二次創作小説(新・総合)

Ep.03-s1【合流!若きポケモン博士】 ( No.131 )
日時: 2022/06/01 22:50
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)

 ドルピックタウンの一件が終了した翌日。バカンスを楽しんだ一同は、リレイン城下町への帰還を果たしていた。色々あったものの、ソハヤという仲間も増えメンバー同士の親交も深まったことだろう。
 既にドルピックタウンの町長からラルゴへの連携に関する連絡は行われている。その為、一同もそれに倣い軽く報告を済ませることに決めていた。


 議事堂へと戻ってきた一同を待ち受けていたのは、ガラル地方のポケモントレーナーにとっては見覚えのある影だった。ノボリとクダリも過去に行われたイベントで同席した経験があり、彼女のことには覚えがあった。
 思わずネズがその女性の名前を声に出す。



「ソニア!どこにいたんですか」
「あっ。ネズさんにみんなー!随分と久しぶり!元気だった?」
「ソニアは…元気そうで何よりだな」



 彼らをエントランスで出迎えたのはホップとソニアだった。ソニアはネズが初めてこの世界で目を覚ました際、シュートシティに合流できていなかったポケモントレーナーの1人だった。
 ソニアはガラル地方の新米ポケモン博士で、ダンデの幼馴染である。祖母であるマグノリア博士から役目を引継ぎ、ダイマックスに関しての研究を行っている。現在、ホップは彼女に弟子入りしながら博士になる為に頑張っているのだ。


 どこも怪我がなく、元気そうにこちらに手を振ってくるソニアを見て一同もホッと胸を撫でおろす。この調子で行方不明の3人も見つけ出せたら、と心のどこかで思った。
 今までどこにいたのかと改めて彼女に問うと、ソニアは頭に手を当てながら申し訳なさそうにこう返してきた。



「シュートシティに行くまでにかなり時間がかかっちゃって…。フウロさんと運よく鉢合わせして、彼女にシュートシティまで乗せてきてもらったの。あたしってラッキーだよね!」
「フウロさまもご無事だったのですね!」
「あ、あなた達って確かサブウェイマスターの!イベントの際は本当にありがとう!色々助かったよ!」
「ぼく達サブウェイマスター。お客様をおもてなしするのがお仕事。でも、ぼく達も楽しかったから問題ない!」



 ソニアは彼らとは反対の大陸……"東の大陸"の小さな町の近くで目を覚ました。路頭に迷っていたところに流れ着いた町で、偶然フウロと鉢合わせをしたらしい。彼女も単身訳の分からないところに飛ばされ、1ヵ月ほどこの町で世話になっていたのだという。
 フウロは向こうの大陸に"ポケモントレーナーが集っている大きな街"があることを知っていた。責任者がダンデだということを聞きつけ、街の人から借りた飛行機に乗って、彼女と共にシュートシティまでやってきたというのが事の顛末だった。



「途中でミカンちゃんとマツバさんも飛行機に乗せて、こっちの大陸まで飛んで来たの。いやー、青空綺麗だったなぁ…」
「別の地方のポケモントレーナーも順調に集まってるみたいだな」
「空の感想を言えるくらい元気なら良かったですよ」
「ソニアが戻ってきたって連絡したはいいものの、町長に"今は席を外してる"って言われて…。まさかバカンスに行ってたとは。オレもバカンスしたかったんだぞ…」
「ただのバカンスじゃなか。国の今後を担う重要なお仕事を代理でしてただけ。でも、無事にお仕事終わってよかった」



 ソニアの話から、ミカンとマツバも一緒に飛行機に乗ってシュートシティに向かったことも判明した、ガラルやイッシュだけではなく、他の地方のポケモントレーナーも順調にシュートシティに集まっている。これならば、何とかトレーナー同士で力を合わせて頑張っていけるだろうとネズは前向きな気持ちを胸に秘めた。
 しかし、問題はそこではない。何故ソニアとホップがこの議事堂に顔を出しているのか、ということである。彼女もホップも城下町に世話になっている立場ではない。そうであれば、何か別の用事を抱えてここに来ているのは明白である。そのことについて質問を投げると、彼女は思い出したように口を開いたのだった。



「実はね…。リレイン城下町に"ポケモンセンター"を設立する許可が降りたの!丁度昨日完成予定だって話を聞いたから、町長さんと話がてら街を歩きに来たんだよ」
「本当でございますか?!」
「本当だぞ!アニキ、本当はもっと早くに計画を動かしたかったみたいなんだけど…。丁度その時にポケモントレーナーが沢山シュートシティになだれ込んできて。多分、この前ゲーム大会でマリィが優勝したことで、"ポケモントレーナーが集っている街"としてシュートシティが大々的に有名になったからなんだと思うぞ」
「マリィが優勝したことがそこまで響いているんですね。ですが…これからは少し楽が出来そうで良かったですよ」
「ポケモン関連のことはシュートシティまで行かなきゃ出来ないからな~。まさかダンデが裏で動いていたとは」



 リレイン城下町にポケモンセンターが出来る。その事実にも驚いたが、ラルゴがその案を承諾し秘密裏に動いていたことにも驚愕していた。リレイン王国が魅力的な国なのは一同既に分かっていたことだったが、やはりポケモンのことに関してはやや不便だと感じていた。それをラルゴに薄々察されていたのだろう。
 今後が便利になる、とポケモントレーナー達は嬉しそうに反応を返す。彼らの様子を見つつ、ソニアは続けてこう話した。



「で、あたしとホップはダンデくんのお願いで、しばらくこの城下町のポケモンセンターで色々やることになったの。挨拶っていうのはそれも含まれてるね」
「ポケモンセンターの人達に事情は話して、センターに間借りさせてもらえるようになってるからそっちの心配は必要ないんだぞ!」
「それなら安心しました、が…。ホップ。きみがこっちに来てしまってダンデは大丈夫なんですか?」
「どういうことだ?」
「……方向音痴的な意味で」
「あぁ…」



 ネズが心配していたのはダンデのことだった。ゲーム大会でも改めて思ったが、ダンデは誰か見張りがついていないとすぐに何処かに姿を消す。リザードンがいるから大丈夫だとはいうが、健康診断などで彼と離れ離れになっている時間帯もある。その時にふっといなくなってしまうと、探すのにも一苦労だ。
 唯でさえ頼みの綱であるキバナが議事堂に間借りしている上、ホップまで城下町のポケモンセンターに世話になることが今明かされた。知らない間にダンデがいないまま何週間も過ごしていた、なんてことが起きかねない。
 ネズの言葉を聞いたホップは、少し考えた後彼に言葉を返した。



「うーん。リザードンもついてるし、あっちどんどん人増えてるし。ポケモントレーナーも少しずつ街に集まってきているから多分大丈夫なんだぞ。
 それに、今は3人体制で街を回しているみたいだからな!」
「ダンデと…マスタードさんとピオニーさん。ゲーム大会の時に任せていた2人と共に正式に街を回すことに決めたんですね、あいつ」
「流石に人が多くなってきて、アニキ1人じゃ無理なことも出てきたからなー。だからなんだ。オレがソニアについていってもいいって許可が出たの」
「なるほど」
「……その。話の腰を折ってしまって申し訳ないのですが、その集まってきたトレーナーの中に…トウコさまやメイさまはおられませんでしたか?」



 ゲーム大会終了後、ダンデは正式にピオニーやマスタードと共に街を回していく決意をしたらしい。街に少しずつトレーナーも集まってきている。やれることに余裕が出て来た為、ホップが城下町に移動することが許されたのだと彼は話した。
 そんな折、申し訳なさそうに目を伏せてノボリが話に割り込んできた。トレーナーが集まってきているのであれば、トウコやメイも見つかっているのではないか。そんな期待を込め、ソニア達に尋ねる。しかし、ホップは困った表情で首を振った。



「ごめん。ユウリもトウコもメイもいないんだぞ。オレ達も来てないかなって探してはいるんだが…」
「そうでございますか…。申し訳ありません、こんな質問を投げかけてしまって」
「ううん、いいのいいの!いなくなっちゃった子達のことを心配するのは当たり前の感情なんだし」
「大変な目に遭ってるんよね…。ユウリ達、無事だといいけど」



 トレーナー達が集まっているのは事実だが、その中に探している3人はいない。ソニアの言葉に、ノボリは謝罪をした後に先程の話を続けるように促した。アンラの分身に攫われた3人の少女。今頃何をしているのだろうか。
 危険な目には遭っていないだろうか。思わずマリィがぽろっと零す。彼女もユウリのことをとても心配していた。そんな彼女の背中に優しく手をあて、ソニアは自分の思いを口にする。



「でも、人がどんどん集まっているってのはいい兆しだとあたしは思う。だから、今出来ることを頑張った先に希望が見えるんじゃないかなって信じて、あたしダンデくんのお願い受けることにしたんだ。
 だから…ユウリが見つかった時には、沢山心に秘めた思いぶちまけて、それで抱きしめてあげればいいんだよ」
「うん。ありがとうソニアさん。あたし…ちょっと、生き急いでたかもしれん。ユウリが大変なことになってるかもしれないのに、あたしだけこんな贅沢していいんかって」
「マリィ…」
「何だかんだユウリも、その場で出来ること探して前に進んでると思うぞ? そうでなきゃアニキ倒してチャンピオンになれてないからな!」



 ソニアの言葉を聞いて、暗かったマリィの表情に少しだけ光が見える。今、自分達は出来ることを精一杯やっている。その先にユウリ達への道が見えるなら、信じて歩いていこうと。改めてそう思ったのだった。
 これ以上暗い話題を繰り返しても仕方が無いと、ソニアはぱんぱんと手を叩いた。彼女の視線の向こうには、丁度買い物を終えて帰って来たであろうラルゴの姿が見えた。ラルゴは一同とソニア達の姿を見据え、笑顔で手を振ってこちらに小走りで向かってくる。



「メイも、トウコも。無事だといいなあ」
「信じましょう、クダリ。彼女達の心が強いのは、わたくし共もよく知っている筈でしょう?」
「うん。だから、ぼく達も出来ることを背一杯やる。だよね、ノボリ?」
「はい。レールは必ず交差する。そう信じて前に進むのです。それが、我々に一番できることなのです!」
「攫った犯人が同一の存在なら…。もしかしたら、ユウリ達もユウリ達で合流出来ているかもしれませんね」
「それは…あるかもしれません。わたくし、考えが抜け落ちておりました…」
「可能性の話、ですけどね。ソニアの話になぞらえるならあるかもしれねぇって今思っただけです。ほら、ポケモンセンター見に行くんでしょう? 今おれ達に出来ることはそれだと思うんですよ」
「そうそう。じゃあ、話が終わったら行こう!」




 ラルゴがソニア達と楽しく話しているのを見守りながら、ネズとサブマス双子はそんな話をしていた。自分達にまず出来ること。それは、新しく設立したポケモンセンターに足を運ぶこと。
 双子もネズの言葉に賛同し、ラルゴ達の会話に混ざりに近付いた。こうして、リレイン王国にもポケモンと人間への共存の道が1つ、また増えたのだった。




  Ep.03s-1 【合流!若きポケモン博士】 END.