二次創作小説(新・総合)
- Re: ポケットモンスター フラワー・アメジスト ( No.1 )
- 日時: 2022/01/10 23:20
- 名前: 玻璃 ◆UaO7kZlnMA (ID: 66mBmKu6)
訳がわからない、とツムギは呟く。
今日は、いつもと変わらない日常を送ったはずだった。
学校に行き、その後は高校受験に備えて塾に行って。帰りが遅くなったせいか、制服のまま寝落ちしてしまって。――尚、いつもなら、制服のまま寝落ちしないツムギである。
そして、いつも通り目覚めた。
だが、ここからがおかしかった。
まずツムギがいるのは、自分の部屋ではなかった。
辺り一面、緑の世界。
ツムギの腰程まではある雑草が生い茂り、草むらを作っていた。辺りには等間隔に木も植えられていた。心地よい自然の香りと風、済んだ空気。
夏に避暑地に来たような錯覚を起こすが、見知らぬ土地だった。そして、辺りには謎の生物がたくさんいた。
空には鳩やカラスよりずっと大きな鳥らしき生き物、地面を見れば犬らしき生き物、ネズミらしき生き物。
らしい、と言うのはツムギが知る動物より身体がずっと大きかったり、見た事のない姿形をしているからである。新種だろうか。
(本当、訳が分からない)
未知の土地、未知の生き物。突然見知らぬ土地に放り出されたツムギは、草むらの側でどうすればよいのか悩んでいた。
持ち物と呼べるのは、着用している制服と目覚めた時から足に履いていた黒のローファーのみ。
スマホや現金と言った肝心なものは所持しておらず、この場で親に連絡を取るのは実質不可能だった。
近くを見渡すが付近に民家や交番はなく、人の気配もない。
「とりあえず歩いて、助けを求めるしかないかな」
悩んだ末に、ツムギは助けを求めることを選択した。
じっとしていても永遠に助けは来そうにないし、あの未知の生き物達も怖い。
足場にその場を去ろうとした夢花は何も考えずに草むらへと足を踏み入れ、そして。
近くの草むらから草をかき分ける音がしたかと思うと、中から黒い犬のような生き物が飛び出してきた。勢い良く飛びかかってきたが、ツムギは驚きから尻もちをつき黒い犬の攻撃を避けた。難を逃れたが、黒い犬はツムギを敵と認識したらしい。
姿勢を低くし、牙をむき出しにして威嚇音を発している。
「ま、待ってよ。何もしないわ」
つむは敵意がないことを示し、ゆっくり後ずさるがむしろ黒い犬は間を詰めてくる。
一歩、また一歩。そして飛びかかり、ツムギに噛み付こうとする。その牙は何故か炎を纏っており、噛みつかれたら火傷をしそうだった。
「もうっ……」
最終手段として逃げることを選択したツムギは、脇目も振らずに走り出した。当てなどある訳がない。とにかく黒い犬から逃げることしか、頭にはなかった。
全速力で逃げるが、ツムギは運動部ではない。あっという間に限界は来て、徐々に息が荒くなり、走るペースも落ちてくる。
一方の黒い犬はペースが落ちることはない、追いつかれるのも時間の問題だった。
まずい、と思ったツムギはたまたま見つけた一度近くの木陰に身を隠す。一時的にだが、黒い犬はツムギを見失ったらしい。出てこいと言わんばかりに、獰猛に鳴き辺りを見渡している。
すぐに諦めない辺り、執念深い性質の犬のようだ。
(今、出て行けばまた襲われる。どうしよう)
木陰から一歩出れば、あの黒い犬に襲われることは目に見えている。かと言って見つかるのも、時間の問題だろう。犬は嗅覚が優れているのでツムギの匂いをすぐに嗅ぎつけるだろう。
どうしよう、と後退した時。ツムギはかかとに硬いものがぶつかる感覚を覚えた。
視線を下にやると、そこには鞄が落ちていた。見た目は、ビジネスマンである父がよく持っている四角い鞄に似ている。誰かの落とし物らしい。
(鞄? 何かあるかな。ごめんなさい、開けます)
他人の物を勝手に使うのは気が引けるが、今は一刻を争うのだ。
持ち主に謝罪すると、ツムギは遠慮なく鞄を開けた。中には文字がぎっしりと書かれた紙とワイシャツ、赤と白に塗り分けられた奇妙な球体が入っていた。見覚えのある球体を手にした夢花ははっとして、それを手に取る。
「これ、モンスターボール」
この球体は、ツムギが幼い頃に遊んだゲーム『ポケットモンスター』に出てきたアイテムである。
端的に言えばポケモン、と言う生き物を収納し持ち運ぶアイテムなのだがあくまでも架空の存在。にも関わらずそれはツムギの手の中にある。
ひんやりとした感覚、中に何かいるのだろう。ボールは微かに揺れていた。
あり得ない、と言いたくなるがそんなことはどうでも良かった。中にポケモンがいるのなら、あの変な黒い犬と戦えるかもしれない。
わらにもすがる思いで、ツムギはボールのボタンを押した。
「これを押すのかな?」
適当に白いボタンを押すと、ボールが開き中から眩い光が溢れた。
- Re: ポケットモンスター フラワー・アメジスト ( No.2 )
- 日時: 2022/02/21 15:28
- 名前: 玻璃 ◆UaO7kZlnMA (ID: 7nl1k8P4)
光はゆっくりとポケモンの形に変化し、やがて霧散した。すると、そこには一匹の青いポケモンが現れていた。
強靭でしなやかな身体は小さいながらも獣人のようだ、とツムギは思う。拳には微かに青いオーラのようなものを纏っていた。
はもんポケモンのリオルである。
「わ、本当にポケモンが出てきた」
ゲームのことが現実で起こっているせいか、訳が分からずツムギは目を白黒させる。対するリオルは、探るようにじっとを見上げていた。
ポケモントレーナー――ポケモンの飼い主のこと、ではない違う人間がいるからだろう。赤い瞳には警戒するような色が宿っている。
しかし、何やら苦もんするツムギはそんなことに気がついていない。
「見たことあるよな、ないような?」
ツムギは屈んで、リオルと目を合わせ何のポケモンかを必死に思い出そうとしていた。
何せツムギがポケモンをプレイしていたのは、小学校低学年の頃。
ゲーム内ではオーキド博士がポケモンは151匹と定義し、その151匹の中から新たな進化系が発見されたとか言っていた設定である。
時の流れと共に多くのポケモンが登場し、ツムギが知らない者も数多く増えた。リオルもそんな一匹だった。
「ピカチュウ、で合ってる?」
ツムギにとって、はっきりと覚えているのはポケモンの顔と言っても差し支えのないピカチュウのみ。
後は、ゲームに出てきた151匹プラスアルファが顔と名前が一致せずうろ覚えな程度である。
ピカチュウ、と呼ばれたリオルはキョトンとし首を左右に振った。
そして、青いオーラを宿した拳を夢花に向けることしばし。リオルは呆れた目つきでツムギを見上げるも、敵意はなくなっていた。何やら敵意を持つのが馬鹿馬鹿しい、と言った調子である。
やはり違っていたか、とツムギは項垂れた。
「ごめんね。私、正直ピカチュウ以外のポケモン分からなくて……じゃなくて!」
何気なく木陰の外に視線をやったツムギは、黒い犬が側に迫っていることに気がつき現状を思い出した。
「お願い、ピカチュウ。私を助けて。あの黒い犬に追われてるの」
リオルの名を知らないツムギは、困った挙げ句ピカチュウ(仮名)と呼ぶことにした。
小さな身体にお願いしながら木の外を指で示すと、リオルはその方向を見つめ納得したような表情となる。無表情なリオルに不安を覚えたツムギは、改めて彼の瞳を見つめる。
「どう……かな?」
すると、リオルは改めてじっとツムギを見上げた。今までのような品定めをする視線ではなく、どうすればいい、と聞くかのようであった。
その変化をツムギは嬉しく思うと同時に、困惑した。
「指示を出せってこと? んー」
ポケモンに指示、と言われてもどうすればいいか分からない。ツムギは腕を組んで唸った。
ゲームでどうしていたか記憶の糸を手繰ると、確か『わざ』と言うコマンドがあったのをツムギは思い出す。
ポケモン達は『技』と呼ばれるものが使える。ゲーム内だとこれで相手のポケモンを攻撃したりしていた。他のゲームで言う魔法とか、攻撃に相当するものだろう。
「ピカチュウが使える技、〈じゅうまんボルト〉……とか?」
唯一知る技を指示するが、リオルは困ったように首を左右に振る。
ゲーム内でもポケモンが使える技は一匹ごとに違っており、何でも使える訳ではなかった。それなら、とツムギはとにかく技を把握することに専念した。
「まずは使える技、教えてくれる?」
こくん、と頷くとリオルは何やら手を前に突き出すような動作をした。何だろうとツムギがぼんやりと眺めていると、不意に空気が動き始める。風がリオルの方へ吹き始め、ツムギの栗色の髪を弄ぶ。
リオルが突き出した両手の前に空気が渦を巻くようにして集まり、青い球体が形作られていく。やがて、ボール程の大きさになったそれをリオルは前に――正確には黒い犬に向けて放った。
「すごい……」
技の名は、波動弾。波動を凝縮させ相手に放ち、攻撃する。本来はリオルが使えない技だが、ツムギがそれを知るのはもう少し先の話だ。
放たれた波動弾は黒い犬に被弾し地面に倒れ込んだ。かなりダメージを与えたが、まだ体力はあるらしく黒い犬はすんなりと立ち上がった。出てこいと言わんばかりに、獰猛に吠えている。
それに応えるように、リオルは木陰から姿を現した。当然、怒っている黒い犬はリオルに襲いかかってくる。
「ピ、ピカチュウ! 何とかして!」
何とも情けないトレーナーだが、リオルはツムギなど当てにしていないのか冷静である。勢いをつけ、ポチエナと一気に間合いを詰めると至近距離から波動弾を叩き込んだ。
素早く動く技、電光石火で黒い犬に近づき一気に攻撃を仕掛けたのだ。甲高く鳴いた黒い犬は、慌ててリオルに背を向けて逃げ去って行った。
「お? 終わった?」
黒い犬が去り、驚異がなくなったのを確認したツムギはへなへなと地面に座り込む。
初めてのポケモンバトルを終え、安堵から力が抜けてしまったのだ。何とかなった、と思っているところへリオルが歩み寄って来る。
「あ、ピカチュウ。お疲れ様。おかげで助かったわ。まともに指示できなくてごめんね」
ほとんどリオル頼みのバトルで、トレーナーは不要だった。ゲームはボタンを押せば攻撃してくれるが、こちらはそうも行かない。勝手が違いすぎてツムギは何もできなかった。
それでも、リオルをねぎらうことはできる。感謝の気持ちを伝え、リオルの頭を撫でてやると彼は嬉しそうに笑ってくれた。
何だかそれが愛おしくて、ツムギは独り言を言っていた。
「自分のポケモンって、いいなぁ」
そして、ツムギは違うと首を振る。
リオルはボールに入っていた。トレーナーがいるのは明らかである。
他人のポケモンを盗むのは、泥棒。そうゲームでも言っていた。
「でも、ピカチュウは人のポケモンだもんね。トレーナーに返さないと……後、謝らなきゃ」
ピカチュウ(仮名)のトレーナーに怒られるだろうが、それは自分が悪い。謝らなければ、と思うツムギだが、問題が一つ。
そもそも、リオルのトレーナーがどこの誰なのかさっぱり分からない。悩んだ末に、ツムギは常識に則り交番に届けることにした。
「とりあえず、交番かなぁ……ピカチュウがいれば、バトルできるし」
そうだね、と言うように鳴くリオルにツムギは微笑みかける。
「多分、近くにシティやタウンがあるでしょ! さあ、行くわよ!」
自らを奮い立たせるように、ツムギは張り切ったのだった。
- Re: ポケットモンスター フラワー・アメジスト ( No.4 )
- 日時: 2022/06/05 07:41
- 名前: 謎の女剣士 ◆7W9NT64xD6 (ID: b.1Ikr33)
どうも、ご無沙汰してますね。
もしくは、初めまして……でしょうか?
女剣士です、お初にお目に掛かれて光栄です!
アニポケも現在、色んな地方のポケモンたちが登場していますよ。
特にオリジナルキャラとして、ゴウとコハルが登場しているんですよねぇ。
分かります、久々にポケモンをやり出すと止まらないですよね。
こちらもこれからサイドに分かれて、ピカチュウを始めとするポケモンたちを出して見たいと思います!!
お互いに、無理のない体調で更新を続けて行きましょう。
それでは。
- Re: ポケットモンスター フラワー・アメジスト ( No.5 )
- 日時: 2022/06/05 18:25
- 名前: 瑠璃 ◆GU/3ByX.m. (ID: 66mBmKu6)
>>謎の女剣士様
コメントありがとうございます。初めまして、でしょうか。
最近はアニポケはめっきり見てないので、その辺りは詳しくないですね。この前のリーリエ一家の話は珍しく見ましたが、アニオリ要素を上手く混ぜ大変面白い回になっていました。
>>0にありますが作品に関係のないアニポケの話題、自作品の宣伝は今後はお控え下さい。今後は小説の感想を書いて頂けますと幸いです。応援ありがとうございます。更新速度は遅いですが、よろしくお願い致します。