二次創作小説(新・総合)

chapter2 初仕事 ( No.25 )
日時: 2021/11/13 08:42
名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)




花の香りは心地よい。
だが僕はあからさまな花の香りは苦手なようで

「はっっっっっっっっくしょい!
あ゛あ゛~…。」
「ライト、一応女の子なんだからもう少しおしとやかにくしゃみできないの?」
「好きでおじさんみたいなくしゃみしてないよ。うぅ…地獄だよ。」

花が香るこの森。通称“花咲きの森”。
受理した依頼主のイーブイに聞けば、ここで鍛錬をしていたところ、風にあおられてマフラーが飛んで行ったようなのだ。
鍛錬といってもさほどそこまで深いところに行った訳ではないので、奥に進むのが怖くてかなわないというのだ。

「落とし物探しも立派なお仕事だってファリスさん言ってたし頑張らないと!」
「そういえばフェイとモールス一向に部屋から出ないよね。騒音するけど。」
「…寝てるんじゃないかな。」

あはは、と苦笑しながら僕たちはこの森の中へと入る。
花がその辺に咲き乱れているのだが、道はしっかりとしている。
まるで迷路のような道を進む。

「ナニモノダ」
「ナワバリアラシカ」
「デテイケ」
「デテイケ」

がさりがさりと草タイプのポケモンと虫タイプのポケモンが現れては僕たちにそういいながら揺らり、揺らりと近づいてくる。

「うあっ。目に理性が感じない!」
「理性が焼き切れたってこういうことなんだよ!
敵ポケモンは私たちの言葉に反応しないし攻撃だってしてくる!
ライト、油断しないで気を付けて!」
「無論!」

僕たちは技を繰り出しながら進む。
電撃を浴びせ、体当たりをし、野生のポケモンを瀕死にしていく。
こうして奥へ奥へと進めば、風にあおられたマフラーが落ちているか。あるいは、その痕跡が残されているか。

「ワタシタチノナワバリカラデテケ!」
「荒らす原因はキミたちが襲い掛かるからだよ!キミたちの住処には何も用はなんですっ!」

そう言うノヴァは飛び出してきたケムッソを思い切り蹴とばし、しばらく起き上がれないようにした。

「どーだッ!“アルバ”はこれでも新米騎士団なんですよ!」
「どや顔したって…。まぁ、いいけど。
それにノヴァ、住処に用はない。というのは噓になっちゃうかもね。」
「えっ、どういうこと?」

僕は気絶しのびているケムッソを抱きかかえ頬を軽くたたく。

「…はっ。 …あっ、うぁ…。」
「ケムッソ、ちょっと聞きたいことが…」


「うわああああああああああああああ!!!!
マァァァマァァァァァァ!!!!」

泣き出してしまった。しかも逃れようとして逆エビぞりしてもがいて逃げようとしている。

「な、なんもしないって」
「ママァァァァァァァ!ママァァァァァァ!」
「だから、なにもしな…」





「うちの子に何をしてくれるのですか!」

ばさりばさりと“ママ”と呼ばれる存在が空中から現れた。
鮮やかな二対の羽、そこに中央部にある黒いからだ、青い大きな目。
その青い目はうつらうつらとしており、このポケモン…“アゲハント”も理性が焼き切れているということがわかる。

「最近世が乱れていること。そしてあなたたちのような不審者。
…私の子供を誘拐しようたってそうはいきません。」
「そ、そんな!私たちはそんなことは一切…」
「言語道断! 言い訳はお聞きしません!!

さあ、うちの子を返していただきましょう!!」



頬袋からバチリと電撃が流れた。

「ぎゃーぎゃー…こっちの事情も聴かねぇで演説しやがって…。
これが一児の母親かよぉ…おい…。」
「ら、ライト…。抑えて…。」



ノヴァの ひとことは つうじてない ようだ ! ▼


「ア゛ァ゛!その喧嘩ァ、買ってやるよぉ!!」

そう宣言した瞬間だった。



ぽつり。

「…?」

ノヴァは天を見上げた。
青で輝いていた空は曇ってくる。
曇天模様になった空は水が点々とノヴァやライト、アゲハントに降り注ぐ。
ケムッソは何かを感じ切ってノヴァの後ろに種族値を超えた素早さで移動した。


ざあざあと降り注いだこれは雨だ。
ノヴァは察した。

―――――――これ、“あまごい”だ。

ゴロゴロゴロゴロ…

アッ、電撃ガ雲ヲ走ッテイル。



「いっぺんッッッッッ
目ェェェェェェ覚ませオラァァァァァァァァ」




「きゃ―――――――――――――――!!!!!」


それは、雨という天候を使った、必中状態のかみなりだった。


「ママ…?」
「私…おかしくなってたみたいね…。
お客様にこんなご無礼を働いてしまって…。」
「ママ!しっかりして!」
「むーちゃん。後は…お願い…ね。」


ガクッ


「ママァァァァァァァ!!!」







「あー、それ瀕死なだけだからすぐ起きるよ」
「あ、そーなの?」
「せめてもうちょっと心配して欲しかったわ。むーちゃん…。」
「私はどういう反応をすればよいのですか…。」



一応(?)和解したアゲハントとケムッソと僕とノヴァはあまごいの効果がなくなるまで木の下で待機することになった。
ちなみにアゲハントにはオレンの実をあげといたので五体満足の状態になりました。