二次創作小説(新・総合)

訪問者編 プロローグ 3 ( No.3 )
日時: 2022/04/19 00:36
名前: 広村伊智子 (ID: U9CqFAX7)

 
 最近は、別のプロジェクトも同時並行で進めているという。
 その内容は――タイムマシンの開発。

 聞いた瞬間に、馬鹿だな、と思った。

 私たちが誰に教育されたと思ってんの?
 あんたたち科学会トップレベルの権威者だって、その教育係に混ざってるのよ。

 タイムパラドクスとか、光速を超えることについてとか、そんなの私たちが知らないとでも思った?

 どこか冷めた目で漠然と、「遂に気でも触れたか」と思ったが、それはあながち間違いでも無いのだろう。

 皆、切羽詰まっている。
 不可能に近しくてもやれることはやろうと、『常識』や『理論』をかなぐり捨ててまで問題に取りかかっているんだ。

 ――そこまで思い至った途端、なんだかもうあの人たちを馬鹿に出来なくなってしまった。
 私もやらなきゃって気分に、否が応でもなってしまった。

 これも、政府機関に調教されて出来上がった思考回路なのだろう。
 笑えてくる。

 だけど、例え『一般家庭』に育っていたとしても、誰かから何かしらの影響を受けて、子どもは思考を形成していくのだろうと思えば、私たちの状況も誤差に思えてきた。

 それに――他の70人、皆が頑張ってる。
 私だけ、手を抜けるわけ無いじゃない。

 適当にやれば、きっと私は後悔する。

 そんでもって、頑張れば勝てる希望も見えてきたりして――そんな妄想に等しい夢を、頭の中で思い描く。
 思い描いて、自主特訓に励む。

 ――こんな無味乾燥な夢、持ちたくなかった。

 心の内で、嘆きながら。