二次創作小説(新・総合)
- Re: 東方×カービィ 幻想郷のキカイ化 ( No.72 )
- 日時: 2018/05/20 23:03
- 名前: ピコパ ◆aIf9C.jTkU (ID: aFJ0KTw3)
frontstory >>43-48 >>61
おまけ
移動店舗香霖堂
4・妖精の星の追悼式
リップルスター
気がつくと霖之助は花畑に倒れていた。自分に何が起こったのかわからぬまま、霖之助はいったん起き上がる。独特で心地よい花の香りに包まれた彼は、後にここが幻想郷では無いことを知ることとなる。
人里を後にした霖之助は舗装された道を歩んでいると突如として開いた時空の裂け目に吸い込まれてしまった。上下左右もわからぬまま時空の流れに身を委ね、気づいたらこの花畑に倒れていたようだ。
霖之助「ここはどこだ……?幻想郷なのか……?しかし見たことのない景色だ……ひとまず人を探さなくては。」
霖之助は落ちていた鞄を背負い泡や虹に包まれた花畑を歩いていく。目指すは向こうに見える大きな白い建物である。
建物へ向かって歩いていくと、町のような場所に出た。そしてその住人は全て霖之助より小さく、また羽を持っていた。笑顔で飛び交う妖精達は霖之助を見ると怯えた表情をした。
妖精1「あなただあれ?怪しい人……」
霖之助「あ、怪しい者ではないんだ。飛ばされただけなんだ!」
そうは言っても妖精達は怪訝な顔をするばかり……と思っていたのだが、なぜか妖精達はそれに納得してしまった。というより安心したのである。
妖精2「ということは早苗様と雛様の世界の人ね!」
霖之助「なんだって?その2人は今ここにいるのかい?」
妖精3「ううん、クリスタルの魔力で元の世界に帰っちゃった。ゲンソーキョー?ってとこ。」
霖之助「そうか……そのクリスタルはどこにあるのかな?」
妖精1「あそこのほうだよ!」
霖之助「わかった、ありがとう。」
自分はそんなに怪しく見えるのかと疑問を抱きつつ言われた方向へ向かうと大きな建物があった。まわりと比べて荘厳なつくりである。その建物の正体は王宮であった。外壁は塗装や掃除が行き届いていて自分の顔が映り、一点のシミもない。花で埋め尽くされた入り口を通り仲に入っていくととても大きな宝石が安置されている場所に出た。日々の平和を喜んでいるかのように輝いているその宝石はまさしく『国宝』と呼ぶにふさわしい。霖之助がその宝石を除いていると背後から不安そうなこえが聞こえた。
???「あの、どちら様ですか……?」
その声の主はピンクの髪に可愛らしいリボンを着けた妖精だった。
霖之助「すまない、どうやら時空の裂け目から迷いこんだらしくて……」
???「まぁ、でしたら早苗さんの世界の方かしら。では着いてきて下さい、女王様の所へご案内致します。」
その妖精は城の外れの開けた所へ向かった。そこには大きな石碑と花束を持ったひとりの女性がいた。女性は花束を石碑に置くと祈りを捧げながら呟いた。
女王「ダメですよリボン、お客様をこんなところまでお連れするなんて。」
リボン「しかし女王様、この方は早苗さんの世界のお方です。なんとかクリスタルの使用の許可をお願いします。」
女王「まぁ、早苗さんの世界の………」
女王は霖之助に一例した。冠を直しながら女王は霖之助に挨拶をする。
女王「はじめまして、私がこの星の女王ですわ。」
霖之助「はじめまして、森近霖之助と申します。ここはもしかしてお墓かなにかですか?」
女王「ええ、あなたが来るだいぶ前にミラクルマターというワルモノが大暴れして……早苗様と雛様とリボンがそれを止めたのです。悪夢が去ったと他の妖精達は喜んでいたのですが、その代償はあまりにも大きすぎたのです……」
女王は泣きながら石碑に手を触れた。王宮に安置されているクリスタルとは違い石碑は冷たい死をそのまま表しているように見える。その石碑には数多くの犠牲者の名前が彫られておりいつまでもその存在を忘れぬようになっていた。霖之助も石碑の前に立ちそっと祈った。
女王「死は遅かれ早かれ誰にでもやってくる……みんなに看取られながら逝く子もいれば誰にも気づかれずに逝く子もいます。この石碑の下にはミラクルマターの犠牲に人知れずなってしまった子達が眠っていますわ。」
霖之助「かわいそうに……この子らにも親しくしている者がいるでしょう。その子らを失ってとても悲しんでいるはずです。」
女王「えぇ……妖精達はみんな純粋ですからショックが大きすぎて……」
霖之助(しかし私がここにくる間妖精達にそんな感じはしなかった……きっとうまく死を受け入れられたのだろう。やれやれ、どこの世界でも妖精はたくましいな。)
ふと、女王は鼻をくすぐる匂いに気がついた。
霖之助「あぁ、このお香ですね。」
女王「懐かしく、包まれそうな香り………こんなにも暖かで上品な香りがあるなんて……英雄様の世界はすごいのですね。」
霖之助「よろしければ差し上げますよ。その方が個人的にこの子らも寂しくはならないはずです。」
女王「そんな……ありがとうございます……あ、そうだ。」
女王は小さな袋を霖之助に差し出した。小さな玉のようなものがたくさん入っている感触がする。
女王「ここのお花の種ですわ。そちらの世界でも育つかわかりませんが……せめてものお礼です。」
霖之助「ありがたい……」
リボン「それでは、元の世界へお返ししますね。」
霖之助「ああ、お願いしようかな。」
クリスタルの魔力により霖之助は幻想郷へ転送された。後日、懐かしい残り香が漂う石碑は次への生を後押しするかのように明るくなったという。
そして霖之助は幻想郷へ戻ってきた。キカイ化されすっかり元の形を失った幻想郷だが、それでもここは我が故郷なのだ。
霖之助「またあの世界に飛ばされそうな予感がするが……それでも先へ進まなければ。私は私のやり方で救ってみせるさ。」
未来への可能性という種をしまい、霖之助はまた歩みだす。そして彼の予感はすぐに当たることとなった。