二次創作小説(新・総合)
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.179 )
- 日時: 2025/09/23 21:59
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
議事堂にも、秋の香りが舞い降りてきた。城下町の木々は色めき、過ごしやすい季節がやってくる。心地よい風が吹き抜ける中で、今日も議事堂ではせかせかと働くラルゴの姿があった。
彼を取り囲むように小狐丸が何か手伝いはないかと話しており、それを見ている影が2つあった。今剣と厚だった。彼らは以前審神者会合の時にジェシカに邪気により精神汚染を施されており、つい先日まで時の政府による検査を受けていたのである。結果、異常がないと判断され、無事リレイン王国へやってくることができたのであった。
リレイン王国にやってきた彼らはまず大典太達にお礼と挨拶をしようと町人に彼らがどこにいるか聞いた結果、この議事堂にいると聞きつけ二振一緒にやってきたというわけである。
ラルゴと小狐丸に"少し待っていればすぐ来てくれる"と言われ、大人しくエントランスにある椅子に座って待っていると、目的の人物が右の通路を通ってやってくるのがわかった。
彼らは二振に気付いたのち、驚いたように顔を見合わせ二振の元へ近づく。二振も嬉しそうに彼らの元へ駆け寄ったのだった。
「……あんた達、来ていたのか」
「はい。このまちのひとにきいたけっか、ここにおおでんたさんたちがいるときいたのでやってきました!」
「改めて、オレ達を助けてくれてありがとな!」
「礼を言われるようなことは何もしていない。が、無事に助かってよかったな」
二振――今剣と厚は改めて大典太達に礼を言う。彼らが誰なのかと童子切に問われたため、前田が彼らの紹介を簡単に行った。
向かって左側にいる天狗のような少年の名は"今剣"。南北朝時代から室町時代に成立した軍記物語"義経記"に登場する伝説の短刀に宿る付喪神である。
反対に、右側にいる前田、信濃と同じような服を着た黒い髪の少年の名は"厚藤四郎"。短刀の中では鎧通しに分類される短刀であり、彼もまた藤四郎兄弟の一振である。
前田の紹介と共に、彼らも童子切を見て自己紹介を行った。童子切もそれに合わせ自分の名を告げる。その名を聞いて、二振は首を傾げたのち何かを理解したように大典太に進言した。
「ぼくたちがいなかったあいだにいろいろとあったみたいですね?」
「オレ達が助かってからずいぶん時間が経ってるんだ。色々あってもおかしくないだろ!」
「……間違ってはいない。童子切もあんた達と一緒で、つい最近まで悪神の邪気に襲われていた被害者だ」
「なるほどー。ぼくたちといっしょだったというわけですね!」
「そう、なのかもしれない」
「で、だ。おまえ達はこれからこの国でどうするつもりなんだ」
童子切の境遇に納得した二振に、鬼丸は"これからどうするつもりなんだ"と彼らに問いかける。鬼丸には、彼らがただ礼を言いに来たのではないと見抜いていたのだ。そんな彼らは彼の問いかけに対し、お互いに顔を見合わせたのち"町長の手伝いをしていこうかと思っている"と言ったのだった。これもラルゴからの提案だったらしく、国に来たはいいがどうするか迷っていた際に小狐丸に声をかけられ、事情を聞いたラルゴに"自分の手伝いをしてほしい"と言われたというのだ。彼のフットワークの軽さにも驚いた彼らだったが、手を差し伸べられたのであれば握らないわけにはいかない、と二つ返事で了承したという。
その話を聞いた三振は各々反応を見せていた。
「オレ達が手伝うって返したら、町長さんすっごく喜んでくれてたんだぜ!」
「……そうか。町長も助かるだろう。万年"人手不足"と言っていたからな」
「お人好し共め……」
二振の境遇も決まったということで、穏やかに会話を繰り広げる一同。そんな彼らの元に、ぽよぽよと歩いてくる2つの影を見つけた。
思わずその方向を見てみると、そこに現れたのはカービィとバンダナワドルディだった。普段はワープスターにて色々な場所に冒険に出かけている彼らがどうしてこんなところに現れたのだろうか。
珍しい客人だなと思い、思わず声をかける。すると、彼は元気いっぱいに挨拶をしてきたのだった。
「あ~!大包平さんのお友達がいるって本当だったんだね~!こんにちは!」
「こんにちは!お元気そうで何よりですよ!」
「……あぁ。こんにちは。――で、俺達に何か用なのか」
大包平の名前を聞き、鬼丸はむっとした表情になった。そういえば、彼はごくそつくん繋がりで面白いものが大好きだという困った趣味嗜好をもっていたということを過去に聞いたことがある。そんな彼らのストッパーを務めているのが大包平で、彼のおかげで最近の彼らの活動はなりを潜めているのだという。
何か用なのか、と声をかけると、カービィはニマっと笑ったのちに"これから一緒に冒険に出かけよう"と誘ってきた。突然の冒険の誘いに、思わず言葉を失う一同。そんな彼らにカービィは不思議そうに首を傾げていた。
「冒険、ですか?」
「うん!ボク達、これから"砂漠の華"を探しに行くんだ!"砂漠の華"はね、砂漠にしか咲かない幻の花と噂されてるんだ~!ボク、その噂がすっごく気になってて、ずっとバンワドと一緒に行きたいって思ってたんだよね!で、咲いてる場所が最近やっと判明してさ!
どうせならキミ達とも一緒に冒険したいなって思ってここまで来たんだよ!」
「へぇ。"さばくのはな"ですか!おもしろいはなですね!」
「砂漠にしか咲かない花って珍しいよな。気になるぜ!」
どうやら、カービィは"砂漠の華"という花を見る誘いをしにバンダナワドルディと共にここまでやってきたのだという。突然の申し出に短刀達はその"砂漠の華"が気になっているようで、わくわくした気持ちがあふれ出ているのがわかった。
ならば、太刀である自分達はどうすればいいのか。今日のラルゴの手伝いは小狐丸や石丸、三日月だけで十分だということはラルゴから聞いている。今日であれば彼らの冒険に付き合うことは可能だった。
しかし、それを問うてみると鬼丸は首を横に振った。流石目的以外の出来事に首を突っ込みたがらない刀である。
「おまえ達だけで行ってくればいい。おれは興味がない」
「……あんたなぁ。だが、短刀達は行きたがっているぞ」
「ならおまえがついていけばいいだろう。最も、あいつらだけでも大丈夫な気もするがな」
「"砂漠の華"……。僕はどんなものか気になるので行ってみたいです!今剣と厚も一緒に行きませんか?」
「もちろん!ひさしぶりのおでかけです。わくわくしますね~!」
「幻の花、絶対に見つけ出してやるぜ!見つけたら、記念に他の兄弟にも教えてやらねぇとな!」
「とはいっても、この国に他には信濃と博多しかまだいないんですけどね……」
「わたしも、世界がどのようなものになっているか気になる。同行を申し出たい」
どうやら、カービィの誘いに鬼丸以外には乗り気のようだった。大典太は短刀達が心配なこともあるが、行きたいと言っている童子切が気がかりなのもあった。記憶を失っている以上、フラフラと一振でどこかに行かせるわけにはまだ、いかなかったのである。
それでも鬼丸は首を縦に振らなかった。目的外への介入を避けているのもそうだが、自分がついていったことが原因で何かトラブルが起きてしまうのを防ぐためでもあった。彼は、自分が"不幸な刀"だと言われているのを気にしていた。
そんな様子を見守っていたカービィだったが、ふと思い出したように大典太に進言する。それは、鬼丸の"行かない"という心を動かす理由ともなりえるものだった。
「いいのかなぁ?その"砂漠の華"がある場所の近くで刀剣を見かけたって噂を最近聞いたんだけど」
「なぜそれを早く言わない」
「だって!ボクはごくそつくんじゃないし、刀剣に興味はないからね~。そういうのはメタナイトの専門だよ!」
「か、カービィ……。メタナイトは刀じゃなくて剣を使うんだよ~!」
「……まるでおまえは三日月のようだな」
「……だが、これであんたが行く理由もできたな」
なんと、"砂漠の華"がある場所の近くで刀剣を見かけたのだという。その言葉に、鬼丸は刀剣が絡むのであれば自分の目的のため、行かざるをえなくなると考えたのである。相変わらずな鬼丸の様子に大典太は呆れつつも、この場にいる皆で行けることに喜びを感じていた。
既に短刀達は行く気満々のようで、"砂漠の華"がどんなものかお互いに予想を立てあっている。
「"さばくのはな"……。すなのおはななんでしょうかね?さわったらすぐにくずれてしまいそうです」
「砂漠に咲く植物ってのは聞いたことあるし、それと似たようなものなんじゃねぇか? 久しぶりに前田と行動できるし、連携していこうな!」
「はい!頑張って"砂漠の華"を見つけましょうね!」
彼らの和気藹々とした様子を見守りながら、大典太はバンダナワドルディに改めて刀剣の噂について聞いていた。何故カービィではないのかというと、既に彼は全員いくものだと考えを切り替えてワープスターの準備をしに行き、既にこの場にいなかったからである。
バンダナワドルディはその言葉に少し考えるそぶりを見せ、こう答えた。
「風の噂で聞いたくらいなんですけど……。"砂漠の華"がある場所の付近に、ショッピングモールがあるんです。その地下で夜な夜な実験が行われていて、その中で刀剣を見かけたらしいんですよ」
「……随分とざっくばらんだな。だが、刀剣を見た、か……。もし噂が本当なのであれば回収せねばならんな。刀剣に入り込んだ邪気が悪用されている可能性も無きにしも非ずだからな」
「ボクも刀剣探し、一緒に頑張りますね!」
バンダナワドルディはその噂も本当のことだと思っているらしく、自分も刀剣探しを頑張ると彼らに言ってのけた。大典太は以前彼の怪力を見ているため、頼もしい助っ人が現れたなと目じりを下げて思ったのだった。
そんな彼らの様子を見ていた童子切が、ぽつりとこう零す。
「刀剣探しも大事だとは思うが。あの小さいのは"砂漠の華"とやらを探さなくていいのか?」
「も、もちろん"砂漠の華"探しも頑張りますよ!カービィとの約束だもん!」
「餅は餅屋だ。覚えておけ、小さいの」
「……誰かバンダナワドルディと言ってやってくれよ」
そんなやり取りを続けている中、ワープスターの準備が終わったのかカービィがぽよぽよと音を立てて走ってきた。
"それじゃ早速出発しよう!"と意気込んだ彼の後ろを短刀達が追いかける。そんな彼らを後ろから三振と1体はゆっくり追いかけるのであった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.180 )
- 日時: 2025/09/25 22:04
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
「それで、どうやってその砂漠まで行くんだ?」
ふと、厚がそんなことを言った。てっきりワープスターで向かうと思っていた大典太は、カービィが何も準備していないことに驚く。それを聞いた当の本人は、"ちゃんと準備してあるよ!ついてきて"と、一同を街の郊外まで案内するのだった。
目的の場所まで移動すると、そこにあったのは初めて見る羽のついた船のような物体だった。その前に、カービィより少し大き目の生命体がこちらを見て手を振っている。大典太と鬼丸にはその人物が誰か見当がついているようで、彼の姿をはっきりと捉えた瞬間ため息をついた。
「……あんた」
「チョットチョット!出会い頭にため息ナンテ失礼シチャウナァ!折角ボクのローアに乗せて目的の場所マデ連れて行ってアゲヨウってノニサ!」
「カービィ殿。ワープスターでは向かわないのですか?」
「うん!こんな大人数ワープスターに乗せられないし。だったら、マホロアに頼んでローアに乗せてもらえばいいやって思ってさっき連絡してたんだよ!」
どうやら、カービィはこの目の前にいる卵のような生命体――"マホロア"に、協力を取り付けていたようである。最初は渋っていた彼だったが、カービィの伝家の宝刀"友達だよね?お願い!"という言葉に負けてしまい、ついつい承諾してしまったのだという。
つくづくカービィだけには甘い奴だ、とバンダナワドルディも呆れを通り越して真顔になることしかできなかった。
「デ。コレカラ"砂漠の華"ッテ奴を探しに行くんダロ? ボクは忙しいから花探しには一緒に行ってアゲラレナイケド、カービィのオネガイはトモダチとして聞かなくちゃネェ~。仕方ないカラローアで連れてってヤルヨォ!」
「相変わらず上から目線な人ですね……」
「カービィ以外には大体こんな感じなんです、この人。あんまり気にしちゃ駄目ですよ」
カービィに頼まれたという割にはあまりにも上から目線な彼の言動に、普段穏やかな口調を心掛けている前田も言葉が荒れる。そんな彼をバンダナワドルディが"これが彼の普通だから気にしないで"と宥めていた。
真顔で見つめられるのに耐えかねたのか、マホロアは"ツベコベ言わずに乗るんダヨォ!"と、ローアの入口を開けて中に入るように催促した。
素早く全員乗り込むと、ローアはそのまま空中に浮かび、目的地に向かって出発し始めたのだった。
「マホロア、念のために聞いておくけどどこかから隕石が落ちてきたりとかしないよね?」
「マッサカァ~!ハルバードじゃあるまいし、そんなツマンナイコトが原因でボクのローアが落ちたりシナイヨォ!」
「マホロアのローアじゃないけどね……」
ローアの中は見た目とは裏腹にかなり広く、大の大人が寝転んでもかなり余裕がある程のスペースがあった。かつてカービィ達と共に冒険していた頃の名残であるチャレンジステージやミニゲーム部屋、コピーお試し部屋も残っている。
現在ローアを運転しているこの部屋も、マホロアがかなりの魔改造をしたお陰である程度の人数が座って休むことが出来るようになっている。
"好きなトコで休んでて良いよォ"とマホロアが気だるそうに言ったので、その言葉に甘え一同も到着まではしばしの休憩を貰うことにしたのだった。
そんな中、今剣がローアの窓から見える景色に大はしゃぎしていた。普段飛び跳ねている印象の彼だが、そんなに空が気に入ったのだろうかとマホロアは運転をしながらじっと見つめていた。
「うわあ。ぼくたちいまそらをとんでいるんですね!すごいすごい!」
「今剣は普段から空を飛んでいそうなものですが……。でも、ここから見る景色も素晴らしいものですね!」
キラキラとした目でマホロアを見やる今剣の視線に、マホロアは耐えられなくなっていた。カービィのような純粋で光り輝く瞳が彼は大の苦手なのである。しかし、ローアを褒められたことは嬉しかったようで、"当然ダヨネェ"と彼に返しローアの素晴らしいところをぺちゃくちゃといらないことまで話していた。今剣はその話にも興味を示し、マホロアの話を楽しそうに聞いていたのであった。
そんな彼らの様子を見て、バンダナワドルディがまたジト目でマホロアを見やる。"お調子者だなぁ"と呆れていると、カービィはカラッとした笑顔で"そんなところもマホロアらしいよね!"と言ってのけたのだった。
ローアが浮かび上がってしばらく経った頃。現在、ローアは海の上を浮かんでいた。太陽に照り付けられて光り輝く海に短刀達が目を輝かせていると、ふと前田は思い出したようにカービィにこう問いかける。
「"砂漠の華"がある砂漠とは、随分と遠い場所にあるのですね」
「うん。だって東の大陸の端っこにあるんだもん!」
「えぇ?!東の大陸?!オレ達そんなところに今向かってんのか?!」
カービィがさらっと言ってのけたその事実に、短刀達はただ驚いていた。まさか、自分達が東の大陸に向かっているだなんて。しかし、大典太は懐から世界地図のポケット版を取り出し、静かに砂漠の場所を確認する。童子切もどこに向かっているのかを知りたがっていたため、大典太は砂漠方面の場所を指さしながら口を開いた。
「……まぁ、地図上では砂漠方面は東の大陸にしか存在しないからな……」
「そんな離れた場所にまで、刀剣が落ちてしまっている可能性があるのだな」
「あの悪神の元から一気に落ちたんだ。西の大陸だけにあるとは限らないのは当然だろ」
「噂程度だけど、見つかると良いね!キミ達が探している刀剣ってのを、さ」
自分達を抜いても、100振程度はあの蔵に仕舞ってあった。それが一気に地上へと降り注いだのだ。自分達が普段いる西の大陸だけではなく、東の大陸にもばらまかれている可能性は充分あると鬼丸は推測していた。
そんな中、カービィは深刻そうな表情を浮かべる彼らに、"刀剣が見つかると良いね"と元気づけたのだった。
彼らの会話を背景に、ローアは砂漠方面まで飛んで行ったのであった。