二次創作小説(新・総合)

chapter0 オープニング ( No.7 )
日時: 2021/11/11 00:02
名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)

駆け出して長い時間経った気がした。
でもそれは僕の体感時間で、本当はたった3分も走ってないことを僕は知らない。

「ね、ねぇノヴァ…」
「へっ? あ、はい。何でしょうか?」
「なんで追われてるの?」

この身体であれば四足歩行で走る方が早いが、彼が目的としていることがわからないためされるがまま。
少し疲れてきた中でもおしゃべりができる。
僕はどうやらまだまだ限界ではないらしい。

「そう、ですね。
…家庭の事情というべきでしょうか?」
「家出?」
「まぁ…はい。
あ、あそこ曲がりましょう。」

彼は巧みに森の曲がり角を使い、僕を安全な所へ行こうとする。

「くっ…見失ってしまった!
ノヴァ様ー!!どこにいらっしゃるんですかー!!」

バルキーが大声を出して反対の方向へ行く。
それを見たノヴァはふう。と一息をつき僕を見た。

「…ノヴァ、君ってさ結構良いところのお坊ちゃまなんじゃない?」
「いいえ。断じてそんなことはないです。」

間髪入れずに彼はそう返した。

「えっと、ところでライトさん。
…記憶喪失と仰っていましたよね?」
「ん、…うん。そうだけど…。」
「…もし、もしよろしければなのですが…。


私と、騎士団を目指しませんか?」





「はぃ?」




素っとん狂な声で返事してしまった。
それをスルーして、ノヴァはつづけた。

「最近、この世界のポケモン達が狂暴化しているんだ。
訳もなく暴れていたり、平気で悪いことをしたり…。世界が荒れてしまってるんだ。
最初は救助隊や探検隊も調査団も仕事をこなし続けていたんだよ?

救助隊は字のごとくポケモンを助けたり。
探検隊はおたずねものになったポケモンを捕まえたり。
調査隊だって!未開の地に行きたいのにそれをなげうってまで荒れるポケモンを救おうとしたんだ

…でも、人数がやっぱり限られててさ。」

はあ、とノヴァはため息をつきつつ僕の隣に座る。

「…それでできたのが“騎士団”。
荒れ狂うポケモン達を倒し、元の状態に戻すんだ。
僕、そんな騎士団にあこがれてて…! みんなの役に立ちたくて…!」

座ったかと思えば立ち上がるノヴァはくるくると回り、僕の目の前で、目と目を合わせてキラキラした目でつづけた。

「だから家を出て、騎士団になって、みんなを助けたい!
お母様もお父様もまだ早いって。だから無断で抜け出してこの状態なんだ。」

と苦笑したのを僕はチョップを入れた。

「いたっ」
「バカ! 子供が危険な目に合ったら反対するに決まってるでしょ!
バルキーがあんな必死になって君を探してる理由がわかったよ!」
「…子どもってキミも子供じゃないですか。」
「んーんーんー…僕、子供に見えるのか…。」

腕組して唸る僕をノヴァはガシッと掴んだ。

「ねえ、お願いします。今、ライトさん…行く当てもないんでしょう?
だったら…」



「ノヴァ様!」


バルキーの声だ。

「この不届き者のピカチュウめ!ノヴァ様を狙って何をやるつもりだ!
身代金か?!ノヴァ様自体狙いか?!」
「い、いやあのね…」
「ノヴァ様を守るこそわが勤め!その焼き切れた根性、私が叩き直してくれます!」


「…おかしいな。いつもならルキ、ちゃんとお話し聞いてくれるのに…。」

ぼそりとノヴァが言うと僕に向き直った。

「ライトさん、力を貸します。バルキーさんをとっちめましょう!」
「えっ…でも…。」
「バルキーさん、様子がおかしいんです…。最近の事件に関わっているのかもしれませんっ!
キミが本当に人間だったのであれば、戦い方もわからないでしょう。
伝授します!だから…」
「わかった!やればいいんでしょ!」

ばちり。頬から電気が漏れた。
ああ、僕は本当にポケモンになったんだ…。


「行きますよ!」

僕たちは、戦うために、地面を蹴った。