二次創作小説(新・総合)

Re: 東方×カービィ 幻想郷のキカイ化 ( No.17 )
日時: 2017/05/05 23:46
名前: ピコパ ◆aIf9C.jTkU (ID: wXGYBxg0)




15・地底に広がる芸術



地霊殿

地面の奥深く、太陽の光すら届かない場所には大きな街があった。そこは『旧都』と呼ばれる街で鬼や妖怪達の住みかとなっている。怨念すら漂う都市の中心には旧都を治める主が住む地霊殿があり、すぐ真下にある灼熱地獄もここの主の管轄である。
地上での騒ぎの噂を耳にした主、さとりはここにも異変が起きてないかペットのお空とお燐に調査をさせた。今は心配そうに帰りを待っている。

お空「さとり様ー!調査終わりましたー!」
お燐「とくに変わったことは無いですよ。」
さとり「そう……それならよいのですが………お空、その手に持っているのはなんですか?」

さとりはそう尋ねるとお空はまるで宝物を見つけたこどものように満足げに掲げて見せた。それは魔女を描いた絵画だった。描かれた魔女は哀しみに満ちた瞳をしていたが、まるで本物のようなその瞳にさとりはすくんだ。

お空「それで、この絵画をエントランスに飾りたいんですけど……どうですかね?」
さとり「……やめなさいお空、その絵画は……何だか見ていて気味が悪いです。まるで生きているように私を見つめているようで…………」
お空「そうですかねぇ?まぁ確かにリアルな感じがしますけど………」
さとり「この絵画の作者には申し訳ありませんが……燃やしてしまいましょう。地上に異変が起きている今、その絵画にもからくりが無いとは言えませんし……呪われそうな感じがして………」
お空「はぁ……さとり様がそう言うのなら……」

『…………どい…………………』

お空が絵画を燃やそうと腕の砲口を向けた途端、どこからか呻き声が聞こえた。どうやらこの絵画から聞こえてくる。

『………ひどいわ…………あなたも…………そうやって…………私を……………!!!』

絵画からの呻き声はどんどん大きくなっていき、オーラがわき出てきた。そのオーラは額縁を包み込み宙に浮かせると、絵画そっくりの魔女が飛び出した。古びたローブの奥から覗かせる瞳に光は灯っておらず深い哀しみを湛えている。

ドロシア「誰も………『ドロシア』を見てくれない……人が作った作品を人が捨てる………当たり前のことだけど、それはとっても悲しいこと…………」
さとり「ま、魔女が飛び出した!」
お空「さとり様、ここは私が!」

お空が炎をドロシアに放つも、それは見えない壁のようなものによって阻まれる。ドロシアは何事もなかったかのように更に話を続ける。

ドロシア「私は呪いの絵画として潰れた美術館の倉庫にしまわれたわ。誰も私を怖がって見てくれない。新しい主が来たかと思えば狂って死んで流れての繰り返し………人は弱い生き物ね。」
さとり「なんて絵画なの………あなたが全てやっているのではないの?」
ドロシア「私を生み出したのは私の作者。その作者も狂って死んだわ、まだ名もない新人だったけど心が病んでいた。私は悪くないのにみんな私のせいにする。誰も見てくれないなら…………あなた達が私を燃やすというのなら………



こんな世界、消えてしまえばいい。」

ドロシアは禍々しい煙を吹き出すと地霊殿の壁が変色した。絵の具をぐちゃぐちゃにかき混ぜたように濁った色が地霊殿を覆い尽くすが、これだけでは魔女の復讐は終わらない。

お空「あ、あれ?体が動かないよー!」
お燐「お、お空!私達絵画になってるよ!」

さっきまでそばにいたお空とお燐が絵画となって額縁に閉じ込められてしまった。しかしさとりだけはなぜか絵画にならずに済んだようだ。

さとり「あなたの心は………寂しさでいっぱいですね………」
ドロシア「私の心を覗くあなたには……これがお似合いよ。」

ドロシアは異次元から蛇の目が描かれた絵画を取りだしさとりに掲げた。するとさとりの体がだんだんと石に変わっていく。気づいた時にはすでに足が動かなくなっていた。

さとり「な、か、体が…………動かな…………」
お空&お燐「「さとり様!?」」

足元からどんどん石になり、それが頭まで達した時にはさとりは物言わぬ石像と化していた。ドロシアは芸術品となった住人を飾ると今度は地霊殿の外に目をつけた。そして今度はもっと多くの煙を出し、旧都全てを芸術に変えようとする。
煙が晴れた時、さっきまで賑わっていた旧都は静かになった。鬼も妖怪も怨念も、全てが絵画や芸術品となってしまい、旧都自体も濁った世界となってしまった。誰もいない世界の真ん中、ドロシアは地霊殿を芸術品となった住人達を飾る美術館にした。絵画に描かれた住人達はみんな悲しい顔や苦しい顔でいっぱいだった。