二次創作小説(新・総合)

chapter9 信念 ( No.93 )
日時: 2021/12/05 20:13
名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)

chapter9 信じる者の真実一路


日の暮れた、懐かしのアンビション騎士団。
ここで寝泊まりしているもの以外はもうここを去って仕事を終わらせて帰っているのだろう。
扉は閉められており、これ以上だれも来ない。出ない。ということを悟らせる。
いつもであれば、なんの気なしに扉を開けているのだろうけれど、ここの戸を開けるのがなんとなく重力がかかってるみたいに重くて、空気も重い。
息が張り詰めているこの現状に僕たちは固まっていた。

「…。」
「ライト…。」
「捕まって、投獄されても、僕に付いてくれるって約束…してくれる?」

初めて吐いた、本当の弱気かもしれない。
全部…全部自分で決めたことなのに、僕は自分のこの後が怖くて怖くて仕方がない。
そして全部、僕の決めたことを信じてついてきてくれる大切な相方だっているのに。
なんて…情けない。
僕は、先ほど吐いた言葉をきちんと笑顔で彼に語り掛けることができただろうか。
歪で下手くそな笑いになってないだろうか。



「ライト。」

もやもやと思考している時、ノヴァは凛とした声で僕の名前を呼ぶ。

「私、言ったよ。
“どこまでもついていく”って。二度も言わせないで。」

その言葉はストンと、胸に落ちた。
そうだ。彼は、ノヴァは…アスターを何も言わずに助けた時にそう言っていた。

「ごめん。忘れてた。」

へへっと苦笑すれば、彼もにこりと笑った。

「じゃあ、帰ろう。」
「うん。」


ギイィィィ…


僕達は、見た目と空気に反して軽い扉を開けたのだった。





そこで待っていたのは、階段。
ここを下れば依頼所に着く。
扉を閉めて、下へ降りる。


「あ~、今日はもう依頼受付はできな…あー!!!」

依頼所に着けば、受付担当のパラケルが、大声を出す。
それに驚いたみんながここに集まる。
そして、みんな目を見開いてこちらを見た。


「…。」

こんな時、なんていうんだっけ。
えっと、えっと。

「いっっってっ!!」

そう迷っていると、誰かが近づき、頭を思い切り叩いた。

「馬鹿ッ心配したじゃないッ!
あんた達のお陰で私どれだけ苦労したと思ってるのよッ!!
セリアや保安官たちの取り調べ!!私たち家族の避難ッ!!!
全部全部あんたたちのせいで訳わかんない方向に行ったんだからねッ!!」
「い…ご、ごめ…」

そう言いかけた瞬間、ポタリとイヴの足元の辺りで音がした。
歯を食いしばって目の水を貯めながら、普段の愛らしい顔を歪ませて、絞り出す声で

「無事で…よがっだ…。おがえり…。」

そう、言ったのだ。

そうだこんな時こそ、こういうべきだった。

「ただいま…。ごめんイヴ…。」
「ただいま帰りました。イヴさん。」
「もうッ!!あんな変な行動何も言わないで取らないでよね!!!」

そう吐き捨てるように言うと彼女は大声をあげて泣き出した。
僕とノヴァは、そっと抱きしめて再会の抱擁を交わした。





だれもこの行動に邪魔をする者なんていなかった。

だれもこの間声を発する者なんていなかった。

だれもが、この再会を見届けたのであった。




自分で起こした騒動による逃避行は、これで終わったのだった。

chapter9 信念 ( No.94 )
日時: 2021/12/07 01:14
名前: 雪雨 (ID: 9s66RooU)

僕たち“チームアルバ”は感動の再会をし、こちらの状況を話した。

理性が焼き切れるその原因の悪夢を作り出したのはダークライではなく“夢幻の月の汚染”によるもの。
ダークライは無実で夢幻の月へたどり着く方法をギラティナと探していること。
セリアは何者かに乗っ取られてる上に汚染のせいで狂気に取りつかれ、それがブーストされていること。

僕達は夢幻の月への辿り着くための道…“天空への階段”を探していること。

全て、ありのまま、遭ったことを話した。



「ふぅ~ん?」

みんながあんぐりと口を開けている中、そう言ったのは団長のフェイであった。

「し、しかし兄さん…これはさすがに信じられることではないぞ。
ぎらてぃな…?とやらが協力者であることも間違いないし、いい加減保安官とセリアに…」
「阿呆。部下を信じなくて何が副団長だファリス。」
「…だが…。」
「ボクはすばらしいと思うけどなぁ~?」
「…?」

その場のポケモン達はその言葉に全員首を傾げた。

「ボクは言ったよな?
騎士における心得っつーのは、あんたら自身が見つけて学ぶもんだって。

ボクはな、そこを評価してぇんだよ。
ファリス、なんでボクが頑なにあいつらをおたずねもの扱いしねぇかわかるか?
お前はあの時、同情はやめてあいつらも捕まえるべきだと猛抗議してたなぁ。
…ひっさびさに喧嘩したなぁ。」
「…兄さん。」
「へへっ。ボクはあいつらを評価してんだよ。
平和な世界を作る。騎士団の心根はそうであると思ってんだろ?

ちげぇんだよ。己自身の守りてぇものを守り通す信念と、そのための逆境と困難を恐れず立ち向かって遂行して、仲間の元に…本来帰っちゃいけねぇ場所まで来て協力を求め、頭を下げたこいつらが本物の騎士ナイト様だと思っている。


…ボクよりも、立派な…。」

と、彼はいつものサーナイトらしくない笑いをして僕らを見て、指を鳴らした。

…僕達の持っている騎士団バッチは黄金色へと変わった。


「いいか。よく聞け。ライト、ノヴァ…あんたらはおたずねものになっちゃいねぇ。
それより真実によくたどり着いた。ボクはそれを連合に叩きつける。
あんたらも仲間を信じるなら、明日からやるぞ。」

ファリスはこくりとうなづいた。


「だんちょーパラケルもやるよー!!」
「俺も周りに広める。そういうのが得意な知り合いがいるからな。」
「私たちも広めよう。リリィ、プリュ。今のこと全部書いてフワリやペリッパー達に渡してばら撒かせよう。」
「「はーい」」
「みーんな意志が固まったな?
じゃあ…みんなでやるぞ。」





「プロガパンダだ!!!」



オ―――――――!!!!



基地の心が一つになった。

信じてなかった子もいたけど、フェイが上手く丸め込んで信じさせてくれた。

嗚呼、ここに入ってよかった。

心からそう思った。