二次創作小説(新・総合)
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.59 )
- 日時: 2024/06/09 20:55
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: CjSVzq4t)
IFの世界の優彼と魔法使い達。
IF優彼が魔法使い達と信頼を築いていった過程を描いた物語。
今回の主軸となるのは、東の国の先生役のファウストです
賢者の魔法使いの1人、ファウストは自室で目を覚ます。
結界に使った媒介の調子は問題なさそうだ。
コンコン…
優彼「ファウスト、おはようございます」
そう言って賢者である優彼は、扉越しに朝の挨拶をする。
ファウストが結界を解いて扉を開けると、優彼の傍らには今日の近侍であろう後藤の姿があった。
この朝の挨拶は、優彼がこの世界に来たばかりの頃から優彼が始めている習慣でもあった。
ファウスト「ふふ、おはよう賢者」
ファウストは微笑みながら優彼の頭を撫でる。
そうすれば、彼は「わー!縮んじゃいますよー!」と言いながらもファウストに頭を撫でられる。
このやり取りも何度繰り返しただろう。
ファウストは優彼と出会ったばかりの時を思い返していた。
・
優彼と賢者の魔法使いが出会った時の事、あの時のファウストは〈大いなる厄災〉からヒースを庇い瀕死の重傷になっていた。
あの時の自分は、痛みに耐えながら自室のベッドに伏せっていた。
ホワイト「ファウストや」
スノウ「何か望みはあるかの」
ファウスト「・・・っ・・・は・・・望み・・・?何もないよ・・・」
ブラッドリー「遠慮すんなよ東の呪い屋。最期の瞬間まで無欲でいることはない」
この時はオズも魔力が戻っておらず、ファウストを救える唯一の希望が優彼が間に合う事だけだった。
カインとヒースは魔法管理省が賢者を丸め込もうとしているかもしれないと考え、ムルとシャイロックと共に中央の塔に向かっていた。
もしもこの時4人が間に合わなければ、ファウストは間違いなく石になっていただろう。
ブラッドリー「東の魔法使いは陰気だし、特にお前は呪い屋なんてやってっから根暗そうで好きじゃなかったが・・・仲間を庇って死にかけるなんて馬鹿だ。馬鹿な奴は嫌いじゃないぜ」
ブラッドリーの褒めているのか、そうじゃないのか分からない評価を聞きながらも、ファウストは過去の事を思い出していた。
ファウスト(ああ、これが走馬灯っていう奴なんだろうな・・・)
スノウ「ファウストよ、何かないか?」
ホワイト「ブラッドリーもこう言っている。遠慮するでないぞ」
ファウスト「・・・ないよ・・・僕が大嫌いな軽薄な人間達は、何をしなくとも身を滅ぼしていくだろう・・・ざまを見ろ・・・自業自得だ・・・くく・・・はは・・・」
そう言うファウストに、ブラッドリーは「やっぱり陰気だし根暗い」と溢すが、信じていた親友に裏切られたというファウストの過去を思えば人間を呪っても仕方がない。
ファウスト「・・・やっと長かった時間が終わる・・・」
オズ「・・・ファウスト・・・」
ファウスト「・・・ようやく解放される・・・神様、早く僕を自由に・・・」
その時、オズがファウストの部屋の扉を見る。
ブラッドリーがどうかしたのかと聞こうとする前に、部屋の扉が蹴り壊された。
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.60 )
- 日時: 2024/06/09 20:58
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: CjSVzq4t)
優彼「あわわわわ・・・何やってるの信濃君!」
信濃「あっちゃー・・・力加減間違えちゃったか・・・」
現在6人(正確には5人と一振)の視界に映るのは蝶番から外れ、無残にも蹴り壊されてひしゃげた木製の扉。
何故こうなったのか?それに関しては数分前に遡る・・・
・数分前・・・
優彼はムルと名乗る魔法使いの箒に、信濃はシャイロックと名乗る魔法使いの箒に乗って魔法舎と呼ばれる建物へとやってきた。
優彼「わぁ!わぁ!」
信濃「あはは、大将楽しそう!」
ムルの飛び方はかなりめちゃくちゃだったが、興奮が勝ったのか優彼は酔うことなく魔法舎に辿り着いた。
カイン「急ぎましょう。賢者様、お手をどうぞ。あちらへ!」
カインの真面目な顔を見て、優彼は思いだした。
今、人命に関わっている。はしゃいでいる場合じゃない!
優彼「あ、は、はい!」
優彼がカインの手を取ろうとすると、信濃が待ったをかけた。
そして、優彼の前に少し屈んでおんぶの体勢に入る。
もしや、乗れという事だろうか・・・?
信濃「カイン、大将はかなり足が遅い。俺は兄弟や短刀の中じゃ機動低い自覚はあるけど・・・大将の足で行くより俺が大将抱えていった方が早いよ」
優彼「え、でも・・・「おんぶが嫌ならお姫様抱っこにしようか?」ごめんなさいおんぶで良いです」
信濃「よろしい。それじゃあヒースクリフだっけ?案内お願いできるかな?」
ヒース「はい、ファウスト先生がいるのは4階です。ついてきてください!」
ヒースの案内で信濃は優彼を抱えて魔法舎を駆け上がる。
その後ろをカインとムルとシャイロックもついてきていた。
もしこの場にいたのが打刀や太刀大太刀、槍や薙刀の刀剣男士であれば、優彼もヒースも俵担ぎで運んでここまで来ていただろう。
ヒース「この部屋です!」
信濃「了解!はあぁ!」
信濃は部屋の前に辿り着くと、扉を思いっきり蹴り上げた。
・回想終了
扉を蹴り壊したせいか、信濃から降ろされた優彼は部屋の中にいた魔法使い達からの視線を強く感じ、思わず縮こまった。
部屋の中にいたのは幼い双子であろう黒髪の魔法使いと、白黒の髪をしたコートを着た魔法使い、長い紺色の髪をポニーテールにした魔法使い。
そして、蝋のように血の気のない白い肌をして、体の至る所に包帯が巻かれ、その下から毒々しい煙がシュウシュウと上がり、時折火花が飛び散っている魔法使いの姿だ。
ヒースクリフ達が助けて欲しいというファウストが彼であることは信濃には痛いほど分かった。
信濃はふと優彼を見る。優彼は顔を真っ白にして、その場に立ち尽くしていた
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.61 )
- 日時: 2024/06/09 21:00
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
ーうっ・・・くぅ・・・!
ーお願い!国広さん死なないで!
優彼の脳裏に浮かぶのは、まだ自分が10歳だった頃。
審神者になって間もない頃だった。
初期刀である国広を顕現させて早々に喘息の発作が出て、彼にトラウマを負わせてしまったという想定外が起きたものの、国広は単騎で函館出陣へと向かった。
そして、同程度の練度の時間遡行軍の連携に翻弄され、国広は重傷状態となって死かけた。
あの後すぐにこんのすけから手入れの説明を受け、手伝い札ですぐに国広の怪我を治したものの、まだ10歳で人の死に・・・終わりに慣れていなかった優彼にとって、その光景は今もなお忘れる事が出来ないトラウマとなってしまっていた。
ベッドの上で苦しんでいる魔法使いが、優彼には一瞬国広に見えた気がする。
優彼「ぁ・・・国広・・・さ・・・」
その小さな声を、信濃は聞き逃さなかった。
優彼の不安を和らげるように手を握る。
その温かな温度に、優彼の心は冷静になる。
オズ「・・・間に合ったか・・・」
優彼「あなたは・・・?」
シャイロック「ファウストの容態は?まだ生きてます?」
ファウスト「・・・生憎な・・・」
シャイロック「よかった。〈大いなる厄災〉との戦いで犠牲になった魔法使いはちょうど10人。11人ではキリが悪いと思っていたところですよ、ファウスト」
ヒース「先生!ファウスト先生・・・!」
ヒースクリフがファウストの横たわる寝台へと縋り付く。
ファウスト「・・・ヒースクリフ・・・」
ヒース「もう大丈夫です!賢者様が来てくださいました!賢者様が助けてくださいます!」
ファウスト「・・・お前に怪我は・・・?」
ヒース「・・・っ・・・ありません・・・」
そのヒースクリフの言葉に、ファウストは安心したかの様な微笑みを浮かべる。
そして、腕を上げて彼の手を握ろうとするが、その手は寝台にパタリと落ちる。
瞼を開けたまま、ファウストは動かなくなってしまった
ヒース「先生・・・!嫌だ、死なないで!」
スノウ「いかん!息をしとらんぞ!」
ホワイト「賢者よ急ぐのじゃ!」
優彼(急ぐって、どうやって・・・?助けるって、どうやって・・・?)
優彼は審神者であり、特務司書であり、賢者として召喚されたものの、本質は何処にでもいる高校1年生。薬研や森のように卓越した医術の才は持っていない。
助けたい、救いたい、そんな気持ちは湧き上がってくるのに、何もできないという無力感が優彼の胸に湧き上がる。
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.62 )
- 日時: 2024/06/09 21:02
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
心の中でパニックになる優彼の前に、オズが歩み寄り左手を差し出す。
オズ「賢者よ、手を。私の名はオズ。中央の魔法使いだ。オマエの力を借りる。」
優彼の答えはとっくに決まっていた。
でなければここにいる意味はない、そう思えるくらいに決意は固かった。
彼は自らの両頬を強くはたく。
その表情は、先程まで魔法に強く興奮していた高校生ではなく、審神者であり、特務司書として刀剣男士や文豪達を導く時の表情に変わる。
優彼「僕の力で助けられるのなら・・・遠慮なく使ってください!」
そう叫んで、優彼はオズの左手を強く握りしめた。
その瞬間、オズを中心にして部屋に風が強く吹きすさぶ。
カインもヒースクリフも、シャイロックもムルもブラッドリーも、スノウとホワイトも信濃も・・・
祈るようにその光景を見つめる。
オズ「《ヴォクスノク》」
呪文をオズが唱えると、淡い光がファウストの体を包み込む。
ファウストの体から煙と火花が消えていき、怪我が回復していく。
スノウ「成功じゃ!」
ホワイト「成功じゃの!」
ヒース「先生の体から煙が消えていく!」
その様子に安心したのもつかの間、カインの声が響く。
カイン「名前を呼びかけろ!ファウスト、ファウスト・・・!」
優彼(あ、そうだ・・・怪我・・・ぽいのを治しただけだから、まだファウストさんの意識は戻ってない・・・!)
シャイロック「ファウスト、しっかり」
ムル「起きてファウスト!まだ寝る時間じゃないよ!」
ブラッドリー「目を覚ませ!東の呪い屋!」
信濃「ファウストさん起きてー!」
優彼「・・・て・・・起きてください!しっかりしてください!ファウストさん!」
どれだけファウストに呼びかけただろうか。
ファウストの意識は回復した。
ファウスト「・・・っうぅ・・・っひどい・・・せっかく死ねたところを・・・」
ファウストが目を覚ました。
良かったと安心する優彼の体から力が抜けて倒れ込みそうになるが、近くにいたオズが支える。
カイン「賢者様、大丈夫か!?」
優彼「は、はい・・・何か足から力が抜けちゃって・・・」
信濃「大将ごめんね〜」
そう言って信濃は手袋を外し、左手を自らの額に、右手を優彼の額に当てる。
その行動はどう見ても熱がないか確かめる仕草だった。
信濃「熱はなさそうだね〜。となると、安心したって感じかな」
優彼「何で君は、僕が何か不調あったら風邪を疑うのさ」
信濃「そりゃ大将、いつも風邪引いてるからね」
優彼「わぁー、否定できない・・・」
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.63 )
- 日時: 2024/06/09 21:04
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
優彼はスノウとホワイトに、ある場所に案内されている途中だった。
優彼「スノウさん、ホワイトさん・・・」
スノウ「我らに対して敬称は使わんで良いぞ。賢者とはそういうものじゃ。」
優彼「じゃあ・・・スノウ、ホワイト」
そう言った瞬間、後ろを歩いている信濃からものすごい視線を感じた。
チラ〜っと後ろを見ると、信濃は嫉妬と羨望の混じった瞳で3人を見ていた。
優彼「し、信濃君・・・?」
信濃「スノウとホワイト、良いな〜・・・早速大将に呼び捨てにされちゃって。俺初鍛刀でずっと一緒にいるのに、大将からは未だに君付けなのに、ほぼ初対面のそっちに呼び捨て取られるなんてな〜・・・」
優彼(信濃君が拗ねたー!?)「ご、ごめんね!えっと、信濃」
優彼が信濃を呼び捨てにすると、彼から桜の花弁がひらひらと舞う。
相当嬉しかったという事と、思いの外好評であることが分かった。
もしもここにいたのが清光や長谷部、静形といった主ガチ勢だったなら、間違いなく優彼とスノウとホワイトは至近距離の桜ボンバーに巻き込まれただろう。
優彼(これからは皆を呼び捨てにしたほうが良いかな?)
そう考えながら、ある部屋にたどり着く。
その部屋は図書室で、かなりの蔵書量があった。
優彼「わぁ!本がいっぱい!」
スノウ「これらは全て賢者の書じゃ。」
優彼「賢者の書?」
ホワイト「そうじゃ。異界からこの世界にやって来た歴代の賢者が書き記した物じゃ」
その言葉に驚き、優彼は部屋を見渡す。
巨大な本棚にはいくつも賢者の書が収められており、正確な数は分からない。
1人の賢者色んな事を書いている内に一冊書き切って二冊目以降に入った可能性を考慮したとしても、数が多い。
何人がこの世界にやってきていたのだろうか?
スノウから前任の賢者が残した賢者の書を渡される。
日本語で書かれているから優彼や信濃には簡単に読める。
だが、優彼の脳裏によぎるのはベッドに伏せるファウストの姿。
大丈夫かどうか、未だに不安になって、現在前任の書いた賢者の書を流し読みしている状態だ。
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.64 )
- 日時: 2024/06/09 21:06
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
ある程度大切な部分は読んでいるが、今もベッドで伏せているファウストへの心配のほうが強いのだろう。
優彼(前任さんの日記みたいな感じか・・・元の世界に帰れない?いや、大丈夫か。もしも本当に戻れないってしたら、通信機の状態が安定した時本丸に連絡繋いで、本丸経由でこの世界と行き来できるようにすればいいし。・・・って勘違いだったって・・・前任さん、大雑把な人だなぁ・・・)
何もすることが無いため賢者の書を読み耽る。
古文っぽいやつは『候』しか読めなくて詰んだだの、英文メールは後輩に任せきりにしてたから読めなくて詰んだだの、前任の前任の賢者の書がアラビア語で読めなくて詰んだだの、日本語の賢者の書は多分世界初だということが書かれていて、日記とマニュアルが混ざっている印象だった。
優彼(古文っぽいやつは信濃に・・・というか、刀剣男士に読んでもらった方が早いな。英語はある程度いけるけど・・・どうしてもわからない所あったらイギリスやアメリカの文豪の皆さんに読んでもらえば良いな。アラビア語は・・・本丸からアラビア語の辞書送ってもらえば大丈夫かな。もしもフランス語やドイツ語の賢者の書が出てきたら、ボードレール先生やランボー先生、ゲーテ先生に読んでもらえば良いな)
信濃「そういえば大将の前の賢者、どんな人だったの?」
スノウ「要領のよい青年じゃったの。黒い髪でお喋り好きで」
ホワイト「リーマンだと言っておった。元の世界では残業手当というものを探しておったそうじゃ」
優彼・信濃(前任の賢者さん、多分ブラック企業の社畜だったんだろうな・・・)
優彼と信濃は心のなかで前任にお疲れ様と言う。
前任の賢者が使っていた部屋に案内される。
元々賢者が1人で来る事を想定されていた部屋にはベッドも机もクローゼットも1つしかない。
スノウ「少し任せておれ」
ホワイト「すぐに終わることじゃ」
そう言ってスノウは女性の、ホワイトは男性の人形を取り出す。
スノウ・ホワイト「《ノスコムニア》」
その呪文が響き渡ると、部屋の間取りが変わる。
窓を中心にして、ちょうど鏡合わせになるようにベッドや机、クローゼットが置かれる。
これなら問題なさそうだ。
優彼「スノウ、ホワイト、ありがとうございます」
スノウ「気にせんで良い」
ホワイト「何かあればいつでも相談に乗るぞ」
優彼「ありがとうございます!」
優彼も1日に色々あって疲れたのだろう。
着替えることもなくベッドに横になると、そのまま眠ってしまった。
信濃「あー、せめて着替えたほうが・・・って言っても寝てるし仕方ないか」
信濃は眠る優彼に掛け布団をかけ、自身もパジャマに着替えてベッドに横になるのだった
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.65 )
- 日時: 2024/06/09 21:08
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
優彼は魔法舎の自分と信濃に与えられた部屋で目を覚ます。
この時優彼は初めてパジャマに着替えていなかった事に気がついたが、その時には前日着ていた服はシワだらけになっていた。
優彼「わ〜!シワだらけだよ〜!」
信濃「いや〜、気持ちよさそうに寝てたから起こすの勿体なくて」
優彼「遠慮なく言ってくれて良かったのに〜・・・」
そう言って優彼はクローゼットを開けようとすると、コンコンとノックが響く。
優彼「あ、はい!」
カイン「おはようございます、賢者様。賢者様、まだ寝てるのか?」
優彼「あ、起きてます!カイン、ちょっとまっててください!急いで身支度を整えますので!」
信濃「そこまで気にしなくてもいいのに」
カイン「あはは、信濃様の言う通り、寝起きのままでも賢者様は素敵だ。」
信濃「カイン、俺の事は信濃って呼び捨てでいいよ~」
身支度をしている中で、繰り広げられる信濃とカインの会話に、優彼は2人共本当にモテそうだなと考える。
急いでクローゼットから服をとりだして着替える。
だが、その服は成人した人間が着ることを想定とされているサイズ感で、病弱で小柄かつ華奢な体格の優彼にはかなり大きくダボダボしていた。
優彼「よし、お待たせしました」
取り敢えずズボンの裾をまくり扉を開けると、そこにはカインがいた。・・・が、彼は辺りをキョロキョロする。
カイン「あれ?2人共何処にいるんだ?」
優彼「え?何言ってるんですか、カイン?ここにいますよ」
そう言って優彼はカインの手を握る。
この時初めてカインは優彼の姿を認識できたようだった。
カイン「お、賢者様はいたな。信濃はどうしたんだ?」
優彼「信濃も隣にいますよ?」
信濃「そうだよ。大将の隣でカインの目の前に!」
そう言って信濃は普段一期の懐に入るときと同じ感じに、カインに抱きついた。
カイン「あ、信濃もいた。どうして隠れていたんだ?」
優彼「僕も信濃も隠れてないですよ。信濃は隠密高いけど、僕魔法使えないし・・・」
カイン「そうなのか・・・なら何故見えなかったんだろう」
カインはしばらく考え込んだ様子だったが、「まあ良いか」と言って笑う。
優彼「それで良いんですか・・・?」
カイン「まあな。と、その服かなりブカブカだな。《グラディアス・プロセーラ》」
カインが呪文を唱えると、優彼の着ていた賢者の服が丁度いいサイズ感に変わる。
優彼「わあ、ありがとうございます!」
カイン「気にしなくて良いさ」
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.66 )
- 日時: 2024/06/09 21:10
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
優彼はカインからオーエンという北の魔法使いについての話と王子であるアーサーの話を聞いた。
カインから散歩しながら話そうと言われたが、カインと信濃には中庭で待ってもらっている。
そして、優彼が向かうのは昨日訪れた4階にあるファウストの部屋だった。
信濃が蹴り壊した扉は誰かが魔法で直したのか、元に戻っていた。
優彼は恐る恐る扉をノックする。
その数秒後、部屋の中から「何だ」という声が響いた。
遠慮がちに優彼は扉を開く。
ベッドの上に座るファウストは、昨日よりは格段に良くなっているだろう。
優彼「ファウスト、失礼します。昨日は挨拶できずにすみません。賢者として召喚されました、時継優彼です」
ファウスト「そうか。東の魔法使い、ファウスト。以上」
お互い一言で自己紹介が終わり、部屋は沈黙に包まれる。
優彼は基本的人見知りする方だが、本丸が賑やかな分、沈黙はかなり苦しいものだった。
だからこそ、話題を出した。
優彼「あの、その・・・お怪我は大丈夫でしょうか・・・?」
ファウスト「生憎な」
優彼「よかったぁ・・・」
心の底から安堵する優彼の表情に、ファウストはかつての親友であり、幼馴染のアレクの姿を眼の前の賢者に重ねた。
ファウスト(この賢者は、あいつ・・・アレクや昔の僕みたいだ。)
優彼「ファウスト?どうしました?」
ファウスト「いや、何でもない。それを聞くために来たのか?」
優彼「はい。怪我がすごかったから、大丈夫かと不安になって・・・すみません、朝から迷惑でしたよね。えっと、何かあったら言ってください」
そう言って優彼はファウストの部屋から出る。
その姿を見届けると、ファウストは再びベッドに沈み込んだ。
昨日の事は朧気にだが覚えている。
気を失っていた上に、朧げで自信はないが、賢者の発した言葉が僅かに記憶に残っている。
『僕の力で助けられるのなら・・・遠慮なく使ってください!』
ファウスト(賢者は、眩しいな・・・本当に、アレクや昔の僕みたいだ)
まっすぐに前を見据えて助ける事を即決し、こうして自らを強く心配している彼は、本当に人が良すぎる。
ファウスト(全く・・・馬鹿を見そうで不安になるな・・・)
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.67 )
- 日時: 2024/06/09 21:12
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
新たな魔法使いを召喚し、本丸と魔法舎を繋いでしばらく経った日、優彼は夜中に目を覚ました。
優彼「ふぁあ・・・夜中に起きちゃった・・・」
一期「主、どうされました?」
優彼「一期。少し目が覚めてしまって・・・」
一期「では、紅茶でも飲みましょうか」
優彼「じゃあ、ついでに一期をキッチンの方に案内しますね」
そう言って優彼と一期は部屋を出た。
キッチンへと向かおうとするが、2人は奇妙な物を見る。
月明かりに照らされた廊下の上に、ふわふわと薄紫色の花弁が浮かんでいた。
優彼「花弁・・・?」
優彼が触れようと手を伸ばすが、花弁に触れることはなく優彼の手をすり抜けて消える。
一期「幻のようなものでしょうか?」
2人が呆けている中で、花弁は粉雪へと変わる。
粉雪もすぐに消えてしまう。
優彼と一期はお互い顔を見合わせると、頷き合ってその幻想的な幻を追いかけた。
それは4階のある部屋から溢れていた。
優彼「あの部屋・・・!ファウストの部屋・・・!」
レノックス「賢者様・・・?こんな夜更けにどうしたんですか?」
優彼「レノックス・・・」
レノックス「この雪は一体・・・?」
雪がファウストの部屋の扉の隙間から漏れ出ている。
レノックスはファウストの従者だった過去を持つ為、ファウストを助けてくれた優彼に対して、レノックスは感謝と信頼の感情を抱いていた。
優彼「分からないんです。ファウストの部屋の扉から漏れてるみたいで・・・」
優彼達が見ている前で、ひらひらと舞う粉雪はちらちらと赤い火の粉へ変わっていった。
それを見た一期の表情は硬くなる。
火の粉は魔法舎に移る事なく、先程見た花弁や粉雪のように消えていく。
だが、優彼に心配を抱かせるには充分すぎた。
一期「これは何かの魔法でしょうか?レノックス殿は見たことはありますか?」
レノックス「いえ・・・」
優彼は迷いながらノックをする。
優彼「ファウスト。ファウスト・・・」
中から返事は無い。寝ているだけかもしれないが、不安は消えない。
今度はドアノブに手をかける。・・・が、扉は開かない。
ドアノブは回るから、鍵がかかっている訳ではなさそうだ。
建付けが悪くなっているのかと思ったが、レノックスは心当たりがあるようだ。
レノックス「結界を張っているのかもしれません。ファウスト様は用心深い方ですから」
優彼「結界・・・」
やがて、火の粉は炎へと変わる。
一期は顔を強張らせ、一歩下がる。
その様子を見た優彼はこの時ばかりは一期を近侍にしていた事を後悔した。
そこに階下からフィガロがやって来た。
フィガロ「どうしたんだ、3人共?」
優彼「フィガロ・・・」
優彼が説明する前に、フィガロは異変を見て眉をしかめた。
フィガロ「下がって、扉を開けるよ」
フィガロはドアノブに手を触れ、厳かに呪文を唱えた。
フィガロ「《ポッシデオ》」
その瞬間、ガラスが割れるような空気が割れるような音が響き、ドアノブが回る。
優彼「・・・あ・・・」
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.68 )
- 日時: 2024/06/09 21:14
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
扉を開けて飛び込んできた光景に優彼は絶句した。
ファウストが眠っているベットを、燃え盛る炎が取り囲んでいる。
それだけではない。不可思議な幻がひしめき合って、ファウストを取り囲んでいた。
窓際に並ぶ処刑台の丘の景色に、天井に浮かぶアーサーとよく似た銀髪碧眼の少年の姿、フィガロやレノックスの姿もある。
沢山の人に慕われて、穏やかで優しい笑顔を浮かべるファウストの姿。
そして、磔にされて業火に焼かれるファウストの姿も・・・
ベッドで眠っている彼はとても苦しそうに、悲しそうに唸っている。
何が起きているのか分からず呆然とする優彼に、レノックスは一言零した
レノックス「これは、ファウスト様が見ている夢だ・・・」
優彼「夢・・・?」
ファウスト「・・・ん・・・」
フィガロ「出よう。目が覚める前に」
フィガロに促されるまま、優彼達は部屋を出て中庭へとやってくる。
その最中、優彼はあることを思い返す。
カインが背負った、触れないと相手の姿を認識できない傷、オズが背負った、夜に魔法を使うと眠ってしまう傷、ブラッドリーが背負った、くしゃみをすると遠方に瞬間移動してしまう傷・・・
あの幻が、〈大いなる厄災〉がフィガロに負わせた〈厄災の奇妙な傷〉なのだろうか。
優彼「夢が溢れる事が・・・ファウストが背負った〈厄災の奇妙な傷〉・・・?」
フィガロ「おそらくね。あの子が最も嫌がりそうな症状だよ」
一期「あの炎も・・・全てがファウスト殿の記憶なのでしょうか?」
その一期の言葉に、フィガロは少し考え込む様子を見せる。
フィガロ「過去だけじゃなく、普通の願望夢も混じってると思うよ。俺は最後の戦いには参加していないからね」
優彼「それは、どういう・・・」
フィガロ「戦線離脱したんだ。そのせいで、俺はファウストから恨まれている」
優彼「どうして・・・」
フィガロ「勝利は目前だったんだ。人間のアレクと、魔法使いのファウストを中心に、新しい理想の国が生まれると、誰もがそう信じていた。まさか、側近に唆されたアレクが、魔法使い達を処刑するなんて思わなかった」
優彼「そんな・・・!」
予想以上に凄惨な過去に優彼は言葉を失う。
しかも、レノックスから聞いた話ではファウストは火をかけられるその瞬間まで、アレクが実行に移すわけないとずっと信じ続けていたらしい。
一期「そんな過去があれば、彼が人間に対して嫌悪を抱き、呪い屋の道を選ぶのも無理はないですな」
問題は、〈厄災の奇妙な傷〉の事をファウストに話すかだ。
彼は知られたくない過去を、自らの脳内を幻という形で垂れ流しているような状態だ。
話せば、魔法舎を出ていくと言い出すかもしれない。
かと言って、隠し事をして彼から信じられるものを奪うのも嫌だ。
そんな優彼の悩みを一期のフィガロは感じ取ったのか、2人は優彼の肩に手を乗せる。
フィガロ「判断は賢者様に任せるよ」
一期「主は、主の納得できる選択を選んでください」
感想まだです
- IF優彼と魔法使いの絆 ファウスト編 ( No.69 )
- 日時: 2024/06/09 21:16
- 名前: 大瑠璃音葉 (ID: zL9o455v)
一晩悩んだ結果、優彼はファウストに傷の事を打ち明ける選択肢を選んだ。
慣れたように、ファウストの扉をノックする。
最初は心配からの生存確認から始まったものだったが、今となっては日課となっている。
優彼「ファウスト、僕です。大事なお話があるのですが、お時間大丈夫ですか?」
数秒後ファウストは扉を開けて、優彼を椅子に座らせる
優彼はファウストに傷の事を話した。
ファウスト「・・・」
ファウストは驚いた顔をして、けれども最後まで、優彼の話を聞いてくれた。
怒りだすことも、逃げ出すこともなく、耐えるように静かに・・・
優彼「ファウストがここに残ってくださるのなら、僕にできることは何でもします。あなたが傷つかない方法を考えます。無理強いはできませんが・・・どうか、考えてみてください」
ファウスト「・・・どうして僕に話したんだ?黙っていれば、気づかなかったかもしれないだろう?」
優彼「ファウストに魔法舎に残ってほしい気持ちが無いといえば、嘘になります。
誰にだって知られたくない事はある。それを知られるのは、僕だって嫌です。
でも、あなたに隠してあなたの魔力や知識に頼るような、駆け引きみたいなことはしたくありません」
黙ってファウストは優彼の言葉を聞く。
優彼は「それに」と付け加えて、涙混じりの声で話す。
優彼「僕は魔法舎にいる魔法使いの皆が、刀剣男士や文豪の皆と同じくらい大好きなんです!
大好きな人に、嘘や隠し事をする事は嫌だった・・・!
ファウストに信じて欲しかった・・・
信用してもらった上で、ここに残ってほしかったんです・・・」
一度決壊した涙のダムは止まることを知らない。
ファウストは優彼にハンカチを渡して涙を拭う。
本当に、かつての自分やアレクを思い起こさせた。
ファウスト「・・・分かった、ここに残ろう。」
優彼「本当ですか!?」
そう答えた時の優彼は、嬉しさと驚きが混ざったような表情をしていた。
ファウスト「だが、夢が外に溢れないように、強い結界を張りたい。その為の媒介を取りに東に行く。暫くの間、留守にする。構わないか?」
優彼「全然大丈夫ですよ!むしろ、ファウストに無茶言ってるのはこっちなんですから」
ファウストは部屋を出る。
そして、去り際に振り向いて一言こういった。
ファウスト「賢者。僕も昔、ある人間に信用されたかった。そして、馬鹿を見た。君は僕のような馬鹿をみるなよ。もしかしたら、僕がこのまま戻ってこないかもしれないんだから」
優彼は言ってる意味がよくわからず、キョトンとした表情になる。
だが、すぐに破顔して優彼も一言返した。
優彼「あはは!大丈夫だって信じてますから!それに、もしも本当に戻ってこなかったってしても、僕はファウストを見つけて、こっちから会いに行きますから!」
ファウスト「ふふ、そうか」
ファウストはこちらを見て一瞬優しく微笑み、ロビーの方であったレノックスと共に東の国へと向かった。
ファウスト(本当に眩しいな・・・あの時、こんな存在に出会えていたら・・・いや、たらればを問うても仕方がない。ただ、賢者が僕のような馬鹿を見ないことを、祈ってやらないことはない)
・
優彼「ファウスト、聞いてますか?」
ファウスト「すまない、昔の事を思い出していた」
後藤「それって、大将がこの世界に来たばかりの頃か?」
ファウスト「ああ。本当に、賢者は変わらない。」
まだ幼い優彼の真っ直ぐな所、優しい所に眩しい笑顔・・・
そこに眩しさを覚える時もあるが、癒される時もある。
ファウスト「そろそろ行こうか。昨日、ネロが賢者の好きなフレンチトーストを作ると言っていたぞ?」
優彼「本当ですか!?ファウスト、後藤、行きましょう!」
後藤「あ、待てよ大将!」
感想OKです!