二次創作小説(新・総合)

次回予告 ( No.112 )
日時: 2022/05/13 23:35
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 ―――ダイヤモンドシティでのゲーム大会が終了してから2週間が経過した。
 ノボリとクダリも城下町での生活にも慣れ、ネズやマリィとも少しずつ距離を縮めている。そんな矢先、彼らとは全く関係のない別の場所で"何か"が動き出そうとしていた。


 リレイン王国の南に点在している国。名前を"キノコ王国"という。直近のゲーム大会でもマリィと優勝争いを繰り広げたスーパースター、マリオが暮らしている国だ。国民の大半がキノピオ属だが、それ故に穏やかな気候と平和が続く、自然豊かな土地が続く王国である。
 ピーチ城を囲むように城下町であるキノピオタウンが連なっている。ちなみに、ジンベエも元々はこの王国出身で、商人として世界を転々としていた過去を持つ。

 そんなピーチ城へ走る一台の車。赤と緑の双子、マリオとルイージ。車に乗車していたのは紛れもない2人だった。
 どうやらピーチから呼び出しを受けたらしく、2人の足はどことなく急いでいるもののように見える。車を門の近くに駐車させてもらい早速城の大広間の扉を開くと、そこにはピーチともう1人、活発な印象の黄色いドレスを纏った女性―――"デイジー"の姿があった。



「ピーチ姫。どうしたの?急に呼び出しなんて」
「今朝急にキノピオが家に飛んで来たからボク達びっくりしちゃってさ。まさかまたクッパがピーチ姫を攫ったんじゃないかって」
「そうであれば、わたくしはのんびりお城で待っておりませんわよ?紛れもないわたくしからの依頼ですわ」
「てか、もしピーチ姫が攫われてたらアタシだって一緒に攫われてると思うのよね!もうちょっと考えて物を話しなさいよ、ルイージ!」
「な、なんでボクだけ…?」
「うふふ。話が脱線してしまってはいけませんわ。さぁ、お茶でも飲みながら本題を話し合いましょう。キノピオ、すぐにお茶とお菓子を持ってきていらっしゃい!」
「はいっ!」



 ピーチの命令で、待機していたキノピオがせかせかと動き始めた。マリオ達はピーチ姫に案内され、テーブルのある中庭へと移動を始めた。季節は春から夏へと移ろう間。庭園に咲き誇る花も、季節の移ろいを表すように変化を見せていた。
 4人が椅子に座ったと同時に、大きなお盆を持ってきたキノピオ達が到着し、支給を始めた。今日は果実入りのティーとバウムクーヘンか。恐らくお菓子はピーチの手作りだろう。思わず、キノコ王国の双子の喉がごくりと鳴る。
 マリオがバウムクーヘンに手を付け始めたのと同時に、ピーチは本題を口にし始めた。



「実は…今朝、ドルピックタウンからお手紙をいただいたの」
「ドルピックタウン?なんだってそんなところから」
「口で説明するのは難しい…。ですから、2人もお手紙を一緒に見てくださらない?」
「勿論だよ!何が書いてあるの?」



 どうやらピーチ城に今朝、ドルピックタウンから手紙が届いたらしい。常夏を表すような街からどうしてキノコ王国等に連絡が来るのだろう。4人は不思議に思っていた。
 詳しくは手紙の内容を見てほしい、とピーチはマリオとルイージに貰った手紙の中身を見せる。そこには、こんなことが書いてあった。



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 拝啓 ピーチ様

 立夏の候、風薫る季節となりました。今日はいかがお過ごしでしょうか。
 近日、ドルピックタウンとリレイン王国との協力連携の交渉が行われる予定です。しかし、町長が未だ王国に懐疑的な目を向けています。リレイン王国は徐々に再起も進んでおり、新たな文化も取り入れ素晴らしい国に発展を遂げていると風の噂で聞いております。しかし、いくら説得をしても町長は懐疑的な目を止めることはありませんでした。
 ですので、どうか交渉の場にピーチ様もお越しいただき、仲介の場を設けてはいただけませんでしょうか。

 以上、よろしくお願いいたします。


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 ―――手紙の内容をかいつまむと、どうやら直近でドルピックタウンとリレイン王国、双方の国が協力関係になる為の会議が行われるらしい。しかし、今の町長がリレイン王国に良い気持ちを持っていない。だから、ピーチ達にドルピックタウン側の仲介を依頼したいとのことだった。
 マリオとルイージはその手紙の内容を見て、首を傾げる。どうしてピーチなのかと。ゲーム大会に参加しマリィと少しでも顔を合わせたマリオとルイージならばともかく、何故無関係のピーチを巻き込むのかと。
 そのことについて少し突っ込んでみると、彼女は考える素振りをした後に自分の考えを述べた。



「遠回しにマリオに協力してほしいと伝えたいのではないかしら?それに…わたくしとしても、あの王国と今のうちに協定を結んでおけば色々と有利に物事が運びますもの。幸い、ジンベエがあちらに店を構えていらっしゃいますし…」
「あぁ、そうか。ピーチ姫を介せばボク達にも話は絶対に通る。この手紙の送り主はそこまで読んでいたのか…」
「立会人、ねぇ」



 マリオは字面を再びぼーっと眺めながらバウムクーヘンをまた1口ぱくりと運ぶ。ゲーム大会で触れ合っただけだが、彼らは悪い人間には見えなかった。なのにどうして昔の悪評を引き摺るのだろうか。やはり、歳をとっている者は昔の風習が中々抜けにくいのだろうか。
 紙とにらめっこを続けるマリオの傍で、デイジーは若干興奮気味に"ドルピックタウンに行きたい"と言い出す。



「アタシもその王国、すっごく気になるわ!超お洒落なシンガーがいるだとか、最近では美味しいって評判のレストランも出来たって噂になってるじゃない!近々ドルピックタウンではイベントもあるし、丁度いいから4人でバカンスがてら依頼受けましょうよ!」
「マリオ。確か、貴方リレイン王国の核として支える方々と触れ合ったのでしょう?印象はどうだったのかしら?わたくし、ワリオからの言伝だけでしか彼らの情報を知りませんの」
「ん?うん、すっごくいい人だし、正義感が強くて勇気のある人たちばかりだった。外見も凄くユニークな人達ばかりで見てて飽きないよ!ボクとしても、是非もっとお話して仲良くなりたいところだね!」
「成程…。マリオがそうおっしゃるならそうなのでしょう。わたくしも、依頼を受けてみてもいいかもしれないと思っていたところでしたのよ。ありがとうマリオ」
「ボクもマリオ兄さんに賛成!」
「それでは、4人でこの依頼を受けてみましょうか。キノピオ!すぐに依頼の承諾の返事を用意してくださるかしら?」
「はい!承知いたしましたピーチ姫様!」



 話し合いの結果、4人はドルピックタウンの依頼を受けることに決めた。リレイン王国という土地も非常に気になっていたのと、やはりマリオが"仲良くなりたい"と口にしていたことも気がかりだったのだ。
 ピーチはすぐにキノピオに依頼を承諾する返事を書くように命じ、別にマリオとルイージにも頼みごとをすることに決めたのだった。



「さて。それでは…早速旅行の手配を始めませんと。その前に…マリオ、ルイージ。リレイン王国に一度赴いて、今お話した内容を連携してもらえないかしら?前もって知っておいた方が諸々がスムーズに進むと思いますの、わたくし」
「そういうことなら任せてよ!よーし、早速リレイン王国に出発だよルイージ!」
「ついでに城下町もちょっと覗いて行こうよ!ジンベエさんがどんなお店開いているのかも気になるしさ!」
「怪我しないでねー!」
「うふふ、いってらっしゃい♪」




 見送る2人の姫を見届けながら、マリオとルイージは再び自前のカートに乗り込む。
 そして、北の方向に見える中世的な城に向かって早速出発したのだった。

次回予告 ( No.113 )
日時: 2022/05/13 23:39
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 一方。リレイン王国に点在する巨大な城下町の中央にそびえ立つ議事堂では、今日も町長であるラルゴが忙しそうにせわしなく働いていた。なお、ポケモントレーナー達は本日各々の用事で全員外に出ている。いつもならばネズ辺りが議事堂に滞在して作曲をしているのだが、彼も本日に限っては外出すると朝から建物を去っていた。
 議事堂の手伝いをしてくれる人達が増え、ラルゴの負担も少しずつ減っている。しかし、忙しいのに変わりはない。そんな彼の元に、軽快に歩み寄る2人の人影があった。
 その正体は勿論マリオとルイージである。噂の町長に出会えたのか、2人共嬉しそうに笑顔を振り撒いた。



「まぁ!Mr.ニンテンドーと顔合わせ出来るだなんて…。今日は最高の日ね!」
「最高の誉め言葉をありがとう、町長さん!ボクもキミと会えてとっても嬉しいよ!」
「アポも無しに急に来てごめんなさい…。あ、これピーチ姫からの書状です。ラルゴ町長宛にって」
「あら、わざわざありがとう♪ コーヒー飲む?それともココアかしら?」
「いえいえ!お構いなく」



 とはいいつつも、彼は電動ケトルからいつの間にかお湯を注ぎ、2人分のコーヒーを準備してしまっていた。町長室には彼の私物だろうか、年代物のコーヒーミルが置いてある。どうやらバーで使っていたものが無事だった為、部屋に持ってきて一服する際に使っているらしい。
 目の前にコーヒーを出され、2人は断るわけにはいかなかった。ゆっくりと淹れたてのコーヒーを味わった後、ラルゴがピーチからの書状を見るのを眺めていた。



「成程ねぇ。確かにドルピックタウンに協定を結ぶ会議を開くように依頼はしたわ。でも、そんなことに転がってるなんて思わなかった。やはりまだあちらから信頼はされていないということなのね…」
「ドルピックタウンの町長さん、なんだかこの王国のことを毛嫌いしているみたいで…。何か言えばあることないこと言って国のことを悪く言ってるらしいよ。何とかしてこの国はいい国だって思ってほしいんだけどなぁ」
「でも、確かに一時期大帝国のせいで無人だったことは事実よ。もしかしたらそのことを擦っているのかもしれない…」
「でも、心配しないで!町と国同士がちゃんと仲良くできるように、ボク達が潤滑剤になるのをピーチ姫に頼まれたんだよ!ボクだって、こんな素敵な国を悪く言われるようなことなんて避けたいからね!」
「アナタ達が仲介人なら安心はできるけれど…。うーん。でもね?アタシ、仕事が山積みで直接交渉には向かえないのよ」



 マリオ達が仲介人に入るという事実をラルゴは喜んだものの、表情はすぐに沈む。いくら町同士の交渉だと言っても、ラルゴは未だに手に余る程仕事が残っている。責任者として、街を離れるわけにはいかなかったのだ。
 今も忙しい合間を縫ってマリオとルイージとの話し合いをしていることも2人には分かっていた。しかし、町同士の大事な連携である。しっかり直接話し合いをしてもらって、偏見を払拭してもらいたいとも2人は心の内に秘めていた。



「町長さん、忙しそうだもんねぇ。でも、町同士の大事な連携がかかってる会議だし…。どっちにしろ、この街に住んでいる人達は必ず呼びたいところだよね」
「そうなのよ~。でもね?前よりは随分と自分の時間が取れるようになったの。もうちょっと人が増えてくれればいいんだけど…。そんな贅沢なこと言ってられないわよね。手伝ってくれるって言ってくれてる人達がいること自体が奇跡みたいなもんなんだから、アタシが頑張らないと!」
「無理しないでね、ラルゴ町長…」



 ラルゴが申し訳なさそうに返事をする中、マリオはマリィ達のことを思い出した。彼女達のことについて聞いてみると、ラルゴは普段はここの手伝いをしてもらう代わりに、議事堂を寄宿舎代わりに使って貰っていると答えた。
 そこで彼は閃く。"彼らを巻き込んでしまえばいいのだ"と。マリオの瞳が輝いたのにルイージも気付き、彼がまた悪だくみをしているのだとジト目になりながら兄を見た。



「そうだ!ボク閃いちゃった!じゃあ、マリィちゃん達に会議に出てもらえばいいんだよ!」
「えっ?」
「ちょっと兄さん?!ラルゴ町長の話聞いてなかった?!彼女達はあくまでもラルゴ町長の手伝いだって……『でも、議事堂に住んでるんでしょ?だったら多少再起した後の王国のことについて知っててもおかしくはない筈さ!彼らに代理で交渉を頼めばいい!』 うーん。本当にそれでいいのかなぁ?」
「それに!ワリオとしか深く面識がないなんてずるいじゃないか!ボクの好奇心が黙っちゃいないよ!」
「始まった…マリオ兄さんの悪い癖…」



 ルイージは頭を抱えラルゴに謝罪をした。そう。マリオは非常に好奇心旺盛で陽気な男なのである。気になるものはとことん調べつくさないと気が済まない性格なのであった。それは物でも人でも関係がない。自分を負かしたあの少女が関係している人々。彼はそんな"強者"と仲良くなりたいと思っていたのだ。
 彼の突拍子もない言葉にラルゴも戸惑う。確かに彼らに行ってもらえばラルゴも自分の仕事が進められる。しかし、"手伝ってもらっている"立場である彼らを自分達の用事に巻き込む訳には行かなかった。







 困っていたラルゴの元に、正に話をしていた"関係者"が戻ってきた。ネズが用事を終えて一足先に戻って来たのだ。どうやら護衛として大典太も一緒のようだった。
 ネズは3人にまじまじと見つめられ、何事かと戸惑う。流石のシンガーでも、オフの時に注目されるのだけはご勘弁願いたかった。



「あの。おれの顔に何かついてます?」
「あっ!えーっと…ごめんね!随分と久しい顔だなあと思って」
「おれが?光世が?」
「そっちの黒髪のお兄さんの方だなぁ…。お久しぶりです、大典太さん」
「……久しいな。あんた達、ゲーム大会にもいただろう」
「うんうん、いたいた!キミ達もいたの知ってるよー!そこのツートンの子はワリオにピエロ呼ばわりされてたよね!」
「ピエロ呼ばわりはあの双子だけで充分です。……あいつの目にはおれもピエロに見えてるんですか?
 それで、何を話していたんです?おれ達に頼みたいことでもあるんですか?」
「うん。実はそうなのよ。あのね?」



 申し訳なさそうにしながらラルゴが事の顛末を説明する。今後の街の発展にも繋ぐ為に、港町との連携を早めに取っておきたかった彼はドルピックタウンとの協定を結ぼうと会議を依頼していた。しかし、向こうの町長が王国に悪印象を持っている為マリオ達に仲介人をドルピックタウン側から頼まれたということと、自分は仕事が忙しくて直接行けそうにないことを話した。
 そこまで聞いて、大典太は考える。ラルゴの考えが少しだけ透けて見えたからだった。



「……俺達刀剣男士は別に構わんが、ネズ達を巻き込みたくないんだな。あんたは」
「アナタ達刀剣男士ちゃんも含めてよ!だって、アタシの我儘に付き合って貰っているようなものじゃない?」
「そういう考え方は非常にノイジーですね、町長。おれ達、あんたに結構良くしてもらってるの自覚してるんで。故郷を失って困っていたおれ達に手を差し伸べたのはどこの誰ですか?そうでなきゃ衣食住が整った快適な生活なんて送れてないでしょうに。
 マリィだって、あの双子だって、キバナだってここにいたらおれと同じことを言うと思いますよ。言いなさいよ。代理で行ってきてほしいって」



 ラルゴの言葉にネズは答えた。故郷に帰れない自分達を匿ってくれたのは誰だと。責任を持って衣食住を与えてくれたのは誰だと。彼らはその恩を返す為に街の手伝いを買って出ているのだと。大典太達と同じ考えを彼らも持っていたと、ラルゴはそこでやっと気付いた。
 そして、おずおずと頭を下げながら彼は頼んだ。ドルピックタウンとリレイン王国との会議、代理で参加してくれないか、と。


 その言葉にネズは静かに頷いた。自分は交渉事はあまり得意ではないが、ジムリーダー時代のノウハウを活用すれば何とかなるかもしれないと。
 その答えを傍で聞いていたマリオは飛び跳ねて喜んだ。そもそも、彼女達を引き連れてバカンスがてら交渉に向かおうとしていたのは他でもない彼らだったのだから。



「ヤッフー!これでみんなで常夏の街にバカンスに行けるね!やっぱりピーチ姫はここまで見通してたのかな?だったら凄いや!」
「まあ終わり良ければ総て良しってことわざもあるし…。良かったね兄さん」
「……ん?待ってください。今"常夏の街"って言いました?」
「うん!詳しい日程が決まったらまた連絡するけど、ドルピックタウンは太陽がさんさんと降り注ぐ港町!海の幸も果物も美味しい、とっても素敵なリゾート地なんだよ!」
「…………」
「……ネズ?」



 ネズはたった今答えた言葉を取り消したい衝動に一瞬駆られた。大典太が彼の表情の変貌を心配して声をかけるも、彼は取り繕うこともせず焦燥したまま動かない。
 その様子を見て、大典太は"まさか"と一つの考えに至る。―――言葉を口にしようとした途端、ネズに口を掌で止められた。



「光世。おれは夏の湿気と暑さが嫌いなんです。見透かしたように口に出そうとしないでくれますか」
「…………」
「ハッハー!いやー、今から楽しみだなあ!まさかレッドくんやリーフちゃん以外のトレーナーさんと交流できる日が来るなんて!それじゃ、詳細が決まったらまた連絡するね!今日は急に来ちゃってごめんねー!今度は観光目的で来ようかなあ。それじゃまたねー!」
「急に来ちゃってごめんなさい!それじゃ、当日よろしくお願いします!」



 嵐のように町長室を去っていったキノコ王国の双子の背中を見守りながら、ネズは深くため息をつく。とんでもないことを口にしてしまった、と。しかし、ラルゴが困っているのは事実。手を差し伸べた以上、ひっこめる訳にはいかなかった。



「……室内はきっと涼しいよ」
「慰めはいらねぇんですよ」



 再び自分の仕事に手を付けたラルゴの邪魔をしないように、1人と一振は町長室を静かに退室した。
 果たして、ひょんなことから受けてしまったラルゴからの依頼を無事完遂し、彼らはドルピックタウンとの協定を結ぶことが出来るのだろうか…。
 その未来は、きっと誰にもわからない。




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