二次創作小説(新・総合)
- Re: ツイステッドワンダーランド【闇の世界のゆる~い日常?】 ( No.7 )
- 日時: 2022/06/22 01:16
- 名前: 鈴乃リン ◆U9PZuyjpOk (ID: 0j2IFgnm)
【エース・トラッポラのバスケ部見学】
ハーツラビュルの一年生、エースが名門校ナイトレイブンカレッジに入学して早くも一週間が過ぎた。学校生活にも少しずつ慣れ始める時期の新入生たちの話題といえば『部活動』である。
ナイトレイブンカレッジには運動部も文化部も充実している。自分が思うような部活が無ければ同好会も立ち上げることができる為不足は無い。
そんな中、エースは運動が得意な為、運動部を見学しようと思っていたがピンと来る部活があまりない。エース本人、自分の手先の器用さを使えるような部活がなさそうに感じていた。マジフト部は魔法メインで人気も高いが器用さはあまり問われないだろうし陸上部はまさに体力勝負だ。
そんな中少し興味があったのはバスケ部。エレメンタリースクールの体育の授業でもバスケはよく行われていた。授業内でも光っていたし嫌いではない。クラスメイトの薦めもあり見学しようと体育館に足を運んだ。
キュ、キュッと体育館の床にシューズの擦れる音とボールの音が鳴り響いている。今日はちょっとしたゲームマッチをやっているようだった。
臙脂色のパーカーを着た黒髪に褐色肌の一人が立ちはだかる生徒の隙間を蛇のようにすり抜けてゴールを決めた。拍手が起こる。彼は特に喜ぶような素振りも見せず平然とした様子でゴールに入れたボールを手に取っている。
_まぁ、想像通りだな。
部活見学、と言えどバスケ部のやることなんて大してどこも変わらないだろう。あーあ、他にもっと面白い部活ないかな、等とエースはもう考え始めていた。
「やっぱオレ飽きた~」
ふわふわ、というか気怠そうな声が体育館に響いた。声のした方を見ると他の生徒に比べて明らかに身長が高い水色の体育着男子生徒の姿が。そんな言葉に動揺する部員は1人もおらず、寧ろ慣れた様子でいる(怯えているようにも見える)。
しかしそこでさっきゴールを決めた黒髪の部員が呆れたように声を掛けた。
「…フロイド、今日は折角の部活見学の日なんだ。もっとやらないのか」
「えー、だってつまんねぇんだもん。別に雑魚共が見ててもオレが何しようと自由でしょ?」
その身長の高い部員はどうやらフロイド、というらしい。彼は優しそうなたれ目を長い睫毛で隠し、じいっとエースを見ている。
「ん~?」
ふとエースと目があったフロイドが何とも言えぬ表情でこちらに歩いてきた。周りの一年生たちがひ、と声をあげる。彼の体育着と同じ色のベストを着た一年生はひそひそと話し始めていた。
フロイドはエースの目の前にやって来てはじっと一点を見つめている。
それはエースの制服のポケットに入っているトランプだった。トランプの入ったケースがポケットから少しはみ出ていたため遠くからでも見えたのだろう。
「ねぇねぇ、それでなんか面白いことしてよぉ」
「はぁっ!?」
フロイドの思ってもみなかった言葉にエースは思わず素で驚いてしまった。正直意味不明でやるわけねーだろ、と言いかけたが周りの反応からしてこの人は有名な人だろうか、そうなら知り合いになっておいて害は無い。しかもエースにはトランプを使った特技がある。
「じゃあこれ、見ててくださいね」
そう言ってトランプをよく切って一番上のカードを取る。
「今このカードに描かれているスートと数字を覚えていて下さい」
「はぁい」
「じゃあこのカードを真ん中に入れて次の一番上のカードを取ると……」
おお、と周りから歓声があがった。そう、真ん中に入れたはずのカードが今エースの右手にあるのだ。黒髪の部員もほう、と感心している。
さぁ、どうだ?エースはフロイドをちらりと見る。フロイドはきょとんとした顔をしていたが、次第に特徴的なギザ歯を見せて笑い始めた。
「あははははっ!!!くっだらね~~!」
「は、はぁ!?」
完璧な手品のはずだ。周りの反応も良かったし……と思考を張り巡らすエースに目尻に涙が浮かんでいるフロイドが笑いながら答える。
「だってバレバレじゃぁん、お前二枚目のカード見せてんだもん」
バレていた。フロイドは一目でエースの手品を見破っていたのだ。想定外のことにエースは頭が追い付かない。
そんなエースの表情も嘲笑うごとくフロイドが腹を抱えて笑っていたが暫くすれば落ち着いて、穏やかな笑みを浮かべた。
「でも面白いねぇ、オレンジ色でつんつんしてる“カニちゃん”」
それじゃぁねぇ~、と付け足しフロイドは体育館を後にした。
残されたエースは叫ぶしかなかった。
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「そーだったっけぇ?」
「そうっすよ、あん時のこと一生忘れられないですよ」
「……フロイドは相変わらずだがエースもだな」