前に隠そうとしたんだ。裁判場に一番近い部屋。そう、食堂だよ。黒幕は最後に食堂に訪れてそこにライターを隠そうとしたんだ。だけど誤算があった。学級裁判の直前の時間。食堂には僕と静流君が油の調査をしていたんだ。そして、食堂に来たことを僕たちに見られた黒幕は僕たちを呼びに来たなんて言い訳をして食堂から出たから隠せなかったんだよ。つまり、ライターは今も黒幕自身が持っているはずなんだ」
捕鷹
「黒幕自身がまだ持っているだと…?どうりで見つからなかったわけだ。で、それは誰なんだ」
士導
「おい華狗也、食堂に来ていた人物って」
清水
「まぁお楽しみは後においといてまずは今回の事件の流れを振り返ろうか。そして、終わらせる!」
-------------------------------------------------------------------------------------
クライマックス推理!!
act1
事件は一週間以上前に遡る。落ち武者が僕らにギガントハンマーを配った日のことだ。落ち武者は僕らにギガントハンマーの威力を説明する時、その見せしめとして歌土井君を殺したんだ。僕らは衝撃のあまりその場に立ち尽くし、落ち武者の説明を坦々と聞いた後自分もそうなってしまわないうちに自らの部屋に戻ったんだ。だけど、その時僕らの中の一人だけはその出来事に笑っていたんだ。それが黒幕だよ。
act2
歌土井君を殺した後、その死体をある場所に運んだんだけど、それはきっと黒幕も手伝ったはずだ。骨だけの死体と違いまだ肉体がついてるんだ。それに運ぶ途中で血痕が残ったりしたら全てが台無しだからね。そうして黒幕は落ち武者と協力してある場所。生物室まで運んだんだよ。あそこは超低温の空間になっていたから死体を腐らさずに保存しておくことができたはずだし、死体をいれた保管庫だって中は冷蔵庫になっていたはずだ。そして、時が来るまで歌土井君の死体はそこで保存されることになったんだ。
act3
僕らが死体を発見するまでの間に落ち武者は歌土井君の死体を白骨化させたんだよ。そのままの状態で使ってしまえば事件の被害者が誰なのかすぐにわかってしまうからだ。だから、死体を焼却し、白骨死体にすることで誰の骨なのかをわからなくしたんだ。
act4
事件当日。静流君のアリバイがない時間を狙い落ち武者はプラネタリウムに骨を置き、油を敷いた。そして後は僕らがプラネタリウムに来るのをじっと待っていたんだ。そして、僕らがプラネタリウムに入った時、落ち武者は自ら倒れて音を鳴らしたんだ。被害者が落下死したと見せかけるためにね。だけどそれで終わりじゃなかった。最後の仕上げとして、現場に火を放ったんだ。たった今白骨化したと見せかけるためと被害者は天岸だったと誤認させるためにだ。
act5
火を放った犯人。そいつは落ち武者が油を撒くことを知っていた。だからこそあらかじめライターを携帯していたんだよ。プラネタリウムで火を放った後、それを学級裁判が始まる直前に隠すことでその証拠を隠滅しようとしたんだ。そいつは隠す場所に裁判場に一番近い食堂を選んだ。だけど、そこで誤算があった。食堂には僕と静流君がいたんだ。火を放った犯人は隠すこと諦めそれを自分で持ったまま学級裁判に臨むことにしたんだ。
清水
「そして、そのプラネタリウムに火を放った人物。つまり、コロシアイ学園生活の黒幕。それは君だ。黒薔薇琴音!!」
クライマックス推理 終了!!
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清水
「そうだよね?黒薔薇さん。君は今もライターを隠し持っている。違うと言うならポケットの中身を全て出してくれないか?」
司翼
「黒薔薇が黒幕だって?本当なのか黒薔薇。お前は今もライターを持っているのか??」
捕鷹
「黒薔薇答えてくれ。清水の言っていることが本当に正しいのか」
黒薔薇
「ふっ、ふふ。ははははははははははははははははははははは。面白い!面白いぞ!清水お前には散々困らされたがそれもここまでのようだな」
鍵村
「なんだコイツ…。急にどうしたんだよ」
清水
「やっと本当の君と話せるんだね。僕は嬉しいよ」
黒薔薇
「私は嬉しくともなんともないがな。お前が私の存在を知っていたことも記憶が残っていたことも予想外で驚いたが、もう遅い!本当は私が直々にお前を殺してやりたかったがもうそれもかなわぬ夢。お前こそいつまで演技を続けるきだ。偽りの存在め」
清水
「偽りの存在…。なんだ君も気づいたんだね。僕の正体に」
黒薔薇
「いつまでもお前ごときに遊ばれる私ではない。それにお前はお前自身の最後を知らないだろう。お楽しみはまだ残ってるんだよ!それに、お前はあの人ではない。お前ではあの人になれないんだ!」
士導
「話を勝手に進めるな。どういうことなんだよ!黒薔薇が本当に黒幕だったってことでいいのか?」
黒薔薇
「ええ。ライターだってここにあるわけだしな。全て私の仕組んだことだったんだよ!清水の存在は私の計画を狂わせたがそれも誤差の範囲だ。私は対応力に長けているんだ。今回の投票だって結局お前たちは自分を信じずに清水のことを信じ、自分自身に投票したんだ。はぁーくっだらねぇ。答えを誤ったお前たちの絶望した顔が見たかったのによ。だけど流石は私。対応策を用意してあるんだよ!」
清水
「今回の学級裁判。僕を殺すつもりだったんだでしょ?内通者の静流君、黒幕の僕っていう構図を作り上げてさ。みんなを間違った正解にたどり着けようとしたんでしょ」
黒薔薇
「そうだよねぇ。そうだったはずなんだけどねぇ。殺せなかったものは仕方ない。切り替えて次こそ最後の勝負ってな。つーわけで次の学級裁判はお前たちと私の最終決戦だ。まだ明かされていない謎を全て明かしたらお前たちの勝ちだ。そうすればこの学園から出て行っていい。だけど、できなければ全員処刑だ!リミットは私が待つことに飽きるまでだ!」
司翼
「勝手に話をすすめんじゃねぇ!」
黒薔薇
「これ以上続けても全てを知っているのは私だけなんだから一生私がしゃべり続けないといけないわけでしょ?何でもかんでも待ってればいいってもんじゃねぇだろ!お前ら自身で探せってつってんだよ。ではこれにて閉廷!」
学 級 裁 判 閉廷!!
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.170 )
- 日時: 2020/05/17 00:37
- 名前: 紅茶 ◆VvOwwpM9GA (ID: 6Q1uGoC5)
俺たちを苦しめていた黒幕の正体は黒薔薇だった。俺たちがずっと探していた黒幕はいつだって俺たちのすぐそばにいた。その事実をまだ受け止めることができなかった。それにも関わらず黒薔薇は俺たちを待たず次々と話を進める。もはや俺たちのことなど眼中にないかのようだ。いや正確には一人だけは話を理解している。
「僕ら自身で探すとは言ってもさ。君はまだ僕たちに隠している部屋もあるよね?僕たちに知り得ない情報があるなんて不公平じゃないかな」
「心配には及ばない。もう全ての部屋の鍵のロックを外しておいた。もうこれで全ての部屋を捜査することができる」
「その最終決戦に勝てば俺たちは本当に外に出られるんだよな。その言葉に嘘ないんだよな」
「さぁ?ただこれだけは忘れないで欲しいな。お前たちは敵の領地にいるんだよ。全てが思い通りに進むとは思わないことでね」
発言ごとにキャラが変わっていることも本来ならば言及していただろう。俺たちにもうそんな気力は残されていなかった。まずは頭の中を整理したい。黒幕の正体とか最終決戦とか話が急展開すぎる。というか黒薔薇は認めてるみたいだけど華狗也はなぜそれを知っていたんだ。記憶が残っていたからなんて言ってたけど、一人だけ記憶が残っているなんてやっぱり可笑しい。華狗也も十分に怪しいよな。そんなこと考えていたらパンク寸前の頭が本当にパンクしてしまう。
「さて僕たちは戻ろうか。最終決戦まで時間がないみたいだしね」
「ちょっと待ちな。お前ら忘れているわけじゃないだろうな。学級裁判後のお楽しみのことをな」
裁判場を後にしようと俺たちが黒薔薇に背を向けたところだった。黒薔薇の視線が裁判場のモニターの画面を方を向いていた。
「学級裁判後と言えば毎度おなじみのおしおきタイムだろうが!何おしおきタイムを差し置いて出ていこうとしてんだよ!」
「犯人は落ち武者だったんだ。誰も処刑されないはずだよ。もし君が落ち武者を操作していたとなると処刑は君自身ことになると思うけど」
「はっはっはっはっはははは」
黒薔薇は今までに見せたことのない高笑いをしながら俺たちの方をギロリと睨む。それは絶望と絶望の混沌した眼差し。希望なんて一切ない真っ黒に染まった瞳だった。
「言ったはずですよ。もうお前に遊ばれることなんてないと。確かに私が黒幕と明かすところまでは良かったわ。で、その後はどうするんだ?お前が言いたくないなら私から言うわね。この後天岸さんに合わせて自分が黒幕でないことを証明する予定だったよね?でも残念。清水君と天岸さんが繋がっていることなんてもう分かっていたの。
そうでしょ?だって天岸は勝ち組からのスパイだったんだからな」
「それで?天岸がスパイだと知っていたとして、僕がこれからしようとしていることを暴露してどうしようっていうんだい?」
黒薔薇はモニターの指さした。さっきまで何もなかったモニターに突然電源が入り、その画面の中央に一人の女の子がロープで拘束されていた。俺たちの誰でもない誰か。その正体は華狗也の反応見て察することができた。ここまで黒薔薇の話にも動揺しなかった華狗也の体が明らかに震えている。
「あの画面に映っているのが天岸死恋…?」
「その通り!私も最初は天岸がスパイではないか?と疑問を抱きました。だから私は試したのです。天岸に人殺しができれば本当の負け組だと。そしてその結果彼女は歌土井君を殺したのです。落ち武者越しとは言え人殺しは人殺しです。この学園のルールはクロだと指摘されればおしおきだったはずです。歌土井君を殺した彼女がおしおきされることは何も可笑しくはありません」
「待てよ。そうさせたのはお前だろ。天岸が殺される理由なんてないはずだ」
「士導君言ったはずですよ。ここは敵の領地であることを忘れてはいけないってね。それに希望ばかりじゃ面白くないじゃない?希望と絶望は表裏一体。どちらかが欠けたらもう一方はそれ以上輝くことができない。お前たちの希望のためにあえてここで絶望を与えるんです。そしてその後でお前たちに芽生えた希望を全て絶望に変えるんです。あぁ、それはさぞ美しいでしょうね。光が一切映り込まない絶望だけの漆黒の瞳。あれを見るために絶望を求め続けてるんです。そして思い出してほしい」
「清水君」
天岸が映されたモニターを見てからずっと硬直していた華狗也がようやく顔を上げた。
「おっとダメダメ。おしおきタイム前に喋っちゃ。受刑者に待つのは死だけだよ。さて待つのも飽きてきたしそろそろ始めますか。それじゃあ張り切っていきましょう!おしおきターイム!」
「天岸。後は僕に任せてくれ。僕らの希望はこんなところでは決して摘まれたりしない。君の死を決して無駄にしたりしないから!」
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.171 )
- 日時: 2020/05/22 14:36
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: 6Q1uGoC5)
天岸さんがクロに決まりました
おしおきを開始します
超高校級の秘書のおしおき
「本を読むときに栞を使わず開いたまま伏せるやつ全員性格悪い」
空からの降ってきた首輪に捉えられ私はどこへ連れられた。
少し硬い床。人の肌のような温もりはないここは一体。
私はどこか分からない場所の真ん中の窪みから動けないでいた。
私にはまだやらなければならないことがある。それまで死ぬわけにはいかない。
希望がなくても絶望に侵されようとも私はまだ生きなければならない。
それがあの人との約束だから!
あぁだけどそんな言葉で生き残れるほど甘くはなかったか。
よく考えてみたらそうだ。落ち武者に希望を抱くなんて馬鹿げた妄想をよくしたもんだ。
なるほど。いかにも黒薔薇の考えそうなことだ。
最後だからこそ馴染み深い場所で私を殺そうとしている。
ここは開いた本の上か。
そう私が気づいた瞬間に私を乗せた本は徐々に閉じ始めた。
絶望ってこういうことか。何もできずただ殺されるのを待つ。
希望ってこういうことか。きっと終わらせてくれると信じる。
私はここで終わりだけれども、希望はこんなところで潰えたりしない。
彼なら私の希望をきっと汲み取りそして終わらせてくれる。
きっと変えてくれる。
本はある程度閉じるとそこで一旦動きを止めた。
そして、次の瞬間、本は一気に私を栞代わりにして閉じた。
さらに、閉じた本は炎を焚き始めた。
本が灰になり私の存在ごとなかったことにしたところで炎は消えていった。
全て燃やしてしまえばなかったことにできるって?
希望も
私の存在も
私のしたことが間違っていたなんてことはない。
だから託すんだ。私という存在が消えてもやり遂げてくれる人がいるから信じれる。
そうだよね?
だから後は任せたよ。
清水君、
…
いや
士導君。
- Re: ダンガンロンパ〜ようこそ勝ち組ヶ丘学園〜 ( No.172 )
- 日時: 2021/07/25 19:18
- 名前: 紅茶 ◆nByc8bEJCc (ID: nHgoSIOj)
俺たちには結末が理解できなかった学級裁判は俺たちが異議を唱える前に静かに終わりを迎えた。説明もないまま意味の分からない現実をただ突きつけられそれをそのまま納得する以外の道が存在しないなんてそんな話馬鹿げている。満足そうな笑顔の黒薔薇と画面が真っ黒になったモニターをただ見つめる華狗也。二人の対照的な表情から見るに現状は黒薔薇が華狗也を手玉にとったように見える。
誰も動かないまましばらく経つと、華狗也は黒薔薇に背を向けた。そして、そのまま裁判場を後にした。
「ちょっと待てよ!俺は、俺たちは何も分かってないんだぞ!勝手にお前らだけで話を進めるな!」
そう言いながら、俺は歩く華狗也の肩をグッと引っ張ってその足を止めた。
「落ち武者の話を聞いていたかい?この校舎の全ての部屋のロックを解除したって言ってたよね?」
「それがどうしたってんだ」
「まずは自分で探してみる、考えてみるという選択肢をオススメするよ。君が思っているより何倍も悲劇的だからさ。それを受け入れる覚悟できたなら僕と答え合わせをしよう」
華狗也の言う通りだった。本来ならば正論にただ屈していただろう。
「そんな呑気なことを言っている暇があるのか?時間がないんだぞ。超高校級の負け組とか士導源とかそもそも分かっていないことは多すぎる。それを黒薔薇の言われた通りに一から答えを見つけていくなんてどう考えても効率が悪すぎる」
確かにね、と言わんばかりの顔をする。顎に手をつきいつもの考えているフリを数秒俺に見せつけた後、ようやく口を開いた。
「まぁそうだね。ある程度のことは知っておいた方が僕の考えとの比較もできて捜査しやすいだろうね。うん、分かった。だけど、それは明日にしよう」
「だから時間がないって…」
「流石の彼女もタイムリミットが明日の朝なんてことは言わないはずだよ。彼女はこの状況で僕たちに勝とうとしていない。楽しんでいるんだ。圧倒的な力の差を見せつけたいなら今すぐ学級裁判をすればいいし、もっと言えばコロシアイ学園生活なんてせずに僕たちを殺せばいい」
じゃあ明日ね、とだけ言い残すと俺の声も聞かず自分の部屋に戻っていった。
「何て辛気臭い顔をしているの?」
突如開いた扉にも驚きもせず、遠慮もなく入ってくる女をただ見つめる。もう黒幕ということを隠す気もない彼女に思わず笑みがこぼれてしまう。
「一体どうしたんだい?黒幕直々に僕に会いにくるなんてさ。もしかして殺しにきた?」
「そんな私を天岸さんみたいな人殺しと一緒にしないでください。私は一応お前の正体を答え合わせと思ってね」
「相変わらずキャラを変えるのが好きなんだね。その話すたびに別人と話しているような感覚。正直僕は好きじゃないな。それに答え合わせなんてしなくていいよ。君が辿り着いた答え、それがまさしく正解さ。僕は偽りの存在。この世に存在していないはずの人間だよ」
小さい明りだけが点灯している小部屋で二人の男女がお互いのことに気づき笑っていた。防音設備が整えられたこの部屋では普段自分の呼吸音と鼓動しか聞こえないにも関わらず二つの笑い声が鳴り響いた。だけどきっとこの笑いに希望はなかっただろう。二つの絶望だったに違いない。黒薔薇の真っ黒な絶望と僕の少しの希望が混じった限りになく黒に近い絶望。この状況の中で僕の正体がばれてしまったことはもちろん良いことでない。それに彼女は核心にも気づいている。だからこそ、僕に会いに来たんだ。きっと清水華狗也としてではなく。
「もういいだろ。僕は寝たいんだ。帰ってもらえるかな」
「もちろん。こんな暗くて、狭くて、臭い部屋にいたら頭にまでカビが生えちゃいそう」
そう言いながら黒薔薇は玄関の方に向かって足を進めた。ドアノブに手をかけたのを確認した華狗也は再び布団の中に潜り込んだ。
「あ、そうそう。忘れてた。あなたに一つ忠告しといてあげようと思ってさ」
膨らんだ布団からは特に返事はなかったが、黒薔薇はそのまま続けた。
「君がここからどうしていくのか知らないけどさ、私に勝って外の世界に出てからのことを考えるのも自由だし、私に負ける未来を想像するのも自由だけど、この物語が終わりを迎えた時…」
「君は死ぬ」
chapter5 死と恋のバラード 完