二次創作小説(新・総合)

Re: 最期の陰謀が導く学園生活 ( No.75 )
日時: 2022/08/06 15:06
名前: ベリー ◆mSY4O00yDc (ID: QeRJ9Rzx)

疾風の神威×裏の陰謀 コラボ二次創作
『大切な人が居るのだから』

※注意事項
 〇これは野良様とのコラボです。
 〇疾風の神威を見たり、野良様に直接質問をしたりして、書いておりますが、キャラ崩壊、設定矛盾が起こる可能性があります。それは私が許せないため何かあったら是非指摘してください。
 〇これはコラボですが、本編との直接的な関わりはありません。二次創作です。

一問目【虚無】

 私の名前はレイ 麗菜レイナイッシュ地方のヒウオギシティ出身の駆け出しポケモントレーナーである。
 今夜は中々眠れなかったため、ポケモンセンターの外で涼んでいる。冷たい風が心地よく、先程までバトルをして熱せられた人体がゆっくりと冷えていく。

「おや、お久しぶりではないですか」

 すると後ろから声をかけられる。冷たく低い声。多分大人の男の人だろう。
 一瞬誰か分からなかったが、後ろを見て、特徴的な外見で私の脳内人物データベースで直ぐに引っかかった。
 ヒウンシティで実験と称していきなりバトルを仕掛けてきたちょっとやばそうな人。アクロマである。

「アクロマ……プラズマ団の」

「覚えてくださってたのですか。光栄です」

 アクロマは微笑み胸に手を当てる。プラズマ団と言うだけでインパクが強いのにその異様な髪型を足されると嫌でも覚えている。

「ところで、今回も実験に付き合って頂けませんか?」

 アクロマが世間話をするようにサラッと言った。前も実験に付き合わせれた。しかし、ただのバトルだったし、バイト代も弾んだため、今回も協力してもいいかも知れない。
 プラズマ団というところが引っかかる。でもバトルするだけなら大丈夫だろうと腰に着いたモンスターボールを取り出そうとする。
 しかし、私の手は空をスカッと切る。あるのはイーブイのモンスターボールだけだ。
 ポケモンセンターの部屋にモンスターボール置いてきた……
 私は顔をサッと青くした。

「ああ、今回はポケモンバトルではありません。この機会を試して頂きたく……」

 アクロマが何かのベルを取り出した。ただのベルである。黄色で月の光に当たって鈍く光っている。
 私は只怪しい目でアクロマを見つめた。

「何コレ」

「ベルです」

 私が聞くとアクロマは爽やかな笑顔で答えた。それは分かるのよ。まんまベルじゃない。見た目が。
 見た限り何の変哲もないベルである。しかし、私のような一般トレーナーに頼むということは、何かあるのだろう。
 ポケモンをおびき寄せるベルとか?

「効果は?」

「一定時間他の場所へ行くことが出来ます」

「んなバカな」

 私は呆れた。そんな子供だましが通じると思っているのだろうか。確かに、外に出てきたばかりの駆け出しトレーナーだが、流石に騙されない。
 ならば詐欺か? ベルを鳴らしただけで詐欺が起こることがあるのだろうか。
 元々このアクロマという人物の素性すら分からない。プラズマ団と言っても、ホウエンのロットさんのように良い人なのかもしれない。
 というか、そうじゃないとこんな堂々と出歩かないだろう。

「行きたい場所はありませんか? 一定時間ですが、何処へでも行けますよ」

 アクロマがテレビの通販番組のように見る手振りで説明し始める。アクロマは分かっているのだろうか。それが余計胡散臭く感じさせると。
 しかし、何処へでも行けるのは興味深い。

「本当に、何処へでも行けるんですね?」

「はい」

「特殊な電波が流れている場所でも行けるんですよね?」

「それを確認するための実験です」

 アクロマはニコニコしながら顔が変わらない。その顔は私も知ってる。研究者が早く実験したくてたまらない時の顔である。
 それに、特殊な電波がある場所は行けない可能性がある。
 私は数秒考えて……

「やります」

 そう言った。アクロマは少し目を見開き、驚いた。

「こんな胡散臭いバイトをするのですか」

「胡散臭くしてたのは7割型アクロマだけどね」

 私は腕組みをして、高圧的に言った。アクロマは苦笑いをしていたが、悪いとも思ってないようである。
 別に反省を促してるつもりは無いため良いのだが。

「では説明致しましょう。行きたい場所の風景を強く考えて、ベルを鳴らしてください。気持ちの強さによって行ける時間が決まります。」

 アクロマは説明しながら素早くベルを私に持たせる。その仕草が紳士的で自然だったため、私も自然と受け取ってしまった。
 結構重さがあり、驚いた。そして、持ってから分かるのがやはり普通のベルだと言うことだ。
 中にゼツが入っていてこの直径五十cmのベルを振るのだろう。重いわよ。
 特に変わった所など無いため好きな場所にいけるか怪しい。そんな機械なんて白髪ポニーテールの紫男みたいなやつしか作れないのに、何故アクロマは持ってるのだろう。

「注意事項は?」

「……はぁ。抜け目無いですね。
 注意事項は、余計な思いが想像してる場所より強くなると支障が出るから気をつけてください」

 アクロマが残念そうにため息をつく。注意事項は最初から話さないつもりだったのだろう。聞いてて良かった。

「余計な思いって?」

「基本的に感情です。嬉しい、悲しい、腹立たしい等です。しかし、その場所に思いを馳せる程度なら問題は無いのでそんなに心配しないで大丈夫です」

 そう言われると少し不安になってしまう。まあ、大丈夫だろう。私はベルの頂点を掴んで、鳴らした時に音がこもらないようにする。
 音の響き方で効果が変わるかは知らないが、やって損はない。
 アクロマの方を見る。アクロマは微笑みながら頷く。

 行きたい場所を思い浮かべる。
 ひんやりしてて、歩く度にキシキシとなるボロボロの床。ちょっともたれかかっただけで壊れる壁。
 上を見ても偽物の太陽しか見えない。よりどりみどりな木々に流れる小川。白い大岩が重なる場所。ビルの五回まであり、建物が作れると思う程の太さの大樹。

 いい調子だ。このままベルを鳴らしたら行きたい場所に行けるだろう。
 行ったらどうしようか、そこを見て回る? いつもの場所にいく? 誰かと会う?

 その瞬間。一瞬だけ、そんの一瞬だけ赤黒い液体の様子が頭をよぎった。
 一瞬だけだったのに、それが紙に落とした水性絵の具のようにジワジワ広がる。上手くいったのはそこまでだった。

 飛び散る四肢に喚き声を上げる生き物。綺麗な小川は濁って泥水同然。木々は触ったら折れそうな木の群れに、しわしわな木の実が数個生っている。
 大樹は見ただけで生気を吸われそうなおどろおどろしい所で、大岩も入ったらあの世に連れていかれそうだ。

 黒くしわしわな人が手を出して、恨みつらみを呟く何かが私を包み込む。それに続き他の人とは思えない物体に、泣き崩れたポケモン等が私を引っ張り始める。
 これらは全て空想上のものだと言うことは分かる。現実でこんなことは無いしありえない。分かっていても、私の心の中が様々な言葉で溢れかえる。
 謎の生き物達の地の底を這うような恐ろしい単語達と私が今思ってる事が溢れ出てくる。自分でも一つ一つ認識することが難しい。
 そんな様子を他人事のように見ている自分がいる。

 私はそんな状況だったのに、何も考えずにベルを鳴らしてしまった。

『ゴーンゴーン』

 低く不気味な金属音が黒い空に吸収されるように鳴り響く。それと共に不気味な生暖かい風が吹いてきた。
 よく考えたら、かなり感情的になっていたのに安易にベルを鳴らすべきでなかった。しかし、十秒位待っていても何も起こらない。
 そうだ、これは何の変哲もないベルである。オカルトのような物だ。信じた私がバカだったが、これでお金が貰えるなら安いものだ。

「何も無かったから返っ」

 私がベルをアクロマに返そうとすると、氷のように冷たい何かが私の片足に張り付く。
 下を見ると地面に黒い穴が空いて、そこから黒いモヤの手が私の片足を掴んでいる。
 ポケモンか?! しかし、こんなポケモン見たことがない。

「アクロマっ!どうしたらっ」

「私には分かりません」

 私が焦り混じりの声を出すとアクロマは即答でそう言った。ならどうすれば良いのだ。
 取り敢えず振り払うか? しかし、掴まれてる部分から気力のような物が吸収されてる感覚がある。
 クソッ! こんな事になるならば話に乗るんじゃなかった!
 誘惑に負けた自分自身に嫌気がさす。

「多分貴方の感情の問題なので、それに関する何かを断ち切ったら元に戻れると思いますよ」

「私がどっかへ行く前提なの……」

 アクロマが最初から表情は変わらず微笑んでおり、焦りが見えない。マッドサイエンティストは皆こんな奴なのか。
 必死で頭を働かせた。黒い手はどんどん増えてきて、その度に私の力は抜けていく。このままでは穴の中に引きずり込まれる。アクロマは分からないというのだから頼りにならない。私も解決策は浮かばない。
 (あっ これ、無理だ)
 私は遅いながらもそんな結論に至った。アクロマは初めからこの結論に至っていたのだろう。

 私は黒い手に身を任せ、穴の中に吸い込まれて行った。

 ◇◇◇

「はぁっ!」

 掛け声と共に大鎌の"黒咲くろさき"を振り下ろした。目の前に黒咲が振り下ろされると、その起動に沿って赤黒く、とても生物のものとは思えない血液が飛び散る。
 服に返り血が飛ばぬよう、私は丁寧にかわす。流石に全てをかわすことは出来ないため、少しは服に飛び散ってしまうが、仕方の無いことだと思い、次の怪物に目を向けた。

 黒い霧がまとわりついた謎の生物……いや、生物かどうかも分からない。その名の通りの人を無差別に襲う化け物。これは"虚無"という名があり、A県水瀬市中心に発生している。
 私の名前は夜明よあけ 刹那せつな17歳。この虚無と呼ばれる危険な化け物を抹殺するために作られた組織。"神威団"に所属している女子高生だ。
 今日も発生した虚無の討伐に来ていた。しかし、いつもと比べれば規模は小規模のため、早く終わるだろうと踏んでいる。

 次に襲いかかってくる虚無が目の前に居た。私は何気に少し重い黒先を振るために構える。そして、虚無を切ろうとすると、"何か"の影響で体の重心がズレる。

「っ?!」

 口から一息の二酸化炭素が漏れる。
 何かに足を引っ張られた感触を覚え、尻もちを着いてしまった。
 痛い……が、虚無が目の前にいる以上肝が氷点下並みに冷えた。このミス1つで大怪我に繋がり、最悪死んでしまう。
 すると虚無が至近距離に迫っていた。黒咲は手から離していないが、今から振り下ろせるかと言われると無理である。

 (間に合わないっ!)

 そう思った瞬間、足元から伸びて、私の足を掴んでいる不気味な黒い手が目に付いた。
 足元にはマンホールぐらいの大きさの穴が空いているさっきから続々と黒い手が伸びて、私を引っ張って穴の中へ引きずり込もうとしている。
 この手は明らかに虚無である。目の前には虚無。足元にも虚無。しかも無数の。
 四面楚歌とはこのことである。しかし、目の前の虚無に攻撃を受けて怪我を負い、最悪死ぬぐらいなら、この穴の中に入った方が安全かもしれない。
 もちろん穴が安全な保証は無いが、今ここで怪我を負うよりは断然良い。
 私は即座に判断を下し、黒咲を持って素早く穴の中に降りていった。

 ◇◇◇(レイナ)
 
 真っ黒、真っ黒、1面真っ黒である。しかし、風きり音が耳元で聞こえるため、かなりの速度で落ちているのが分かる。
 この状況はマズイ。そこが暗く見えないため、着地をする時絶対変な体制になってしまう。そして、落ちている高さも多分かなりあると思う。
 ある程度の高さと体制が悪ければ誰でもだが、最悪即死してしまう。
 必死に体制を整えようにも底が見てないため整えるタイミングが分からない。

 そんなことを考えていると、白い雲が見えた。それと同時にいくつものビルが立っている場所が見えた。
 かなりの高さ落ちていると思っていたが、雲より高いなんて聞いていない。雲より高い場所から落ちたらどんな生物でも死ぬ。
 対処法は思いつかない。空中でできることなんて無いし、手持ちはイーブイだけである。
 様々な解決案が頭の中を飛び交う中、地面はすぐそこに迫っていた。私は最期の足掻きとして、体制を整えて着地した。

 かなり足がビリビリした。それは手のひらまで伝わってきて、膝を着いてしまった。
 ─助かった、怪我もない。
 それを第1に確認したが、雲の上から落ちてきたのに何故手足が痺れる位で助かったのだろう。普通なら運が良くて骨折だと思うのだが……
 高いところから落ちて手足が痺れるなんて、幼稚園児がジャングルジムのてっぺんから飛び降りた時のようで久しぶりの感覚を覚える。

 取り敢えず周りを確認してみよう。足元から胸下辺りまで薄い白い霧が蔓延っていて、周りにはビルが立ち並んでいる。空も青白く、太陽の光は見えないのに、周りの様子が見える程度には明るい。
 地面はアスファルトで固めてあり、駐車場やカフェ等、ヒウンシティのような大都会である。
 周りの景色が全体的に白く、空気も冷たい。冬の夜と朝の狭間のような空気感だ。
 ここがどこかは検討がつかない。イッシュ地方でこれほどの都会だとヒウンシティしか思いつかないが、ヒウンシティにこんな場所は見たことがない。
 ということはここはヒウンシティではないのである。ついでにイッシュ地方でもない。
 この時点で私は行きたい場所に行けなかったのだと言うことが分かる。
 なら別地方か? 別地方の主に都会は結構把握してるつもりなのだが全然記憶に当てはまらない。
 なら地下か? しかし、空から落ちてきたため地下なわけが無い。

 ─ここはどこだ

 私は震えた手でモンスターボールからイーブイを出す。イーブイは鳴かずにチラチラっと周りを1分程見つめる。私はそれを静かに見つめる。イーブイが確認し終わったのかいつものジト目で私を見つめる。

「ブイッ」

 イーブイが一声鳴く。何となく言ってることは分かる。『何処?』と言ってる。
 分からないから出したんだよ。
 私はそう目線で訴える。イーブイは特に反応もせず私の肩に乗った。
 取り敢えず探索をした方が良いか。

 私はゆっくりと歩き出した。