二次創作小説(新・総合)
- 次回予告 ( No.39 )
- 日時: 2022/01/07 22:14
- 名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: jX8tioDf)
―――ここは、地図には載っていない町。そう言われている場所の―――はるか空の上。宇宙だった。
そこに浮かぶ一隻の宇宙船の中で、タブレットのようなものをいじる1体の宇宙人がいた。
「わりおサン……。音信不通ニナッテカラ、全く連絡ガ取れテいマセン。じみーサンやもなサンニモ聞きマシタガ、手がかりガ全く掴めナイママ1週間ガ経ってシマイマシタ。
一体何処ニイルンデショウカ…」
細長い、白い身体をした宇宙人。名を"オービュロン"と言った。
彼はひょんなことから地球侵略に興味を持つ、IQ300の宇宙人だ。ミステリアスな外見をしているが、実年齢は紀元前1年生まれ。誰よりも地球を、世界を、見届けてきた生命体である。
かなりの不幸体質であり、自前の宇宙船に隕石が降り注いで墜落したり、雷に直撃して宇宙船から吹き飛ばされたりするのは日常茶飯事である。その最中出会い、ゲーム制作を頼まれて交流を持ったのがワリオだった。
しかし、今ワリオは彼の故郷であるダイヤモンドシティにいない。そう、街に住まう友が言っていた。
街で見かけなくなってから1週間。彼は冒険に、宴に、ライバルであるマリオの誘いで出かけていることが多かった。しかし……それが終われば、必ずダイヤモンドシティに戻って寝床についていた。しかし、今回は誰も見かけていないのである。1ヵ月前程に誘われた宴も落ち着いている頃だ。ならば冒険に出かけた可能性があるが、ワリオを慕う女子高生曰く "おじさまが冒険に行った気配はない" らしい。
現在自分の暇な時間を見つけ、各々ワリオの捜索に当たっている。しかし、彼に繋がる手がかりは1つも存在していなかった。
当のオービュロンも宇宙に飛ばされた可能性を見据え、彼なりの視点で宇宙船でワリオの捜索を続けていたところだった。
「イクラ不死身ダトハイエ、心配ニなりマスネ…」
そう呟きながら、彼は真っ暗になったタブレットを見つめる。
ワリオは傍若無人で身勝手だが、ワリオカンパニーの大切な仲間である。そして、未だに新作ゲーム製作の売上の分け前を貰っていないのだ。
売上は今後の侵略の資金にすると決めている為いつになってもいいのだが、そう考えているとワリオがいつまでも金を自分のものにする。彼はそういう男だったことを、オービュロンは充分に知っていた。
また、ジミーにでも連絡を入れてみようか。そう思った矢先であった。
宇宙船全体にエラーの信号が鳴り響いたのは。
「ナニゴトデスカ?!」
クルーである宇宙ウサギに、オービュロンはモニターを出すように指示した。ウサギ達は皆かなり慌てており、このエラー音が相当なものであることを物語っている。
しばらくして、目の前の巨大なモニターに宇宙の映像がうつる。そこにあったのは―――無限に広がる、ホワイトホールのような現象だった。
「……ナンデスカ コレハ…?」
オービュロンは言葉を失っていた。2000年以上生きていて、こんな現象を見るのは生まれて初めてだった。ブラックホールに巻き込まれた経験も当然あるが、それよりも巨大なホワイトホール。それは、宇宙のあらゆる場所を次々と白く染め上げていた。
ぽかんと口を開けていた彼の頬を、宇宙ウサギが強くつねる。大きな悲鳴と共にオービュロンは我に帰り、このまま宇宙船をのさばらせていれば確実に巻き込まれることを悟った。
「コリャ イカン!スグニてれぽーとノ準備ヲお願いシマス!」
オービュロンの指示に従い、宇宙ウサギ達はテレポートの準備を始めた。あのホワイトホールに巻き込まれれば最悪命はない。そう、その場にいた誰もが思っていた。
数刻後、宇宙ウサギの1匹が彼に向かって振り向く。どうやら転送の準備が整ったらしい。
「了解デス!デハ、スグニてれぽーとヲ……」
そう口にしたと同時だった。
「ウワッ?!」
機体が大きく傾き、揺れた。そして、再びけたたましく鳴り響くエラー音。
オービュロンにはその感覚に覚えがあった。何故今なのか。
彼は自分の体質を呪った。
そう。今まさにテレポートをしようとした瞬間、オービュロンの宇宙船に大きな隕石が激突したのである。
揺れ方から大体のぶつかった方向を推測し、彼はすぐに様子を見にその場から走り去っていった。当然テレポートなど故障した機体で出来る筈もなく。宇宙ウサギは黙って目の前に近付く白い光を見ることしか出来なかった。
「エエト…えんじんニ、シッカリブツカッテイマスネ。多分こんとろーるモ自由ニ利かナクナッテイルコトデショウ…。早く修理セネバ」
諦めた宇宙ウサギを尻目に、オービュロンは何とか隕石のぶつかった場所に辿り着いていた。
壁が大きくへこみ、事態の痛々しさを物語っている。丁度エンジンがある場所にぶつかってしまっており、コントロールも自由に聞かないのだろうということを彼は瞬時に悟った。
しかし、中身が動くのであればまだ修理は可能だ。そう一抹の望みをかけ、彼はへこんでいない場所の扉を開け、中にあるエンジンの様子を確認する為に動いた。
その、刹那。
「ワーーーッ?!」
宇宙船が傾き、オービュロンはエンジンルームから弾き飛ばされてしまう。勢いのまま壁にぶつかり、打ち所が悪かったのかそのまま意識を失ってしまった。彼は先程まで見せていた細長い姿ではなく、もちもちとした小さな姿に変わっていた。
白い光は宇宙船のすぐ傍まで迫っていた。戻らない主を心配したとて、宇宙ウサギには何も出来ることが無い。彼らは、ただ自分達が白い光に呑み込まれていくのを黙って受け入れるしか無かったのだった。
光が。宇宙船を呑み込んでいく。
まるで全てを浄化するように。まるで、全てを消し去る様に。
宇宙船をいとも簡単に呑み込んだ白い光は、そのまま地球をも。『地図に載らない街』をも呑み込んでいくのだった―――。
目覚めた先が何なのか。彼らは想像することなど出来ないまま。
全てが真っ白に染まった。
NEXT⇒ Ep.01-2 【宇宙からの来訪者】