二次創作小説(新・総合)
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.181 )
- 日時: 2025/09/26 22:01
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
窓から砂漠が見えてくる。目的地が近づいてきたのだ。短刀達はそのまま窓に張り付いて様子を伺っていると、ふとガタンと機体が揺れる音がした。どうやら目的地に到着したらしい。
マホロアは休んでいる一同に降りるように告げ、自分もエンジンの確認をした後にローアを後にした。
「ほんとうにさばくですね~。ぼく、さばくなんてはじめてみました!」
「どこに行っても砂ばっかりだなー。本当に"砂漠の華"なんてあるのか?」
「マァ、ココからはミンナが頑張るんダネ!カービィ、また呼んでくれたらボク迎えに来るヨォ!ボクってホラ、忙しいカラネ!」
「うん、ありがとうマホロア!また必要になったら呼ぶねー!」
そう言ってマホロアはローアの中へと消え、そのまま機体を浮かび上がらせてその場を後にしてしまった。ばいばーい、と笑顔で見送るカービィと短刀達と共に、残りの面子もローアに向かって小さく手を振ったり、各々反応を見せた。
ローアが見えなくなったと同時に、カービィが全員に向き直る。ここからが今回の本題なのだ。早速"砂漠の華"を探しに行こう、と先導して砂漠の中をひたすら進んでいくのだった。
「ここからちょっと行った先にショッピングモールがあるんだ。刀剣探しも兼ねるならそこから探すのが一番いいよね!」
「……いいのか? あんた達は砂漠に咲いている花を探しに来たんだろう?」
「いーのいーの!屋上とかから砂漠を見渡せば"砂漠の華"も見つかるかもしれないからね!」
まず、カービィはこの先にあるショッピングモールで探索をしようと皆に提案をした。確かに、刀剣の噂にもある"夜な夜な地下で実験を行っている"という部分は、ショッピングモールの地下で行っている可能性もあると考えれば行く価値もあるだろう。しかし、今回カービィとバンダナワドルディが本来の目的としているのは"砂漠の華"探しである。ショッピングモールに現を抜かしていていいのか、と大典太が問いかけると、彼は"別にいーよ!"とさらっと言ってのけた。
そのまま砂漠を歩いていると、確かに目の前に寂れたショッピングモールが見える。砂を被っており、遠目からは見えなかったのだ。
本当に砂に埋もれているのだな、と童子切が真っすぐな感想を漏らす。それに対して、バンダナワドルディは"元々都市があった場所が廃れてしまい、そこと砂漠が混ざり合ってこうなってしまった"と説明をした。
ショッピングモールに辿り着いた一行は、早速各々の目的を達成するために探索をすることにした。"砂漠の華"に、実験に使われている刀剣――。どちらも見つかることを大典太は切に願った。
「この中に刀剣があるかもしれないのか。さっさと探すぞ」
「おにまるさん、とうけんだけじゃないです。"さばくのはな"さがしもですよ!」
「おれには興味がない。おまえ達だけで探せばいいだろ」
「……そこまでにしておけ。しかし、廃れているとはいえ広いな……」
かつて都市だった場所に建っていたショッピングモールだったからなのか、かなりの広さを誇っていた。寂れたことによる経年劣化により、所々錆び付いている箇所は見受けられるものの、建物が壊れていないのは流石の技術である。
この広さを全員で探すとなると、相当時間がかかる。手分けして探した方がいいと大典太が皆に提案すると、それに否を唱える者はいなかった。考えていることは同じだったようである。
手分けをすると理解したのか、鬼丸はそのままスタスタとひとりで奥に歩き始めてしまった。
「……おい、鬼丸」
「手分けするんだろ。おれはひとりでいい」
大典太が止めるも、鬼丸はその静止を振り切りひとりでショッピングモールの奥まで消えてしまった。
「い、行っちゃいましたね」
「……仕方のない奴だ。しかし、ここで話していても時間の無駄なのは事実だ。俺達も手分けをして探索に当たろう」
「じゃあボクこっち~!」
「ま、待ってよカービィ~!!」
鬼丸が進んだ場所とは反対方向を、カービィとバンダナワドルディがぽよぽよと駆けて行った。
"では僕達は上の階を探索してみますね"と、前田は今剣と厚を引き連れ階段へ向かって歩いて行った。残された大典太と童子切は、まだ誰も探索していない場所を探すかという話しになり、童子切がそれと同時に口を開いた。
「わたし達は、地下を見てみよう。刀剣の噂があったのはそこだろう」
「……そうだな。行ってみよう」
大典太と童子切は地下を探索することを決め、地下への階段を探すためまた別方向へと歩いて行った。
――地下に繋がる階段は思いのほか簡単に見つかり、そこを通り目的の場所へと向かう。大典太も童子切もどちらも口が達者なタイプではないため、当然会話が弾むわけもなく、ただ無言で歩いていく。
そんな中、童子切がはっとした表情で大典太に問いかけた。それは、大典太にとってはあまりいい話ではなかった。
「わたしには記憶がない。だから、この際教えてほしい。わたし達が昔、どんな刀剣だと呼ばれていたのかを」
「……忘れていた方がいい気もするがな。あんたも本能で分かっているとは思うが――俺達は、霊力が強すぎるがゆえに、時の政府に捨てられた刀だ」
「捨てられた」
自分のことが分からないからこそ童子切はこのことを聞いたのだろうが、大典太としては童子切にこのことは言いたくなかった。自分達が時の政府に何をされたのか。それが原因で、数珠丸以外の刀剣には人間に対する"負の感情"が生まれてしまったということ。そして――記憶を失う前の童子切は、負の感情が一番影響していたのだろうということ。
あまりにも童子切が真っすぐ目を向いて聞いてくるので、思わず大典太もぽろりと零してしまう。言ってしまってから、ああしまったと思ってももう遅い。
大典太から天下五剣の真実を聞いた彼は、少し悲しそうな表情をしながら黙って話を伺っていた。
「……前も言った通り、俺達はクトゥルフによって鍛刀された刀剣だ。それが原因で、ひとりひとりが世界を滅ぼす程の霊力を持っている。それが故に――時の政府は俺達を扱いきれず、政府の動力源とした。
来る日も来る日も、刀剣男士としての活動はなされないまま。所属が"時の政府"ってだけの強固な檻だ。それだけならまだ良かった。あろうことか、あいつらは俺達を"失敗作"とみなした。制御しきれなくなって、俺達を"時の狭間"に捨てたんだ」
「そんな、ことが」
「……あったんだ。ああ、話すんじゃなかった。今のあんたはまっさらになっている状態なんだ。外の光だけを見て、悪いものには目を伏せた方が心も痛まない気がするがな」
「…………」
大典太の話したことに心当たりはなかった。それもそのはず、その記憶すら邪気に呑まれ、あのカンテラに吸い込まれ消えていったのだから。童子切は大典太の口から零れる事実を、どんな顔をして受け止めればいいのか分からなかった。
しかし、過去の自分に起きたことであるのは事実である。そこから目を背けてはいけないというのは、記憶がなくとも本能で分かった。
「……それでも。目を塞ぎたくなるような事実でも。わたしは、今おまえからそれを聞けて良かったと思っている。本能でおまえ達を仲間だと思えているのなら、楽しい気持ちだけではない。悲しい気持ちや、つらい気持ちも分け合ってきたはずなのだろう。
記憶が無くなったからと、それを忘れて良い、背を向けて良い理由にはならないと、わたしは思う」
「……そうか。あんたがそう思うのであれば、それでいいよ」
その後会話は一区切りし、コツコツとした靴音の感触が変わったような気がした頃だった。
目の前に、鬼丸がいるのが分かった。自分達とは別行動を取っていたはずだが、何故地下にいるのだろう。話しかけようとすると、"進むな"と彼に静止を求められた。
「……何かあったのか」
「この先。何者かの気配がする。それに――向こうで何かやっているようだな」
「隠れて様子を伺った方がいい気がする」
鬼丸が言うに、この先で何かやっている気配がするとのことだった。もしかしたら、噂は本当で、このショッピングモールの地下で何かをしているのかもしれないという思いが三振の脳内を巡る。
確かめるべく、陰になりそうな場所に移動し、身を潜めて何が起きているかの様子を見ることにしたのだった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.182 )
- 日時: 2025/09/27 21:53
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
そのまま隠れて様子を伺っていると、奥から誰かが引きずられている音が聞こえてきた。思わず身を乗り出すと、そこにいたのは見覚えのある顔ぶれだった。
研究員のような人物が縄を持って、縛っている3人の男性を引きずっているのが見て取れた。大典太と鬼丸には、その人物が何者なのかが見当がついていた。3人の男性は、全員似たような顔つきで、青、緑、黄色のカーディガンを身に着けている。
男性は口々に研究員に向かって何かを喋っているが、研究員はそれを聞き入れることはなく無言で彼らを引きずっている。
「待ってくれ!待ってくれ!オレ達何か悪いことしたか?!」
「僕達砂漠の中を彷徨っていただけだよね? なんでこんなことに?!こんなことってないよぉ~~~~~!!!」
「ぼく達これからどうなるのかな!あはは~!」
引きずられている面々を見て、大典太は焦った表情を見せた。その人物の兄弟を、更には本人のことすら知っていたからである。何故彼らがこんなところに、という思いと共に、早く助けなければと鞘に手が伸びる。しかし、鬼丸に止められた。今ここで刀を抜いてしまえば、隠れている意味がない、と。
焦る気持ちが強まる大典太に、童子切も鬼丸と考えは一緒だということを伝える。その声を聞き我に返った大典太は、一度気持ちを落ち着けることに集中した。
「……すまん。まさかこんなところにいるとは思わなくてな」
「助けたい気持ちはわかるが、おれ達が隠れているのがバレたら意味がないだろ。今は我慢しろ、大典太」
「知り合い、なのか」
「あぁ。知り合いどころか……俺はあいつらと一緒に働いていたことがあるんでな」
童子切が不思議そうに首を傾げているため、大典太は3人が何者なのかを童子切に説明をした。
青いカーディガンを着ているのが"松野カラ松"、緑のカーディガンを着ているのが"松野チョロ松"、そして黄色いカーディガンを着ているのが"松野十四松"。全員、松野家の六つ子だった。
六つ子と聞き、童子切はカフェで働いている紫と桃色の双子を思い出していた。彼らのことを話すと、大典太は静かに頷き、彼らと引きずられている3人は兄弟、あともう1人も合わせて6人兄弟だということを答えた。
「藤四郎兄弟、のようなものか」
「……いや、違う……のか?」
「何故そこで悩む。そんなことはどうでもいい、このままだと見失うぞ」
鬼丸の言葉で再び我に返った大典太と童子切は、引きずられている3人と前にいる研究員の姿を引き続き見守ることにした。研究員に見つからないように、柱を利用しながら隠れつつ進む。そんなことを数回繰り返していると、縄を持った人物は扉の前に辿り着き、カードキーのようなものを扉にかざし、向こうへ消えていった。
目的の人物を入れて役目を終えたのか、扉はピピッ、という音を最後に閉まってしまった。
「ここから先は行けないらしいな」
「……だが。あいつらが引きずられていった以上、この先に何かがあるのは間違いないな」
「壊すか?」
「いや、壊さない方がいい。まずは……他の奴らとの合流を急いだほうがいいと思う」
扉を壊すか、という鬼丸の言葉に一旦納得しかけるも、童子切がそれに待ったをかけた。まずは一緒に来た全員を集め直してから、改めてここに来た方がいいと提案したのだ。
急いで彼らを救わねば何かに巻き込まれるのは承知の上だったが、太刀である以上偵察は得意な者に任せた方がいいと彼は判断したのだ。大典太も鬼丸もそれに静かに頷き、まずはカービィ達、前田達との合流を急ぐことにしたのだった。
「……太刀のおれ達ではどうしようもないこともあるからな。あいつらの手を借りるしかないか」
「だったらさっさと行くぞ。時間が惜しい」
そう言って、その場を後にする三振。
そんな彼らの姿を、監視カメラで捉えていた者がいた。
『まさかこんなところで"あの"天下五剣を見つけることができるとはのう。ワシが全部捕まえて、全部ワシのものにしてしまえばアンラ様の手を煩わせなくても魔物が造り出せるぞ……!
ふぉっふぉっふぉっふぉっふぉ!!!!』
監視カメラから彼らの姿を見ていた"彼"は、不敵に笑みを浮かべるのだった。
- Ep.04-2【新世界の砂漠の華】 ( No.183 )
- 日時: 2025/09/28 21:32
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: 2EqZqt1K)
一方。3階で探索を続けていた前田、厚、今剣だったが、目ぼしい手がかりも見つからず途方に暮れていた。そもそもが噂程度のものを探している以上簡単に見つからないことは分かっていたが、こんなに探しても見つからないものかと肩をがっくりと落とす。やはり建物の中には存在せず、外にしか咲かない花なのだろうか。"砂漠の華"というものは。
カービィやバンダナワドルディとも連絡を取り合いつつお互いに怪しい場所を捜索するも、植物らしきものは1つも見つけられなかった。
「うーん。"さばくのはな"、みつかりませんねぇ」
「"砂漠の華"というくらいなのです。やはり外にしか咲いていない花なのでしょうか? それともやはり、噂程度の話なので幻の花、というのもあり得ますよね」
「幻を見つけるのがいいんじゃねぇか!さ、弱音吐いてないで頑張って探そうぜ!」
厚の鼓舞を受け、前田と今剣も今一度"砂漠の華"探しを頑張ろうとお互いに頷いた。
気を取り直して探索を再開した矢先、今剣が遠くで咆哮のようなものが耳に入ったとふたりに言う。ショッピングモールの中には自分達しかいないはずだが、どうして咆哮のようなものが響いてくるのだろう。
どんな咆哮だったか今剣に問いかけると、かれは"うーん"と唸りつつもこう答えた。
「いま、"がおー"というこえがむこうからきこえたきがしました」
「がおー? 僕達の他に誰かいるということでしょうか?」
「いやいや!そんなまさか」
しかし、今剣曰くその"がおー"という咆哮は近付いているとのこと。前田と厚も耳を凝らしショッピングモールの音を集中して聞いてみる。すると、確かに奥まったところから熊のような咆哮がこちらに近付いてきているのが分かった。
音の方向を見てみると――。
『グオォオォオォオォ!!!!!』
「――えいやっ!!」
「とぉー!!」
カービィとバンダナワドルディが、四足歩行の魔物と戦っている姿が見えた。カービィはどこかからソードをコピーしており、バンダナワドルディは自前の槍で応戦している。
彼らの連携のおかげで魔物の身体には所々に傷がついている。しかし、自分達も加勢せねばならないと本能で察した。なぜなら、彼らは"刀"だからである。
短刀達がカービィとバンダナワドルディの元へ辿り着くと、彼は後ろにやってきた三振に気付き、攻撃を弾き飛ばしながら"子供達は下がってて!"と言った。どうやら、彼は短刀達のことを自分より年下だと思っているらしい。
それに納得いかなかったのか、厚が"自分達は子供ではない"と反論をする。そんな彼を前田が宥めつつ、三振も戦闘態勢へと入る。この調子であれば、2人と三振で協力すればこの魔物を倒すことが出来そうだ。
「カービィ殿!バンダナ殿!僕達も加勢します!」
「う、うん。分かった!でも怪我しないでくださいねーっ!」
その間にもカービィとバンダナワドルディの猛攻は続き、魔物の体力もかなり消耗していた。このまま三振が加勢すれば、倒しきることが出来ると判断した前田は、今剣と厚に合図で一斉にとびかかることを提案した。
カービィもその声を聞いたのか、ソードを振り回しながらうんうんと頷いている。
タイミングを見計らい、2人の攻撃で相手が怯んだ隙を前田は見逃さなかった。ありったけの声で、突撃することを叫ぶ。
「行きますよ!!突撃ーー!!」
前田の合図を皮切りに、三振が魔物を倒しきらんと飛び掛かる。短刀の一撃は深く刺さり、魔物はまた咆哮を上げた。そのまま2人も総攻撃を畳みかける。すると、魔物の体力が底を尽きたのかうめき声を上げて倒れてしまった。
一同はそれを確認した後、各々武器を仕舞い倒れた魔物の近くまで移動した。それと同時に、魔物から紫色の靄が出始め、そこから人が現れ出でたのだった。
「これって……!」
「心当たりあんのか?」
「はい。以前人が魔物に変化するのを見たことがあります!」
そう。前田は魔物が人に変わる現象に心当たりがあった。審神者会合に参加した際、ジェシカと衝突した審神者の男性が魔物に変えられてしまったことと事象があまりにも似すぎていたのである。もしかしたら、この魔物も審神者の男性と同じように、魔物に変えられてしまった一般人なのではないかという可能性が前田の脳内を巡った。
そんな矢先、別の方向から走ってくる足音が聞こえてきた。地下から移動してきた大典太達のものだった。
大典太は倒れている人を発見するなり"何があった"と焦った表情で聞いてくる。前田がこれまでに起こったことを事細かに説明すると、大典太と鬼丸は顔を見合わせて、しかめた。やはり、彼らも前田と同じように普通の人間が魔物に変えられてしまったのだと推測したのだろう。
「……噂で聞いていた"夜な夜な怪しい実験をしている"というのは、邪気で人間を魔物にする実験だった、ということだな」
「――チッ。胸糞悪いことをしやがって……!」
「ところで、その戻った人間は大丈夫なのだろうか」
ふと、童子切がそんなことを呟く。確かに魔物にされて今まで戦っていたというのであれば、魂が削られてしまった可能性も無きにしも非ずだ。大典太は素早く倒れている人間の元に近づき、胸元に霊力をあててみる。トクン、トクン、と小さくではあるが、鼓動が聞こえてくるのが分かった。どうやら気絶しているだけらしい。
そのことを童子切に伝えると、彼は安心したとでもいうように眉尻を下げた。ということは、である。魔物にされてしまった人間は、彼だけに留まらないのではないかという嫌な予感が一同の頭の中を駆け巡る。
「……まずいな。扉の向こうで何をされているのか、大体推測がついたぞ」
「あいつらもさっさと助けねば、魔物にされてしまうかもな」
「とびら? なんですかそれ?」
状況を理解できていない、と今剣が問うたため、大典太は先程自分達が見てきたものを説明した。その話を聞いた前田は、焦ったように"早く助けに行きませんと!"と慌て始めた。彼もカラ松達のことを知っていたため、魔物にされてしまう想像ができなかったようである。
その話を聞いたカービィはうんうんと頷き、こう一同に提言し始めた。
「よーし。だとしたら"砂漠の華"探しは一旦後回しにして、その地下の扉まで行ってみようよ!扉は壊しちゃえばいいし」
「こ、壊すの?!」
「え? だって最終的に全部ぶっ壊すんだから、扉の1つや2つ壊してもよくない?」
カービィは、これから実力行使で扉を破壊し魔物にされた人間を助けに行こうと提案してきたのである。あまりにも物騒な提案にバンダナワドルディは一瞬萎縮するも、それに対して鬼丸は"一理あるな"と静かに頷いた。流石は最初に見つけたときに"扉を破壊する"という行為に走りかけた刀剣男士である。
大典太は自分も同意しかけたことを後悔し、鬼丸のことをただジト目で見やることしかできなかった。
「なんだその目は」
「……いや。あんた達が意外と似た者同士だと思……いひゃいぞおにまゆ」
「おれとあいつのどこが似ているというんだ」
「面白いのか、それは」
「……まにうへゆんじゃない、どうじひり」
またもや頬をつねられてしまった大典太は、鬼丸に好きにさせつつため息をつくことしかできなかった。その様子を見ていた一同だったが、はっと前田が我に返り"地下へ行くなら早く行きましょう"と催促してきた。
その言葉を聞いて大典太は鬼丸の手を握り返しやめさせ、気絶している人を背負ったのち地下に戻るのであった。