二次創作小説(新・総合)

Ep.04-1【天下五剣が集うとき】 ( No.172 )
日時: 2025/09/11 22:04
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 ――ここは、どこだ。


 ――俺は、あの鬼に斬られたはずだ。主に助けられて、それで……。



『――だい、―――い!』



「…………」



 暗闇から、目を覚ます。そこには、見覚えのある景色が並んでいた。
 ふかふかとした掛布団の感触から、自分は今寝かされているのだと大典太は理解した。どうやら、あの後本当にサクヤは六振を連れてこの神域まで戻ってきたということらしい。
 彼が目を覚ましたのに気付いたのか、勢いよく抱き着いてくる影があった。ソハヤのものだった。



「あ、目を覚ましましたね」
「きょうだいぃぃぃ!!!俺、本当に心配したんだぞ!!友達助けるためとはいえ命をかけるようなことをしやがって!」
「…………」



 そうだ。共に戦っていた他の刀剣男士はどうなった。思わず周りを見渡してみると、せかせかと自分達を看病している信濃、ノボリ、オービュロンの姿が目に入ってきた。
 手入れ部屋の扉はすべて開いており、そこに並べられた布団には、今まで共に戦っていた刀剣男士が傷ついた姿をしながらも眠っている。皆、彼らの治療を受けていたようだった。
 大典太はその姿に思わずホッと胸を撫でおろす。そんな彼の様子を見たのか、ソハヤはしかめっ面になって"こんな時でも他人の心配かよ!兄弟は変わらねぇなぁ!"と悪態をついたのだった。



「光世さん。お目覚めのようでよかったです」
「……主」
「何とか全振の破壊は免れました。皆さんも今はゆっくりと休まれています」



 自分達が誰一人折れず助かったのはいいが、問題は鬼と化した童子切をどうするかだった。あの鬼があのまま屋敷内に残っているとは考えにくい。どこか街のような場所に現れれば、邪気と霊力ですべてを破壊しつくされかねない。
 その顔でソハヤも大典太の考えていることを読み取ったのか、悲しそうな顔をしてこう口にしたのだった。



「話は全部サクヤから聞いた。童子切が……鬼になっちまったんだってな」
「…………」



 その言葉に、大典太は黙ってうなずく。鬼になるほどにアンラの邪気が童子切の霊力と混じり合ってしまっていた。しかし、アンラの力に覆われる前。もし、自分が童子切のことを庇っていたら、彼は鬼にならなかったかもしれない。
 大典太の心の奥底には、大きな後悔が押し寄せていた。しかし、過ぎてしまったことを今更考えても仕方がない。今は、童子切をどうにかしなければ――最悪、世界が滅びてしまう。自分達が止めなくてはいけなかった。



「童子切さん……どうすれば助けられるの? もう倒すしかないの?」
「鬼になったのだとしたら、斬るしかないだろ」
「鬼丸……」



 信濃のしょんぼりとした言葉に、聞き覚えのある声が木霊する。その方向に顔を向けてみると、鬼丸が起き上がって静かにそう返していた。
 もう大丈夫なのかと声をかけると、鬼丸は静かに頷いた。おそらく、サクヤと契約した刀だからこそ回復が早かったのだろうと彼は推測していた。その証拠に、前田は既に歩けるまでに回復しており、オービュロンに看病の手伝いを申し入れていたのが見えた。却下されているのを見るに、彼もまだ完治しているわけではなさそうだった。



「しかし、大典太さんでも解呪が不可能となると……"一度鬼を倒し、童子切さんと邪気を無理やり引きはがす"しか方法がありません」
「……そう、なるのか。やはり、あいつを倒さねば童子切は救えないのか」
「主。大典太がおれに使ったあの御守りは、おれがまだ刀剣男士の姿を保っていたから使えた代物だった。そう考えて異論はないな」
「はい。鬼と化してしまった童子切さんには、それが通用いたしません」



 童子切を助けるためには、彼にくすぶる邪気を何とかしなければならない。しかし、そうするためにはまず"鬼"を倒し、童子切と分離して引きはがさなければならないことをサクヤは口にした。
 どちらにせよ、鬼と化した童子切との戦闘は避けられない。彼が"普通の童子切安綱"ではない以上、自分達が決着をつけねばならない問題だった。



「であれば、やるしかあるまい。邪気を祓い、その中から童子切を奪還する!」
「簡単に言ってくれるな大包平よ。しかし、俺達がやらねばならんことも事実。あいつは"普通の童子切安綱"ではないのでな」
「えぇ。我々でなんとかせねば、世界にも影響を及ぼしてしまいます」



 しかし、その戦いに備えるためには今は休息が必要。ぴしゃりと言い放った数珠丸の言葉で、大包平も静かになり布団をかぶる。三日月は"甘味が食べたい"とのほほんと口にし、数珠丸にやんわりと突っ込まれていた。
 そんなやりとりを優しく見守るサクヤに、大典太は申し訳なさを感じていた。自分達が助かったのは、彼女の力があってこそ。アンラから身を隠す為にこの神域に籠っているが、彼女はそれを破ってでも自分達を助けに来た。
 それが原因で、アンラに再び狙われるのではないかと大典太は不安でならなかった。



「……主。あんたは外に出られないのに、俺達の為に無理をして……。本当に、すまない」
「いいえ、いいのです。こうして皆さんが戻ってきてくださることが一番大事なのですから」



 ふと、大典太の言葉にひっかかりを鬼丸は覚えた。それを聞こうと動くも、寸のところでやめた。
 彼が申し訳なさそうにしている表情をしているのもそうだが、それとはもう1つ。彼が"何かを隠している"ことに気づいたからである。しかし、それを聞くのは今ではない。
 そう判断を下し、鬼丸も静かに布団をかぶり、眠りについたのだった。

Ep.04-1【天下五剣が集うとき】 ( No.173 )
日時: 2025/09/12 23:28
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 童子切が鬼と化して一晩が経った。
 彼の攻撃により戦闘不能となった六振も、周りの献身な介護のお陰で手入れも滞りなく行われ、翌朝には全振元の元気な姿に戻っていた。
 改めて童子切を助けるために話し合いを行おうとしていた矢先、エントランスで慌てたようにラルゴが町長室から出てきた。
 焦った様子に思わずオービュロンと信濃が問いかける。



「町長さん。慌てた様子だけど一体どうしたの?」
「どうしたもこうしわもないわよ!ねぇ、ニュース見た?」
「にゅーす、デスカ?」
「そう、ニュースよ!ついさっき報道されたんだけどね、なんか鬼みたいなのがこの街に近付いてきているみたいなの!」
「――えっ?!」



 慌てた様子のラルゴは、驚いて言葉を失っている1人と一振のために、近くにあるリモコンを取りテレビの電源をつける。
 そこに映っていたのは、昨日天下五剣と大包平、前田が助けに行った童子切が鬼と化した姿だった。鬼は周りの木々を破壊し、何かを求めて進んでいるのが分かる。
 あの森はこの国の近くにある森だったはずだ。そこで、信濃は気付く。ラルゴの言う通り、鬼がこの街に近付いてきているのではないかと。



「モシカシテ、"どーじぎり"サン?」
「まさか、大典太さん達を追ってきたわけじゃないよね? 早く知らせなきゃ!」



 話を理解できず、首を傾げているラルゴに"教えてくれてありがとう"と一礼をし、彼らはそのことをサクヤ達に知らせるため神域へと急ぐ。
 神域へとたどり着くと、サクヤが神妙な表情で彼らを迎え入れるのが分かった。その顔つきから、鬼が王国に近付いて来るのを知っているようだった。
 "知ってるかもしれないけど"と前置きをし、ラルゴに教えてもらったこと、ニュースで見たことをそのままサクヤに話す。すると、彼女は更に困ったような表情になった。



「まずいことになりましたね……。もしかしたら本能で、皆さんを追ってここまで来ているのかもしれません」
「わたくしも先程、スマホロトムのニュース記事にて確認いたしました。仮に城下町にまで入って来てしまった場合、被害は相当なものになるでしょう」
「残された猶予は多くない、か」



 王国に被害が出る前に、早く童子切を止めねばならない。しかし、六振で行っても昨日のように反撃を喰らってしまっては意味がない。
 どうすべきかと悩む一同に、大包平が声を上げる。"俺達だけで駄目ならば、街中にいる刀剣男士を全て派遣してでも童子切を止めねばならん"と。
 出来るだけ事情を知っている自分達だけでことを収めたかったが、一度倒れている以上なりふり構ってはいられなかった。大包平の提案に否を唱える者は、誰もいなかった。


 もたもたしている間に鬼は王国内へと入って来てしまう。その前に、決着を付けねばならない。
 待機していた刀剣男士達は急いで準備をし、神域から出て行った。それに続くように大典太も出ようとすると、サクヤに止められる。



「……主。どうした」
「光世さん。これを」



 サクヤは自らの力を凝縮させ、青く光るカンテラのようなものを大典太に渡した。
 手に取ってみると、ほんのりと暖かい、柔らかな力が大典太に伝わってくる。サクヤの神力で出来たものだと彼は理解した。
 それにしても、何故カンテラなのだろう。思わず尋ねてみると、彼女は静かにこう答えたのだった。



「童子切さんの邪気は相当なものです。彼と鬼――邪気を引き剥がす際、邪気が街の中に流れ込むのをこれで防いでください。このカンテラは私の力で出来ていますので、すべての邪気を吸い込むことが出来るでしょう」
「……分かった。感謝する、主」
「光世さん。皆さん。ご武運を祈っております。必ず童子切さんを連れて、皆無事に帰ってきてください」
「……あぁ。昨日のような失態は起こさない。必ず童子切を助けて帰ってくるさ」



 それに続くように、ネズがスマホロトムでニュースの中継を見せる。鬼は、話している間にもどんどんリレイン王国へ近付いていた。
 このままでは、街が破壊されてしまうのも時間の問題。残された猶予はあまりないのだった。



「……では、行ってくる」



 その言葉を最後に、大典太は神域を後にした。
 道中にソハヤ、小狐丸、燭台切、博多にも声をかけ、鬼の元へ向かうことにした。彼らは事情を汲んだ後、自分も戦線に入れてほしいと自ら志願してきた。


 エントランスから外に出ると、鬼の咆哮が聞こえる。既に王国のすぐ近くに来ているのだと一行は悟った。



「三日月殿。あちらの方向から叫び声が聞こえてきていますな」
「急がなければ、街に入って来てしまうぞ。皆の者、行こうではないか」
「……あぁ。行こう」



 各々気合いを入れて、響いてきた声の方向へ駆けていくのであった。

Ep.04-1【天下五剣が集うとき】 ( No.174 )
日時: 2025/09/13 21:59
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 咆哮が耳元まで聞こえている。鬼の気配が近い、と刀剣男士一行は改めて気を引き締める。
 リレイン王国の郊外までやってくると、目線の先に、城下町にかかる門まで近付いてきている鬼の姿を発見した。このままだと、門が破壊されかねないと思った一同は、急いでいる足を更に早める。
 そのまま素早く移動し、彼らは鬼の元へ到着した。ギリギリ、門に辿り着く寸前で鬼を止められたことになる。街を凌駕するほどに巨大な鬼に、初めて対峙する刀剣男士達は各々反応を見せた。



「これは随分巨大な鬼だね……」
「こいつが兄弟を傷付けた鬼……。中に童子切が入っているとか関係ねえ、兄弟の仇討ちはここでさせてもらうぜ!」
「……兄弟、俺は折れてない」



 まるで自分が折れてしまったかのように感想を述べるソハヤに、大典太は冷静にツッコミを入れた。そんなことをしている間にも、鬼はこちらを標的と定めたのか大きく腕を振りかぶってくる。
 街に攻撃が向かないように注意しながら、彼らはその攻撃をかわし、戦闘態勢へと入った。
 鬼の狙いは先程とどめを刺し損ねた六振――ではなく、天下五剣の四振に絞られていた。まるで、彼らが誰に鍛刀されたのかを理解しているように。



「やはり狙いは我々四振ということですか。街に入らぬよう戦えば、街への被害は避けられそうですね」
「まるでおれ達の正体を知っているかのような口ぶりだな」
「見てみろ。あの二つ目が俺達を見つけた瞬間、目を見開いてこっちを見てきているのだぞ。ある程度正体を勘付かれていると見た方がいいだろうよ」
「……童子切のものなのか、鬼のものなのか分からんな」



 鬼は四振に目を向け、他の刀剣男士達には目もくれていなかった。自分達を囮にすれば、数はこちらの方が多いため優勢に立ち回れるかもしれない。そう思った大典太は、他の三振に了承を取り、自分達が囮となって攻撃を引き付けることを皆に伝えた。
 その間に他の刀剣達に攻撃をしてもらい、鬼の耐久力を削る。そうすれば、勝機も見えてくるだろう。不満の声は漏れたが、鬼と対峙している以上あまり余計な時間はかけられない。残りの刀剣男士達もその提案に了承し、鬼との戦闘に臨むことになった。



「以前のような醜態は晒しません!行きますよ、信濃、博多!」
「勿論!」
「行くばい!」



 前田の声を皮切りに、短刀三振が背後から鬼の動きを止めにかかる。
 彼らの素早い斬撃は動きの遅い鬼には効果抜群のようで、鬼に次々とダメージを与えていく。
 それに続くように、大包平、小狐丸、ソハヤ、燭台切が斬撃を繰り出した。



「俺達も続くぞ!」
「行きますよ!」
「喰らえッ!!」
「たぁっ!!」



 太刀四振の攻撃も、先に短刀達が攻撃を与えていてくれたお陰で順当に当たった。少しずつ鬼の耐久力を削っていく。
 鬼は反撃を繰り出すも、耐久力の高い太刀を中心に受け流して連携をするお陰で、以前のように一瞬で決着がつくことはなかった。
 鬼はなおも四振を品定めするように見据えており、時折舌なめずりをしている。



『クトゥルフ……チカラ……ホシイ……』



 大典太には鬼が発する言葉が引っかかっていた。なぜ、彼は自分達がクトゥルフによって鍛刀された刀だということを知っているのだろうか。
 考えている間にも鬼の攻撃は降り注ぐ。それを刀で防ぎながらも、彼はそんなことを考えていた。



「(……こいつは、あの老人の正体について勘付いているのか……?)」
「おい。敵を前にして考え事とは随分と余裕があるな、大典太」



 ふと、鬼丸が鬼の攻撃を弾き飛ばしながらそう大典太に問いかけた。
 大典太は続いてきた鬼の攻撃を受け止め、防ぎながらも小さくこう答える。



「……あいつの言っていることについて少し気になっていただけだ。すぐ戦線に戻る」
「その気になるという話、あとで聞かせてもらうからな。隠そうとしたって無駄だぞ」
「…………」



 そう鬼丸は睨みつけるように大典太を見やる。これ以上、彼に負担をかけさせないのもそうだが、今は同じ主の元で動く仲間だ。そんな彼に隠し事などしてほしくなかったのである。
 そんな鬼丸の表情を見た大典太は、思いつめたように目を伏せ、小さくため息をついたのだった。


 小さな小競り合いのようなやり取りが続く中でも、鬼の猛攻は止まらない。二振に向かって大きな牙が向けられる。
 それでも――



『遅い』



 彼ら二振の連携で、次々と攻撃が跳ね返されていく。囮を引き受けた上、攻撃が集中しているため天下五剣の四振にもかなりのダメージが入っていたが、以前のように倒れる寸前までではない。
 その間に他の刀剣が積極的に攻撃に入り、次々と鬼に斬撃を加えていく。そのダメージの蓄積もかなりのものになっており、鬼の動きが鈍くなっているのが分かった。


 それに気づいた信濃が、ありったけの声で叫ぶ。



「動きが鈍くなってる!!今がチャンスだよ!!」



 その合図を皮切りに、全員で急所をはねた。攻撃に耐えられず、鬼の両腕がボトリ、と大きな音を立てて崩れ落ちるのが分かった。
 攻撃する腕を失い、動きも鈍くなったのかそのまま膝をついてしまう鬼に、大包平は続ける。



「今が好機だ!!行けーーーッ!!!」



 彼の声により、刀剣男士全振の連携で連続攻撃が鬼に浴びせられる。腕を失った今、避ける手立てもない。
 鬼はそのまま刀剣男士達の猛攻を喰らい、再び大きな咆哮を上げた。



『クトゥルフ……チカラ……』



 斬られたところからバラバラと鬼は崩れ落ち、そこから黒色の靄が街の方に流れていく。この靄は、少し触れただけ、少し吸っただけでも精神に影響を及ぼす危険な代物だ。
 城下町の人々が避難しているとはいえ、街に靄が入ってしまったら大惨事になりかねない。



「……今、楽にしてやる」



 大典太がサクヤに貰ったカンテラを掲げ、精神を集中させる。すると、街に流れ込もうとした靄が一気にカンテラの方に吸い込まれていった。
 その強さに思わず体勢を崩すが、なんとか大典太は持ちこたえた。自分がここで膝をつけば、城下町の人々が大変な目に遭ってしまう。その思いが、彼を突き動かしていた。



「――ッ!!」
「大典太殿!」
「……大丈夫だ。あんた達は童子切を!」



 そう言い、大典太は鬼の目があった方向を見やる。そこには、黒色の靄から現れる童子切の姿があった。
 この場は自分にまかせてほしいと三日月が素早く移動し、落ちてきた童子切を抱き留めた。
 童子切は薄くではあるが息をしており、破壊は免れたということが分かった。あの鬼は童子切を取り込んでいただけだったのである。
 そのまま童子切の中に残っていた邪気も、カンテラの中に吸い込まれていく。皆でそれを見守っていると、徐々にカンテラの吸い込む力が弱まっていくのが分かった。
 全ての邪気を吸い込んだのち、カンテラは大典太の手から役目を終えて淡い光となって消えてしまったのだった。



「……終わった、か……」
「大典太!」



 安心したのか、あまりにも吸い込む力が大きかったのか、大典太はバランスを崩れ倒れかかる。それを鬼丸が支えたのだった。



「言った傍から無理をするな。おまえの悪いところだ」
「……無茶でもしなきゃ、やってられないんでな」



 鬼丸に支えてもらいながら、二振は童子切の元へ急ぐ。三日月が草むらの上に童子切を寝かせ、彼の起床を待っていた。
 しかし、彼は死んだように眠るのみ。起きる気配がまるでなかった。



「起きませんね」
「そりゃあ、随分と長い間邪気を注がれていたのだからなぁ。それを無理やり剝がしたのが俺達だ。魂ごと邪気に持っていかれている可能性も無きにしも非ず、だな」
「ヘラヘラとした言動で不安を煽るな!!」



 へらりと大包平の突っ込みも交わした三日月だったが、確かに彼の言うことは一理あると一同も思っていた。魂ごと邪気に持っていかれている場合、この身体はただの抜け殻と化してしまう。刀の付喪神が消えても刀は存在できるのではないか、という疑問については置いておいてもだ。
 しばらく童子切を見守っていた矢先だった。微かに童子切の瞼が動いたような気がしたのだ。



「童子切?!」
「……ここ、は……」
「起きたばい!」



 童子切が目覚めた。彼の魂は消えていなかったのだ。きょとんとしている童子切をよそに、彼の目覚めを喜ぶ一同。
 そして、彼に理解できるよう言葉をかみ砕いて数珠丸は今の状況を説明した。彼が鬼にされていたこと、自分達が今までずっと鬼と戦っていたこと、そして鬼から童子切を引き剥がし、今ここに彼はいるということ。
 しかし、童子切の放った一言によって、和気藹々としていた場は一気に凍り付いてしまうのだった。

















『童子切……。それが、わたしの名、なのか』



 童子切は何も覚えていなかった。自分が鬼にされたことも、今まで彼らと死闘を繰り広げていたことも。逸話も、自分の名も――。
 それは、周りが自分のことを"童子切"と呼ぶので、かろうじて自分の名前はわかるという程であった。



「ね、ねぇ。もしかして邪気と一緒に記憶まで吸っちゃったとかないよね?!」
「それが一番可能性として考えられるな。俺達が最初に童子切を発見した時には、既に記憶を失っていたからなぁ」
「そ、そんな……」



 記憶がない。逸話がない。それでは、彼は一体何なのだろう。"刀剣男士"と呼べるのだろうか?
 一同の頭の中にそんなことが浮かぶ。しかし、姿形は三日月達と共に時の蔵で過ごした"童子切安綱"そのものである。
 凍り付いた空気を沈黙が包む。そんな中、大典太が静かにそれを打ち破った。



「……とりあえず、今は童子切を神域に連れて行くのが先だ。記憶のことについても……主に相談してみよう」
「そう、そうですね!今ここで落ち込んでいても何も進みませんし!」
「それに、さっきまで戦っていたからね。僕達も神域の手入れ部屋を使わせてもらってもいいかい? 刀剣男士であれば、神域には出入り出来るんだろう?」
「……構わない。事情が事情だからな。許可してくれるさ」



 今やるべきことは落ち込むことではなく、主に童子切を奪還したことを報告することだ、と大典太は静かに言い放った。
 それを咎める者は誰もおらず、未だに不思議そうに皆を見つめる童子切を連れて神域へと戻っていったのだった。

Ep.04-1【天下五剣が集うとき】 ( No.175 )
日時: 2025/09/14 22:06
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 神域に戻った一同は、早速童子切を奪還したことをサクヤに報告するため、彼女に話しかけた。
 残っていた一行も、見慣れない物静かな雰囲気の白い髪の男性がいることに気付き、彼が"童子切安綱"なのだということを理解した。



「オー!アナタが"どーじぎりやすつな"サンデスカ?」
「こいつは」
「……じっと見つめなくていい。信濃の主だ」
「ワ、ワタシヤッパリ食べらレテシマウノデスカ?!」
「大丈夫だって大将!童子切さんはいい人だから!……多分」
「ソコは確定シテクダサイヨ?!」



 オービュロンとの謎のやり取りを繰り広げる中、大典太は一行に一度手入れ部屋で回復していてほしいと頼んだ。その間に童子切の報告を済ませ、自分の手入れも開始する算段だった。
 しかし、それに鬼丸が待ったをかけた。どうやら自分も残って話をするらしい。この目的以外に興味を感じない無口な刀に何が出来る、と大典太は思ったが、それが目に現れていたらしく鬼丸にキッと睨まれた。戦闘中に話したあの件が、ずっと彼の中でくすぶっているのだろう。


 大典太の提案に乗っかり、彼と鬼丸、童子切以外の刀は各々手入れ部屋に姿を消す。
 彼らを見守ったのち、大典太は鬼丸と共にサクヤに向き直り、童子切のことを話し始めたのだった。



「まずは童子切さんの奪還、お疲れ様でした。皆、無事に帰ってきてくださって安心しております」
「……まぁ、俺達"は"無事に帰還できたな」
「どうしたのですか光世さん。何か気になることでも?」
「……あぁ。実は――」



 不思議そうに首を傾げるサクヤに、大典太は今の童子切がどんな状態なのかを話した。逸話も、記憶もない。形としての"童子切安綱"がここにいることを。
 童子切を発見した時に、既に記憶は失われていたこと。そして、鬼に変化した童子切を倒した時の記憶でさえも、彼は失っていたということを事細かに口にした。
 サクヤはその話を聞き、しばらく唸った後"邪気の影響ではないか"と答える。鬼丸よりも邪気の影響が長かった分、記憶や逸話にまで影響が出た。邪気にそれが混ざり合った結果、カンテラが吸い込んだ際に一緒に吸い込まれてしまったのではないか、と。それは、三日月が可能性として上げたものと一致していた。



「三日月の言ったとおりだな」
「……邪気が記憶や逸話にも影響を及ぼした、んだな」
「…………」



 ただし、それは童子切に邪気が混ざり合っていた時の話。彼にまとわりついていた邪気は既にカンテラと共に光となって消えている。
 今の童子切にそれ以上の被害は襲ってこないだろうともサクヤは推測し、彼らに話したのだった。
 そのことを聞き、ひとまず安堵のため息をつく大典太。話しながらも、童子切のことについて気が気でなかったのだ。
 そして、これから決めることが1つ。"童子切はこれからどうするのか"ということだった。



「……童子切。あんたこれからどうするんだ」
「わたしには、記憶がない。やれることも、行く場所も、思い当たらない……」



 試しに童子切にどうするのか聞いてみると、"自分はなにもわからないから行く場所がない"と、微かにしょんぼりした顔で呟いた。もし記憶があったとしても、返ってくる答えは同じだろう。自分達は、霊力が高すぎるがゆえに"捨てられた"刀剣なのだから。
 何とかできないかと大典太も悩む。そんな中、彼女は静かに顔を上げて童子切にこう言い放ったのだった。



「童子切さん。記憶が戻るまででいいので、私の元で働きませんか?」
「主!」



 なんと、サクヤは"しばらく自分の元で働かないか"と提案をしてきたのである。それすなわち、童子切を"自分の刀剣"として迎え入れるということだった。
 自分達には遠回しに"新しい主を探せ"と言っておきながら、童子切にはこの発言である。いたたまれなくなり、思わず鬼丸が声を上げた。しかし、サクヤの考えることが覆ることはなかった。



「わかっています。ですが、行き場のないところに記憶喪失の刀剣男士を放置するのはあまりにもかわいそうではありませんか?」
「……まぁ、確かにそうだが」
「よいのではないか~?」



 しかし、童子切もサクヤの刀になるということは、サクヤの負担がこれ以上に増えるということでもある。彼女の力が弱まっているのを知っている大典太は、納得しながらもその答えに"是"を出せずにいた。
 そんな中、扉の向こうから緩やかな声が聞こえてくる。手入れが終わった三日月のものだった。共に数珠丸も現れ、彼らを説得しにかかった。



「大典太殿が何に悩んでいるのかは知りかねます。しかし、現状大典太殿と鬼丸殿は青龍殿の刀となっているのです。神である彼女であれば、心配なさらずとももう一振と契約する余裕はあるのでは?」
「しかし、だな」
「大典太も鬼丸も余計なことを心配しすぎだ。主を信頼していないのか?」
「……そんなことはない!はぁ……。まぁ、いいか。最終的に決めるのは童子切だからな」
「大典太!」
「……それに、俺も主と意見は一緒だよ。今の童子切をどこか知らない場所においておくのは危険すぎる」
「わたし、は……」



 最終的に決めるのは童子切だ、と大典太はそう結論付けた。他責思考だと思われるかもしれないが、記憶喪失で右も左もわからない彼をこのまま放置しておくわけにはいかないことも事実。であれば、ここで自分達と一緒にいた方がいいのではないか。そうとも思い始めていた。
 大典太に改めて"どうするんだ"と問いかけられた童子切は、顔を伏せて考える。自分はどうすべきなのかと。


 そして、顔を上げた彼はサクヤの元に自分の本体を召喚し、置いたのだった。



「童子切さん?」
「わたしを知っている者と一緒にいれば、記憶も取り戻せるかもしれない。であれば……こうするのが最善だと、結論を出した」
「そうですか。――承知いたしました」
「……童子切」



 サクヤが童子切の本体を受け取ると、そのまま刀に神力を注ぐ。ほんのりと暖かな淡く青い光に包まれ、光は刀の中に入り込んだ。
 それと同時に、童子切の心にもぽかぽかと暖かいものが感じられたのだった。



「こころが、ほんのりと暖かい」
「――契約完了です。これからよろしくお願いいたしますね、童子切さん」
「よろしく頼む、青龍。記憶はないが――わたしの力、使ってほしい」



 童子切が正式にサクヤの刀となり、思わず笑顔になる三日月と数珠丸。それに対して、複雑な表情を浮かべる大典太と鬼丸。
 何はともあれ、これから一緒に行動していく同胞になったのだ。まずはそれを安堵せねば、と大典太は考えを切り替えたのであった。



「無事に契約が完了したようですね。よかったです」
「よ~し!記憶喪失とはいえ、やっと天下五剣が揃ったというものだ。盛大に宴でも開くとするか」
「良い提案だとは思いますが、三日月殿。まずは大典太殿と鬼丸殿の手入れが先です」
「おっとそうだった。大半の奴らの手入れは終わっているだろうから、存分に休んでくるといい。俺達も童子切と話したいことがたんまりあるのでなぁ。はっはっは」



 そういいながら童子切の肩にぽん、と手をのせる三日月。どうやら、宴をやりたいというのは本気のようだった。そんな彼の言葉に乗せられたのか、サクヤも"そうであればお料理を手配してもらわねば"と乗り気になってしまっている。
 のほほんと大事なことを言ってのける三日月に、大典太と鬼丸は呆れることしかできなかった。



「……三日月の言ったことは本気にしなくていいからな、主」
「何を言う。せっかく五振揃ったのだ、宴が駄目なら縁側で菓子でも嗜もうではないか」
「本来の目的はそれか。この甘党め」



 そう二振は言い残し、手入れ部屋へと入っていった。
 それと同時に次々と手入れが終わった刀剣が童子切の元に訪れる。皆、新しい同胞と話がしたいようだった。
 揉まれつつも暖かな気持ちに囲まれた童子切は、無表情ながらも会話についていったのだった。

Ep.04-1【天下五剣が集うとき】 ( No.176 )
日時: 2025/09/15 22:15
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)

 童子切とひとしきり話した後、一同は解散することになった。神域から外に出る彼らを見送り、残った一同も各々やるべきことをやるのだった。
 そんなことをしているうちに夜も更け、明日に備えて皆は寝静まっていた。そんな中、布団からもぞもぞと出てきて部屋へとやってくる影が一振。童子切だった。
 今に至るまで彼を取り巻く状況は目まぐるしく変わっていったが、そのどれもを覚えていない。考え込んで、考え込んで、眠れず目を覚ましてしまっていたのだった。
 他人を起こさぬよう静かにその場を去り、縁側へと座る童子切。彼を優しく月が照らしている。吹き抜ける風が心地よい。童子切は月を見上げながら、そんなことを考えていた。


 ――しばらくそのまま静かに過ごしていると、彼の背後にぬっと影のようにあらわれる人物がいた。その影はのそり、と童子切の傍に現れ"……隣、いいか?"と呟いた。月明かりがその人物を照らす。正体は、大典太だった。
 彼も夜中に目を覚ましてしまい、寝ているはずの童子切が布団にいないため心配して部屋にやってきたのだという。
 童子切が隣に座ることを了承すると、彼は小さく礼を言ったのち空いている縁側に腰掛けるのだった。



「……不安だとは思うが、ここにはお人好しな連中がたんまりいるんでな……。あまり、心配しなくてもいい」



 ふと、大典太はそんなことを言う。童子切を心配してのものだった。彼も、記憶を失ってここに保護された以上心配していないはずがなかったのだ。
 しかし、雰囲気から後ろ向きな刀だと勝手に思っていた男からそんなことが口から飛び出るとは露にも思っておらず、童子切は目を丸くして驚いていた。



「……どうした」
「おまえは……もう少し陰気な刀だと勝手に思っていた」
「…………。どうせ俺は他人と碌に話も出来ない陰気な刀だよ」



 童子切にまで"陰気だ"と言われ、思わずいつもの自虐を行ってしまう大典太。もう癖のようなものであった。童子切はその言葉に懐かしさを覚えるも、その懐かしさが具体的に何かを思い出すことはなかった。
 しかし、今の大典太は陰気な刀ではない。自分が保護されてから観察していたが、サクヤの近侍として刀達の中心に立ち、主命をしっかりと果たしていた。控えめではあるが、陰気などではなかった。
 童子切が自分の気持ちを正直に伝えると、大典太は驚いたのち安心したように目尻を下げたのだった。



「わたしには記憶がない。だが、魂が共鳴しているのは分かる。ここにいる天下五剣は、きっと昔から何らかの繋がりを持ち、つるんでいたのだろう」
「……そうだな。記憶を失っているあんたには、思い出さなくてもいいことだが」
「だから、大典太があの青龍と出会って、変わったことは記憶が無くても分かる」
「……俺が変わったんじゃない。俺の周りの奴らが、俺を変えてくれただけだよ」



 自分も、記憶が戻ったら変われるだろうか。ふと、童子切がそんなことを漏らす。右も左も全く分からない今の彼の状態では、周りにあるもの全てが不安要素になるのは当然のことだった。
 そんな彼の背中を優しくさすりながら大典太は呟く。"今は無理に変わる必要は無い。変わるきっかけは、時間が解決してくれる時もある"と。
 童子切は大典太の優しさに、少しだけ心が暖かくなるのを感じたのだった。


 そのまま静かに月を見ながら話を続けていると、再び二振の後ろにぬっと現れる影が見えた。
 思わず後ろを振り向いてみると、そこにいたのは酒瓶を持った鬼丸の姿だった。どうやら、彼も大典太と同じように目を覚ましてしまい、二振が布団の中にいなかったために気になって出てきたのだという。
 しかし、大典太とは違いご丁寧に酒瓶とお猪口まで持ってきている。大典太はジト目で彼を見やりつつ、何をしに来たんだと冷静に問いかけた。



「……何しに来たんだ」
「何でもいいだろう。おまえ達が布団の中にいないから酒を持ってきただけだ。妖物斬りとして、おまえ達には共通意識がないわけではないからな」
「その逸話が、わたしにはわからないが。それでもいいのか」
「それでもいい。おれの我儘に付き合え」



 そう言い、鬼丸は大典太の隣にでんと座った。流石本霊が御物だというべきなのか、大胆ながらもその動きには気品があるのだと童子切には感じられた。
 持ってきた酒をお猪口に入れ、ちびちびと飲み始める。そんな彼の様子を見て、大典太は不貞腐れたようにこう言った。



「……おい、俺の分は」
「自分でやれ」
「……ケチ」



 軽口を言い合いながらも、鬼丸が持ってきたお猪口を二口借り、自分の分と童子切の分の酒をお猪口に注ぎ、童子切に渡す。そのまま、彼はぐいっと一気に飲み干した。童子切もそれに倣い、酒を少しずつ口にし始めたのだった。この静かな夜に似合いそうな、甘めの味わいの酒だった。
 "高い酒だ"。大典太の向こうからストレートな物言いが聞こえてくる。そんなのお構いなしに二杯目を注ごうとしていた大典太は、"別にいいだろ。皆で飲む為に持ってきたんだろう"と、鬼丸から酒瓶を奪い取りお猪口に酒を注ぎ入れたのだった。


 記憶を無くした刀剣と、元々喋るのが得意ではない刀剣。彼らが集まったとて、話が進むわけではない。悪態をついた後に、会話が続くことはなかった。
 そのまま無言で酒を飲み続けていると、ふと鬼丸が大典太に疑問に思っていることを問いかけた。先程、戦闘中で起きた会話の続きのようだった。



「大典太。おれ達は一体何なんだ」
「…………」
「答えられない、ことなのか? わたしも気になっている」



 童子切もその話は気になっているようだった。記憶はなくとも、本能で自分にあったことを知りたがっていた。
 二振に両側から聞かれては無言を貫くわけにもいかない。大典太は諦めたように他言無用だと強く言ったのち、以前サクヤに言われたこと――自分達がクトゥルフに鍛刀された刀剣だということを話した。



「クトゥルフに鍛刀された刀剣、ね。おれ達の霊力が異常に強いのもそれが原因か」
「……あぁ、そうだよ。もし悪神の側がクトゥルフの力を狙っているとなれば、俺達を我が物にしようとしている理屈は分かるな」



 それと、と大典太は思い出したようにネズとチューンストリートに行った帰りに見た幻覚の話も彼らにするのだった。あの、自分達を助けてくれた老人。その正体が、クトゥルフなのではないか、と。
 その話を聞いた鬼丸は信じられないような表情をしており、童子切は話が分からず首を傾げていた。



「あの老人がクトゥルフ本人かもしれない、だと?」
「……あぁ。確証は得られんが、確かにそう言っていた」
「何故おれ達を鍛刀しておきながら、おれ達を捨てて逃げるようなことをして――挙句の果てに、助けるような真似をしたんだろうな。おれにはさっぱりわからん」
「その、クトゥルフというのも……本当に善意だけでわたし達を鍛刀したのだろうか」



 話せば話すほど疑問は増えていった。本当に彼らに話してよかったのだろうか。大典太は少しの後悔に苛まれた。そんな彼を、鬼丸は気にするなとでもいうようにじっと見つめてきた。
 確かに話せとせがんできたのは彼らである。疑問が増えたとはいえ、やったことは返ってこない。大典太はそう考えを切り替え、また酒を口に含むのだった。



「おまえが黙っていた理由は分かった。納得はしていないがな」
「……黙っていたことは悪かった」



 大典太がしゅんとなって呟くと、彼は満足そうにフン、と鼻を鳴らしたのだった。



「とにかく、だ。今回分かったことは、あの悪神もクトゥルフとやらもおれ達を狙っているということだ。五振揃った今、あいつらが何を仕掛けてきてもおかしくはないな」
「……あぁ。そうだな。俺達も気を引き締めんとな」
「だが、わたし達に出来ることも限られている。わたしは……この世界を守るため、出来ることをやろうと思う」
「……今はそれでいいと、俺も思うよ」



 アンラも、クトゥルフも。何故自分達を狙っているのかが分からない。しかし、今自分達に出来ることは限られている。であれば、出来ることを少しずつやっていこうと、彼らの中で結論がついた。
 その後、月を見ながら三振は眠くなるまで話し込んだのだった。




 Ep.04-1 【天下五剣が集うとき】 END.


 to be continued…