二次創作小説(新・総合)
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.178 )
- 日時: 2025/09/22 21:50
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
――ここは、東の大陸にあるとある砂漠。その中に荒れ果てたショッピングモールが点在しており、地下で夜な夜な怪しい実験を行っているという噂が東の大陸の人々の中で蔓延っていた。
今日もまた1人、実験の犠牲となる一般人が襲われた。その実験を率いている老人は、部下に辛辣な言葉を吐く。腰を曲げ、杖をつき、いかにも不健康そうな老人であった。
「おい、実験台の用意はできておるのか!」
ヒィ、という悲鳴と共に部下は実験台として連れてきた1人の男性を連れてくる。リュックをしょっていることから、彼は旅人なのだということが分かる。旅人は縄で縛られており、身動きが取れなかった。そのまま部下が男性を引きずり老人の目の前まで連れてくる。
旅人は恐怖のあまり自我を失っており、"助けてくれえ" "帰してくれえ"とのたうち回っていた。老人はその旅人の必死の訴えが鬱陶しかったらしく、自らの持っている杖で男性の胸元を強くついた。その衝撃で男性はえづき、咳込む。その様子を見て、老人はあくどい笑みを浮かべた。
「や、やめてくれぇ!俺が何をしたってんだ!」
「うるさい!このワシの実験に参加させてやっているのだから有難く思え!」
なおもわめく男性に再び杖を突き、男性を傷つける。一方的な暴力が続き、ついに男性は目から光をなくし、動かなくなった。やりすぎたか、と老人は焦り、部下に男性が生きているかどうかの確認を押し付けた。部下は震えながらも男性の肩を叩く。男性の震えた反応があったため、まだかろうじて息はあるのだろうということが分かった。
それを老人に伝えると、彼は満足そうに懐から注射のようなものを取り出した。針の先端が男性に向けられるも、男性は杖で殴られた代償が強く反応がない。
それをよしとしたのか、老人は動かない男性の首元にその注射を打った。
『う……うぐぉ……ウォオォオォオォオォ!!!!!』
「ひっ……!!」
突如、何の反応も示していなかった男性が突然苦しみだし、黒い靄のようなもので覆われる。そのまま靄は男性の全身を包み、覆ってしまった。
次に現れたのは、獣のような姿の魔物だった。魔物はそのまま縛られていた縄を引きちぎり、所構わず暴走を始める。
「ふぉっふぉっふぉ。アンラ様からいただいた刀剣の邪気は実に素晴らしい!しかし、まだ意識のコントロールが出来ておらんようだ。研究を更に進めなければな」
『グォオォオォオォオォァアァアァ!!!!!』
「こ、このままだと殺される!ひ、ひーーーっ!!!」
魔物と化した男性を見て、満足そうに笑う老人。それとは対照的に、我先にと部下は魔物から遠ざかり、逃げて行った。逃げられなかった部下が魔物に襲われ倒れるも、老人は気にするそぶりも見せなかった。
しばらく魔物が暴れている間に、その場に残っているのは老人だけになっていた。自分に向けられた攻撃をひょいとかわし、老人は苛ついたような表情でこう呟いた。
「ええい役に立たん奴らめ!まぁよい。またあの学術都市から報酬と脅しを使って連れてくればいいだけのこと。それよりも、じゃ!あの邪気をもっと強める方法を探さんとのぉ。ふぉっふぉっふぉ!」
老人はそのまま扉の向こうへと姿を消し、そこに残ったのは魔物だけとなっていた。魔物は再び周りを攻撃しながら、どこか遠くに走って行ってしまったのだった。
そして、老人が研究に使用している部屋。机の上に本と共に並べられたカプセルの1つ。その中に、邪気を纏った短刀が入れられていた。短刀は、カプセルの中から邪気をまき散らしていたのだった……。