二次創作小説(新・総合)
- Re: 東方×カービィ 幻想郷のキカイ化 ( No.38 )
- 日時: 2017/08/19 20:48
- 名前: ピコパ ◆aIf9C.jTkU (ID: wXGYBxg0)
夏レミリア偏
1・お嬢様のバカンス
紅魔館
『みんな!どこにいるの!返事して!』
紅魔館の屋根の上、主のレミリアはしきりに声を上げていた。空は雲に覆われており、地面は水の下に沈んでいる。流水に弱い主を守るためにメイドの咲夜が傘をさしている。
数分前、突如として霧の湖の水位が急上昇し洪水を始めたのだ。更に雲が集まり雨が降った。近くにある紅魔館もその被害を受け浸水する。咲夜の指導のもと水を外に出す作業をしたがそれでも追いつかず屋根へ避難することになった。ある程度の食料は運び出したがその食料も底を尽きようとしていた。さらに大きな波が屋根にあがった人々を押し流す。大きな流れに抗えず多くの人々が流されてしまい、残ったのはレミリア、咲夜、パチュリー、小悪魔、美鈴だけである。
パチュリーと小悪魔が魔法障壁で波を打ち消していたが24時間休みなくかけ続けた上飲まず食わずの結果魔力を使い果たし流されてしまったのだ。
美鈴においては食料を探す為に雨の中泳いでいった。レミリアと咲夜は必死に止めたが次第に痩せていく咲夜を放ってはおけず飛び込んでしまった。その後美鈴はまだ帰って来ていない。
レミリア「美鈴、帰ってこないわね………」
咲夜「美鈴のことです、きっとグルメなお嬢様の為に食材を選んでいるんですわ。」
レミリア「……そうね……………」
咲夜「…………お嬢様、美鈴を信じてあげて下さい。いつも寝ていてろくに門番の役目を果たしたことはありませんが………それでも、美鈴は立派な紅魔館の一員なんですから。」
レミリア「わかったわ。………にしてもここに避難してもう1ヶ月………私は吸血鬼だからまだ平気だけど……咲夜は大丈夫?」
咲夜「私は紅魔館のメイド長ですよ?これくらいどうってことありませんよ。」
とは言っても咲夜の体はさらに細くなり目は若干霞んでいる。傘を持っている手も震えている。しかし笑顔は最後まで絶やさない。最期まで主を支える誇り高きメイドになろうとしているのだろう。押し寄せる波に流されぬようしっかりと抱く咲夜の体はまだ温かく、レミリアの最後の拠り所となっていた。従者がこんなにも体を張っているのになにもできない自分を悔やんでいた。
また大きな波が来る。それもかなり大きな波だ。咲夜はレミリアを抱いて波から身を守る。ものすごい水圧に負けず咲夜はずっと耐え続ける。レミリアは震える体を押さえながら咲夜の体にしがみついていた。そしてレミリアは目を開ける。咲夜の笑顔がそこにある。咲夜はレミリアに微笑んだあと力なくレミリアにもたれかかった。レミリアがいくら声をかけても体を揺らしても咲夜が目覚めることは無かった。拠り所としていた温かさはもう無くなってしまったのだ。
『グオオオオォォォォ…………………』
目の前の水面が渦巻き、そこから大きな竜が現れた。怒りに包まれた赤いふたつの瞳はしっかりとレミリアを見据えている。雨に当たりすぎたのか槍も鎖も蝙蝠も出せない。竜はそのままレミリアを飲み込まんと襲いかかる。
レミリア「あぁ………これが私の最期…………咲夜………」
レミリア「……………はっ!!!」
咲夜「お嬢様……大丈夫ですか?酷くうなされていましたが……」
レミリア「咲夜………もう天国についたの……?」
メタナイト「レミリア殿、しっかりするのだ。ここは天国ではない。」
カービィ「ぽよぽよ!」
ここは紅魔館の庭。復興の手伝いと避暑をかねて戻ってきたのである。幻想郷でも夏は暑い。その上キカイ化により鋼鉄化した道路や建物は太陽熱を反射するためさらに暑い。日光に弱いレミリアや地面のすぐそばにいるカービィは夏バテになってしまい急遽ここにやってきたのだ。カービィは凍った果物を食べてすぐに回復したがレミリアは悪夢の影響もあってすぐには回復しなかった。
レミリア達は事実上バカンスを楽しむということになっている。日差しがギンギンに差す霧の湖のほとり、パラソルの下ではメタナイトとパチュリー、レミリアが本を読んでいた。メタナイトに至ってはどんなに暑くても仮面は『脱がない』。湖ではカービィと美鈴、小悪魔が水をかけあって遊んでいる。咲夜はスイカを人数分に切り分けてやってきた。
咲夜「なるほど、そんな夢を………」
パチュリー「なんであろうと夢であることに変わりはないわ。それに霧の湖に竜なんていなかったはずだけど………」
美鈴「一回潜って探してみますか?暑いしちょうどいいかもしれませんよ。」
咲夜「そうね……それでお嬢様が安心するのなら。」
こうしてカービィ、メタナイト、美鈴、咲夜による湖底探索が始まった。しかし竜に関するものや遺跡などは見つからず、多少のゴミが見つかっただけだった。
レミリア「やっぱり夢は夢……ありがとうみんな。これでスッキリできたわ!さーて、思いっきり遊ぶわよー!!」
咲夜「……やっといつものお嬢様に戻ったわ。」
美鈴「お嬢様に暗い顔は似合いませんからねえ。」
こうしてレミリアの波乱万丈な夏休みが始まった。