二次創作小説(新・総合)
- Ep.04s-1 【月と超高校級の来訪】 ( No.177 )
- 日時: 2025/09/18 21:53
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
童子切の奪還から5日が経過した。彼も少しずつ議事堂の仕事に慣れてきて、簡単な仕事や荷物運びなど自分に出来ることを積極的にこなしていっていた。この調子であれば、記憶を取り戻すのもそう遠くない話だろうと一同は思っていた。
そんな最中の出来事であった。仕事が一息つき、ラルゴと大典太、鬼丸、童子切、前田が穏やかに会話を繰り広げているところに、足音が2つ聞こえてくるのが分かった。
その方向に目を向けてみると、やってきていたのは石丸と三日月だった。石丸はこちらが自分達に気付いたのに気付くと、深々と一礼し、三日月はひらりと手を振った。
「こんにちは!いや、あんなことがあった手前僕も心配していたのだよ。元気そうで何よりだな!」
「石丸殿!それに三日月殿も!お元気そうで何よりです」
「そして、君が噂の童子切さんだな!僕は"石丸清多夏"、座右の銘は"質実剛健"だ!どうかよろしく頼む!」
「どうも」
石丸は童子切を見つけ、丁寧に自己紹介をする。童子切もそれに合わせ頭を下げ、お互いに握手をした。
三日月が刀剣破壊寸前まで傷付いたという連絡を受けた際、いてもたってもいられず委員長にあるまじき落ち着きのなさを見せていた、とは苗木の弁である。
三日月は彼らの様子を見てのほほんと笑っていた。
自己紹介を済ませた後、ラルゴは何をしに来たのかと石丸に問うた。彼が通っている希望ヶ峰学園からの連絡はなにもない。ということはつまり、彼は個人的な用事でここに来たのだということが分かる。
尋ねられた石丸は、ラルゴに改めて向き直り自分がここに来た目的を口にしたのだった。
「実はだな!希望ヶ峰学園がつい先程長期休暇に入ったのだ。それを三日月くんに話したら、三日月くんが"リレイン王国に行きたい"と言い出してな。
僕もいい機会だと思い、この国に赴いたというわけなのだよ!」
「きぼうがみね、がくえん」
「……そうか、童子切はまだ知らなかったな。この終末の世界には、"学園都市"という学校が沢山集まった都市が存在している。こいつが通っている学園が、その中の1つである"希望ヶ峰学園"だ」
「学び舎、ということか」
どうやら、ここに来たのは石丸ではなく三日月の希望だったらしい。彼が単純に"リレイン王国の甘味が食べたい"などとのたまっているのであれば、単身赴いてハスノの店にでも世話になればいい話である。
しかし、今回はそうではないと彼らは見抜いていた。何故石丸をも巻き込んでこの国に来たかったのかと三日月に尋ねると、彼は静かに頷いてこう答えたのだった。
「童子切が記憶を失っているとはいえ、天下五剣が折角揃ったというもの。今後のことも考え、休みに入った主と共にこの街でしばらく過ごしてみようかと考えたまでだ」
「この国には遊びに来たのではない。僕自身としては、"課外学習"としてリレイン王国の文化や歴史、成り立ちなんかを学びに来たという訳だ」
「……あんた、休みの時まで勉強のことを考えているんだな」
「学生に休みはあれど学びに休みはないからな!はっはっは!」
三日月は童子切がサクヤの刀になったことといい、数珠丸も頻繁にここに訪れていることといい、近々自分もそちらに行かねばならないと薄々感じていたらしい。
また、石丸もリレイン王国の文化や歴史を学びたいと施策していたことがわかり、利害が一致し共にリレイン王国までやって来たのだった。
三日月、石丸双方の言葉を聞き、大典太は考える素振りを見せて石丸にこう呟いた。
「……だったら、町長の手伝いを積極的にしてみたらどうだ。あの場にいると、色々と学ぶことも多いんでな……」
「あら!それはこっちとしては大助かりだけど……本当にいいのかしら?」
「勿論です!ラルゴ町長の元で、色々学ばせていただきたいと思っています!」
大典太の提案に石丸も頷き、ラルゴも彼が張り切っている元気を貰いなんだか話している時よりも溌溂としていた。早速石丸の部屋を手配しなくては、とラルゴは意気揚々にその場を後にし、町長室へ向かって行った。
そんな中、三日月もこれからのことを一同に話す。どうやら、石丸と同部屋で休むことはしないらしい。
「ということで、俺はしばらく神域で世話になるぞ。よろしく頼む」
「おい、聞いていないぞ」
「今喋ったからな」
「……あんたなぁ」
鬼丸と大典太のツッコミもものともせず、三日月はこれから神域でしばらく過ごすと言ってのけた。童子切は無言で三日月のことをじっと見やり、前田は嬉しそうに"これからは三日月殿とも一緒なのですね!"とはしゃいでいる。
そんな二振と共に神域まで移動し始めてしまったマイペースな三日月をよそに、取り残された1人と二振は苦笑いをすることしかできなかった。
「すまない。三日月くんは普段はとても頼りになるが、たまに突拍子もないことをしでかすからな」
「……ある意味、主があんたでよかったと俺は思っているよ」
るんるんといった雰囲気を見送りながら、鬼丸は盛大にため息を吐いた。
それと同時に、石丸はラルゴに話をつけねばならない事情を思い出した。これ以上彼を待たせてはいけない、と二振に深く一礼をし、町長室の方まで歩いて行ったのだった。
「……また、賑やかになりそうだな」
「喧しいのは御免だ」
そんな彼の背中を見守りながら、くすりと笑う大典太。鬼丸は何が面白いんだ、と静かに首を横に振ったのだった。
Ep.04s-1 【月と超高校級の来訪】 END.